労災による後遺症が後遺障害として認定される方法と給付内容を解説 | 事故慰謝料解決ナビ

労災による後遺症が後遺障害として認定される方法と給付内容を解説

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労災で怪我をしたら後遺障害と認定される方法

仕事中や通勤途中に怪我を負った場合、労災保険の給付を受けられる可能性があります。

そして、治療を続けても後遺症が残ったときには後遺症に対する給付も受けられますが、別途申請が必要です。
しかし、ただ後遺症が残ったと主張するだけでは給付の対象とはならず、給付を受けるための手続きは簡単ではありません。

そのため、「どうすれば労災の給付を受けられるのか」「具体的にどんな給付を受けられるのか」という点が気になる労働者の人は多いでしょう。

本記事では、労災により後遺症を負った人が行うべき労災に関する手続きや、労災保険により受けられる給付の具体的な内容について解説しています。
後遺症を負い、これからどうすればいいのか不安な方は是非ご覧下さい。

労災により後遺症が残った場合に請求できるもの

労災と後遺症(後遺障害)について、まずは基本的な情報を確認しておきましょう。
そして、後遺症が残った場合に労災保険からどんな補償を受けられるのかを解説していきます。

そもそも労災、後遺症・後遺障害とは何か

労災とは

労災とは、業務中や通勤途上に起きた怪我、疾病、死亡などをいいます。労災には業務中に発生する業務災害と、通勤中に発生する通勤災害の2種類があります。

どちらも労災申請を行うことで労災保険から給付を受けることができます。ただし、解雇制限の有無や、休業損害の扱いなどが異なるので注意が必要です。

後遺症・後遺障害とは

後遺症とは、傷病が完治せずに何らかの症状が身体に残る状態をいいます。

一方、後遺障害とは、後遺症により生じる症状の内で法律により後遺障害と定められたものをいいます。

したがって、労災によって後遺症が残ったという自覚症状だけではなく、「後遺障害認定」を受けてはじめて労災保険の給付を受けられます。

労災からの後遺障害に対する補償内容

労災保険から給付される後遺障害への補償は、次のように、年金形式、一時金形式のものがあります。

  • 障害補償給付年金、特別年金
  • 障害補償給付一時金、特別一時金
  • 障害特別支給金
  • 障害補償給付年金前払一時金
  • 障害補償給付年金差額一時金

これらのすべてを受け取れるわけではなく、後遺障害等級や被災した労働者側の事情によって給付内容や金額が異なります。つまり、後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を受けられるのか、何級に認定されるのかが極めて重要であるといえるのです。

労災発生から障害補償給付を受けるまでの流れ

労災が発生してから障害補償給付がなされるまでの具体的な流れは以下の通りです。

  1. 労災の発生
  2. 病院での治療
  3. 医師が症状固定になったと判断
  4. 障害補償給付の申請
  5. 労働基準監督署による審査・面談
  6. 後遺障害等級の通知・給付の決定

障害等級の認定や審査はおよそ3ヶ月程度かかるとされています。そのため申請から給付までも、3ヶ月前後を要すると考えておきましょう。もっとも、申請内容次第ではさらに時間がかかる場合もあります。

給付が決定した場合には、支給決定通知とあわせて振込通知が送られてくることが一般的です。後遺障害等級認定がなされず不支給の場合には、不支給の決定通知を受けます。

給付を受けるための申請方法|書類提出と面談

労災保険から後遺症を原因とする給付を受けるためには後遺障害等級認定を受ける必要があります。そして、認定を受けるためには申請書類を提出すること面談を受けることの2つが必要です。

労災保険から給付を受けるための申請方法と、その流れについて解説を行います。

障害補償給付の申請書類を提出

障害補償給付の申請には、以下の書類を労働基準監督署に提出します。

障害補償給付の申請に必要な書類

書類
請求にかかる申請書業務災害:様式第10号
通勤災害:様式第16号の7
添付書類後遺障害診断書や医師の意見書等の書類
レントゲン、MRI、CTなどの検査画像の記録

書式は『厚生労働省のホームページ』でダウンロード可能

申請書類を提出後、面談日程が決まります。

労働基準監督署の調査官と面談

労災の後遺障害等級認定では、原則、被災した労働者本人との面談が行われます。

面談は後遺障害診断書や検査結果などのすでに提出した資料を踏まえて行われますが、面談時にきちんと症状を訴えることも大事です。

後遺障害認定を受けるためのポイント

労災保険から後遺症が生じたことを原因とした給付を受けるには、後遺障害等級の認定を受けなければなりません。適切な後遺障害等級の認定を受けるために注意すべきポイントについて紹介します。

