骨折の慰謝料はいくらもらえる?妥当な相場とリハビリやギプス中の扱い | アトム法律事務所弁護士法人

骨折の慰謝料はいくらもらえる?妥当な相場とリハビリやギプス中の扱い

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骨折の慰謝料はいくらもらえる?妥当な相場とリハビリやギプス中の扱い

骨折は完治する場合もあれば、なんらかの後遺症が残ってしまう恐れもある怪我のひとつです。治療には時間を要することも多く、被害者にとっては骨折の痛みに加えて、煩わしさや生活の不便を感じる機会も多いでしょう。

慰謝料は怪我の痛みや通院を余儀なくされたことへの辛さといった精神的苦痛に対して支払われる金銭です。一方で相手方から提示される慰謝料額の妥当性を判断しづらかったり、相手方の提示額が不当に低く設定されている場合もあります。

この記事では骨折の慰謝料相場計算時の注意点骨折の慰謝料に関する裁判例を紹介していますので、最後までお読みください。

骨折の慰謝料相場|入通院慰謝料

骨折の慰謝料には、入通院慰謝料後遺障害慰謝料の2種類があります。
治療中の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は入通院慰謝料、治療後にも後遺症が続く精神的苦痛に対して支払われる慰謝料は後遺障害慰謝料です。

それぞれの慰謝料相場を確かめていきましょう。

骨折の慰謝料相場がわかる早見表

治療期間中の精神的苦痛に対して支払われる入通院慰謝料を左右するのは治療期間の長さです。下表のように、入院期間と通院期間の長さを用います。

入通院慰謝料の相場

なし1月2月3月
なし053万101万145万
1月28万77万122万162万
2月52万98万139万177万
3月73万115万154万188万

この表の見方を説明します。

表の横軸は入院の長さ、縦軸は通院の長さを示しており、入院月と通院月の交わる部分が入通院慰謝料の相場となります。
なお「月」は30日単位となるので、たとえば通院90日なら「通院3月」です。
入院30日、通院90日のとき入通院慰謝料の相場は115万円となります。

なお、上表で示す慰謝料額は目安にすぎません。また、入通院ともに3月までしか掲載していませんが、4月以降も入通院慰謝料は請求でき、さらに金額は高額になる見込みです。

治療日数に端数が出たら慰謝料の計算はどうするのか

先の表において1月は30日単位ですが、治療日数は30日単位とは限りません。
たとえば入院30日通院45日を例に考えてみましょう。

まず入院30日(1月)と通院30日(1月)の金額をみると、77万円です。
実際には45日通院しているので通院31日目~45日目までの金額が上乗せされます。

仮に通院60日(2月)なら入通院慰謝料相場は98万円です。通院60日分の金額から通院30日分の金額を差し引くと、通院31日~60日の慰謝料が21万円であることがわかります。(計算式:98万円ー77万円)

通院したのは31日目~45日目までなので、21万円の半分にあたる10万5,000円が端数分の慰謝料相場です。77万円と合算すると、入院30日・通院45日の入通院慰謝料の相場が約87万5,000円と算定できます。

このように、入通院慰謝料相場は治療に要した期間でおおよその金額が決まる一方で、少し計算が複雑です。さらに、治療期間だけで全てが決まるわけではありません。

入通院慰謝料の増額|治療期間の長さ以外にも注目

入通院慰謝料の金額は治療期間の精神的苦痛を反映したものです。
治療期間の長さ以外にも、次のような場合には慰謝料が増額される可能性があります。

入通院慰謝料の増額要素

  • 傷害を負った部位や程度
  • 生命の危機に瀕する状態が継続した
  • 麻酔なしで手術をするなど極度の苦痛を伴った
  • 手術を何度も繰り返した

ご自身のケースが増額事由に当たりうるかどうかは、弁護士など慰謝料算定・交渉経験の豊富なプロにアドバイスを受けることをおすすめします。

骨折の慰謝料相場|後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったときに請求できる慰謝料です。

後遺症のうち一定の条件を満たすものは、後遺障害として認定されます。後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じておおよその相場があります。

後遺障害等級に応じた慰謝料の早見表

後遺障害慰謝料の相場は110万円~2,800万円で、下表の通り後遺障害等級ごとに相場があります。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級相場
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

大事なことは、後遺障害等級第1級から第14級のうち、ご自身の後遺症が何級に相当するかを見極め、慰謝料を請求する相手に示すことです。何級に該当しうるのかは、厚生労働省の障害等級表を参考にしてみてください。障害等級表は労災保険に適用されるものですが、労災以外でも考え方は原則同じです。

