安全配慮義務違反で慰謝料を損害賠償請求できるか?会社を訴えられるケース | 事故慰謝料解決ナビ

安全配慮義務違反で慰謝料を損害賠償請求できるか?会社を訴えられるケース

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安全配慮義務違反|慰謝料を損害賠償請求できる?

労災認定は受けたけれど、なんだか納得がいかない…

ご自身のケアレスミスや偶発的に労災事故が起こったのではなく、会社にも何らかの責任があると感じていませんか。

会社に安全配慮義務違反が認められる場合、慰謝料をはじめとした損害についての損害賠償請求が可能です。

労災事故にあうと労災保険から一定の補償が受けられますが、すべての損害をカバーしてくれるものではありません。とくに、安全配慮義務違反があった事故の場合は労災保険の補償だけでは不十分なので、労働者が自ら会社に交渉するなどして損害賠償請求する必要があります。

労災保険給付で足りない部分の交渉は、労働基準監督署が主導してくれるものではありません。

本記事では、どういったときに労災事故の原因が会社の安全配慮義務違反にあたると判断できるのかや、損害賠償請求の根拠慰謝料の請求可否などについてみていきましょう。

安全配慮義務違反と損害賠償の関係

労災事故が発生した原因に会社の安全配慮義務違反がある場合、従業員は損害賠償の請求が可能です。

ここでは、安全配慮義務違反とはどういう状態をいうのかといった基本的なことから、損害賠償請求の根拠となる考え方について解説していきます。

安全配慮義務違反とはどんなものか

安全配慮義務とは、会社が従業員の健康や安全面を考慮して危険にさらされないように配慮する義務です。

安全配慮義務は労働契約法という法律で規定されています。条文を確認してみましょう。

(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働契約法第五条

つまり、安全配慮義務違反とは、労働契約法第5条に違反することをいうのです。

安全配慮義務違反の有無は、後ほど解説する慰謝料請求の可否を左右するものなので、必ずおさえておきましょう。

安全配慮義務違反は損害賠償請求の前提

労災事故の場合、まずは労災認定を受けることで一定の補償を受けられます。しかし、労災事故の発生原因が会社の安全配慮義務違反にあるとき、会社に対しても損害賠償請求を検討すべきです。

安全配慮義務違反による損害賠償請求では、民法上の債務不履行責任や不法行為責任を主張し、会社に対して損害を訴えることになるでしょう。

債務不履行責任と不法行為責任は次のようなもので、会社は労災被害者に対して賠償義務を負います。

債務不履行責任と不法行為責任

法的根拠概要
債務不履行責任契約内容を果たさなかった場合に損害賠償義務を負う
不法行為責任他者の権利を違法に侵害した場合に損害賠償義務を負う

損害賠償請求の法的根拠については、いち労働者だけでは判断がむずかしい場合もあります。
どんな法的根拠に照らして損害賠償を請求するかは、法律の専門家である弁護士に相談するほうがスムーズに進むでしょう。

安全配慮義務違反を判断する2つの基準

安全配慮義務違反が存在するかどうかについては、予見可能性と結果回避可能性という2点が問題になります。

  1. 予見可能性
    被害が生じ得る危険が発生する可能性を予見できたのか
  2. 結果回避可能性
    予見できた被害を回避することが可能であったのか

予見可能性と結果回避可能性がありながら、予見できる被害という結果を回避するために必要な措置を講じることを怠っていた場合には、安全配慮義務違反が認められるのです。

そのため、上記の2点の存否が安全配慮義務違反を判断する際の重要なポイントとなります。

安全配慮義務違反で訴えるときの時効

安全配慮義務違反にもとづいて法的責任を問う場合の時効について、債務不履行責任と不法行為責任にわけて解説します。

なお、時効の起算日は損害によって異なります。たとえば後遺障害が残ったときと、怪我が完治した場合では時効の起算日が変わるので、より詳しく時効の起算日を知りたい方は弁護士に問い合わせるようにしてください。

