老人の徘徊による事故の現状や責任の所在、損害賠償額の相場を解説 | アトム法律事務所弁護士法人

老人の徘徊による事故の現状や責任の所在、損害賠償額の相場を解説

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老人の徘徊による事故損害賠償額の相場

認知機能が衰えている場合が多い老人の方は、徘徊による事故を起こしがちです。老人の方はときに予想だにしない行動を取るため、扱いに慣れている介護施設の職員であっても制御できない場合があります。

今回は老人の徘徊事故の原因や責任の所在、損害賠償額を紹介します。施設側とのトラブルで困った時の相談先も紹介するので、ぜひご一読ください。

老人の徘徊事故の現状

徘徊とは、目的もないのにさまざまなところを動き回る行為を差します。ほんの少し目を離した隙にいなくなってしまうため、徘徊を止めるのは困難を極めます。

実際に老人の徘徊が原因で事故を起こすケースは少なくありません。こちらでは老人が徘徊する原因や徘徊事故の件数を解説します。

徘徊の原因は認知症

徘徊は、認知症の症状として現れます。すべての人に出るとは限らず、個人の性格や生活環境などに左右されます。

認知症は、交通事故や転落事故などに見舞われるリスクも少なくありません。認知症患者は「夕暮れ症候群」といい、夕方になると徘徊行動を取る特徴を持っています。

夕方は晩御飯の準備をしたり、子どもの送迎をしたりとせわしない時間帯です。「自分はじっとしていていいのだろうか…?」と焦りを感じ、動き回ってしまいます。家族に認知症患者がいるならば、夕方の行動には特に監視の目を強めましょう。

徘徊事故の件数

認知症が原因で行方不明になった件数は、年々増加の一途を辿っています。2013年から7年連続で過去最多を更新しており、統計を取りはじめた2012年から1.8倍に増加しています。

実際の数をみると、2015年は1万2,208人でしたが、2019年には1万7,479人にまで増えました。このうち警察や家族が身柄を拘束できた件数が1万6,775人、死亡してしまったケースが460件です。内訳をみると女性よりも男性の方が多く、都道府県別では大阪府が一番多くなっています。(参考:警察庁「令和元年における行方不明者の状況」)

日本では今後、高齢化社会がさらなる進展を遂げることが確実視されています。予備軍も含めると65歳以上の4人に1人が認知症なので、認知症患者の数は今後も増加するでしょう。

老人の徘徊事故における責任の所在

ひとたび徘徊事故が起きれば、責任はどこにあったか厳しく追及される可能性が高いです。

徘徊事故の場合、介護施設だけではなく、状況によっては家族の責任が問われる可能性もあります。それぞれの具体的な状況を見ていきましょう。

介護施設が負う責任

介護施設における徘徊事故で損害賠償請求が認められるには、介護施設が安全配慮義務違反を起こしている必要があります。安全配慮義務違反がある場合は介護施設に過失が認められるため、損害賠償請求が可能となるのです。

安全配慮義務に違反したといえるのは、介護施設が徘徊による事故の可能性を認識していたにもかかわらず、徘徊を防止するのための措置を行っていない場合です。

具体的には、以下のような事実の有無などから判断を行います。

  • 利用者が介護施設から無断で外出しようとしたことがあるのか
  • 利用者が徘徊しないように監視できる体制があったのか
  • 利用者が無断で外出できないような設備が整っていたのか
  • 利用者が徘徊してしまった場合に発見できるような措置をとっていたのか

たとえば、利用者が介護施設を抜け出し戻ってくるのが困難な状況が想定できるのであれば、介護施設は利用者が介護施設を出られないように処置を行わなければなりません。

損害賠償の法的な根拠は民法709条の不法行為、もしくは民法415条の債務不履行です。また安全配慮義務違反があった場合でも、損害賠償の範囲は利用者が介護施設を抜けだしたことにより発生した損害に限られます。

徘徊老人の家族が責任を負う場合もある

自宅から飛び出たことが原因で発生した事故については、家族に損害賠償責任が課せられる場合もあります。
家族が民法714条にいう監督義務者に該当する場合は、家族に監督義務違反があるとして、損害賠償責任を負う可能性があるのです。

