労災の後遺症認定の書類審査・面談の要点!振り込みの時期はいつ? | アトム法律事務所弁護士法人

労災の後遺症認定の書類審査・面談の要点!振り込みの時期はいつ?

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労災の後遺症認定

労災による怪我が完治せず後遺症が残ったときには、労働基準監督署による審査を経て、障害補償給付という補償を受けられる可能性があります。

もっとも審査の結果、一定の水準を満たす後遺症であるとして等級認定されることが必要です。そして、等級認定の審査は原則書類審査と面談審査の両方がおこなわれます。

書類提出後に面談の連絡が入り、面談実施からしばらく後に認定結果とあわせて振り込みがあることが多く、およそ3ヶ月ほどの期間がかかるとされています。

後遺症認定を受ける際の書類・面談のポイントをお伝えします。

労災で後遺症認定を受ける際の要点|書類

労災保険から後遺症が生じたことを原因とした給付を受けるには、後遺障害等級の認定を受けなければなりません。

適切な後遺障害等級の認定を受けるための要素を紹介します。

きちんと通院・検査を続ける

自己判断で通院をやめず、医師の指示に従って症状固定まで通院・検査を受けましょう。

なんとなく治ってきた気がすると自己判断して治療を中断したり、治療に必要だと医師が提案した検査を受けなかったりしてはいけません。

治療がおろそかだったために後遺症が残ったと結論付けられると、労災と後遺症の因果関係がないものとして後遺障害認定を受けられない恐れがあります。

労災事故直後の検査画像や結果も提出

労災事故発生直後のMRIやCTなどの検査結果を含む医学的資料に関して、可能な限り収集して提出することが望ましいです。

労災事故の発生から期間が経過してから検査した場合には、労災事故以外が原因となっている可能性があると判断され、因果関係が認められない危険があります。

画像だけでは証明が難しい場合には、症状の発生を裏付けることのできる検査を行い、検査結果を記載した書類も提出してください。

どのような検査が適切であるのかについては、医師に相談しましょう。

労災で後遺症認定を受ける際の要点|面談

労災で後遺障害の認定を受ける際、面談は重要なステップの一つです。面談では、事故や障害の状況を正確に伝えることが求められるため、以下の3つのポイントに注意することが大切です。

面談では正確かつ具体的に症状を説明する

面談では、自分が抱えている後遺症の具体的な症状や、日常生活でどのように支障が出ているかを詳しく伝えることが重要です。

例えば、痛みやしびれ、動作の制限などについては、頻度や特に困難が生じる場面をはっきりと説明します。具体的なエピソードや日常生活での影響を話すとより正確に伝わります。

医師の診断書をもとに話す

面談で伝える内容は、医師の診断書と一致していることが重要です。診断書には後遺障害の程度や原因などが記載されているため、診断書の記載内容を把握しておき、面談者に納得感をもってもらえる説明を心がけましょう

また、自分の主観的な感覚だけでなく、医学的な根拠を持って説明することが求められます。

面談では無理に状態をよく見せない

面談では、症状を隠したり、無理に「大丈夫」と言ったりしないことが大切です。誇張する必要はありませんが、実際の症状をありのまま伝えることが重要です。

たとえ短時間なら問題なく動けるように見えても、長時間続けると支障が出る場合や、特定の動作ができないことをきちんと説明しましょう。

障害補償給付を申請する流れ・期間・給付内容

労災の障害補償給付を受けるまでの流れ

後遺症が残ってから障害補償給付がなされるまでの具体的な流れは以下の通りです。

後遺症で労災給付を受ける流れ

  1. 医師が症状固定になったと判断
  2. 後遺障害診断書の作成
  3. 障害補償給付の申請
  4. 労働基準監督署による審査・面談
  5. 後遺障害等級の通知・給付の決定

後遺症が残っただけでは障害補償給付を受けられません。後遺症が「後遺障害」として等級認定されることが重要といえます。

後遺障害認定や障害補償給付受け取りまでの流れの詳細は、関連記事『労災の後遺障害とは?障害等級の認定基準と金額早見表、給付の流れ』を参考にしてみてください。

面談を経て振り込みまでの期間

障害等級の認定や審査はおよそ3ヶ月程度かかるとされています。そのため申請から給付までも、3ヶ月前後を要すると考えておきましょう。

もっとも、申請内容次第ではさらに時間がかかる場合もあります。たとえば、精神疾患での労災認定や、非常に重篤な障害等級の認定については長引く可能性があります。

労災保険からもらえる障害補償給付の内容

具体的な給付の内容は以下の通りで、1級から7級までは年金形式で支払われる給付もありますが、8級から14級については一時金として支払われます。

障害補償給付の内容

1級から7級8級から14級
障害補償給付年金障害補償給付一時金
障害特別年金障害特別一時金
障害特別支給金障害特別支給金
障害補償給付年金前払一時金
障害補償給付年金差額一時金

