会社からの損害賠償請求と会社に対する損害賠償請求|労災編
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労災が発生した原因によっては、会社から労働者に損害賠償請求されることもあれば、労働者から会社に損害賠償請求できることもあります。
そこにはどのような違いがあるのでしょうか。弁護士がQA形式で、簡単に解説していきます。
目次
Q.労災で会社から労働者に損害賠償請求されることはありますか?
A.あります
労働者の不法行為によって会社に損害を与えてしまったり、会社との労働契約に違反するような行為によって会社に損害を与えてしまった場合は、会社から損害賠償請求される可能性があるでしょう。
また、業務中に労働者が第三者に損害を負わせた件について、会社が使用者責任に基づいて第三者に対して損害賠償責任を果たした場合、あとから会社が労働者に対して損害賠償請求することもあります。
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Q.労災で会社から労働者に損害賠償請求されるケースで気を付けるべき点はありますか?
A.安全配慮義務違反など会社にも責任がないか確認しておきましょう
労災が起こった原因として労働者のミス以外の可能性がないか確認するようにしましょう。
たとえば、会社に安全配慮義務違反が認められるような労災であれば、会社に対する損害賠償請求が可能になるためです。
安全配慮義務違反とは、労働者の健康や安全に配慮せずに危険にさらすことをいいます。
自分のミスのみで生じた労災であると思い込まずに、会社の安全配慮義務違反がなかったのか疑った方がいいでしょう。
Q.労災で労働者から会社に損害賠償請求できますか?
A.法的根拠があるなら損害賠償請求が可能です
ただ単に、労災であるというだけで会社に損害賠償請求できるわけではありません。労災は労災でも、損害賠償請求できる法的根拠がある労災かどうか見極めておく必要があります。
会社に労災発生の原因があった場合は、以下のような法的根拠に基づき会社に対して損害賠償請求できる可能性があるでしょう。
- 安全配慮義務違反
さらに、第三者などに労災発生の原因があった場合も、以下のような法的根拠に基づき会社に対して損害賠償請求できる可能性があります。
- 使用者責任
- 工作物責任
損害賠償請求とは損害を与えてきた相手に対して補償を求めることなので、労災が発生した原因が自分以外にないと請求することはできないのです。
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Q.労災で労働者から会社に損害賠償請求できるケースで気を付けるべき点はありますか?
A.慰謝料の請求を忘れないようにしましょう
損害賠償請求しない限り、慰謝料は手にすることができない補償です。
慰謝料とは、労災によって感じた精神的苦痛に対する金銭的な補償のことをいいます。
労災の場合、労災保険から療養補償給付や休業補償給付などさまざまな給付が受けられるのですが、労災保険の給付には慰謝料が含まれていません。慰謝料の存在を忘れず、適切に損害賠償請求してください。
Q.損害賠償請求されるケースと損害賠償請求するケースのどちらでも気を付けるべき点はありますか?
A.どんな労災でも報告義務があります
労災が発生すると、会社は「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出せねばなりません。労災発生の報告は、法律で定められた義務です。
したがって、労災発生の報告を怠ると法律違反となり、会社は刑事罰の対象となります。
労災発生を報告しなかったり、報告したとしても内容に虚偽があったりすることを「労災隠し」といいます。
A.過失割合に注意しましょう
過失割合とは、労災が発生した落ち度を数字で表現したものです。たとえば、労災発生の原因として会社に9割・労働者に1割の落ち度が認められる場合、「過失割合9対1」などと表現されることになるでしょう。
なぜ過失割合に注意すべきなのかというと、損害賠償金の金額に影響が出るからです。
過失割合9対1のケースで、労働者の損害が1000万円あった場合を考えてみます。労働者には1割の過失が認められるので、損害の全額を会社に請求することはできず、900万円しか請求することができません。
さらに、会社の損害が100万円あった場合、労働者は会社に対して10万円賠償せねばなりません。
このように、過失割合は損害賠償金の金額を大きく左右するものなので、注意せねばならないのです。
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Q.会社に損害賠償請求したいときは弁護士に相談した方がいいですか?
A.弁護士相談をおすすめします
労災で重大な後遺障害が残ったり、ご家族を亡くされたりして、会社に損害賠償請求したいとお考えの場合は、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士


高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了