労災の後遺障害とは?障害等級の認定基準と金額早見表、給付の流れ
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後遺障害とは、仕事中や通勤中の事故や病気で、治療が終わっても身体や心に残ってしまう一定程度以上の後遺症のことです。
例えば、工場で手を切ってしまい欠損してしまう、高所から転落して骨折してしまい自由に動かせなくなるなどが場合が考えられます。
後遺症については、労災が業務災害なら障害補償給付を、通勤災害なら障害給付を受け取ることが可能です。もっとも、後遺症が残るだけではなく障害等級の認定を受けていることが前提になります。
労災の障害等級における認定基準、後遺障害が認定されたらもらえる給付金の金額、後遺障害が認定されるための申請時の要点などをわかりやすく解説していますので、最後までお読みください。
目次
労災による後遺障害とは何か
労災によるケガや疾病の治療を続けても身体や精神に後遺症が残ったとき、主治医からは「症状固定」や「治ゆ」といった診断を受けることになります。
症状固定とは、これ以上一般的な治療をつづけても、よくなったり、悪くなったりすることがない状態を迎えることです。
労災保険では障害補償給付といって、後遺症に対する補償も設定されています。
労働者側が障害補償給付の支払いを受けるために申請すると、労働基準監督署は「障害等級」という認定をおこなったうえで、障害補償給付の支払いを決定する流れです。
こうして障害等級が認定された後遺症を後遺障害といいます。
障害補償給付内容は障害等級に応じて決められており、障害等級が一定以上重いときには年金形式で支払われるなど、どの障害等級で認定されるのかは極めて重要です。
労災の後遺障害等級表
後遺障害は症状の程度に応じて14段階で区分されており、症状の程度が最も重いものが障害等級1級、最も軽いものが障害等級14級となります。
労災で負った後遺症が下表の認定基準を満たしていると認められれば、後遺障害等級認定を受けられます。後遺障害として認定されるための基準を障害等級表で確認してみましょう。
等級 | 認定基準 |
---|---|
第1級 | 1 両眼が失明したもの 2 そしやく及び言語の機能を廃したもの 3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 5 削除 6 両上肢をひじ関節以上で失つたもの 7 両上肢の用を全廃したもの 8 両下肢をひざ関節以上で失つたもの 9 両下肢の用を全廃したもの |
第2級 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 2 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 2の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 3 両上肢を手関節以上で失つたもの 4 両下肢を足関節以上で失つたもの |
第3級 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 2 そしやく又は言語の機能を廃したもの 3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5 両手の手指の全部を失つたもの |
第4級 | 1 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 2 そしやく及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3 両耳の聴力を全く失つたもの 4 一上肢をひじ関節以上で失つたもの 5 一下肢をひざ関節以上で失つたもの 6 両手の手指の全部の用を廃したもの 7 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
第5級 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの 1の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 2 一上肢を手関節以上で失つたもの 3 一下肢を足関節以上で失つたもの 4 一上肢の用を全廃したもの 5 一下肢の用を全廃したもの 6 両足の足指の全部を失つたもの |
第6級 | 1 両眼の視力が〇・一以下になつたもの 2 そしやく又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 3の2 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 4 せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 5 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 6 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 7 一手の五の手指又は母指を含み四の手指を失つたもの |
第7級 | 1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの 2 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 2の2 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 3 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4 削除 5 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6 一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指を失つたもの 7 一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの 8 一足をリスフラン関節以上で失つたもの 9 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11 両足の足指の全部の用を廃したもの 12 外貌に著しい醜状を残すもの 13 両側のこう丸を失つたもの |