きちんと通院・検査を続ける

労災事故の怪我の治療を最優先して、症状固定まで、医師の指示に従って通院・検査を受けましょう。なんとなく治ってきた気がすると自己判断して治療を中断したり、治療に必要だと医師が提案した検査を受けないといったことは避けてください。

今後のためにも、医師としっかりコミュニケーションを取り、相談のしやすい関係を築いておくことが望ましいでしょう。

症状固定とは、これ以上通常の医療行為を行っても、その医療行為の効果が期待できなくなった状態をいいます。後遺障害認定の申請は、症状固定の診断を受けてからです。

症状固定のタイミングや、症状固定と診断されるとどんな変化が起こるのかについて詳しく知りたい方は『労災の症状固定とは?症状固定で変わることと後遺障害認定|再発時の対応も解説』の記事をご覧ください。

労災事故直後の検査画像や結果は特に重要

なるべく労災事故発生直後の検査画像の記録を提出することが望ましいです。
労災事故の発生から期間が経過してから検査した場合には、労災事故以外が原因となっている可能性があると判断され、因果関係が認められない危険があります。

画像だけでは証明が難しい場合には、症状の発生を裏付けることのできる検査を行い、検査結果を記載した書類も提出してください。
どのような検査が適切であるのかについては、医師に相談しましょう。

「後遺障害診断書」の作成を依頼する

後遺障害認定を受けるには、被災した本人だけでなく、第三者にも「症状が存在していること」が認められなくてはいけません。
そこで提出書類の中で最も重要な資料ともいえるのが、医師に作成を依頼する後遺障害診断書です。

後遺障害診断書には、後遺障害に該当する症状が発生していることを医師に記載してもらいましょう。

後遺障害診断書に記載してもらいたい内容については、労働者側から正確に伝える必要があります。なぜなら、医師の仕事は治療を行うことであり、後遺障害認定手続きの専門家ではないため、手続きのすべて把握しているとは限りません。

労働者側が意思をはっきりと示して医師に後遺障害診断書を作成してもらうことが、後遺障害等級認定を受けるためのポイントになります

さらに、後遺障害診断書とは別に医師の意見書を提出してもらうとより説得力が増すでしょう。ほかにも、実際に治療を行ってくれた医師以外が作成した意見書を添えるのも有効です。

後遺障害診断書への記載内容や申請に添付する資料に関しては、後遺障害認定の手続きに詳しい弁護士に確認・相談することをおすすめします。

なお、診断書の作成費用については、労働者が負担しなくてもよい可能性があります。詳しくは『労災申請に必要な診断書の費用は誰が負担する?自己負担の可能性は?』の記事をご覧ください。

審査結果に納得がいかない場合は不服申し立てを

後遺障害に該当する症状が存在しない、後遺障害が存在するものの希望した等級よりも低い等級であると判断された場合は、不服申し立てを行うことが可能です。

具体的には、決定に対する審査の請求や、決定を取り消すという内容の訴訟を行うことになります。

審査の請求について

決定がなされてから3ヶ月以内であれば、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求を行うことができます。

また、審査の決定に納得がいかない場合には、審査の決定に対して再審査するよう労働保険審査会に請求することが可能です。

審査による決定から2ヶ月内に行う必要があります。
審査請求を行ってから3ヶ月が経過しても審査決定がなされない場合は、審査請求を棄却したと扱うことができるので、この場合も再審査請求が可能です。

審査決定の取消訴訟について

決定を取り消すように裁判所へ訴訟を提起することも可能です。
この場合は、一度審査の請求を行い、審査の判断がなされている必要があります。
審査の決定、または、再審査の決定がなされてから6ヶ月以内に訴訟提起を行って下さい。

審査請求を行ってから3ヶ月経過しても審査決定がなされない場合にも訴訟提起が可能です。
しかし、ただ結果に納得がいかないということを主張するだけでは、決定された内容を覆すことは難しいでしょう。

労災保険からの障害補償給付の金額と計算方法

障害補償給付の支給が決まると、同時に「後遺障害等級」が通知されます。
この等級は症状の程度や障害の残った部位に応じて1級から14級まで区分され、認定を受けた後遺障害等級に応じた給付が受けられる仕組みです。

