過労死の相談先はどこ?公的機関や弁護士など相談窓口と相談先の選び方
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大切な家族が仕事により過労死してしまったのではないかと疑いを持っておられる方は、その相談先に悩まれることでしょう。
この記事では公的機関から弁護士まで、過労死の相談先を複数紹介しています。
相談内容に応じた適切な窓口を活用することで、お悩みやご不安の解消につながる可能性があります。本記事を相談先の検討にお役立てください。
本記事はアトム法律事務所以外の相談窓口の情報も掲載しております。
各相談窓口の利用規約や相談対応範囲をご確認のうえ、おかけ間違えのないようにご注意ください。
目次
過労死問題の相談先
過労死問題の相談窓先の一例を紹介します。
相談窓口ごとに対応可能な範囲が異なりますので、詳細は各相談窓口のホームページや受付時にたずねるようにしてください。
労働基準監督署
労働基準監督署は、全国にある相談窓口で、労働時間や賃金、解雇をはじめとした労働条件全般に関する労働者からの相談を受け付けています。
また労災が発生した際にはその申請を受け、労災に当たるかどうかの審査をおこなう機関でもあります。
よって、過労死が労災にあたるのではないかと感じている場合、会社が非協力的であるといった場合には労働基準監督署への相談も検討すべきでしょう。
ただし労働基準監督署は、労災認定をする機関であっても、過労死問題の損害賠償請求をしてくれる機関ではありません。
お近くの労働基準監督署で相談可能です。場所によって受付時間が異なる可能性がありますので、くわしくは相談したい労働基準監督署の情報に従ってください。
たとえばこんな相談
- 遺族として家族の過労死の労災申請をしたい
- 労災申請の手続きを教えてほしい
- 労災保険の給付内容を知りたい
都道府県労働局
都道府県労働局は、企業と労働者間の労働トラブルに対する助言・指導や話し合いの仲介(あっせん)をしてくれます。
たとえば企業側に賠償義務はあるのかなど、トラブルを解決するための手助けを受けられるのです。
しかし労働者の主張を一方的に支援してくれるというわけではないことや、解決に強制力があるわけではないことから、必ずしもトラブル解決につながるとは限りません。
また、労働基準監督署に申請したにもかかわらず労災認定されなかった場合の不服申し立て先でもあります。不服申し立てが認められれば労災認定を受けられます。
場所によって受付時間が異なる可能性がありますので、くわしくは相談したい労働局の情報に従ってください。
たとえばこんな相談
- 労災認定の結果に不服を申し立てたい
- 会社側との労働トラブルの仲介をしてほしい
過労死等防止対策推進全国センター
過労死等防止対策推進全国センターは、過労死を防ぐためにさまざまな啓発活動や相談業務を行う団体です。
相談は無料で受け付けていますが、得られるアドバイスは原則として最小限のものであり、解決が保証されているわけではありません。
たとえばこんな相談
- 過労死問題についての助言を受けたい
弁護士(法律事務所)
過労死問題について法的対処を取りたい、家族の過労死の賠償請求をしたいと考えている場合には、弁護士に相談・依頼することで代理人として活動してもらうことが可能です。
ただし弁護士によって対応可能な範囲は様々ですので、相談時に確認してみることをおすすめします。
たとえばこんな相談
- 過労死で労災認定を受けるサポートをしてほしい
- 勤め先の会社にどんな法的対応をとれるか知りたい
- 過労死をめぐる会社との示談金交渉を任せたい
インターネットで弁護士を探す
過労死問題について弁護士に相談したいと考えているなら、インターネット検索で法律事務所を探す方法があります。
インターネット検索で「過労死 弁護士」「過労死 法律事務所」などの検索ワードを利用すると、過労死問題を扱う弁護士が見つかりやすいでしょう。
法律事務所のホームページには、ほとんどの場合で弁護士のプロフィールや解決実績は掲載されています。あるいは過労死に関するコラムを掲載する法律事務所も多いです。
弁護士といっても主たる領域は変わりますので、労災・過労死・損害賠償請求などの解決に注力しているかどうかに注目してみましょう。
過労死110番全国ネットワーク
過労死110番全国ネットワークは、弁護士が結成した過労死弁護団全国連絡協議会を中心に活動する団体で、年に一回の一斉電話相談をはじめ、過労死の問題に取り組んでいます。
全国各地の弁護士や協力団体が相談を受け付けているため、現に長時間労働で悩んでいる人にとっては心強い相談先の一つといえるでしょう。
法律相談会を活用する
市区町村では、定期的に法律相談会を開催していることが多いです。あるいは弁護士会においても、法律相談会をおこない、無料で弁護士に相談できる機会が設けられています。
