骨折の慰謝料の相場はいくら?リハビリ・ギプス・抜釘手術の扱いは? | アトム法律事務所弁護士法人

骨折の慰謝料の相場はいくら?リハビリ・ギプス・抜釘手術の扱いは?

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骨折の慰謝料相場と骨折ならではの補償

慰謝料は怪我の痛みや通院を余儀なくされたことへのつらさといった精神的苦痛に対して支払われる金銭です。

骨折の慰謝料には、入通院慰謝料後遺障害慰謝料の2種類があります。

治療中の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は入通院慰謝料、治療後にも後遺症が続く精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は後遺障害慰謝料です。

骨折の慰謝料がどれくらいもらえるのかは、治療期間、後遺障害の有無、過失の程度によって決まってきます。

慰謝料のポイント

  • 治療期間
  • 後遺障害の有無
  • 過失の程度

この記事では骨折の慰謝料相場計算時の注意点骨折の慰謝料に関する裁判例を紹介していますので、最後までお読みください。

骨折の慰謝料相場|入通院慰謝料

治療期間中の精神的苦痛に対して支払われる入通院慰謝料を左右するのは治療期間の長さ入院の有無です。

ここからは次のようなパターンに分けて、骨折の入通院慰謝料相場をみていきましょう。

骨折の慰謝料相場がわかる早見表(入院なし)

骨折させられたことで治療が必要になったとき、その痛みやつらさにより請求できる入通院慰謝料は、通院期間に応じて金額相場が決まります。

通院期間ごとの慰謝料相場は下表のとおりで、通院1ヶ月だと28万円、通院2ヶ月だと52万円、通院3ヶ月だと73万円が相場となり、治療が長いほど高額になる見込みです。

通院慰謝料の相場

通院慰謝料相場
1月28万円
2月52万円
3月73万円
4月90万円
5月105万円
6月116万円

もちろん、通院期間7月以上でも慰謝料は請求可能です。

骨折の慰謝料相場がわかる早見表(入院あり)

骨折させられたことで治療が必要になったことに対して支払われる慰謝料ですが、通院のみの慰謝料よりも、入院治療も必要となった場合の慰謝料のほうが高額になります。

入通院慰謝料の相場

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

通院1月に対して、入院期間が1月であれば入通院慰謝料相場は77万円です。入院期間が延びるほど、122万円、162万円と相場は高くなります。

治療日数に端数が出たら慰謝料の計算はどうするのか

入通院慰謝料の算定表の1月は30日単位ですが、治療日数は30日単位とは限りません。たとえば入院30日通院45日を例に考えてみましょう。

まず入院30日(1月)と通院30日(1月)の金額をみると、77万円です。
実際には45日通院しているので通院31日目~45日目までの金額が上乗せされます。

仮に通院60日(2月)なら入通院慰謝料相場は98万円です。通院60日分の金額から通院30日分の金額を差し引くと、通院31日~60日の慰謝料が21万円であることがわかります。(計算式:98万円ー77万円)

通院したのは31日目~45日目までなので、21万円の半分にあたる10万5,000円が端数分の慰謝料相場です。77万円と合算すると、入院30日・通院45日の入通院慰謝料の相場が約87万5,000円と算定できます。

入通院慰謝料の増額|治療期間の長さ以外にも注目

入通院慰謝料の金額は治療期間の精神的苦痛を反映したものです。
治療期間の長さ以外にも、次のような場合には慰謝料が増額される可能性があります。

入通院慰謝料の増額要素

  • 傷害を負った部位や程度
  • 生命の危機に瀕する状態が継続した
  • 麻酔なしで手術をするなど極度の苦痛を伴った
  • 手術を何度も繰り返した

頭を打ち付けて頭蓋骨骨折となり危険な状態が続くことや、手術を何度もおこなうといったつらい状態にさらされることなどは、相場よりも高額な慰謝料が認められる理由となるのです。

ご自身のケースが増額事由に当たりうるかどうか、そもそも複雑な入通院慰謝料の算定は、弁護士など慰謝料算定・交渉経験の豊富なプロにアドバイスを受けることをおすすめします。

骨折の慰謝料相場|後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、一定の基準を満たす後遺症に対して請求しうる慰謝料です。