障害補償給付の内容

具体的な給付の内容は以下の通りで、1級から7級までは年金形式で支払われる給付もありますが、8級から14級については一時金として支払われます。

障害補償給付の内容

1級から7級8級から14級
障害補償給付年金障害補償給付一時金
障害特別年金障害特別一時金
障害特別支給金障害特別支給金
障害補償給付年金前払一時金
障害補償給付年金差額一時金
  • 障害補償給付年金、特別年金
    等級が7級以上の場合に、毎年継続して労働者へ支給される年金
  • 障害補償給付一時金、特別一時金
    等級が8級以下の場合に、労働者に支給されるお金
  • 障害特別支給金
    等級に応じて支給されるお金
  • 障害補償給付年金前払一時金
    等級が7級以上の場合に、障害補償給付年金を一括支払いで前払いしてもらえる
  • 障害補償給付年金差額一時金
    等級が7級以上の場合に、労働者が死亡した時点で支払われた障害補償給付年金と障害補償給付年金前払一時金が等級に応じて定められた金額に満たない場合には、不足分を遺族に支払うというもの

基本的に、等級が重ければ重いほど請求できる金額が高額になります。

等級が7級以上の場合には毎年年金がもらえますが、8級以下の場合は一時金のみとなるので、7級以上の等級認定がなされるのかどうかが重要となるでしょう。

なお、労働者がもともと持病や先天性の傷害などの既往症を有している場合には、既往症があった部分の補償は減額となり、労災により悪化した部分のみが請求可能となります。

具体的には、労災保険請求により認定された後遺障害等級で補償される金額から、既往症の症状に該当する後遺障害等級により補償される金額を差し引いた金額になる点には注意しましょう。

後遺障害等級の認定基準や、複数の後遺症がある場合の等級の決まり方について知りたい方は『労災の後遺障害等級|認定基準と障害(補償)給付の金額早見表』をご覧ください。

給付金額の計算方法|1級から7級

給付金額の具体的な計算方法を、給付金の内容ごとに紹介します。

障害補償給付金の計算方法

障害補償給付金は、毎年偶数月に2ヶ月分が支払われます。次の計算式で求められる金額は、1年分の年金額です。

障害補償給付年金の計算方法

等級計算式
第1級給付基礎日額の313日分
第2級給付基礎日額の277日分
第3級給付基礎日額の245日分
第4級給付基礎日額の213日分
第5級給付基礎日額の184日分
第6級給付基礎日額の156日分
第7級給付基礎日額の131日分

給付基礎日額とは、「労働災害が発生した日、または、労災を原因とした疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月間に労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った日額」のことです。賃金にはボーナスや臨時に支払われたお金は含まれません。

例えば、10月1日に労災により怪我を負った労働者が7月、8月、9月にそれぞれ25万円の賃金を得ている場合、給与基礎日額は次のように計算します。

給付基礎日額の計算例

  1. 労災事故発生日の直前3ヶ月分の賃金総額を求める
    25万円+25万円+25万円=75万円
  2. 直前3ヶ月の賃金総額を暦日数で割り算する
    75万円÷92日(31日+31日+30日)=8,153円
    ※1円未満の端数は切り上げ処理

なお、給付基礎日額の金額は毎年の平均給与額の変動に応じて変化します。

これは、労災発生時点の給与額から年金額を決めて続けていると、賃金水準の変化によって過去に被災した労働者と、近年被災した労働者との間で不公平が生じるためです。そのため、障害補償年金の給付金額は1年ごとに変動しうることに注意してください。

障害特別年金の計算方法

障害特別年金は、被災した労働者のボーナスを元に計算します。そのためボーナスを得ていない場合には、障害特別年金の支給はなされません。

障害特別年金の計算方法

等級計算式
第1級算定基礎日額の313日分
第2級算定基礎日額の277日分
第3級算定基礎日額の245日分
第4級算定基礎日額の213日分
第5級算定基礎日額の184日分
第6級算定基礎日額の156日分
第7級算定基礎日額の131日分

算定基礎日額とは、労働災害が発生した日、または、労災を原因とした疾病の発生が確定した日以前の1年間に、労働者が得たボーナスの総額(算定基礎年額)を日額にした(365日で割った)ものです。

例えば、労働者が2月1日に労災により怪我を負い、昨年の12月と6月に50万円のボーナスをもらっていた場合の算定基礎日額は以下のように計算するとわかります。

算定基礎日額の計算例

  1. 前年のボーナスの総額を求める
    50万円+50万円=100万円(算定基礎年額)
  2. 日額にするために365で割り算する
    100万円÷365=2,740円(算定基礎日額)
    ※1円未満の端数は切り上げ処理

