労災による過労死問題を弁護士に相談・依頼するメリット
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令和5年版 厚生労働省による「過労死等防止対策白書」過労死等の現状において、脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)件数の多い職種を、輸送・機械運転従事者、サービス職業従事者、販売従事者、管理的職業従事者など様々な職種と報告しています。
このように職種問わず、過労死問題は付きまとうのです。
ご家族が亡くなってしまったとき、その死因、勤務状況や仕事内容、職場環境によっては労災を疑うべきでしょう。
一定の基準を満たす脳・心臓疾患での死亡や精神障害による自殺については、労災認定される可能性があります。
もっともその基準を満たすことの証明には様々な資料が必要で、複合的に判断されるため、遺族が想定していた結果を得られないこともありえるのです。
また、会社に落ち度があるとき慰謝料などの損害賠償請求ができるケースがあります。
残された遺族の今後の生活のためにも、過労死問題に対する適正な補償を受けることが必要です。過労死問題に直面した場合は弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
目次
過労死問題の労災認定を弁護士に相談・依頼するメリット
労災申請のサポートを受けられる
過労死認定を受けるためには、労災保険法に基づく条件を満たす必要があります。
労災の申請手続きは、通常会社が対応してくれるケースが多いです。しかし、会社側の協力がスムーズに得られない場合には独自で調査をしたり、申請手続きをおこなったりする必要があります。
そんなとき弁護士であれば過去の類似事例を踏まえ、必要な証拠の収集や、会社への調査依頼、労災申請書類の作成などの労災申請手続き全般をサポート可能です。
過労死問題が労働災害かどうかを判断するのは、労働基準監督署になります。その際、過労死認定基準を満たすことが重要となりますので、労災申請時にはそれらがわかる書類もあわせて提出しましょう。
労災認定を受けられたらどうなる?
死亡事故の労災給付は遺族補償年金・一時金・葬祭料など幅広く、どれも遺族の今後の生活を支える重要な補償なので、適正な受給を目指すべきといえます。
死亡事故の労災給付内容については、関連記事『労災事故で死亡…労災の申請方法と遺族補償給付額|慰謝料は請求できる?』でもくわしく解説していますので参考にしてみてください。
労災認定結果に納得いかないときの対応が聞ける
過労死問題が労災でないと判断されると、「労災不支給の通知」を受けることになります。そうした結果に納得いかないときには、審査請求・再審査請求・労災不支給決定を取り消す行政訴訟をおこすなどの対応が可能です。
審査請求は結果を確認した日の翌日から3ヶ月以内に、労災申請をおこなった労基署を管轄する都道府県労働局におこないましょう。
過労死問題では思うような結果にならず、最終的には訴訟に発展するケースもあります。一度「労災ではない」と判断された結果を覆すためには万全な準備が必要です。
弁護士に相談・依頼することで、審査請求・再審査請求や行政訴訟になったとしても柔軟な手続き対応ができます。
関連記事『労災の不支給決定や支給内容に納得できない場合は不服申立てができる』では結果に納得がいかなときの対応についてくわしく解説していますので、あわせてお読みください。
過労死問題の損害賠償請求を弁護士に相談・依頼するメリット
法的根拠や証拠をもとにした損害賠償請求が可能
過労死について労災認定を受けられている場合には、労働と死亡の因果関係について、交渉でもある程度認められやすい状況になります。
しかし、会社に損害賠償請求をするためには、仕事が原因で亡くなってしまったということだけでなく、その労災死亡事故に会社の落ち度があったことの証明が重要になるのです。
とくに死亡慰謝料に関しては、労災保険の給付に含まれませんので、会社に対する損害賠償請求が必須になります。ただし、どのようなケースでも損害賠償請求ができる訳ではありません。
会社に対する損害賠償請求が認められるためには、会社に以下のような点が認められる必要があります。
損害賠償請求の法的根拠
- 安全配慮義務違反
- 不法行為責任
安全配慮義務違反や不法行為責任が認められるケースでは、労災保険の請求だけで損害のすべてをカバーすることができません。
労災保険の請求とあわせて、会社に対する損害賠償請求を別途おこなう必要があるのです。
安全配慮義務違反
会社が負う安全配慮義務は労働契約法第五条にて「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されており、この義務に違反していることを根拠とします。
「安全配慮義務」とは、会社が従業員に対して、安全かつ健康に労働できるように配慮しなければならないという義務のことをいいます。
たとえば、会社がいわゆる過労死ラインを超える長時間労働を従業員に強制していた場合において、そのことが原因となって従業員が過労死した場合には、会社に安全配慮義務違反があったと認められる可能性が高いです。
たとえば会社の安全配慮義務違反の例は以下のとおりです。
安全配慮義務違反の例
- 労働者に月100時間を超える時間外労働をさせながら、業務改善や休息をとらせるなどの措置を怠った。労働者は虚血性心疾患を起こして死亡した。
- 会社が交替勤務・夜勤・出張などストレスのかかる働き方を強制しており、ずさんな勤怠管理で適正な改善策がとられず、くも膜下出血で倒れて死亡した。
- 職場内のパワハラを会社は黙認して放置、パワハラを受けた労働者が精神障害を発症して自殺した。
不法行為責任
「不法行為責任」とは、故意・過失により他人の権利や利益を侵害した場合に、侵害者が負う責任のことをいいます。
たとえば、会社が従業員に長時間労働を強制することは少なくとも「過失」が認められるため、会社に不法行為責任が認められる可能性が高いです。
会社との交渉の最前線に立てる
過労死問題で会社に損害賠償請求する場合、会社側は弁護士を立ててくることが多く、遺族が一人で交渉するのは困難な場合がほとんどです。
弁護士は、会社に対して法的な観点から毅然とした対応をすることができ、遺族の権利を守るために有利な条件で交渉を進めていきます。
また、勤務先を相手に裁判を起こす場合には、裁判所に出廷することも必要です。弁護士であれば法定代理人として出廷できるので、遺族の負担を軽減できます。
大切な家族の過労死問題は、遺族にとって非常に辛い経験です。弁護士に依頼することで、手続き上の不安や今後の見通しもこまめに確認でき、安心につながるでしょう。
会社との交渉はどう進む?