後遺症の程度や部位などの様々な要素から、後遺症が「後遺障害」かどうかを検討する必要があります。

後遺障害等級に応じた慰謝料の早見表

後遺障害慰謝料の相場は110万円~2,800万円で、下表の通り後遺障害等級ごとに相場があります。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級相場
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

大事なことは、後遺障害等級第1級から第14級のうち、ご自身の後遺症が何級に相当するかを見極め、慰謝料を請求する相手に示すことです。何級に該当しうるのかは、厚生労働省の障害等級表を参考にしてみてください。障害等級表は労災保険に適用されるものですが、労災以外でも考え方は原則同じです。

障害等級を検討するにあたっては、治療直後から治療終了時までに受けた医学的な検査結果が重要になります。

後遺症が後遺障害であると認定するのは誰か

後遺障害の存在を認定するのは、後遺障害の認定機関もしくは裁判所だと考えておいてください。

骨折の原因によっては後遺障害の認定機関の審査を受けることが通常です。たとえば、交通事故なら自賠責損害調査事務所、労災事故であれば労働基準監督署、学校事故であれば独立行政法人日本スポーツ振興センターなどがあげられます。

一方で事故態様によってはそうした認定機関がないときには、診断書や検査結果を添えて相手に主張し、相手が相応の賠償金を支払うならば問題はありません。

裁判所に後遺障害の判断をしてもらうこともある

しかるべき後遺障害認定機関から認定を受けられない、そもそも後遺障害認定機関がない、さらには相手からも後遺障害を否定されて交渉が進まないときには、裁判所の判断を仰ぐことも可能です。

これは「民事裁判」といい、相手方に損害賠償請求を起こす訴訟のことで、その訴訟の中で賠償額を判断する際に後遺障害についても判断を受ける流れになります。

後遺障害が残ったなら逸失利益にも注目

後遺障害が残ったことで将来の収入が減ったり、働けなくなることも損害といえます。この損害は逸失利益といい、重傷事案では数百万円~数千万円にもなる可能性があるものです。

とくに若い方、収入の多い方、後遺障害の程度が重い方は高額になる可能性があります。逸失利益の計算方法については、関連記事『【後遺症の逸失利益】計算式と早見表で相場がわかる!具体的な計算シミュレーション』で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

重い後遺障害を負ってしまった場合は特に、損害賠償金額の見積もりを弁護士に依頼することは有効な手段です。慰謝料、逸失利益を含む損害の見積もり依頼をしてみませんか。

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お取り扱いできない事案もあります。詳しくは受付にご確認ください。

アトム法律事務所 岡野武志弁護士

後遺障害慰謝料の請求には医学的な検査結果が重要

どんな後遺症が残るのかは千差万別なので、骨折だから必ず後遺障害何級になるという断定はできません。そして、個々人が負う後遺症を示すには医学的な検査結果が根拠になります。

単に「骨折によって腕にしびれが残った」と主張するだけでは自覚症状と言われてしまう可能性があり、後遺障害慰謝料の交渉は難航する恐れがあるでしょう。

そこで、しびれなどの神経症状の存在を示すために、画像検査(MRI、CTなど)で症状の存在を示すことが重視されています。

あるいは骨折後に腕や足が曲がらなくなった場合には、医師に関節可動域の測定をおこなってもらうこともポイントです。「腕が曲がりません」というのではなく、「腕がどの程度までしか曲げられないのか」を検査結果による数値で示す必要があります。

このように適正な金額の後遺障害慰謝料を受けとるには、まず適切な後遺障害等級を認めてもらうことが必要です。

骨折の慰謝料に関するよくある疑問と注意点

ここからは骨折の慰謝料についてよくある疑問と注意点を解説していきます。

骨折後のリハビリ費用は症状固定前なら請求可能

リハビリも治療に含まれるため、リハビリ費用、通院交通費、慰謝料などの請求が可能です。ただし症状固定後のリハビリは原則として治療期間に含まれません。

症状固定とは?

