労災による死亡事故で遺族が行うべき労災保険の申請方法と損害賠償請求を解説 | 事故慰謝料解決ナビ

労災による死亡事故で遺族が行うべき労災保険の申請方法と損害賠償請求を解説

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労災死亡事故|遺族が行う手続き

労災事故により死亡という結果が生じてしまった場合、残された遺族はどのような補償を受けることができるのでしょうか。

残された遺族は労災保険から補償を受けることができるほかにも、会社に対して損害賠償請求することも考えられます。

本記事では、労災事故で家族を亡くされた遺族がどのような手続きを行うべきか、労災保険からもらえる遺族補償の金額や損害賠償の請求方法などについて解説します。

労災保険の申請方法と給付内容

まずは、労災保険の申請方法から解説します。

労災保険制度とは、労災法に基づき業務災害や通勤災害による死亡等に対して補償を行う制度のことです。労災保険を利用することによって、一定額の補償を受けることができます。

労災保険の申請方法

労災事故で労働者が死亡した場合、労災保険の請求人は遺族となります。被害者の勤務先を管轄する労基署宛に、遺族が労災請求用紙並びに添付書類を提出することで請求できます。

労災請求用紙は、厚生労働省のホームページ「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」からも印刷することができますので参考にしてください。

労災で死亡した場合の給付一覧

労働者が労災事故で死亡した場合、遺族としては以下の内容の補償を労災保険から受けることができます。

  • 療養(補償)給付:傷病の治療費
  • 休業(補償)給付:休業療養中の生活保障
  • 障害(補償)給付:後遺障害に対する給付
  • 遺族(補償)給付:遺族に対する給付
  • 葬祭料(葬祭給付):死亡被災労働者の葬儀に対する給付
  • 介護(補償)給付:重篤な傷病によって受ける介護に対する給付

死亡事故で支払われる主な労災給付の金額

ここからは、死亡事故で支払われる主な労災給付である遺族(補償)給付と葬祭料(葬祭給付)などの金額について詳しくみていきます。(業務災害の場合は「遺族補償給付」と「葬祭料」、通勤災害の場合は「遺族給付」と「葬祭給付」のように名称が分かれていますが、補償の目的は同じです。)

労災給付の金額を解説するにあたって、「給付基礎日額」と「算定基礎日額」を事前におさえておく必要があります。

金額算定に必要な事前知識

  • 給付基礎日額:事故前3ヶ月間の賃金総支給額を日割りしたもの
  • 算定基礎日額:事故前1年間の特別給与を365日で割ったもの

給付基礎日額と算定基礎日額についておさえられたので、それでは給付の金額についてみてきましょう。

遺族(補償)給付に関しては、遺族(補償)年金遺族(補償)一時金の2種類があるので、それぞれ分けて解説していきます。

(1)遺族(補償)年金の金額

遺族補償のうち、遺族(補償)年金・遺族特別支給金・遺族特別年金の金額をみていきます。

遺族(補償)年金

遺族(補償)年金は、受給資格のある遺族数に応じて金額が変わります。

遺族数金額
1人給付基礎日額の153日分※
2人給付基礎日額の201日分
3人給付基礎日額の223日分
4人以上給付基礎日額の245日分

※ 遺族が55歳以上の妻または一定の障害のある妻の場合は、給付基礎日額の175日分

遺族(補償)年金は名の通り「年金」なので、上記の金額が毎年支給されます。

遺族特別支給金

遺族の数にかかわらず、遺族特別支給金は一律300万円が支給されます。こちらは、一回限りの支給です。

遺族特別年金

遺族特別年金も、受給資格のある遺族数に応じて金額が変わります。

遺族数金額
1人算定基礎日額の153日分※
2人算定基礎日額の201日分
3人算定基礎日額の223日分
4人以上算定基礎日額の245日分

※ 遺族が55歳以上の妻または一定の障害のある妻の場合は、算定基礎日額の175日分

遺族特別年金も名の通り「年金」なので、上記の金額が毎年支給されます。

遺族(補償)年金の補足

遺族(補償)年金は、1回に限って前払いで給付を受けとることができます。前払いで年金を受け取る場合、「遺族(補償)年金前払一時金」といいます。
前払一時金の金額は、以下から選ぶことができます。