ただし、算定基礎年額は一定の金額を超えないように調整されます。一定の金額には次の2通りがあり、最も低い金額を算定基礎年額として採用し、給付基礎日額を求める仕組みです。

  1. 給付基礎日額×365×20%
  2. 150万円

具体例として、先ほど紹介した【給付基礎日額:8,153円】を例に解説します。

  1. 給付基礎日額×365×20%
    8,153円×365日=297万5,845円(給付基礎年額)
    297万5,845円×0.2=59万5,159円(給付基礎年額の20%の金額)
  2. 150万円
    1で求めた59万5,159円のほうが低額なため150万円は計算に採用しない

実際の1年間のボーナスの総額は100万円ですが、算定基礎年額は最も低いものを採用するため、1.で求めた59万5,159円となります。

そのため、算定基礎日額は59万5,159円を元に計算した以下の金額となります。
59万5,159円÷365日=1,631円(1円に満たない分は切り上げ処理)

障害補償給付年金前払一時金の計算方法

障害補償年金前払一時金は、障害補償年金の受給権者が、社会復帰などを目的としてまとまった金銭が必要になる場合を想定して設けられている仕組みです。

そのため一時金が支給された場合は、本来支給されるはずの障害補償年金額の合計額が、支給された金額に達するまでの期間、障害補償給付年金の支給が停止されます。

前払一時金の請求は同一の事由につき一度だけ可能です。1級から7級まで、給付基礎日額を元に計算します。

障害補償給付年金前払一時金の計算方法

等級計算式
1級給付基礎日額の200日、400日、600日、800日、1000日、1200日、または、1340日分
2級給付基礎日額の200日、400日、600日、800日、1000日、または、1190日分
3級給付基礎日額の200日、400日、600日、800日、1000日、または、1050日分
4級給付基礎日額の200日、400日、600日、800日、または、920日分
5級給付基礎日額の200日、400日、600日、または、790日分
6級給付基礎日額の200日、400日、600日、または、670日分
7級給付基礎日額の200日、400日、または、560日分

障害補償給付年金差額一時金

障害補償給付年金差額一時金は、障害補償年金の受給権者が死亡した場合に遺族の請求をもって給付されます。
死亡した労働者に支給された障害補償年金と障害補償年金前払一時金が、障害等級ごとの給付額に満たない場合に認められるものです。

障害補償給付年金差額一時金の計算方法

等級計算式
第1級算定基礎日額の1340日分
第2級算定基礎日額の1190日分
第3級算定基礎日額の1050日分
第4級算定基礎日額の920日分
第5級算定基礎日額の790日分
第6級算定基礎日額の670日分
第7級算定基礎日額の560日分

上記の金額から、実際に支払われた年金や前払一時金を差し引いた金額が支給されます。

障害特別支給金の計算方法

障害特別支給金は、後遺障害等級に応じて次の金額の給付となります。

障害特別支給金の給付額

等級支給金額
1級342万円
2級320万円
3級300万円
4級264万円
5級225万円
6級192万円
7級159万円

給付金額の計算方法|8級から14級

8級から14級までの後遺障害等級認定を受けた方には、障害補償給付一時金、障害特別一時金、障害特別支給金が給付されます。それぞれの給付額の計算方法をみていきましょう。

障害補償給付一時金の計算方法

障害補償給付一時金は、給付基礎日額を元に計算し、1回のみ給付されます。後遺障害等級が重いほど、給付額も高額になる仕組みです。

障害補償給付一時金の計算方法

等級計算式
第8級給付基礎日額の503日分
第9級給付基礎日額の391日分
第10級給付基礎日額の302日分
第11級給付基礎日額の223日分
第12級給付基礎日額の156日分
第13級給付基礎日額の101日分
第14級給付基礎日額の56日分

給付基礎日額は、次のように計算してください。

  1. 労働災害が発生した日、または、労災を原因とした疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月間に労働者に支払われた賃金の総額を求める
  2. 3ヶ月分の賃金総額をその期間の暦日数で割る
    ※1円に満たない分は切り上げる
    ※賃金にはボーナスや臨時に支払われたお金は含まない