ここでは事案とともに、監督義務者の責任について解説します。

2007年、認知症の男性が徘徊中に電車に轢かれるという事故が起きました。JR東海は遺族の妻に対し、監督義務を全うしていないとして720万円の損害賠償請求を行っています。
このケースでは最終的に家族が監督義務者に該当しないと判断されたため、損害賠償請求は棄却されました。

監督義務者と判断されてしまうと、原則として損害賠償責任を負うこととなり、監督義務を怠らなかったことを証明する必要があるとに注意してください。

徘徊事故の損害賠償事例

裁判を提起し、介護施設側に安全配慮義務違反が認められるのであれば、被害者側は賠償金を得られます。判例を参考に、賠償金がどれほど得られるか見ていきましょう。

介護施設に責任がないとした判例

デイサービスセンターにおいて認知症の患者が、窓から抜け出し、事故に見舞われた事案です。

窓は通常ならば抜け出せない程の高さに位置しており、介護施設側は想定外の事案だと主張しています。
しかし、裁判所は介護施設側の安全配慮義務違反を認め、約280万円程度の賠償命令を発出しました。

今回のケースでは利用者は体を動かすには不自由がなかったこと、大人数でいると落ち着きがなくなり抜け出したい性質を持っていたことから、事故を予見するのは可能だったと認定しています。

事故当日も遊戯室内で大勢の中で落ち着きなく過ごし、介助者から何度も連れ出されていました。窓の高さも84cmと利用者の体格や健康状態を考え、決して脱出が不可能とはいえない状況でした。

客観的にみて脱出が不可能な高さに窓が位置していたのなら、介護施設側には非がないと捉えられ、賠償責任は生じなかったと推察されます。

介護施設に責任があるとした判例

デイサービスの高齢者が非常口から介護施設を抜け出し、低体温症にかかり死亡してしまった事案です。

利用者はアルツハイマー症を患っており、行動や意思疎通に日常的な困難を生じる状態でした。介護施設側は介護施設を抜け出す危険を予知することは難しく、設備の対策は万全だったと主張しています。

しかし、裁判所は介護施設の安全配慮義務違反を認定し、3,000万円の賠償命令を発出しました。利用契約時に作成するデイサービス計画には利用者に徘徊癖があると記載されていたこと、当日の朝には利用者が帰宅願望を示していたことなどが要因です。

裁判所は、介護施設は利用者の徘徊リスクを認識し、より注意深く利用者を監視すべきだったと述べています。

徘徊事故の相談先

多くの場合、徘徊事故に遭うのがはじめてなので対応に困るでしょう。法律知識が必要な場面もあり、一人で何とかしようとしない方が懸命です。

徘徊事故にあった場合、弁護士への相談を検討するといいでしょう。こちらでは、弁護士に相談するメリットを紹介します。

弁護士に相談がおすすめ

弁護士に相談することによるメリット

介護施設に預けていた家族が徘徊により事故を起こした場合、介護施設側と今後の対応について話合いの機会が設けられます。謝罪や事故当時の状況説明を受けたり、賠償額の提示を受けたりするでしょう。

しかし、介護施設側の説明がすべて事実だとは限りません。自分たちへの責任追及から逃れるために、事実を隠ぺいする可能性もあります。
また、事故の状況をよく知らない家族にとってはよくわかっていないながらも、介護施設側の説明に納得せざるを得ない一面もあるでしょう。

介護施設側の説明や提示する賠償金額に納得がいかない場合は、専門家である弁護士に相談しましょう。介護施設の説明や提示した賠償金額が適切であるのかについて知ることが可能です。
また、こちらから賠償金額を提示するのであれば、法律の根拠にもとづいた請求が必要となるので、弁護士に相談の上で提示を行うべきでしょう。

また、弁護士に依頼すれば介護施設側との交渉を代わりに行ってくれるので、介護施設側に言いくるめられるという危険もありません。裁判に発展した際にそのまま手続きを依頼できる点もメリットです。

他にも、家族の監督義務違反が問題となった場合には、監督義務違反がないことを明らかにする必要があるため、専門家である弁護士に証明方法を確認すべきでしょう。

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徘徊事故でご家族がお亡くなりになったり重大な後遺障害を負ってしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了