  • 給付基礎日額200日分
  • 給付基礎日額400日分
  • 給付基礎日額600日分
  • 給付基礎日額800日分
  • 給付基礎日額1000日分

前払一時金を受けとったら、受け取った金額に達するまで年金の支給は停止されます。

(2)遺族(補償)一時金の金額

遺族補償のうち、遺族(補償)一時金・遺族特別支給金・遺族特別一時金の金額をみていきます。

遺族(補償)一時金

遺族(補償)一時金は、給付基礎日額の1000日分が支給されます。

もっとも、他の遺族が遺族(補償)年金や遺族(補償)年金前払一時金をすでに受け取っている場合は、その支給済金額が給付基礎日額の1000日分から差し引かれます。

遺族特別支給金

遺族の数にかかわらず、遺族特別支給金は一律300万円が支給されます。こちらは、一回限りの支給です。

遺族特別一時金

遺族特別一時金は、算定基礎日額の1000日分が支給されます。

もっとも、他の遺族が遺族(補償)年金や遺族(補償)年金前払一時金をすでに受け取っている場合は、その支給済金額が算定基礎日額の1000日分から差し引かれます。

(3)葬祭料(葬祭給付)の金額

葬祭料(葬祭給付)として支給される金額は、「給付基礎日額の60日分」と「給付基礎日額30日分に31万5,000円を加えた額」のいずれか高い方です。

(1)給付基礎日額の60日分
(2)給付基礎日額の30日分に31万5,000円を加えた額

ちなみに、葬祭料(葬祭給付)の受給対象者は、遺族のみに限られていません。たとえば、遺族がいない場合、会社や友人などが葬儀を執り行うこともあるでしょう。このように、遺族以外でも、葬儀費用を実際に支出した人に支給される仕組みとなっています。

(4)労災就学等援護費の金額

労災保険には、保険給付の他にも遺族の援護などを目的とした社会復帰促進事業を行っています。その一環として、「労災就学等援護費」というものがあります。

労災就学等援護費は、労災事故で親を亡くした子どもたちが、学業を放棄したり、進学をあきらめたりしないように援護する目的として支給されます。

1人当たりの金額
保育園児・幼稚園児13,000円
小学校14,000円
中学校18,000円
(15,000円)
高校等17,000円
(14,000円)
大学等39,000円
(30,000円)

※ 令和3年度の金額
※( )内の金額は、通信制の場合

受給にあたっては、在学証明書などの書類が必要になります。
また、給付基礎日額が1万6,000円を超える場合、労災就学等援護費を受給することはできませんので、注意してください。

遺族補償を受けとるための受給資格

先述した通り、遺族補償には年金と一時金の2種類があります。一時金は、年金を受け取る遺族がいない場合などに支給されるものです。年金と一時金それぞれの受給資格を確認しておきましょう。

年金を受け取るための受給資格

遺族補償のうち、遺族(補償)年金・遺族特別支給金・遺族特別年金を受けるためには、以下の受給資格が必要となります。

  1. 被災労働者が死亡した当時「その収入によって生計を維持していた」こと
  2. 被災労働者の配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄妹姉妹であること
  3. (妻以外は)年齢要件を満たしていること

以上の条件すべてを満たしている場合に、受給資格のある遺族と認められるのです。

一時金を受け取るための受給資格

遺族補償のうち、年金を受け取る権利のある遺族がいない場合、その他の遺族に対して、遺族(補償)一時金・遺族特別支給金・遺族特別一時金が支給されます。その他の遺族といえる受給資格は以下の通りです。

  1. 配偶者
  2. 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた子
  3. 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた父母
  4. 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた孫
  5. 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた祖父母
  6. その他の子
  7. その他の父母
  8. その他の孫
  9. その他の祖父母
  10. 兄弟姉妹

以上のうち、最先順位者が受給資格のあるものとみなされます。

死亡事故における会社の責任と損害賠償請求

労災保険による補償内容は、「支給額が給付基礎日額全額に満たない」ことや「慰謝料等が補償の対象外になっている」ことから、十分な補償とはいえません。

そのため、遺族が適切な補償を受けるためには、労災保険の申請とあわせて民事上の損害賠償請求をする必要があります。

もっとも、どんな死亡事故でも損害賠償請求が認められる訳ではありません。どのような死亡事故であれば会社に対して損害賠償請求できるケースなのか検討しておく必要があります。