障害等級を検討するにあたっては、治療直後から治療終了時までに受けた医学的な検査結果が重要になります。

後遺障害慰謝料の請求には医学的な検査結果が重要

どんな後遺症が残るのかは千差万別なので、骨折だから必ず後遺障害何級になるという断定はできません。そして、個々人が負う後遺症を示すには医学的な検査結果が根拠になります。

単に「骨折によって腕にしびれが残った」と主張するだけでは自覚症状と言われてしまう可能性があり、後遺障害慰謝料の交渉は難航する恐れがあるでしょう。そこで、しびれなどの神経症状の存在を示すために、画像検査(MRI、CT、レントゲン)が重視されています。

あるいは骨折後に腕や足が曲がらなくなった場合には、医師に関節可動域の測定をおこなってもらうこともポイントです。「腕が曲がりません」というのではなく、「腕がどの程度までしか曲げられないのか」を検査結果で示す必要があります。

このように適正な金額の後遺障害慰謝料を受けとるには、まず適切な後遺障害等級を認めてもらうことが必要です。

骨折の慰謝料に関するよくある疑問と注意点

ここからは骨折の慰謝料についてよくある疑問と注意点を解説していきます。

リハビリ費用は請求できる?

リハビリも治療に含まれるため、リハビリ費用、通院交通費、慰謝料などの請求が可能です。

ただし症状固定後のリハビリは治療期間に含まれません。

症状固定とは?

一般的に、医学的に認められた治療を続けても、症状の改善が見込めなくなったこと

症状固定は医師の見解が尊重されます。医師によって「症状固定」と判断されるまでは治療の一環としてのリハビリですが、症状固定後のリハビリについては治療には含まれません。

ギプス中の自宅安静は治療に含まれる?

骨折は、ギプスで固定して安静にすることも治療の一環です。しかし、相手方から「治療期間に対して、実際に通院した日数が少ない」などと言われ、入通院慰謝料の減額提示を受ける可能性があります。

たしかに、入通院慰謝料は通院頻度によって減額されるケースもあります。しかし、医師の指示にしたがっているなど正当な理由があるときには、通院頻度だけを理由とした減額は不適切なものとして交渉するべきでしょう。

このように、相手からの減額提示は必ず受け入れるべきとも限りません。弁護士に相手との交渉を任せることで、不適切な減額に臆することなく交渉可能です。

慰謝料以外に請求できるものは?

慰謝料は、被害者の損害のうちの精神的苦痛の部分に過ぎません。損害を算定するときには、他にも積極損害と消極損害という損害に注目すべきです。

積極損害とは、骨折によって支払いを余儀なくされた出費をさします。
治療費や入院費用、通院交通費、松葉づえや車椅子の購入費などがあげられるでしょう。

消極損害とは、本来得られるはずだった利益を骨折によって失ったという損害をさします。
たとえば、骨折の治療で仕事を休んだ場合は給与を得られません。あるいは有給休暇を使って休むことになるでしょう。欠勤により給与を受けとれなかったり、有給を利用せざるを得なかった場合も「休業損害」の請求が可能です。

すべての損害を洗い出し、ひとつずつ丁寧に算定していくことで、請求すべきトータルの金額がみえてきます。

後遺障害が残ったなら逸失利益にも注目

後遺障害が残ったことで将来の収入が減ったり、働けなくなることも損害といえます。この損害は逸失利益といい、重傷事案では数百万円~数千万円にもなる可能性があるものです。

とくに若い方、収入の多い方、後遺障害の程度が重い方は高額になる可能性があります。逸失利益の計算方法については、関連記事『後遺症が残った事故の逸失利益|計算方法と職業別の具体例、相場はいくら?』で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

重い後遺障害を負ってしまった場合は特に、損害賠償金額の見積もりを弁護士に依頼することは有効な手段です。慰謝料、逸失利益を含む損害の見積もり依頼をしてみませんか。

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お取り扱いできない事案もあります。詳しくは受付にご確認ください。

アトム法律事務所 岡野武志弁護士

骨折の慰謝料請求に関する裁判例

骨折などの怪我を負い、裁判において慰謝料などの損害賠償請求が争われた事例を紹介します。
判例はひとつの参考として、実際に請求しうる慰謝料額などは弁護士に見積もってもらうようにしましょう。