第8級 | 1 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 2 せき柱に運動障害を残すもの 3 一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指を失つたもの 4 一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃したもの 5 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 6 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8 一上肢に偽関節を残すもの 9 一下肢に偽関節を残すもの 10 一足の足指の全部を失つたもの |
第9級 | 1 両眼の視力が〇・六以下になつたもの 2 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 3 両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 4 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6 そしやく及び言語の機能に障害を残すもの 6の2 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 6の3 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 7 一耳の聴力を全く失つたもの 7の2 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 7の3 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 8 一手の母指又は母指以外の二の手指を失つたもの 9 一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指の用を廃したもの 10 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの 11 一足の足指の全部の用を廃したもの 11の2 外貌に相当程度の醜状を残すもの 12 生殖器に著しい障害を残すもの |
第10級 | 1 一眼の視力が〇・一以下になつたもの 1の2 正面視で複視を残すもの 2 そしやく又は言語の機能に障害を残すもの 3 十四歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 3の2 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 4 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 5 削除 6 一手の母指又は母指以外の二の手指の用を廃したもの 7 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 8 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの 9 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 10 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
第11級 | 1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 3の2 十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 3の3 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 4 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 5 せき柱に変形を残すもの 6 一手の示指、中指又は環指を失つたもの 7 削除 8 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 9 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
第12級 | 1 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3 七歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 4 一耳の耳かくの大部分を欠損したもの 5 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8 長管骨に変形を残すもの 8の2 一手の小指を失つたもの 9 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの 10 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの 11 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 12 局部にがん固な神経症状を残すもの 13 削除 14 外貌に醜状を残すもの |
第13級 | 1 一眼の視力が〇・六以下になつたもの 2 一眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 2の2 正面視以外で複視を残すもの 3 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 3の2 五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 3の3 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 4 一手の小指の用を廃したもの 5 一手の母指の指骨の一部を失つたもの 6 削除 7 削除 8 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 9 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの 10 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの |
第14級 | 1 一眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの 2 三歯以上に対し歯科補てつを加えたもの 2の2 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 3 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 4 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5 削除 6 一手の母指以外の手指の指骨の一部を失つたもの 7 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの 8 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 9 局部に神経症状を残すもの 10 削除 |
出典:厚生労働省「労働者災害補償保険法施行規則 別表第一 障害等級表」
複数の後遺症に対する障害等級
労災で2つ以上の後遺障害が残った場合、障害等級は併合または併合繰り上げが行われます。
併合
同一の労働災害で障害等級14級とそれ以外の後遺障害が残った場合、重い方の等級をとることをいいます。
(例)
障害等級14級と8級の後遺障害が残った場合、重い方の等級である8級を障害等級とします。
併合繰り上げ
同一の労働災害で障害等級13級以上の後遺障害が2つ以上残った場合、最も重い等級が1から3つ上の級に繰り上がることをいいます。
14級については等級の繰り上げは起こりません。
併合繰り上げのルール
- 障害等級5級以上の後遺障害が2つ以上なら、重い方の等級が3つ繰り上がる
- 障害等級8級以上の後遺障害が2つ以上なら、重い方の等級が2つ繰り上がる
- 障害等級13級以上の後遺障害が2つ以上なら、重い方の等級が1つ繰り上がる
(例1)
障害等級5級と4級の後遺障害が残った場合、重い方の等級である4級が3つ繰り上がるので、障害等級は1級となります。
(例2)
障害等級8級と7級の後遺障害が残った場合、重い方の等級である7級が2つ繰り上がるので、障害等級は5級となります。
(例3)
障害等級13級と5級の後遺障害が残った場合、重い方の等級である5級が1つ繰り上がるので、障害等級は4級となります。
障害補償給付額の基礎知識
労災からもらえる主な支給内容の中でも、後遺障害が残った場合にもらえる障害補償給付や障害給付については、障害等級に応じて給付方法や金額が異なります。
障害補償給付の支給内容
障害等級1~7級と障害等級8~14級との大きな違いは、「年金形式」か「一時金形式」かという点です。
1~7級 | 8~14級 | |
---|---|---|
業務災害 | 障害補償年金 | 障害補償一時金 |
通勤災害 | 障害年金 | 障害一時金 |
共通 | 障害特別支給金 障害特別年金 | 障害特別支給金 障害特別一時金 |
年金形式は、支給要件に該当する月の翌月分からが対象となり、毎年偶数月に2ヶ月分ずつ死亡するまで年金が支払われます。一時金形式は、決められた金額が一回きりで支払われるものです。
障害特別支給金に関しては、障害等級に関わらず一時金形式で受け取ることになります。
支給金額早見表を確認する前に「給付基礎日額」と「算定基礎日額」について知っておく必要があります。これら日額の割り出し方を知っておけば、早見表を確認する時も理解がスムーズになるでしょう。
給付基礎日額とは
障害等級1~7級の場合の障害補償年金・障害年金、障害等級8~14級の場合の障害補償一時金・障害一時金は、「給付基礎日額」を用いて計算します。
給付基礎日額は、「労働基準法の平均賃金に相当する額」が原則です。
もう少し具体的にいうと、労災事故が発生した日や労災による疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額をいいます。
ただし、ボーナスや臨時で支払われる賃金は含まれません。
たとえば
毎月の賃金が30万円で、労働災害が4月に発生した場合、給付算定日額は以下のように計算します。暦日数は、1月が31日、2月が28日、3月が31日の90日間のとき、計算式は以下のとおりです。
- (30万円×3ヶ月)÷90日間=1万円
算定基礎日額とは
障害等級1~7級の場合の障害特別年金、障害等級8~14級の場合の障害特別一時金は、「算定基礎日額」を用いて計算します。
算定基礎日額は、「特別給与の総額を365で割った額」が原則です。
もう少し具体的にいうと、労災事故が発生した日や労災による疾病の発生が確定した日以前1年間の特別給与の総額を365で割った額をいいます。
特別給与の総額は、給付基礎日額の算定で除外されたボーナスなど3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金のことです。そのため、臨時で支払われた賃金は特別給与に含まれません。
障害等級1~7級の支給金額早見表
障害補償年金・特別支給金・特別年金
障害等級1~7級の場合の支払い基準は、以下の早見表の通りです。いずれも年金形式で支給されます。
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の313日分 |
障害特別支給金 | 342万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の313日分 |
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の277日分 |
障害特別支給金 | 320万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の277日分 |
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の245日分 |
障害特別支給金 | 300万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の245日分 |
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の213日分 |
障害特別支給金 | 264万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の213日分 |
