老人の徘徊による事故の現状や責任の所在、損害賠償額の相場を解説 | 事故弁護士解決ナビ

老人の徘徊による事故の現状や責任の所在、損害賠償額の相場を解説

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老人の徘徊による事故損害賠償額の相場

この記事でわかること

  • 徘徊事故は年々増えており、2019年は過去最高の件数を記録している
  • 徘徊事故では家族の監督責任が問われる可能性もある
  • 施設側との交渉や適切な賠償額の算定に戸惑うなら弁護士に相談しよう

認知機能が衰えている場合が多い老人の方は、徘徊による事故を起こしがちです。老人の方はときに予想だにしない行動を取るため、扱いに慣れている介護施設の職員であっても制御できない場合があります。

今回は介護施設における老人の徘徊事故の原因や責任の所在、損害賠償額を紹介します。施設側とのトラブルで困った時の相談先も紹介するので、ぜひご一読ください。

老人の徘徊事故の現状

徘徊とは、目的もないのにさまざまなところを動き回る行為を差します。ほんの少し目を離した隙にいなくなってしまうため、徘徊を止めるのは困難を極めます。

実際に老人の徘徊が原因で事故を起こすケースは少なくありません。こちらでは老人が徘徊する原因や徘徊事故の件数を解説します。

認知症の症状

徘徊は、認知症の症状として現れます。すべての人に出るとは限らず、個人の性格や生活環境などに左右されます。

認知症は、交通事故や転落事故などに見舞われるリスクも少なくありません。認知症患者は「夕暮れ症候群」といい、夕方になると徘徊行動を取る特徴を持っています。

夕方は晩御飯の準備をしたり、子どもの送迎をしたりとせわしない時間帯です。「自分はじっとしていていいのだろうか…?」と焦りを感じ、動き回ってしまいます。家族に認知症患者がいるならば、夕方の行動には特に監視の目を強めましょう。

徘徊事故の件数

認知症が原因で行方不明になった件数は、年々増加の一途を辿っています。2013年から7年連続で過去最多を更新しており、統計を取りはじめた2012年から1.8倍に増加しています。

実際の数をみると、2015年は1万2,208人でしたが、2019年には1万7,479人にまで増えました。このうち警察や家族が身柄を拘束できた件数が1万6,775人、死亡してしまったケースが460件です。内訳をみると女性よりも男性の方が多く、都道府県別では大阪府が一番多いです。(参考:警察庁「令和元年における行方不明者の状況」)

日本では今後、高齢化社会がさらなる進展を遂げることが確実視されています。予備軍も含めると65歳以上の4人に1人が認知症なので、認知症患者の数は今後も増加するでしょう。

介護(徘徊)事故における責任の所在

ひとたび徘徊事故が起きれば、責任はどこにあったか厳しく追及される可能性が高いです。徘徊事故に限らず、介護事故では施設側に安全配慮義務違反があったかどうかが争点です。

また、徘徊事故の場合、状況によっては家族の責任が問われる可能性もあります。それぞれの具体的な状況を見ていきましょう。

安全配慮義務

介護施設における徘徊事故で損害賠償請求が認められるには、施設側が安全配慮義務違反を起こしている必要があります。安全配慮義務に違反したといえるのは、施設側が事故の可能性を認識していたにもかかわらず、事故防止のための措置を行っていない場合です。

たとえば、利用者が施設を抜け出し戻ってくるのが困難な状況が想定できるのであれば、施設側は利用者が施設を出られないように処置を行わなければなりません。

損害賠償の法的な根拠は民法709条の不法行為、もしくは民法415条の債務不履行です。また安全配慮義務違反があった場合でも、損害賠償の範囲は利用者が施設を抜けだしたことにより発生した損害に限られます。

家族の監督責任が問われる場合も

自宅から飛び出たことが原因で発生した事故については、家族に賠償責任が課せられる場合もあります。ここでは事案とともに、監督責任の所在を解説します。

2007年、認知症の男性が徘徊し、電車に轢かれるという事故が起きました。JR東海は遺族の妻に対し、監督責任を全うしていないとして720万円の損害賠償請求を行っています。このケースでは最終的に家族の監督責任が否定され、賠償請求は棄却されました。

徘徊事故の損害賠償

裁判を提起し施設側に安全配慮義務違反が認められるのであれば、被害者側は賠償金を得られます。判例を参考に、賠償金がどれほど得られるか見ていきましょう。

裁判例を確認(1)

デイサービスセンターにおいて認知症の患者が、窓から抜け出し、事故に見舞われた事案です。

窓は通常ならば抜け出せない程の高さに位置しており、施設側は想定外の事案だと主張しています。しかし、裁判所は施設側の安全配慮義務違反を認め、約280万円程度の賠償命令を発出しました。

今回のケースでは利用者は体を動かすには不自由がなかったこと、大人数でいると落ち着きがなくなり抜け出したい性質を持っていたことから、事故を予見するのは可能だったと認定しています。

事故当日も遊戯室内で大勢の中で落ち着きなく過ごし、介助者から何度も連れ出されていました。窓の高さも84cmと利用者の体格や健康状態を考え、決して脱出が不可能とはいえない状況でした。

客観的にみて脱出が不可能な高さに窓が位置していたのなら、施設側には非がないと捉えられ、賠償責任は生じなかったと推察されます。

裁判例を確認(2)

デイサービスの高齢者が非常口から施設を抜け出し、低体温症にかかり死亡してしまった事案です。

利用者はアルツハイマー症を患っており、行動や意思疎通に日常的な困難を生じる状態でした。施設側は施設を抜け出す危険を予知することは難しく、設備の対策は万全だったと主張しています。

しかし、裁判所は施設側の安全配慮義務違反を認定し、3,000万円の賠償命令を発出しました。利用契約時に作成するデイサービス計画には利用者に徘徊癖があると記載されていたこと、当日の朝には利用者が帰宅願望を示していたことなどが要因です。

裁判所は、施設側は利用者の徘徊リスクを認識し、より注意深く利用者を監視すべきだったと述べています。

介護事故の相談先

多くの場合、介護事故に遭うのがはじめてなので対応に困るでしょう。施設側や事故の詳細について疑念を抱く場合、一人で何とかしようとしない方が懸命です。

介護事故にあった場合、弁護士への相談を検討するといいでしょう。こちらでは、弁護士に相談するメリットを紹介します。

弁護士に相談がおすすめ

施設に預けていた家族が徘徊により事故を起こした場合、施設側と今後の対応について話合いの機会が設けられます。謝罪や事故当時の状況説明を受けたり、賠償額の提示を受けたりするでしょう。

しかし、施設側の説明がすべて事実だとは限りません。自分たちへの責任追及から逃れるために、事実を隠ぺいする可能性もあります。また、事故の状況をよく知らない家族にとってはよくわかっていないながらも、施設側の説明に納得せざるを得ない一面もあるでしょう。

交渉を有利に進めるために、介護事故の経験が豊富な弁護士への相談をおすすめします。状況に応じた賠償額の相場を知っているので、適切な賠償を得られやすくなります。裁判に発展した際にそのまま代理人を依頼できる点もメリットです。24時間受付対応している弁護士事務所も少なくないので、困っている方はお気軽にお問合せください。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点