会社に対して損害賠償請求できる法律上の根拠

遺族が会社に対して損害賠償請求をする際には、以下のような法律上の根拠が考えられます。

  1. 民法上の「不法行為
  2. 労働契約法上の「債務不履行責任

不法行為については、一般的な不法行為に加えて使用者責任や土地工作物責任などが考えられます。

債務履行責任を追及する場合は、会社が安全配慮義務に反していたかどうかが特に問題になるでしょう。

ただし、不法行為と債務不履行責任では、いずれも安全配慮義務違反があったのかどうかという点で争いになることが多いです。法律構成によって特に異なる結論になるということは少ないといえるでしょう。

実際に訴訟になった場合は、不法行為責任と債務不履行責任いずれも請求する場合が多いと思います。

大きな争点は安全配慮義務違反があったかどうか

会社の安全配慮義務違反を考える上では、会社が労働基準法や労働安全衛生法またはそれらの関係法令を遵守していたかという点が問題になります。

判例上も、法令等の基準を遵守しなかった場合には、原則として安全配慮義務違反を認める傾向にあります。そのため、被災労働者が労災に遭ってしまった現場について、いかなる法令を遵守すべきであったか具体的に調査することからはじめましょう。

関連記事では、安全配慮義務違反の有無を判断する基準を解説しています。慰謝料などの損害賠償請求を検討している方は併せてお読みください。

死亡結果との因果関係は別途問題となりうる

会社の安全配慮義務違反が判明した場合であっても、被災労働者の仕事との間に因果関係がなければ責任を追及することはできません。

たとえば、被災労働者に持病が元々あり、その持病が悪化したことによって死亡した場合は、安全配慮義務違反との間に因果関係がないと判断されるでしょう。因果関係が認められるためには、特定の事実が結果発生を招いた高度の蓋然性を証明する必要があり、その判定は通常人を基準に考えることになります。

慰謝料は損害賠償請求でしか手に入らない

労災給付だけでは十分な補償とはいえないと何度も繰り返していますが、その中でも代表的なものとしてあげられるのが「慰謝料」です。慰謝料とは、事故によって被った精神的苦痛に対して支払われる補償のことで、労災保険の給付には含まれません。

したがって、慰謝料は損害賠償請求しなければ手にすることができません。労災事故で死亡した場合に請求できる慰謝料は、「死亡慰謝料」です。

関連記事『労災事故で慰謝料を請求できる?相場額は?仕事中の怪我による精神的苦痛』では、死亡慰謝料のほか、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料といった種類の慰謝料相場について解説しています。慰謝料が増額する事由などにも言及していますので、あわせてご確認ください。

労災の死亡事故で損害賠償が認められた判例

会社に対する損害賠償請求について詳しく考えるためには、具体的な場面を想定する必要があります。個別具体的な事案に照らして、安全配慮義務違反があったかどうかを判断することになるでしょう。

そこで、判例がどのように判断をしているかを解説します。

過労死についての判例

過労死について、平成12年3月24日に最高裁判所が判決を下した電通事件についてみていきます。

この事案は、大手広告代理店に勤務する被災労働者が長時間残業を1年あまり継続した後に、うつ病になり自殺したという事件になります。

最高裁判所は、会社が雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと判断しました。

そして、被災労働者が恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していることおよびその健康状態が悪化していることを認識しながら、その負担を軽減させるための措置を取らなかったことに過失があるとして使用者責任を認定しました。

熱中症についての判例

大阪高判平成28年1月21日は、真夏の炎天下で庭木の清掃作業に従事していた労働者が熱中症を発症して死亡した事件になります。

裁判所は、指揮監督をしていた上司に対して被災労働者の状態を十分に確認しておらず、高温環境を脱するために適切な場所で休養させることも考慮せず、そのまま被災労働者を放置し熱中症による心肺停止状態に至る直前まで救急車を呼ぶなどの措置も取らなかったとして、不法行為責任を認めております。

労災の死亡事故は専門家への相談が必須となる

以上、解説してきたとおり、労災事故により死亡という結果が生じてしまった場合は、会社の安全配慮義務違反が問われることになります。

しかしながら、会社に対する請求には十分な証拠収集や法律の調査、会社との交渉が必要となります。

そのため、弁護士などの専門家に相談をして、具体的なアドバイスなどをもらうことが必須となるでしょう。

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大切なご家族を亡くされ、今後の生活のことをご遺族だけで考えるのは非常にお辛い状況だと思います。弁護士に相談いただくことで、これからどういった対応を遺族としてとっていくべきなのかお話しさせていただくことができますので、気軽にご相談ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点