会社に損害賠償請求する際には、まずは示談交渉での解決を試みることが多いです。示談交渉とは裁判外で双方が譲歩しあい、合意することでトラブルを解決する手段をいいます。
具体的には謝罪の有無、示談金額などを話し合うものです。
しかし示談交渉でうまくいかないときには、裁判を起こすことも視野に入れねばなりません。裁判では、裁判官の判断で訴訟上の和解を進められるケースもあれば、判決を受けるケースもあります。
証拠の収集もサポート
弁護士に相談・依頼することで、どのような法的根拠を元に損害賠償請求するべきかを検討できます。
たとえば長時間勤務が過労死の原因だと考えられているときには、次のような証拠を集めることが必要になるケースもあるでしょう。
長時間勤務を示す証拠の例
- 会社の出退勤のタイムカード
- 通勤定期から入退場記録の確認(時間・頻度など)
- 時間外労働の記録
- 日報・日誌(会社からどんな仕事を任されていたのか)
弁護士であれば過去の事例や判例から有効な立証方法を調べ、必要な証拠について検討をつけて集めることができます。
過労死問題を不当な賠償金で終わらせない
弁護士に損害賠償請求の交渉を任せることで、過労死問題を不当に低い賠償金で終わらせないというメリットがあります。
過労死の慰謝料相場は2,000万円から2,800万円で、一家の大黒柱であるほど金額は高くなる傾向です。
弁護士は過去の判例をもとにした損害賠償請求の相場をよく理解しています。
過労死問題で負った悲しみや苦痛は本来金銭で解決できるものではありません。しかし、法外な金額を請求しても話はまとまらないのです。
相場を知る弁護士に任せるということは、できるだけ早急に妥当な金額で話をまとめることにもつながります。
交渉が決裂して訴訟にもつれこんでも、必ずしも勝訴につながるとはいえません。そのため、納得できる示談内容であれば、訴訟までいかず示談で解決するメリットはあります。
過労死の慰謝料相場や判例についてのくわしい解説は以下の関連記事をお読みください。
過労死問題と弁護士に関する疑問
弁護士の依頼にかかる弁護士費用はどのくらい?
弁護士費用は、依頼した内容や難易度に応じて変化するものです。また、弁護士ごとに費用を自由に設定することができるので、一律にいくら必要になるか明言しにくいものでもあります。
ただし、弁護士費用は相談料・着手金・成功報酬・日当・実費などを合計したものを指すのが一般的です。
相談料や着手金を無料とする法律事務所もありますので、依頼前の費用を抑えたい方はそうした法律事務所を探すことをおすすめします。
もっとも、相談料・着手金は無料でも成功報酬が高めに設定してある場合もありますので、相談料や着手金が有料である法律事務所と比べて、トータルで支払う金額は変わらないこともありえます。
重要なことは、弁護士に相談・依頼する前に、しっかりと確認しておくことです。弁護士費用の内訳や、どんなことを依頼すればどんな費用がかかるのかを理解しておけば、安心して依頼できます。
関連記事『労災に関する弁護士費用はどのくらい必要?』では、過労死問題を含む労災に関する弁護士費用についてさらに詳しく解説しています。興味のある方は、あわせてご確認ください。
過労死問題に詳しい弁護士の探し方は?
弁護士は法律に精通していますが、多くの弁護士は自分が得意とする分野を設定して活動しています。過労死問題は過労死問題に詳しい弁護士に相談するのが大切です。
過労死問題の解決実績をもつ弁護士を探す方法として考えられる方法を紹介します。
知人からの紹介
知人が相談や依頼したことのある弁護士を紹介してもらうこともあるでしょう。信頼のおける知人と面識のある弁護士であれば、安心感があります。
もっとも、知人の紹介というだけで弁護士を選ぶのは避けましょう。この場合も、過労死問題を取り扱う弁護士かどうか確認することが大切です。
弁護士会や法テラスを利用する
法テラスとは、国が設立した法的トラブルに関する総合案内所です。
問題を解決するための法制度や手続き、相談窓口を案内してくれます。一定の要件を満たす場合、無料で法律相談することもできます。相談を受け付けているかどうかは、お近くの法テラスのホームページをご確認ください。
弁護士会とは、弁護士や弁護士法人を会員として構成される団体で、各都道府県に設置されています。
弁護士を束ねる組織として主に活動していますが、法的トラブルに関する市民向けの法律相談窓口を運営したりしています。弁護士会によっては、相談会を常設していたり、市役所などを巡回する相談会を実施していることもあるようなので、お近くの弁護士会で確認してみましょう。
インターネット検索を活用する
スマートフォンが普及した現代ではインターネット検索が手軽に行えるので、過労死問題をあつかう弁護士も見つけやすいです。
ただし、過労死問題をあつかっているという内容がホームページにのっているという理由だけで決めるのは早計です。過労死問題の解決実績や損害賠償請求の交渉実績が豊富な弁護士を選ぶようにしてください。
過労死の弁護士相談窓口
過労死が労災であると認定された場合は、会社に何らかの落ち度が認められる可能性があります。
労災と認定されれば労災保険からの保険金を受けとることはできますが、労災保険の給付内容に慰謝料は含まれていません。
家族が一生懸命働いた末に死に至ったという精神的苦痛に対する補償は、会社に慰謝料として請求していくことになります。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了