一般的に、医学的に認められた治療を続けても、症状の改善が見込めなくなったこと

症状固定は医師の見解が尊重されます。

医師によって「症状固定」と判断されるまでは治療の一環としてのリハビリですが、症状固定後のリハビリについては原則として治療に含まれません。

ギプス中の自宅安静は治療に含まれるがもめやすい

骨折は、ギプスで固定して安静にすることも治療の一環です。しかし、相手方から「治療期間に対して、実際に通院した日数が少ない」などと言われ、入通院慰謝料の減額提示を受ける可能性があります。

たしかに、入通院慰謝料は通院頻度によって減額されるケースもあります。しかし、医師の指示にしたがっているなど正当な理由があるときには、通院頻度だけを理由とした減額は不適切なものとして交渉するべきでしょう。

このように、相手からの減額提示は必ず受け入れるべきとも限りません。弁護士に相手との交渉を任せることで、不適切な減額に臆することなく交渉可能です。

治療中のボルトやプレートなどの抜釘手術は補償される

骨折の治療で入れた金属を抜くことを抜釘といい、手術が必要です。こうした抜釘手術にかかる手術費や入院費用、入院期間に対する慰謝料なども、骨折による損害の一部として請求できます。

基本的には抜釘後に症状固定と判断を受けることが多いです。ただし抜釘の有無は被害者や主治医の間で決めることで、必須ではありません。

なお、損害賠償請求面でいえば、抜釘により認定されうる後遺障害等級が下がる可能性もあるので、治療段階から弁護士に相談することも有効です。

仮に抜釘せず症状固定した場合、将来において抜釘が必要となった場合の抜釘費用の扱いを盛り込んだ示談も可能ですが、必ず認められるとも限りません。

骨折後の後遺症で車いすが必要なら費用を請求可能

骨折によりしびれや運動障害が残ったとき、車椅子や歩行器具が必要になることもあります。骨折との因果関係が認められたときには、車椅子の購入費のほか、将来の買い替え費用についても請求が認められる可能性はあります。

買い替えが認められる期間は、基本的には平均余命や就労可能期間までとされるでしょう。

過失がついたら慰謝料は減る

過失とは、簡単に言うと落ち度や責任という意味だと考えてください。骨折を負うことになった原因が自分にもある場合には、その過失の程度に応じて慰謝料が減ることになります。

たとえば、本来骨折の慰謝料が200万円だとしましょう。そして相手もケガをしていて、20万円の損害が出ているとします。

被害者がよそ見をしていたことも骨折事故につながったとして、自分にも1割の過失がついたとき、200万円の慰謝料は1割減額されるのです。同時に、相手の20万円の損害の1割にあたる2万円を支払う義務も負います。

こうして、骨折に至った原因しだいでは過失がつき、慰謝料減額となるのです。

過失はどうやって決める?

過失は基本的に当事者同士の話し合い(示談)で決めます。警察や医師が決めてくれるものではなく、当事者間で合意できればそれでよいのです。

ただし話し合いで決まらないときには訴訟を起こし、裁判官に判断してもらう方法もあります。

骨折の慰謝料請求に関する裁判例

骨折などの怪我を負い、裁判において慰謝料などの損害賠償請求が争われた事例を紹介します。
判例はひとつの参考として、実際に請求しうる慰謝料額などは弁護士に見積もってもらうようにしましょう。

事例(1)解体工事中の転落事故で頭がい骨骨折、高次脳機能障害

被害者は、塗装工事現場の足場解体中に転落してしまいました。病院では頭がい骨骨折、左鎖骨骨折、左腸骨骨折、広範性軸索損傷などと診断されたのです。懸命に治療を続けましたが、次のような後遺症が残ってしまいました。一部を抜粋します。

  • 高次脳機能障害
  • 構音障害
  • 歩行障害

裁判の結果、入通院慰謝料352万円後遺障害慰謝料2,200万円のほか、逸失利益として約3,658万円、将来介護費として約1,040万円などが認められました。(広島地方裁判所呉支部 平成26年(ワ)第134号 損害賠償請求事件 平成30年9月28日)

この事故は労災事故でもあったため労災保険の給付対象とされました。しかし、労災保険から慰謝料は給付されません。被害者は、安全帯の確実な使用を指導・監督するなどの安全配慮義務に違反したとして、下請け会社への損害賠償請求を起こしました。被害者にも4割の過失があると判断されたものの、残りの6割について請求が認められたのです。