債務不履行責任にもとづく損害賠償請求の時効

債務不履行責任を根拠とした損害賠償請求の時効は、権利を行使することができることを知った時から5年間または権利を行使することができる時から20年間です。

ただし、2020年3月31日以前に発生した場合は、権利を行使することができる時から10年間になります。

不法行為にもとづく損害賠償請求の時効

不法行為責任を根拠とした損害賠償請求の時効は、損害および加害者を知ったときから5年間または不法行為が行われたときから20年間です。

ただし、2020年3月31日以前に発生した場合には、 損害および加害者を知ったときから3年間または不法行為が行われたときから20年間になります。

安全配慮義務違反で慰謝料は請求できる

会社に安全配慮義務違反があるとき、債務不履行責任や不法行為を法的根拠とした慰謝料の請求が可能です。
労災保険から慰謝料は支払われないため、会社に対して適切に損害賠償請求する必要があります。

会社に請求できる慰謝料の概要ならびに損害賠償請求の方法を解説します。

請求できる慰謝料にはどんな種類がある?

労災事故について、会社に対して請求できる主な慰謝料には入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。

入通院慰謝料は、怪我で入院や通院をした場合に認められるものです。
後遺障害慰謝料は、怪我が完治せずに後遺障害として残った場合に請求できる慰謝料になります。
死亡慰謝料は、労災事故で亡くなったご本人ならびに近親者に支払われる慰謝料です。

慰謝料の種類まとめ

慰謝料の種類支払い要件
入通院慰謝料労災の怪我で入院・通院
後遺障害慰謝料労災で後遺障害が残存
死亡慰謝料労災による死亡

各慰謝料にはおおよその計算方法と相場があります。
たとえば、入通院慰謝料は主に治療期間と怪我の程度、後遺障害慰謝料は主に障害部位や障害の程度を考慮して算定されます。

もっと詳しく慰謝料の計算方法や相場を知りたい方は、関連記事もお役立てください。

慰謝料以外に損害賠償請求できるものは?

労災事故で会社に損害賠償請求できるものは、労災保険の給付と重複しないものに限られます。
そのため、損害賠償金と労災保険の給付金は調整がなされる仕組みです。

このほかには、逸失利益という損害も請求できる可能性があります。

逸失利益とは、 将来得られるはずだった収入を失った場合の損害をさし、後遺障害が残ったときや死亡事故の場合に認められるものです。

逸失利益の計算方法はやや複雑ですが、金額は高額になるケースもあるので、きちんと算定して請求しましょう。

どうやって損害賠償請求する?

ほとんどのケースで、まずは示談交渉からスタートします。
示談交渉とは、話し合いでお互いに納得できる内容を決め、その内容をもって争いをやめることです。お互いが納得できる内容に至れば、その時点で終了できるため、比較的早い解決が期待できます。

一方で、お互いにある程度の譲歩が必要になり、譲歩できないときは示談交渉は進みません。示談での解決がむずかしい場合は、裁判所やADRなどの第三者機関にも介入してもらって話し合う調停や、民事裁判を起こすことも選択肢になってきます。

損害賠償請求の方法

  • 示談交渉
  • 調停
  • 民事裁判

関連記事『労災事故の示談交渉|示談の方法と解決までの流れ』を読めば、示談交渉の流れや重要性がさらに詳しくわかるでしょう。

安全配慮義務違反による損害賠償請求の可能性を検証

どんなときに会社の安全配慮義務違反を問えるのかを具体的に検討してみましょう。
なお、これから紹介するケース以外でも安全配慮義務違反にあたる場合もあります。
「安全配慮義務違反が疑わしい労災事故」については、弁護士に問い合わせてみることをおすすめします。

