介護施設で親が怪我!取るべき初期対応と損害賠償請求の検討
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介護施設に任せていれば安心と思っていたところ、親御さんが怪我をしてしまったとの一報が入れば、誰だって驚いてしまうでしょう。
この記事では、施設で親が怪我をしてしまった場合の対応と、今後考えていくべき展開を説明します。
結論から言いますと、怪我をしたいきさつ次第では、施設に対して適切な損害賠償を請求する必要が出てきます。損害賠償を請求するべきかを検討するステップをみていきましょう。
目次
介護施設で親が怪我をした|必要な対応と今後の展開
施設側から説明を受けよう
介護施設で事故が起こった場合、施設側は「介護事故報告書」を作成しなくてはなりません。この介護事故報告書には事故発生の原因、再発防止策などがまとめられていて、利用者やその家族は書類を閲覧できます。
まずは口頭でも良いので事故の概要を説明してもらったら、「介護事故報告書」も確認させてもらいましょう。
あってはならないことですが、施設側が何か隠しているのではないか、事実と異なるのではないのかと感じた場合には、早急な対処が必要です。
介護施設の転倒事故は隠す場合がある?隠されたと感じた時の対処法
損害賠償請求を検討しよう
まずは示談交渉(話し合い)にて解決する道を模索するのが一般的です。そして、示談交渉での解決が難しい場合には裁判所の調停委員に介入してもらう調停、調停でも難しい場合は裁判へと移行する流れになります。
損害賠償請求は、損害賠償請求権を持つ人が行わなくてはなりません。被害を受けた本人のほかにも、相続人、配偶者・子・父母などが損害賠償請求権者に該当します。また、複数の請求者がいる場合は代表を決めるなどの手続きが必要です。
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損害賠償額の相場を知っておこう
介護事故での損害賠償金額をどれくらい請求できるのかは、受けた損害の内容次第です。
たとえば、後遺症が残るほどではないものの、入院が必要になった場合には、治療費、入院費用、通院交通費、入通院慰謝料などが代表的な請求項目といえます。
入通院慰謝料は一律で決まっているわけではありませんが、交通事故の慰謝料を算定する際の基準を参考にして決められることも多いものです。
あまりに法外な金額を請求しても相手が受け入れることはありませんし、相手方とのやり取りが長期化してしまいます。損害賠償請求においては相場観を知っておくことや、法律相談を利用して弁護士に見積もってもらうことがおすすめです。
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裁判で争点となりやすい項目を知っておこう
介護施設側に怪我の原因があったと認められた場合に、施設側は損害賠償をしなくてはなりません。そのため介護施設側に落ち度があったのかという点は特に意見が対立しやすい重要項目です。
裁判を有利に進めるためには必要な書類や手続きが存在します。弁護士のサポートを受けながら、介護記録や診療記録、必要に応じて書類の保全手続なども検討しましょう。
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介護施設へ法的責任を問える?怪我の事例別に考える
介護施設の責任を問えるのかを判断するポイント
施設は利用者に対して安全配慮義務を負っています。安全配慮義務とは、施設の利用者が危険な目にあうことなく、安全に過ごせるようにすることです。
この安全配慮義務を怠ったことが怪我の原因ならば、施設側に落ち度があったといえるでしょう。
安全配慮義務違反に当たるのかを判断するポイントは、施設側が怪我を予測・回避できたか、回避措置は適切であったかということです。
たとえば、親御さんが以前から何度か施設内で転倒してしまっており、今回ついに転倒して骨折した場合を考えてみましょう。この場合、施設側として親御さんの転倒は予測できたはずですし、今回の転倒に至るまでに原因と向き合い、対策をとるべきでした。
それらを怠ったため、安全配慮義務違反に問える可能性が高いのです。
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転倒は防ぎようがなかったのか
介護中に親御さんが転倒して怪我をしてしまった場合、介護施設側に責任を問える可能性があります。身体的な不自由さや認知機能が衰えている利用者が転んで怪我をすることがないよう、施設側には適切な介助が求められるのです。
もっとも、どのような経緯で転倒してしまったのかを明らかにすることが重要です。例えば、親御さんが通常では予測できないような行動を起こして転倒してしまうなど、施設側にも防ぎようがない転倒だった場合には、責任を問うことは難しいといえるでしょう。