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の184日分 |
障害特別支給金 | 225万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の184日分 |
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の156日分 |
障害特別支給金 | 192万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の156日分 |
障害補償年金 障害年金 | 給付基礎日額の131日分 |
障害特別支給金 | 159万円 |
障害特別年金 | 算定基礎日額の131日分 |
年金を受給する際の注意点
障害等級1~7級で年金給付を受ける場合は年に一回、定期報告書を提出しなければなりません。定期報告書とは、労災の受給要件を確認する書類です。
定期報告書は、被災者の生年月日に応じて提出日が決まっています。
- 生年月日が1~6月の場合:毎年5月31日まで
- 生年月日が7~12月の場合:毎年10月31日まで
定期報告書を提出しないと、定期報告書を提出するように督促を受けます。この督促も無視して定期報告書を提出しないと、年金の支給が差し止められます。忘れず提出するようにしてください。
労災年金の仕組み・受給条件については、関連記事『労災年金の金額・要件と申請期限・給付期間|厚生年金と両方受け取れる?』も参考になります。
症状が再発したり悪化した時の年金
定期報告書で、症状が再発したり悪化したりする場合、障害等級が変更される可能性があります。
反対に、症状が軽快した場合も同様に、障害等級が変更される可能性もあります。
障害等級8~14級の支給金額早見表
障害等級8~14級の場合の支払い基準は、以下の早見表の通りです。いずれも一時金形式で支給されます。
障害補償一時金・障害特別支給金・障害特別一時金
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の503日分 |
障害特別支給金 | 65万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の503日分 |
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の391日分 |
障害特別支給金 | 50万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の391日分 |
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の302日分 |
障害特別支給金 | 39万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の302日分 |
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の223日分 |
障害特別支給金 | 29万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の223日分 |
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の156日分 |
障害特別支給金 | 20万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の156日分 |
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の101日分 |
障害特別支給金 | 14万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の101日分 |
障害補償一時金 障害一時金 | 給付基礎日額の56日分 |
障害特別支給金 | 8万円 |
障害特別一時金 | 算定基礎日額の56日分 |
労災から障害補償給付を受けるまでの流れ
障害補償給付を受け取るためには、後遺障害認定される必要があります。認定を受け、労災保険から障害補償給付を受け取るまでの流れを簡単にみていきましょう。
1.医師が症状固定になったと判断
まず、主治医から「症状固定」との診断を受けます。症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態のことです。
治療期間は「治療によって回復が見込まれる期間」をさすので、症状固定になることは治療期間を終えるということを意味します。
そのため治療のため治療費(療養補償給付)や休業への補償(休業補償給付)などは受けられなくなる点には留意しましょう。
そのほか症状固定によって変わることや、症状固定となっていないのに労基署に「治ゆ」と判断されたときの対応については、関連記事『労災の症状固定とは?症状固定で変わることと後遺障害認定|再発時の対応も解説』で解説しています。
2.後遺障害診断書の作成
症状固定となったら、主治医に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
この「後遺障害診断書」は病院から発行される診断書とは違うので、診断書(障害(補償)等給付請求用)でダウンロードしたものに記入してもらってください。
後遺障害診断書は審査に極めて重要な資料
障害補償給付の審査では面談が実施されます。しかし、後遺障害診断書の記載内容は等級認定の判断を大きく左右するものです。
面談で全部伝えればいいのではなく、面談は書面審査を補強する位置づけだと考えてしっかり準備しましょう。
医師に書式を渡すのみではなく、後遺症に関するコミュニケーションをしっかりとることが大切になります。労働者側が自覚症状を正確に医師へ説明し、生活は仕事への影響を理解してもらうことがポイントです。
検査結果や意見書も添付できる
後遺障害診断書のほか、医師による意見書、検査結果のデータ(MRI、CT、レントゲン検査など)を添付することも大切です。
例えば、労災による怪我で腕が上がりづらくなったとしましょう。その場合、「腕が上がりづらい」という記載するだけではなく、具体的に健康な側の腕と比べてどれくらい上がらなくなったのかを角度で示すことが有効です。
このように自覚症状をいかに客観的に認めてもらうのかが、後遺障害認定の審査対策の要といえます。
3.障害補償給付の申請
障害補償給付の申請には、以下の書類を労働基準監督署に提出します。