安全の軽視による事故

職場や設備の安全性の低さは、安全配慮義務違反にあたる可能性があります。

たとえば、高所での作業なら、作業場に安全柵が適切に設置されていなかったり、命綱でもあるベルトの着用を徹底しないといった安全教育の不備などがあげられるでしょう。

運送業のように車両をあつかう仕事であれば、トラックや社用車の定期点検を怠ることも安全の軽視といえます。

判例|広島地方裁判所福山支部 平成30年2月22日判決

労働者の安全や健康を軽んじた労災事故の一例として、「サニックス事件」の判例を紹介します。

この事件は、24キロの歩行を伴う新人研修で、男性が股関節を負傷してしまいました。途中で訓練を中断せず病院への受診も認めなかった会社に対し、裁判所は安全配慮義務違反を認めています。(広島地方裁判所福山支部 平成28年(ワ)第18号 損害賠償請求事件 平成30年2月22日)

再発防止が徹底されなかった事故

安全配慮義務違反の判断基準として、その事故は予見できたのか、そして適切に対応すれば事故を避けることはできたのかというものがあります。

たとえば、工場で何度も負傷者が出ている工程で労災が起きた場合を考えてみましょう。前例があったなら、会社は予測できたはずですし、過去の事例を踏まえた対策を取っていれば事故を回避できたともいえるでしょう。

適切な再発防止がなされなかったことで同様の労災事故が起こったときには、会社に安全配慮義務違反を問える可能性があります。

長時間労働などによる過労死

長時間労働による過労死を理由に、安全配慮義務違反を主張できる場合もあります。

働き方改革の導入等、何の対策も取らずに従業員に漫然と残業を強いていたのなら、安全配慮義務違反と取られても仕方ありません。

安全配慮義務違反が認められるかどうかの基準として、過労死が労災認定される判断基準が参考となります。
労災認定がなされる程度の労働時間であったのなら、過労死が生じる予見可能性があったといえるでしょう。

そして、過労死を防止するために作業環境を整備することが十分可能(結果回避可能性)にもかかわらず、それを怠ったのであれば、安全配慮義務違反があるといえるのです。

過労死に関する安全配慮義務違反が問題となった事例といえば、2014年に起きた電通の新入社員自殺事件が有名です。この新入社員の方は月の残業時間が150時間近くに及んだこともありました。

この会社では以前にも同様の過労自殺が発生しており、業務と自殺に因果関係があるとはじめて裁判所が認めた事例でもあります。

判例|最高裁判所第2小法廷 平成12年3月24日判決

長時間にわたる残業を1年余り継続した後、うつ病をり患して労働者が自殺した事例の判例です。

この判例では、労働者がうつ病によって自殺したことと、長時間労働には一連の連鎖があったと裁判所は認めています。さらに、当時の上司は労働者の長時間労働を認識し、健康状態が悪化していることに気づきながら、業務改善措置を行わなかったとして安全配慮義務違反があったとも認定しています。(最高裁判所第2小法廷 平成10年(オ)第217号、平成10年(オ)第218号 損害賠償請求事件 平成12年3月24日)

過労死が労災に該当するかどうかの判断基準や慰謝料の相場については関連記事をお読みください。

うつや適応障害などの精神疾患

長時間労働や会社内におけるいじめやセクハラなどが原因で、労働者がうつ病や統合失調症などの精神疾患を発症してしまうことがあります。
このようなケースも、会社の安全配慮義務違反が原因であるならば損害賠償請求が可能です。

安全配慮義務違反があったかどうかについての判断は、精神疾患が労災に該当するかどうかの認定基準が参考となるでしょう。
また、労働安全衛生法において、一定の規模の会社ではストレスチェックを行うことが義務化されています。法律に沿った適切なメンタルヘルス対策を行っているのかどうかも重要な判断基準となるでしょう。

ただし、会社側へ損害賠償請求を行うには、安全配慮義務違反が原因で、精神疾患が生じたことを証明する必要があります。業務ではなく私生活により生じた出来事が原因といえる場合には、因果関係が認められません。

参考となる精神疾患の労災認定基準について詳しく知りたい方は『精神疾患の労災認定基準|うつ病や適応障害も労災?認定されないときの対処法』の記事をご覧ください。

パワーハラスメント

パワーハラスメント、いわゆるパワハラとは「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と厚生労働省で定義されています。