入浴中の事故は避けられないものなのか
入浴中や浴室内で起こる事故・怪我の多くは、転倒、溺水、ヒートショックの3つと言われています。つまり、施設側はこれらが起こらないように対策をとることが求められるのです。
介助や見守りは適切であったか、ヒートショックを起こさないように浴室内の温度は測定・調節されていたのかなどを確かめましょう。
入浴はリスクの高い行動だからこそ「起こっても仕方ないよね」と済ませるのではなく、「本当に避けられなかったか」に着目すべきです。
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親が徘徊して怪我をしたら自己責任なのか
認知機能の低下によって、親御さんが施設内を徘徊してしまったり、徘徊して外へ出ていってしまい怪我をすることも起こりえます。そうして徘徊しているときに怪我をしてしまったら、施設は何の責任も負わないものでしょうか。
結論から言いますと、介護施設側に責任を問える可能性はあります。たとえば、介護施設側は親御さんが徘徊する可能性を認識していたのに、徘徊防止策をとっていない場合です。
「徘徊という行動の結果だから」と泣き寝入りするのではなく、利用者を監督する体制は十分であったか、無断で外出できないような設備を整えていたのかなど、個別具体的な判断が必要です。
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移乗介助を受けていて怪我をすることはあるのか
ベッドから車椅子へ移動したり、トイレの便座へ座るために移動するなど、高齢になってくると移動そのものに介助が必要になる場合があります。
移乗介助は介護側にも身体的負担がかかる大変な介護のひとつで、ひとつ間違えれば利用者の転倒・転落や、皮膚損傷につながるなど、怪我のリスクを伴うものです。
移乗介助は複数名で行われていたのか、ベッドの高さや車椅子のフットレストの位置は適切であったのかなど、移乗介助に関して安全が確保されていたのかはポイントといえるでしょう。
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車椅子からの転倒事故・転落事故で介護施設へ責任は問える?
施設からの送迎時の怪我は責任を問えるのか
デイサービスの送迎中の事故についても、施設側に責任を問える可能性があります。送迎業務のマニュアルは安全性を確保するのに十分な内容か、マニュアルに沿った業務が行われていたのかなどを確かめましょう。
もっとも帰宅した居宅内での転倒などは、どこまでを「送迎サービス」と見なされるかがポイントになりますので、デイサービス利用時の契約内容次第といえます。
送迎事故といっても様々な事故類型があります。損害賠償請求を検討している方は、どういった点が損害賠償請求に影響を与えうるのかを知っておきましょう。
デイサービスの送迎事故|損害賠償請求方法と内容、事例別の重要ポイント
施設・設備の老朽化は怪我の原因になりえる
施設の利用者が安全に過ごすためには、施設側の設備が安全なものである必要があります。
たとえば、介護施設での事故として多い事故類型が、転倒・転落事故です。利用者が窓を開けようとしたところ、老朽化した窓枠や柵が壊れ、転落してしまうようなケースでは、設備が本来有すべき安全性に欠けていた場合、施設・設備に瑕疵があるものとして責任を問える可能性があります。
介護施設での転落事故はなぜ発生する?原因と利用者側の対応方法を解説
親が施設で怪我をしたことを誰に相談したらいい?
親御さんが施設で怪我をしてしまい、どう対応するべきかを悩んでいる方への相談相手として、弁護士をおすすめします。
弁護士をおすすめする理由
弁護士に相談すれば、まず法律の専門家という立場からみた見解を聞けます。
介護施設で快適に過ごしていると思っていた親御さんが怪我をしてしまうと、お子さんとしては気が動転しますし、何が起こったのか分からず不安な思いをされるでしょう。そんな精神状態の時に正しい判断をすることは難しいものです。
また、損害賠償請求金額の相場も見積もってもらえます。あまりに法外な金銭を要求しても通りませんし、逆に不当に低い補償で終わらせるべきでもありません。
さらには、弁護士に施設側との交渉を一任することで、ご家族のストレス軽減にもつながります。
介護事故の相談先は?窓口一覧と弁護士の法律相談がおすすめな理由
介護施設で怪我|無料の法律相談窓口のご案内
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まだ弁護士に依頼するとは決めていないという段階でも問題ありません。弁護士が強引な契約を迫ることは決してありませんので、法律相談後に契約をご検討ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了