障害特別一時金の計算方法

障害特別一時金は、算定基礎日額を元に計算します。算定基礎日額とは、労働者のボーナスを元に計算するため、ボーナスを得ていない場合は給付を受けられません。

障害特別一時金の計算方法

等級計算式
第8級算定基礎日額の503日分
第9級算定基礎日額の391日分
第10級算定基礎日額の302日分
第11級算定基礎日額の223日分
第12級算定基礎日額の156日分
第13級算定基礎日額の101日分
第14級算定基礎日額の56日分

算定基礎日額は次のように計算します。

  1. 労働災害が発生した日、または、労災を原因とした疾病の発生が確定した日以前の1年間に、労働者が得たボーナスの総額を求める
  2. ボーナスの総額を365で割り算して日額とする
    ※1円に満たない分は切り上げる

障害特別支給金の計算方法

障害特別支給金は、後遺障害等級ごとに給付金額が決められています。

障害特別支給金の金額

等級支給金額
第8級65万円
第9級50万円
第10級39万円
第11級29万円
第12級20万円
第13級14万円
第14級8万円

時効期間の経過に注意しよう

障害補償給付は、症状固定となってから5年間が経過すると時効期間が経過したとして請求権が消滅してしまいます。

障害補償給付の請求を行う場合には、症状固定となった後に後遺障害等級の認定を受けるための手続きが必要となってくるため、等級認定の準備や手続きに時間がかかってしまうことがあるのです。
そのため、時効期間が経過していないかどうかについて気を付けながら請求を行って下さい。

労災に関する時効について詳しく知りたい方は『労災申請の時効期限は2年と5年|期限切れ時の対処法と請求手続き』の記事をご覧ください。

障害補償給付以外に請求できる内容

障害補償給付以外にも、労災保険からは次のような給付を受けることが可能です。

  • 療養補償給付
    労災による傷病が生じたため、療養のために必要な費用を給付
  • 休業補償給付
    労災による傷病の療養をするために仕事ができず、賃金を得られないという損害に対する給付
  • 遺族補償給付
    労災により労働者が死亡した場合に、遺族が受け取ることができる一時金や年金
  • 葬祭料給付
    労災により死亡した労働者の葬祭を行うために支給される
  • 傷病補償年金
    労災による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過しても完治せず、傷病の内容が傷病等級に該当する場合に給付される
  • 介護補償給付
    障害年金や傷病年金の受給者であり、症状が重く現に介護を受けている人に対する給付

後遺障害が生じる怪我が発生している状況であれば、療養のための費用や休業による損害も発生しているでしょう。
そのため、療養補償給付や休業補償給付も同時に請求できることがほとんどです。

また、症状が重く身体障害が生じているならば介護補償給付を、怪我が原因で死亡した場合には遺族補償給付や葬祭料給付を受けることが可能になります。

会社や第三者にも請求できるケースがある

後遺障害が発生した労働者は、労災保険からの給付だけにとどまらず、会社や第三者に対しても請求を行うことが可能な場合があります。

会社や第三者に対して請求できる内容の中には、労災保険は給付されないものが含まれることがあるので、誰にどのような請求が可能であるのかを知っておく必要があるでしょう。

特に、後遺障害が発生している場合は、会社や第三者に高額な請求が可能なケースが多いので、検討が必要です。

どのような請求が可能なのか

会社や第三者に対しては、以下のような内容の請求が可能となります。

  • 治療費
    治療のために必要となった費用
  • 入通院交通費
    入院や通院するために発生した交通費
  • 入通院付添費用
    入院中の生活や通院する際に付添が必要な場合に発生する費用
  • 入院雑費
    入院中の生活用品や通信費用などをいう
  • 休業損害
    怪我の治療のために働けないことで生じる損害
  • 逸失利益
    後遺障害が生じたことで労働能力が低下し、将来得られるはずの収入がられなくなったという損害
  • 葬儀費用
    葬儀を行うために必要な費用
  • 慰謝料
    被害者に生じた精神的苦痛を金銭化したもの
  • 物損に関する費用

特に、後遺障害が発生した場合には、後遺障害の症状により生じた精神的苦痛に対して後遺障害慰謝料の請求が可能となります。
等級ごとの後遺障害慰謝料相場額は、以下の通りです。

等級慰謝料相場額
1級2800万円
2級2370万円
3級1990万円
4級1670万円
5級1400万円
6級1180万円
7級1000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

最も低い等級である14級が認定されただけでも、100万円以上の慰謝料を請求することが可能です。
労災保険の給付では、慰謝料の支払いはなされないので、後遺障害が発生した場合には、会社や第三者への請求を検討すべきでしょう。

