車椅子での転倒事故の責任は?施設への責任について解説 | 事故弁護士解決ナビ

車椅子での転倒事故の責任は?施設への責任について解説

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介護施設|車椅子|転落事故の責任は?

この記事でわかること

  • 車椅子での転倒事故では、施設側の過失が争点になる
  • 損害が生じたからといって直ちに施設に過失があるとは認定されない
  • 施設への過失を問うためには、十分な証拠が必要となる

高齢化社会であることもあり、介護施設を利用している方はここ数年で急増しています。そのような中、特に転倒事故や転落事故の件数は介護事故の中でも多く、車椅子を利用中の転倒事故も数多く報告されているのが現状です。

そこで、本記事では、介護施設内での車椅子による転倒事故にフォーカスして解説を行います。

本記事が参考になれば幸いです。

車椅子での転倒事故の特徴

介護施設において転倒事故というのは、最も多い事故類型の一つとなっております。高齢者に身体面、認知面を十分に注意をしなければ転倒事故を防ぐことは難しいでしょう。介護施設もそのことを踏まえた予防について考えなければなりません。

まずは車椅子での転倒事故の特徴や事例について紹介をします。

車椅子での転倒事故の傾向について

車椅子での転倒事故としては、施設に入所してから2ヶ月以内が多く、入所時期が長くなればなるほど転倒事故も少なくなっていくという傾向にあります。施設に入所した時点では、利用者が新しい環境に慣れていないため、操作ミスなどで転倒をしてしまうことが多いためです。

また、介護職員も利用者の認知能力や運動能力を十分に把握出来ていないケースもあります。

このように、施設に入所当初は特に、転倒事故については気を付けなければなりません。

損害賠償請求の特徴

車椅子での損害賠償請求では、施設側の過失が認められやすいという特徴があります。たしかに転倒事故というのは、予防をすることが難しい事故であることは間違いありません。

しかし、高齢者が車椅子を利用している場合、施設としては車椅子からの転倒などが容易に想定されます。そのため、十分に予防をしておく必要があるといえ、その義務を果たしていない場合には過失があったといえるでしょう。

一方で、転倒事故は死亡や重大な後遺障害が生じやすいといった類型ではありません。誤嚥事故などの他類型と比較した場合、怪我の程度としては比較的軽いものであることが多いでしょう。そのため、賠償額自体は低額である場合が多いといえます。

事故の想定場面について

介護施設内での車椅子からの転倒事故では、施設職員が誤って車椅子に触れてしまい転倒した事例、施設利用者が車椅子を利用中に転倒してしまった事例、車椅子に移乗をする際に転倒をしてしまった事例など、さまざまな場面の事故が想定されます。

車椅子を利用している際には、車椅子ごと転倒することもあるかもしれませんし、利用者が車椅子からずり落ちて怪我することも考えられます。

介護施設の責任は?

車椅子での転倒事故が遭った際、介護施設や職員に責任はあるのでしょうか。

ここでは、いかなる場合に、施設や職員が責任を負うのかを解説します。

損害賠償請求を出来る場面

介護施設には、施設利用者の身体・生命を守る義務があります。そのため、そのような安全配慮義務に反した場合には、債務不履行があったとして損害賠償責任を負うことになります。

しかし、安全配慮義務に反したかどうかは、個別具体的に考えなければなりません。介護施設であった事故がすべて過失と捉えてしまうと、施設に対して過剰な責任を負わせることになってしまい、介護に萎縮が生じてしまいます。

損害賠償が認められた裁判例の紹介

熊本地判平成30年10月17日の裁判例について紹介します。病院内のトイレで車椅子から転倒した事例になりますが、介護施設でもほぼ同様に考えていいと思います。

この裁判例では、利用者(被害者)が車椅子を操作してトイレに行った際に、転倒し頭部を負傷しました。その結果、利用者は頚椎を損傷し、後遺障害が残ってしまいました。

この裁判例では、施設が利用者の歩行時のふらつきなどから転倒の危険性について予見をしていたこと、普段車椅子利用の際に安全ベルトが装着されていたことなどから、車椅子を操作する際には病院職員が十分に注意を払うことが必要であると認定されています。

そして、施設は利用者が一人でトイレに行ったりしようとした場合には、すみやかに介助できるよう見守る注意義務を負っていたと判断しており、その義務を果たしていなかったとして合計2,559万円の請求を認めました。

過失判断のポイント

上記の裁判例からもわかるように、施設側の過失を判断する際には、施設側が損害についての予見可能性があることが前提となります。

上記の裁判例において、病院側は事前に利用者の歩行状態や認知能力、性格等から利用者が一人で車椅子を操作してトイレに行くことが予想されたこと、その際に転倒する恐れがあったことが予見できるものでした。そして、その事故が予見できた場合、結果を回避することも十分に出来るという事案でした。

このように、施設の過失判断は、予見可能性を前提とした結果回避義務に違反したといえるのかを具体的に検討することが求められます。

車椅子転倒事故に遭った際に行うべきことは?

車椅子転倒事故の被害に遭ってしまった際に行うべき行動について解説をします。

転倒事故の具体的な状況についての聞き取りを行う

まずは、転倒事故がどのような状況で起こり、それによりどのような損害が生じたのかを介護施設から詳細に聞き取ることになります。介護施設には、施設利用者に対して具体的に説明を行う義務があります。

また、施設内にカメラなどが付いている場合は、その映像が残っている間に保全をしなければなりません。事故時に客観的な証拠があるのかの聞き取りも忘れずに行いましょう。

カルテ等の証拠を揃える

次に、カルテや業務日誌等の証拠を揃える必要があります。前述したように、過失の認定の際には、施設側の予見可能性や結果回避義務違反が必要となります。

事故前に、カルテや業務日誌で利用者の車椅子利用について、記載されていることもあるでしょう。そのような記載は、施設側の注意義務を考える上で参考になります。

また、直接車椅子の利用についての記載が無くても、身体面や認知面の記載がある場合には、同様に施設側の注意義務を認定する重要な証拠となります。

ただし、このような証拠は改ざんの恐れもありますので、施設の対応次第では、証拠保全手続きなど裁判所を通じた方法も検討するべきでしょう。

介護事故の相談先は弁護士へ

介護事故に遭ってしまった場合、一人で施設側と対応をすることは難しいかもしれません。また、法律的な知識も必要になり、交渉がうまくいかない場合は、裁判等になる可能性もあります。

介護事故に遭った場合は、弁護士に相談をすることでより有利に交渉や裁判を進めることが出来ます。

介護事故を多く扱っている弁護士に相談をすることで、泣き寝入りに終わることを防ぐことができるでしょう。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点