労災事故は、会社に対して責任を問えるケースもあります。どういったときに慰謝料が請求できるのか、詳しい解説は関連記事をご覧ください。

事例(2)交通事故で鎖骨の変形・右腕にしびれが残った

被害者は、交通事故によって右上腕骨骨幹部骨折、左鎖骨骨折、多発肋骨骨折などの重傷を負いました。なんとか一命をとりとめたものの、次のような後遺症が残ったのです。一部を抜粋します。

  • 左鎖骨の変形障害
  • 右上腕の疼痛
  • 右橈骨神経領域しびれ

後遺障害は併合11級と判断され、入通院慰謝料250万円後遺障害慰謝料420万円、そして夫の死にも比肩するほどの精神的損害を受けたとして妻に100万円の慰謝料が認められました。

さらに、事故直後の加害者の態度やその後の供述変遷などから、反省と謝罪の意思がうかがえないものとして、裁判所はさらに100万円の慰謝料増額の判決を下しました。(横浜地方裁判所 平成23年(ワ)第6334号 損害賠償請求事件 平成25年1月31日)

事例(3)デイサービスで転倒して骨折、右股関節の機能障害

デイサービスの利用者が、入浴介護サービスの利用中に転倒して左大腿骨転子部を骨折しました。通院治療を受けましたが完治せず、次の後遺症が残りました。

  • 右股関節の機能障害

後遺障害は12級相当と判断され、入通院慰謝料180万円後遺障害慰謝料290万円などの損害賠償請求が認められました。(青森地方裁判所弘前支部 平成23年(ワ)第97号 損害賠償請求事件 平成24年12月5日)

介護施設は利用者に対する安全配慮義務を負います。スタッフは故意ではないものの、一時的に利用者から目を離して他の対応をしていました。裁判所はこの点にスタッフの注意義務違反を認定し、使用者責任に基づいて事業者に賠償を命じました。

使用者責任とは、雇用するスタッフが賠償責任を負うとき、雇用主である会社も賠償責任を負うことをいいます。個人に賠償請求をしても、適切に支払いを受けられるかという点は不安が多いものです。誰に、どんな法的根拠を元に請求するのかが重要といえます。

骨折の慰謝料|弁護士に見積もりと交渉を任せよう

慰謝料の金額は、そもそも目に見えない精神的苦痛を金銭化しようというものです。領収書やレシートがないため、金額面で最初から完全に合致することは難しいでしょう。

つまり、被害者が納得のいく慰謝料額を獲得するには交渉力が重要になってくるのです。

慰謝料の交渉を弁護士に任せるべき理由

弁護士であれば、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の適正な見積もりができます。

骨折については治療期間が長引いたり、何らかの後遺症が残る可能性も考えられます。相手方から金額提示を受けた際にも、これまでの判例や事例も参考にしながら、妥当性の判断が可能です。

また、弁護士は被害者の代理人になれるので、交渉のすべてを任せることができます。
仕事や家事などの日常生活と慰謝料の交渉を並行させるのは非常に困難なので、交渉ごとを弁護士にすべて任せられることは大きなメリットとなるでしょう。

なお慰謝料請求の流れについては、関連記事『怪我の慰謝料はいくらが相場?弁護士基準の金額と請求の流れを紹介』にてくわしく解説しています。交渉から始まり、事案によっては裁判に発展することもある見込みです。

慰謝料以外の算定・交渉も任せられる

慰謝料は、被害者の損害のうちの精神的苦痛の部分に過ぎません。損害を算定するときには、他にも積極損害と消極損害という損害に注目すべきです。

積極損害とは、骨折によって支払いを余儀なくされた出費をさします。
治療費や入院費用、通院交通費、松葉づえや車椅子の購入費などがあげられるでしょう。

消極損害とは、本来得られるはずだった利益を骨折によって失ったという損害をさします。
たとえば、骨折の治療で仕事を休んだ場合は給与を得られません。あるいは有給休暇を使って休むことになるでしょう。欠勤により給与を受けとれなかったり、有給を利用せざるを得なかった場合も「休業損害」の請求が可能です。

すべての損害を洗い出し、ひとつずつ丁寧に算定していくことで、請求すべきトータルの金額がみえてきます。

損害賠償請求する方法は複数ありますが、相手との交渉(示談交渉)で金額や内容を決めていくことが多いです。損害賠償の交渉についての詳細は関連記事でご確認ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了