慰謝料に関して詳しく知りたい方は『労災事故で慰謝料を請求できる?相場額は?仕事中の怪我による精神的苦痛』の記事をご覧ください。

労災保険により給付を受けた部分は請求できない

上記のような請求が会社や第三者に対して可能となりますが、治療費や休業損害などについては労災保険からも給付を受けることができます。

しかし、すでに労災保険からの給付を受けている場合には、給付を受けた分を差し引いた金額しか会社や第三者に請求することはできません。
労災保険による給付と会社や第三者に請求できる内容において同一のものとされているのは以下の通りとなります。

労災保険の給付内容損害賠償請求内容
療養補償給付治療費
葬祭料葬儀費用
休業補償給付
傷病補償年金
休業損害
障害補償給付
遺族補償年金
逸失利益

もっとも、労災保険により給付される給付内容ごとの金額は、基本的に会社や第三者に請求できる金額より低額になることが多いので、すでに労災給付を受けている場合でも会社や第三者に請求を行うべきです。

たとえば、逸失利益は労災による怪我が原因となって、これまでのように働けなくなってしまい、受けとれるはずの収入が減ってしまった損害をさします。逸失利益は高額化しやすい損害賠償請求項目のひとつです。関連記事『労災で失った逸失利益はいくらもらえる?計算方法や相場を紹介』を読めば、逸失利益の算定方法がわかります。

会社に請求できるケース

会社には、従業員の生命、身体に配慮した安全な環境で労働することができるよう労働環境を整えるという安全配慮義務があります。

具体的には、職場において事故が発生しないように設備や安全確認方法を整えたり、従業員同士のセクハラやパワハラが起きないような管理体制を整えるというものです。
そのため、会社の安全配慮義務違反が原因で労災が発生した場合には、会社に対して労災により発生した損害や慰謝料の請求が可能となります。

安全配慮義務違反の認定基準や該当するケースを知りたい方は『安全配慮義務違反で慰謝料を損害賠償請求できるか?会社を訴えられるケース』の記事をご覧ください。

第三者に請求できるケース

通勤や外回りの際中に交通事故にあったり、仕事中にお客さんから暴行を受けた場合など、労災の発生原因が第三者の行為であるケースがあります。
第三者の故意や過失にもとづく行為により労災が発生したのであれば、第三者に対しても請求が可能となるのです。

また、第三者がタクシーの運転中や、工事現場での作業中といった業務行為を行っている最中に労災の原因となる行為を行うことがあります。
このような場合には、第三者の使用者である会社に対しても民法715条にもとづいて請求が可能な場合があるのです。

個人である第三者よりも、会社である使用者の方が金銭を有している可能性が高いので、請求により支払いに応じてくれる可能性が高くなります。
そのため、使用者に請求可能な場合には、使用者への請求を行うべきでしょう。

弁護士に依頼すべきケースを紹介

正確な後遺障害認定を受けたい場合

障害補償給付の請求を行う場合には、後遺症の症状が後遺障害に該当することを証拠により証明する必要があります。

しかし、証明するためには専門的な知識が必要であり、簡単にはいきません。
医師は治療に関しては専門知識を有しているものの、労災の手続きについて詳しいとは限りません。
そのため、必ずしも適切な証拠を用意してくれるわけではないという問題があります。

したがって、後遺障害が発生していることを適切な証拠により証明するのであれば、弁護士のアドバイスを受ける必要があります。

会社や第三者に請求する場合

会社や第三者に請求する場合には、弁護士への依頼をおすすめします。
会社や第三者に対する請求を行っても、請求の相手方は何らかの理由を付けて相場の金額を支払うことを拒否する可能性が高いためです。

後遺障害が生じた場合には、高額な慰謝料や損害金の支払いが必要となるケースが多いため、相手方も簡単には相場額を支払おうとはしないでしょう。
特に、相手方が弁護士に依頼した場合には、労働者側も弁護士に依頼しないと、非常に厳しくなります。

また、弁護士に依頼すれば、会社や第三者との交渉を弁護士にすべて任せることが可能です。
後遺障害が生じるような怪我を負った場合には、長期に渡って治療が必要であり、相手との交渉を自分自身で行っているとストレスになります。
弁護士に依頼すると、弁護士が代わりに交渉を行ってくれるため、ストレスが減り、治療に専念できるというメリットが生じるのです。

アトム法律事務所|相談窓口のご案内

労災の原因しだいでは、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求できるケースがあります。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点