老人ホームでの怪我は誰が補償する?責任の所在と損害賠償請求のポイント | アトム法律事務所弁護士法人

老人ホームでの怪我は誰が補償する?責任の所在と損害賠償請求のポイント

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老人ホームで怪我|損害賠償請求すべき?

老人ホームで過ごしている親や祖父母が怪我をしたと連絡を受け、ご家族は居ても立っても居られないでしょう。怪我の程度はもちろん、なぜそんな怪我をしてしまったのかを知りたいと思うのも当然です。

この記事では、老人ホームでの怪我をした場合の補償や責任問題について解説します。老人ホーム側に怪我の責任がある場合には損害賠償請求が認められますので、どういったときに責任を問えるのかも知っておきましょう。

老人ホームでの怪我|補償の求め方と損害賠償請求の基礎知識

老人ホーム側に説明を求めよう

老人ホーム内で、どのようにして怪我が起こったのか説明を求めましょう。

また、老人ホームなど介護施設で事故が起こった場合には「介護事故報告書」を作成しなくてはならない決まりになっています。怪我の一報は口頭報告になると考えられますが、最終的には「介護事故報告書」も見せてもらってください。

老人ホーム側からの説明について「何かを隠しているのではないか」「事実と違う説明ではないか」と感じた場合には、できるだけ早急に対処しなくてはなりません。

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補償に関する話し合いから始めよう

怪我の損害賠償については、老人ホーム側との話し合い(示談交渉)から始まります。示談交渉でも折り合いがつかない場合には、裁判所の調停を利用して第三者に入ってもらうことで、話し合いがまとまりやすくなる可能性があります。

そして、調停での解決が難しい時には裁判へと移ることになるでしょう。裁判でご家族が問えるのは民事上の損害賠償義務に限られますが、刑事上の刑罰・行政上の処分についても別途問われる可能性はあります。

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損害賠償請求額には相場がある

たとえば、損害賠償請求項目の一つである慰謝料は、被害者が怪我によって負った精神的苦痛を緩和するために支払われる金銭を指します。

精神的苦痛の感じ方には個人差があるとはいえ、一人ひとりの言い値が採用されることもありません。個人差や不公平感をできるだけなくすためにも、おおよそ交通事故の慰謝料算定基準を元に計算されることが多いです。

「だいたいこれくらいは請求できるだろう」と個人で慰謝料の算定をするのは難しいでしょう。老人ホームとの交渉を難航・長期化させないためにも、相場は押さえておきましょう。なお、弁護士に賠償金見積もりを相談する方法もおすすめです。

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裁判で争点となりやすいこと

老人ホームとの示談交渉や調停がうまくいかなかった場合、裁判へ移ることになります。つまり、双方で譲れない部分があるために裁判は行われるのです。

裁判の争点は「老人ホーム側に怪我の責任がどれほどあるのか」ということでしょう。なぜなら、責任があると認めた場合には損害賠償金を支払う必要があるからです。

ご家族は、怪我と介護の因果関係を示すためにも怪我の治療記録、事故報告書などの書類を証拠として収集しておきましょう。また、裁判を起こす場合には、書類や証拠の収集も一任できるので、弁護士に依頼することをおすすめします。

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老人ホームに怪我の補償を求めることはできる?

怪我に関する責任の所在はこう考える

老人ホームは、利用者に対して安全配慮義務というものを負っています。安全配慮義務とは、老人ホームの利用者が危険にさらされることなく、安全な環境で過ごせるように配慮することです。