基本的に、等級が重ければ重いほど請求できる金額が高額になります。

等級が7級以上の場合には毎年年金がもらえますが、8級以下の場合は一時金のみとなるので、7級以上の等級認定がなされるのかどうかが重要となるでしょう。

なお、労働者がもともと持病や先天性の傷害などの既往症を有している場合には、既往症があった部分の補償は減額となり、労災により悪化した部分のみが請求可能となります。

具体的には、労災保険請求により認定された後遺障害等級で補償される金額から、既往症の症状に該当する後遺障害等級により補償される金額を差し引いた金額になる点には注意しましょう。

労災で後遺症が残った人が知っておきたい基礎知識

審査結果に納得がいかない場合は不服申し立ても検討

後遺障害に該当する症状が存在しない、後遺障害が存在するものの希望した等級よりも低い等級であると判断された場合は、不服申し立てを行うことが可能です。

具体的には、決定に対する審査の請求や、決定を取り消すという内容の訴訟を行うことになります。

審査の請求について

決定がなされてから3ヶ月以内であれば、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求を行うことができます。

また、審査の決定に納得がいかない場合には、審査の決定に対して再審査するよう労働保険審査会に請求することが可能です。

審査による決定から2ヶ月内に行う必要があります。
審査請求を行ってから3ヶ月が経過しても審査決定がなされない場合は、審査請求を棄却したと扱うことができるので、この場合も再審査請求が可能です。

審査決定の取消訴訟について

決定を取り消すように裁判所へ訴訟を提起することも可能です。
この場合は、一度審査の請求を行い、審査の判断がなされている必要があります。
審査の決定、または、再審査の決定がなされてから6ヶ月以内に訴訟提起を行って下さい。

審査請求を行ってから3ヶ月経過しても審査決定がなされない場合にも訴訟提起が可能です。
しかし、ただ結果に納得がいかないということを主張するだけでは、決定された内容を覆すことは難しいでしょう。

不服申し立てをしたいと考えている方は、よりくわしい流れを説明している関連記事『労災の不支給決定や支給内容に納得できない場合は不服申立てができる』もお役立てください。そのうえで、労災の手続きをサポートしている弁護士への相談も検討していきましょう。

障害補償給付の請求には5年の時効がある

障害補償給付は、症状固定となってから5年間が経過すると時効期間が経過したとして請求権が消滅してしまいます。

障害補償給付の請求を行う場合には、症状固定となった後に後遺障害等級の認定を受けるための手続きが必要となってくるため、等級認定の準備や手続きに時間がかかってしまうことがあるのです。
そのため、時効期間が経過していないかどうかについて気を付けながら請求を行って下さい。

労災に関する時効について詳しく知りたい方は『労災申請の時効期限は2年と5年|期限切れ時の対処法と請求手続き』の記事をご覧ください。

会社や第三者に損害賠償請求できる労災事故がある

後遺障害が発生した労働者は、労災保険からの給付だけにとどまらず、会社や第三者に対しても請求を行うことが可能な場合があります。

会社や第三者に対して請求できる内容の中には、労災保険は給付されないものが含まれることがあるので、誰にどのような請求が可能であるのかを知っておく必要があるでしょう。

特に後遺障害認定を受けた場合は、会社や第三者に高額な請求が可能な場合が多く、検討が必要です。

会社に請求できるケース

会社には、従業員の生命、身体に配慮した安全な環境で労働することができるよう労働環境を整えるという安全配慮義務があります。

具体的には、職場において事故が発生しないように設備や安全確認方法を整えたり、従業員同士のセクハラやパワハラが起きないような管理体制を整えるというものです。
そのため、会社の安全配慮義務違反が原因で労災が発生した場合には、会社に対して労災により発生した損害や慰謝料の請求が可能となります。

安全配慮義務違反の認定基準や該当するケースを知りたい方は『安全配慮義務違反は損害賠償の前提|慰謝料相場と会社を訴える方法』の記事をご覧ください。

第三者に請求できるケース

通勤や外回りの際中に交通事故にあったり、仕事中にお客さんから暴行を受けた場合など、労災の発生原因が第三者の行為であるケースがあります。
第三者の故意や過失にもとづく行為により労災が発生したのであれば、第三者に対しても請求が可能となるのです。

また、第三者がタクシーの運転中や、工事現場での作業中といった業務行為を行っている最中に労災の原因となる行為を行うことがあります。
このような場合には、第三者の使用者である会社に対しても民法715条にもとづいて請求が可能な場合があるのです。

個人である第三者よりも、会社である使用者の方が金銭を有している可能性が高いので、請求により支払いに応じてくれる可能性が高くなります。

そのため、使用者に請求可能な場合には、使用者への請求を行うべきでしょう。

労災事故の慰謝料は損害賠償請求しないと得られない

労災で残った後遺障害が「後遺障害」と認定された場合には、後遺障害の症状により生じた精神的苦痛に対して後遺障害慰謝料の請求が可能となります。

後遺障害慰謝料相場額は110万円から2,800万円と幅広く、後遺障害等級認定ごとに相場がおおよそ決められているのです。

後遺障害慰謝料の相場(等級ごと)