注意点としては、比較的短い時間しか割り当てがないので、相談内容や資料を事前に準備しておくことが重要です。
また、過労死問題にくわしい弁護士など相談したい弁護士を選べるケースはあまりありません。その点には注意しておくことをおすすめします。
弁護士会の弁護士紹介制度を活用する
各都道府県にある弁護士では、弁護士紹介制度をもつケースがあります。
たとえば東京弁護士会では、相談したい分野をある程度選んで弁護士紹介制度を申し込むことが可能です。
タイミングによっては相談できる分野は限られることもありますが、労働問題や損害賠償請求にくわしい弁護士に相談できる可能性があります。
過労死の相談前に知っておきたい「労災」と「過労死」の関係
過労死について相談する前に知っておきたい「労災」と「過労死」の関係について整理しておきましょう。
過労死は労災認定を受けられる可能性がある
死亡の原因次第では、労災認定を受けられる可能性があります。具体的には、脳や心臓の疾患あるいは精神障害による自殺といったケースです。
もっとも死亡した事案の全てが労災認定を受けられるのではなく、一定の基準・要件を満たす場合に限られます。
例えば、次のようなケースでは過労死が労災基準を満たす可能性があるでしょう。
- 死亡の数か月前から100時間を超える残業が当たり前になっていた
- 死亡前の数か月において深夜勤務や出張勤務を強いられていた
- 長時間労働が横行していて、職場内のいじめや嫌がらせもひどいものだった
過労死による労災認定は、長時間勤務の程度や精神的ストレスの強度など、様々な要素を考慮して総合的に判断されるものです。
過労死の労災認定がお済みでない方は、関連記事『過労死の労災認定基準と遺族がすべきこと|どうすれば労災認定される?』もあわせてお読みください。
過労死の損害賠償請求はできるケースとできないケースがある
過労死が労災であると認定されたとしても、会社に損害賠償請求できるわけではありません。具体的に言えば、会社に安全配慮義務違反があるときに、慰謝料などの損害賠償請求が認められるのです。
例えば、次のようなケースでは会社の安全配慮義務違反が疑わしいといえるでしょう。
- 従業員の安全を無視したマニュアルで作業させられた
- 危険性の高い業務と認識しながら経験の浅い新人ひとりに任せきりにした
- 職場のハラスメントを知りながら会社として適切に対応を取らなかった
こうした安全配慮義務違反の有無について慎重に検討をおこない、会社との示談交渉(話し合い)にて解決を図ることが一般的です。
会社側が過失を認めないときや不当に低い示談金しか提示してこないときには裁判に発展することも考えられます。
なお、会社側の過失を問えないときには、過労死における損害賠償請求はできません。たとえ労災認定を受けていても、それは会社の責任を認めたことにはならないのです。
過労死の相談窓口は「何をしたいか」で選ぶのがおすすめ
過労死の相談窓口は多数ありますが、相談内容に応じた適切な窓口を選ぶことで、悩みごとが解決に近づく可能性が高まります。
労災申請したいなら会社や労基署にまずは相談
過労死について労災申請をしたいなら、まずは会社に相談してみましょう。
労働災害は被災者やその家族に多大な影響を及ぼすものなので、会社で労災申請の対応をしてくれることが多いです。そのためまずは会社に労災申請状況を尋ねてみましょう。
もし会社側の協力が得られない、労災申請してもらえないといった場合は、労働基準監督署へ相談して助言をもらってみてください。
労災認定を受けられれば、受給資格者に対して遺族補償年金や葬祭給付などの一定額の補償が給付されます。
会社への損害賠償請求なら弁護士に相談
弁護士は会社に対する損害賠償請求の可否や慰謝料の見積もりなど、具体的な法的対処を取るための相談を受け付けています。
労災保険の給付額は一定で決まっていますが、会社に対する賠償請求額は交渉次第で増減するものです。
また、死亡という深刻な結果においては賠償請求額が高額になることから、会社側もすんなり請求額を受け入れるとは限りません。
交渉が長引いたり、「労働者にも落ち度はあった」などと遺族にとってつらい言葉をかけられることも想定されるでしょう。
弁護士であれば遺族の代理人となって交渉の場に立ち、不当な金額で終わらないよう粘り強く交渉を続けます。
交渉での解決が難しい場合には訴訟になることも考えられますが、弁護士であれば遺族の代わりに出廷できるので、遺族側の負担を大きく減らすことにもなるのです。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
関連記事『労災による過労死問題を弁護士に相談・依頼するメリット』では、労災過労死の問題を弁護士に相談するメリットを解説しています。弁護士に相談することを悩んでいる方は、一度参考にご覧ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了