障害補償給付の申請に必要な書類
書式は『厚生労働省のホームページ』でダウンロード可能
4.労働基準監督署による審査・面談
書類審査の後には、面談日程の日程調整となり、労働基準監督署の調査官との面談が実施されます。
調査官との面談では、提出書類では確認できなかった点について質問されることが多いです。例えば、事故の詳細や後遺症の具体的な影響などが尋ねられます。
具体的にどんな症状があり、実生活や仕事に支障をきたしているかを明確に答えてください。
後遺症に関する審査・面談の注意点については、関連記事『労災の後遺症認定の書類審査・面談の要点!振り込みの時期はいつ?』も参考にしてみてください。
5.後遺障害等級の通知・給付の決定
面談後、労働基準監督署は後遺障害等級を認定し、その結果を通知します。認定された等級に基づいて、障害補償給付が支給される流れです。
労災の後遺障害認定と申請手続きの要点
労災の後遺障害認定を受けるには申請手続きが必要です。後遺障害認定の申請手続きに向けて知っておきたい要点をまとめています。
後遺障害等級認定の申請には5年の時効がある
医師から症状固定(治癒)との診断を受けた翌日から5年経過すると時効になるので、労災に障害(補償)給付の請求はできなくなってしまいます。
後遺障害認定では後遺障害診断書が重要
後遺障害診断書の作成を依頼する際には、自分の症状に見合った後遺障害等級の検討をつけておくと、より実情に合った後遺障害診断書の作成に役立ちます。
医師は治療のプロではありますが、後遺障害が認定されるための診断書を作成するプロとはいえません。
たとえば、肩関節を骨折して曲げにくくなる可動域制限が残ったにもかかわらず、診断書に可動域制限が記載されていなかったとします。
これでは後遺障害の認定条件が十分に記載された診断書とはいえず、症状にあった最適な等級認定は受けられません。後遺障害の認定条件を満たすことがわかる診断書となっていることが大切なのです。
後遺障害等級認定結果が不服なら審査の請求を申し立てる
後遺障害が非該当だったり、認定を受けた等級が想定していたよりも低くて納得いかないような場合、再び審査してもらえるように不服申立てを行うことができます。
審査請求
審査請求は、労働者災害補償保険審査官に対して行います。労働者災害補償保険審査官は、労災保険の請求に対して決定をおこなった労働基準監督署がある各都道府県の労働局に置かれています。
審査請求は、口頭・書面・電子申請で行うことができます。審査請求ができるのは、労災保険の請求を行って、後遺障害の認定結果を知ってから3ヶ月以内です。
審査官が審査請求を受けると、審査請求の審理を開始します。
審査官が審査請求を棄却したことに不服がある場合、再審査請求または処分取消請求訴訟へと進みます。
再審査請求または行政訴訟(処分取消請求訴訟)
再審査請求は、労働保険審査会に対して書面を提出して行います。審査会の裁決が出るまで通常、半年から1年程度の期間を要する点を留意しておきましょう。
また、再審査請求でなく行政訴訟である処分取消請求訴訟を提起することもできます。
後遺障害認定後は傷病補償給付・傷病給付は受け取れない
労災保険で後遺障害が認定されると、二重取りできない給付があるので注意しましょう。
二重取りできない給付
- 業務災害の場合:傷病補償給付と障害補償給付
- 通勤災害の場合:傷病給付と障害給付
傷病補償給付・傷病給付とは、治療開始から1年6ヶ月経っても治らず傷病等級が1~3級に該当する場合にもらえる給付です。
傷病補償給付・傷病給付を受け取っており、症状固定となって後遺障害が認定されると、障害補償給付・障害給付へ切り替わります。
労災保険から慰謝料はもらえない
労災保険で給付される項目の中に、慰謝料は含まれていません。
労災事故の内容しだいでは、労災保険の申請とは別に損害賠償請求をおこない、後遺障害慰謝料を受け取ることが可能です。
また後遺障害等級認定を受けた場合には、後遺障害によって将来生じうる減収についても補償を受けることが可能です。
ただし労災保険の給付は法律で上限が決められているため、実際に請求できる損害額と比べると、労災保険で足りない損害があることもあります。
このように労災保険で足りない損害や、そもそも労災保険から支払われない慰謝料などの損害に関しては、労働災害が生じた原因となったものに対して損害賠償請求が可能になります。
もっとも同じ費目について二重取りすることはできないので、先に労災保険を受け取っている場合には、損害賠償額から一部差し引きが必要です。
どのようなケースなら損害賠償請求できるのか
労働災害のすべてのケースで、損害賠償請求が認められる訳ではありません。
安全配慮義務違反など会社の落ち度が認められるケースや交通事故のケースで、損害賠償請求できる可能性があるのです。
会社の落ち度が認められるケースであれば会社に対して、交通事故のような第三者によって労働災害が起きた場合はその第三者に対して損害賠償請求ができます。
労災による後遺障害認定は弁護士へ相談
労災保険の申請だけでは不十分なので、損害賠償請求を検討した方がいいこともあるとはいっても、ご自身だけではどのような損害が不足しているのか、どのくらいの慰謝料がもらえるのかわからないことも多いと思います。
損害賠償請求で適切な補償を獲得するためには、弁護士に一度、相談することをおすすめします。
労災により後遺障害が生じた場合には専門家である弁護士に相談し、アドバイスを受けるべきでしょう。本来、得られるはずの慰謝料の請求が行えるようになります。
後遺障害が生じた場合には大金を請求できる可能性があることからも、弁護士に相談するメリットは大きいです。
弁護士に相談・依頼するメリットや、弁護士の探し方などについて詳しく知りたい方は『労災に強い弁護士に相談するメリットと探し方|労災事故の無料相談はできる?』の記事をご覧ください。
また、弁護士費用が気になるという方は関連記事『労災の弁護士費用はいくら?成功報酬・着手金などの相場と安くおさえる方法』を参考にしてみてください。法律事務所ごとに費用は異なりますが、おおよその相場について説明しています。
アトム法律事務所の法律相談窓口
労災によって重篤な後遺障害が生じ、会社などに対して損害賠償請求を検討している場合は、アトム法律事務所の無料法律相談をご活用ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
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