等級後遺障害慰謝料の相場
1級2,800万円
2級2,370万円
3級1,990万円
4級1,670万円
5級1,400万円
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

最も低い等級である14級が認定されただけでも、100万円以上の慰謝料を請求することが可能です。

労災保険から受け取る後遺障害への給付(傷害補償給付)には、慰謝料は含まれていません。労災事故で慰謝料を受け取りたい場合は、会社や第三者への請求を検討すべきでしょう。

ケガの治療期間に対する慰謝料

以下の関連記事では、後遺障害慰謝料のほかに「入通院慰謝料」の計算方法や相場も紹介しています。入通院慰謝料とは治療期間に味わった精神的苦痛への慰謝料で、治療費(療養補償給付)とは異なるものです。つまり、労災保険からは受給できない補償金といえます。

労災事故の慰謝料相場や計算方法について知っておくと、会社や第三者への請求の目安になるので、関連記事もお役立てください。

逸失利益にも注意しよう

後遺障害等級認定を受けた場合、後遺障害逸失利益も請求できます。逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下してしまい、本来得られたはずの収入が将来にわたって減収したことへの賠償です。

逸失利益とは何か

労災保険の障害補償給付だけでは適正額でないとき、逸失利益についても損害賠償請求できる可能性があります。

逸失利益の計算式については関連記事『労災で請求できる逸失利益はいくら?計算方法や損益相殺を解説』でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。

労災保険により給付を受けた部分は請求できない

後遺症が残ったというような段階では、治療費や休業損害などについては労災保険からも給付を受けていることが多いでしょう。

すでに労災保険からの給付を受けている場合には、給付を受けた分を差し引いた金額を会社や第三者に請求する流れです。

労災保険による給付と会社や第三者に請求できる内容において同一のものとされているのは以下の通りとなります。

労災保険の給付内容損害賠償請求内容
療養補償給付治療費
葬祭料葬儀費用
休業補償給付
傷病補償年金
休業損害
障害補償給付
遺族補償年金
逸失利益

もっとも、労災保険により給付される給付内容ごとの金額は、基本的に会社や第三者に請求できる金額より低額になることが多いので、すでに労災給付を受けている場合でも会社や第三者に請求を行うべきです。

関連記事では労災事故において受給できる労災保険と、民事上の損害賠償請求での金額の調整方法もわかりやすく解説しています。

いったいどれくらいの損害賠償請求額が想定されているのか、二重取りにならないような調整の流れを知りたい方は関連記事『労災の損害賠償算定と請求方法!労災と民事損害賠償は調整される』をお役立てください。

労災に関する後遺症の相談は弁護士へ

適切な後遺障害認定を受けたい場合

障害補償給付の請求を行う場合には、後遺症の症状が後遺障害に該当することを証拠により証明する必要があります。

しかし、証明するためには専門的な知識が必要であり、簡単にはいきません。
医師は治療に関しては専門知識を有しているものの、労災の手続きについて詳しいとは限りません。
そのため、必ずしも適切な証拠を用意してくれるわけではないという問題があります。

したがって、後遺障害が発生していることを適切な証拠により証明するのであれば、弁護士のアドバイスを受ける必要があります。

会社や第三者に請求する場合

会社や第三者に請求する場合には、弁護士への依頼をおすすめします。

なぜなら、会社や第三者に対する請求を行っても、請求の相手方は何らかの理由を付けて相場の金額を支払うことを拒否する可能性が高いためです。

後遺障害が生じた場合には、高額な慰謝料や損害金の支払いが必要となるケースが多いため、相手方も簡単には相場額を支払おうとはしないでしょう。

特に、相手方が弁護士に依頼した場合には、労働者側も弁護士に依頼しないと非常に厳しくなります。

弁護士に依頼すれば、会社や第三者との交渉を弁護士にすべて任せることが可能です。

相手との交渉を自分自身で行っているとストレスになります。弁護士は代わりに示談交渉や訴訟対応できるので、労働者側の精神的負担の軽減につながるのです。

労災事故においては、まず会社や第三者との示談交渉から解決を図ることが多くなります。訴訟と比べて費用が安価で、早く解決できる可能性があるからです。

関連記事『労災事故の示談交渉を進める流れとコツ|示談交渉すべき労災とは?』では、労災事故での示談交渉の概要を解説しています。示談交渉での解決に関心がある方は、あわせてお読みください。

アトム法律事務所|相談窓口のご案内

労災の原因しだいでは、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求できるケースがあります。

労災事故により重篤な後遺障害が残り、会社への損害賠償請求を考えている場合は、アトム法律事務所の無料法律相談をご活用ください。

法律相談の予約は24時間受付中で、電話だけでなくLINEでも予約を受け付けています。弁護士への依頼を考えている方は、一度気軽にご連絡ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了