上司から執拗な嫌がらせを受けたり、仕事を与えられなくなったことによるストレスが原因でうつ病になってしまった場合などで問題となります。

パワハラによる被害が企業側の安全配慮義務違反に該当するといえるには、パワハラが起きる可能性を認識できる状況であったか(予見可能性)、パワハラの事実を認識しており注意や指導等の改善策を行ったのかなどが問われます(結果回避可能性)。

もしパワハラが起きること、またはパワハラがあることを分かった上で何の対策も施していなければ、安全配慮義務違反を問える可能性が高いです。裁判では労働契約の債務不履行を主張し、損害賠償を請求することになるかと思われます。

ちなみにパワハラの場合、安全配慮義務違反の他にも、民法715条の使用者責任を追及できる場合もあります。雇い主は従業員の活動により利益を上げている以上、従業員の活動による損失の責任も負うべき(報償責任)だと言えるからです。

健康への配慮不足も安全配慮義務違反にあたる可能性あり

労働者が健康で働けるように配慮することも、会社に求められる義務のひとつです。
ここからは安全配慮義務違反にあたる可能性がある事例を紹介します。

新型コロナ対策の不徹底

直近で大きな問題となっているのが、新型コロナ対策に関する安全配慮義務違反です。

社内という一定の空間内に、複数の人が長時間にわたり仕事を行っている以上、感染のリスクについて予見可能性があるといえます。

そして、従業員に対して、基本的な感染予防策を実施しなかった場合、対策を講じていれば感染を防げたとして(結果回避可能性)、安全配慮義務違反に問える可能性も考えられます。

例えば、テレワークへの移行措置を何ら取らずに社員が感染してしまったら、損害賠償を請求できる可能性もあるでしょう。
他にも感染者の発見後必要な対策を怠り感染を拡大させたり、陽性者に対して差別的な発言やパワハラがあったケースでも安全配慮義務違反と認定される可能性もあります。

新型コロナウイルス関連の安全配慮義務違反に関してはまだ裁判例がたまっていませんが、新型インフルエンザ等対策特別法には「事業者は新型インフルエンザ等の予防に努めるとともに、新型インフルエンザ等の対策に協力するよう努めなければならない」とあります。
この条文に則れば、新型コロナ対策の不徹底を理由に企業の安全配慮義務違反を問うことは可能だと考えられます。

健康診断の義務を怠った

労働安全衛生法では、会社は従業員に対して健康診断を実施する義務があると規定しています。健康診断を受けさせるだけでなく、医師が労働者の健康への配慮が必要と意見を述べたのであれば、業務の変更や残業の抑制といった措置を実施しなくてはいけません。

そのため、会社には健康診断を受けさせないことで従業員の健康を害する結果が生じる恐れがあることについて予見可能性があるといえるでしょう。

また、会社が法律にもとづいた健康管理体制を適切に提供していなかったのであれば、本来回避できる健康被害を回避できなかった(結果回避可能性)として、安全配慮義務が認められる可能性があります。

安全配慮義務違反かも?どこに相談すればいい?

安全配慮義務違反で会社を訴えたいと感じたとしても、一人で行動を起こすのはおすすめできません。

法律の問題は法律の専門家である弁護士に相談することで、より良い結果に近づく可能性があります。

弁護士相談で安全配慮義務違反に問えるのかを検討しよう

労災の相談先というと、労働基準監督署を思い起こす人は多いでしょう。実際、労災認定の手続きについて教えてくれたり、労災認定をするのは労働基準監督署です。

しかし、労働基準監督署は労働法関連の違反があったかを管理監督する立場にとどまり、損害賠償請求についてはノータッチです。

損害賠償請求には法的知識が欠かせないため、自力で行うことは困難といえます。そこで相談相手として検討すべきなのが弁護士です。

弁護士であれば、個別の話を聞いたうえで、会社の安全配慮義務違反に問えるのかを検討できます。正式に契約を結んだ場合は示談交渉から裁判まで代理人となれるので、損害賠償請求における心強い味方になるのです。

会社の安全配慮義務違反を原因とする労災事故によってご家族を亡くされたり、重い後遺障害が残ってしまったと感じている方は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点