事例(1)解体工事中の転落事故で頭がい骨骨折、高次脳機能障害

被害者は、塗装工事現場の足場解体中に転落してしまいました。病院では頭がい骨骨折、左鎖骨骨折、左腸骨骨折、広範性軸索損傷などと診断されたのです。懸命に治療を続けましたが、次のような後遺症が残ってしまいました。一部を抜粋します。

  • 高次脳機能障害
  • 構音障害
  • 歩行障害

裁判の結果、入通院慰謝料352万円後遺障害慰謝料2,200万円のほか、逸失利益として約3,658万円、将来介護費として約1,040万円などが認められました。(広島地方裁判所呉支部 平成26年(ワ)第134号 損害賠償請求事件 平成30年9月28日)

この事故は労災事故でもあったため労災保険の給付対象とされました。しかし、労災保険から慰謝料は給付されません。被害者は、安全帯の確実な使用を指導・監督するなどの安全配慮義務に違反したとして、下請け会社への損害賠償請求を起こしました。被害者にも4割の過失があると判断されたものの、残りの6割について請求が認められたのです。

労災事故は、会社に対して責任を問えるケースもあります。どういったときに慰謝料が請求できるのか、詳しい解説は関連記事をご覧ください。

事例(2)交通事故で鎖骨の変形・右腕にしびれが残った

被害者は、交通事故によって右上腕骨骨幹部骨折、左鎖骨骨折、多発肋骨骨折などの重傷を負いました。なんとか一命をとりとめたものの、次のような後遺症が残ったのです。一部を抜粋します。

  • 左鎖骨の変形障害
  • 右上腕の疼痛
  • 右橈骨神経領域しびれ

後遺障害は併合11級と判断され、入通院慰謝料250万円後遺障害慰謝料420万円、そして夫の死にも比肩するほどの精神的損害を受けたとして妻に100万円の慰謝料が認められました。

さらに、事故直後の加害者の態度やその後の供述変遷などから、反省と謝罪の意思がうかがえないものとして、裁判所はさらに100万円の慰謝料増額の判決を下しました。(横浜地方裁判所 平成23年(ワ)第6334号 損害賠償請求事件 平成25年1月31日)

事例(3)デイサービスで転倒して骨折、右股関節の機能障害

デイサービスの利用者が、入浴介護サービスの利用中に転倒して左大腿骨転子部を骨折しました。通院治療を受けましたが完治せず、次の後遺症が残りました。

  • 右股関節の機能障害

後遺障害は12級相当と判断され、入通院慰謝料180万円後遺障害慰謝料290万円などの損害賠償請求が認められました。(青森地方裁判所弘前支部 平成23年(ワ)第97号 損害賠償請求事件 平成24年12月5日)

介護施設は利用者に対する安全配慮義務を負います。スタッフは故意ではないものの、一時的に利用者から目を離して他の対応をしていました。裁判所はこの点にスタッフの注意義務違反を認定し、使用者責任に基づいて事業者に賠償を命じました。

使用者責任とは、雇用するスタッフが賠償責任を負うとき、雇用主である会社も賠償責任を負うことをいいます。個人に賠償請求をしても、適切に支払いを受けられるかという点は不安が多いものです。誰に、どんな法的根拠を元に請求するのかが重要といえます。

骨折の慰謝料|弁護士に見積もりと交渉を任せよう

慰謝料の金額は、そもそも目に見えない精神的苦痛を金銭化しようというものです。領収書やレシートがないため、金額面で最初から完全に合致することは難しいでしょう。

つまり、被害者が納得のいく慰謝料額を獲得するには交渉力が重要になってくるのです。

慰謝料の交渉を弁護士に任せるべき理由

弁護士であれば、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の適正な見積もりができます。

骨折については治療期間が長引いたり、何らかの後遺症が残る可能性も考えられます。相手方から金額提示を受けた際にも、これまでの判例や事例も参考にしながら、妥当性の判断が可能です。

また、弁護士は被害者の代理人になれるので、交渉のすべてを任せることができます。
仕事や家事などの日常生活と慰謝料の交渉を並行させるのは非常に困難なので、交渉ごとを弁護士にすべて任せられることは大きなメリットとなるでしょう。

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事故で骨折したことで、大きな後遺障害が残ってしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

  • 不当に低い慰謝料で終わりたくない
  • 相手の提示する慰謝料額が正しいかを判断できない
  • 法的根拠に基づいてきぜんとした交渉したい

こういったお悩みが解決できる可能性があります。
相手に対して慰謝料請求するべきケースかどうかも含めて、一度弁護士に相談してみませんか。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了