安全配慮義務違反により怪我をしたならば、老人ホームに怪我の責任があると判断でき、利用者側の損害賠償請求が認められる可能性があります。

安全配慮義務違反の判断には、次の2点が注目されます。

  1. 老人ホームとして怪我の発生を予測・回避できたか
  2. 老人ホームの取った措置は適切であったか

安全配慮義務違反に問えるかどうかは極めて重要なポイントになりますが、そのぶん個別具体的な検討が必要です。

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転倒して怪我

老人ホーム内で転倒して怪我をしてしまった場合、その転倒原因次第では、老人ホームに対して損害賠償請求が認められる可能性があります。

損害賠償請求が認められる可能性があるケースとしては、転倒が予測でき、適切に対応することで回避できたと考えられる場合です。以前にも転倒をしていたり、転倒リスクが高いことを把握していた場合には、必要な予防策をとらなかったとして損害賠償請求が認められる可能性があります。

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入浴中の怪我

入浴は、転倒・溺水・ヒートショックなどのリスクがあり、とくに高齢者が入浴する際には周囲の配慮が必要です。

老人ホームは入浴の危険性を十分把握して対策しなくてはなりません。対策が不十分であったために利用者が怪我をした場合には、その怪我の損害賠償請求が認められる可能性は十分あるでしょう。

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徘徊して怪我

老人ホーム内を徘徊してしまったり、老人ホームから出ていってしまって怪我をした場合には、老人ホームに対してどこまで損害賠償請求が認められるでしょうか。

損害賠償請求を検討する場合には、老人ホームが、利用者の徘徊を予測できたか、徘徊を予防するための対策を講じていたのか、老人ホームから容易に外へ出られないように設備を整えていたかなどを検討しましょう。

こういった対策を怠ったために徘徊、怪我をした場合には、損害賠償請求が認められる可能性があります。

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移乗介助中の怪我

老人ホームでは、ベッドから車椅子へと移動するときや、車椅子からトイレの便座へ移るなど、利用者の状況に合わせた移乗介助が行われています。

適切な介助が行われないと、利用者の身体が落下してしまったり、転倒事故にもつながりかねません。また、摩擦によって皮膚損傷を起こす可能性もあります。

介助者の人数は適切であったのか、移乗に適したベッドの高さに設定されていたのかなど移乗時の安全面に注目して損害賠償請求の可否を検討すべきです。

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施設・設備の不具合で怪我

老人ホームは、利用者が安全に生活を送れるように整備されるべきです。

老朽化や点検不備によって、施設や設備の安全性が通常以下になっていたために怪我をした場合には、老人ホームに怪我の責任があるものとして、損害賠償請求が認められる可能性があります。

例えば手すりが古くなっていて体重を預けた際に破損して転倒してしまったり、転落防止用の柵がさび付いていて転落防止には不十分なために怪我をした、といったことも損害賠償請求の対象となりうるでしょう。

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老人ホームでの怪我について相談したい人へ

老人ホームで家族が怪我をしてしまい、まずどのような対応を取るべきなのか、今後どのように解決に向けて進めばいいのかを悩んでいる方には、弁護士への法律相談をおすすめします。

弁護士に相談するとこんなメリットがある

老人ホームでの怪我を弁護士に相談することで、次のようなメリットが得られるでしょう。

  • 法律の専門家視点でアドバイスしてもらえる
  • 損害賠償金額の算定をしてくれる
  • 老人ホームとの交渉を一任できる

老人ホームでの怪我について、まずは損害賠償請求が認められうるのか、見解を聞くことができます。そして、損害賠償請求額を見積もってもらい、その交渉までも任せることができるので、ご家族の負担軽減にもなるのです。

また、もしも示談交渉や調停では話がまとまらず、裁判になった時も弁護士がいれば対応を任せられます。

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老人ホーム内で発生した事故で、ご家族に重い後遺症が残ってしまったり、ご家族が亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の弁護士による無料の法律相談をご活用ください。この法律相談は弁護士との正式契約前になるので、法律相談をしてから実際に契約するのかを検討していただければ十分です。

  • 家族に重篤な後遺症が残ってしまったけどどうすればいいのか
  • 老人ホーム側から提示された示談案が妥当か判断できない
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これらのお悩みを解決できる可能性があります。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了