介護事故での慰謝料相場とは?請求をする際に必要な法的知識を解説 | アトム法律事務所弁護士法人

介護事故での慰謝料相場とは?請求をする際に必要な法的知識を解説

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介護事故の慰謝料相場は?請求に必要な法的知識

介護事故は高齢化が進むにつれ、近年特に問題視されています。中には、介護施設の過失により事故が発生するケースもあり、利用者やその家族が慰謝料を含む損害賠償請求をする場面も想定されます。

本記事では、介護事故の損害賠償請求をする際にどのような請求が考えられるか、基礎的なことから実際の裁判例まで紹介します。この記事が参考になれば幸いです。

介護事故の損害賠償金額とは?

まずは、介護事故の損害賠償金額がどのような要素から決定をするのかについて説明します。損害内容は慰謝料のほかに、積極損害・消極損害・弁護士費用など複数に分けることが可能です。

積極損害

積極損害とは、事故が生じたために支出を余儀なくされた費用のことをいいます。積極損害には、以下のようなものが挙げられます。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 入院雑費

これらの費用は、基本的にはかかった金額をそのまま請求します。そのため、費用がかかったという事実を証明できる領収書などはしっかりと保管をしておきましょう。

なお入院雑費については、1日あたり1,500円程度の請求となることもあります。

消極損害

消極損害とは、事故が生じていなければ得ることが出来ていたと考えられる利益のことで、以下のようなものが挙げられます。

  • 逸失利益
  • 休業損害

いずれも、基礎収入を前提に計算をしていくことになりますが、高齢者である場合は計算方法がやや異なりますので、この点は専門家と相談をしながら算出するほうがいいでしょう。

慰謝料

慰謝料は精神的苦痛に対して支払われる金銭補償のことをさし、3種類に分けて請求をすることが一般的です。どんな慰謝料が、どんな精神的苦痛に対して認められるのかを下表にまとめました。

慰謝料3種類

慰謝料の種類請求の背景
死亡慰謝料被害者が死亡した
後遺障害慰謝料後遺障害が残った
入通院慰謝料入院・通院を余儀なくされた

3種類の慰謝料のいずれかひとつしか請求をすることが出来ないということではありません。生じた損害に沿って複数の慰謝料を合計することになるでしょう。

弁護士費用

また、弁護士に依頼をした場合は、総損害額の1割程度弁護士費用と考えて、請求金額に上乗せをすることが実務上よくあります。

介護事故の慰謝料はどのようにして決まるのか

介護事故の際に請求できる損害の種類については前述したとおりですが、ここでは慰謝料について詳しく解説を行います。

また、実際に介護事故が生じてしまった際に介護施設に対してどのように請求をするべきか説明します。

【前提】慰謝料の相場に関する考え方

慰謝料の相場ですが、慰謝料額は一律に決まっているものではありません。そのため、事故類型や損害程度などを確認して、過去の判例を参考にすることになります。

もっぱら、交通事故の慰謝料算定基準「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(赤い本の基準)によって計算することも多いので、慰謝料相場の参考になるでしょう。

ここからは交通事故の慰謝料算定に用いられる基準を元に、慰謝料の相場をみていきます。

入通院慰謝料について

入通院慰謝料は、入院期間と通院期間がどのくらいであったかによって決めることが一般的です。入院している場合には通院のみよりも高額化しますし、入院・通院の期間が長いほど慰謝料の金額は増える傾向にあります。

たとえば、骨折で2ヶ月入院して、3ヶ月の通院治療を行った場合の慰謝料を、交通事故の基準に照らして計算してみましょう。以下の「慰謝料の算定表」をご覧ください。

入通院慰謝料の算定表(交通事故の慰謝料算定基準に照らした場合)

0月1月2月3月
0月053101145
1月2877122162
2月5298139177
3月73115154188

※表の横軸は入院月数・縦軸は通院月数
※慰謝料の単位は万円
※むちうち・打撲などの軽傷時は表よりも低額になる可能性あり

2ヶ月通院した場合は、横軸の「2月」に該当します。さらに通院が3ヶ月なので、縦軸は「3月」となり、双方の交わる部分が慰謝料の相場です。骨折で2ヶ月入院し、3ヶ月通院した場合の慰謝料相場は154万円となります。

なお、例で示した慰謝料はあくまで交通事故の慰謝料算定基準に即した相場になります。むちうちや打撲など比較的軽傷であったり、既往症の関係で入通院期間が長期化していると判断された場合には、表よりも低額になる可能性は十分あるでしょう。

いずれにせよ、慰謝料を含む損害賠償の見積もりを一度弁護士に依頼することをおすすめします。相場も教えてもらえますし、増減の可能性についても見解を聞いておくと安心です。

後遺障害慰謝料について

後遺障害慰謝料については、過去の判例や赤い本を前提にするにしても、むずかしい問題があります。

というのも、後遺障害慰謝料を算定するにあたってはまず、後遺障害等級を決めなければならないのですが、交通事故などと異なり、介護事故では後遺障害等級を認定する機関がありません

そのため、被害者は介護事故によりどのような後遺障害が残っているのかを具体的に自ら立証しなければなりません。また、後遺障害の有無を立証した後に、後遺障害等級を参考にしながら、その慰謝料の金額を決めていくことになるのです。

後遺障害等級とは、残存した症状がどのようなもので、どのくらいの重さの障害なのかを等級によって定義したものです。最も障害が軽い等級を14級、最も障害が重い等級を1級として、14段階の区分で等級は分けられています。

交通事故の慰謝料相場を元にする場合には、後遺障害等級に応じて、慰謝料の金額が変化していきます。たとえば、14級では110万円程度、13級では180万円が相場です。

後遺障害慰謝料の相場(交通事故の慰謝料算定基準に照らした場合)

後遺障害等級後遺障害慰謝料の相場
1級2,800万円
2級2,370万円
3級1,990万円
4級1,670万円
5級1,400万円
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

高齢者の場合には、怪我をする前からの既往症を加味する必要もあるため、金額が表の通りに認められるとは限りません。弁護士に見解を尋ねておくことをおすすめします。

死亡慰謝料について

介護事故により、被害者が亡くなってしまうという重大事故が生じた場合、遺族は、死亡慰謝料を請求する事になります。

介護事故における死亡慰謝料は、具体的な事案によって異なりますが、1000万円~2000万円程度が多いようです。また、遺族は、固有の慰謝料として100万円程度の損害請求が認められる可能性があります。

介護事故の慰謝料請求方法

介護事故で慰謝料等を請求する方法は3つあります。それぞれどのような方法なのかみていきましょう。

請求方法(1)示談

介護施設に対して慰謝料等を請求する場合、まずは裁判所外での交渉をすることになります。

この交渉を「示談」といいます。示談とは、当事者双方の話し合いによって解決を図る方法です。

介護事故では、まず多くの場合で示談を通して、事故態様や慰謝料を含む損害賠償の金額についての話し合いが行われるでしょう。

ここで和解が出来るのであれば、その旨を示談書などにして終了します。

請求方法(2)調停

当事者同士で示談で話し合いが進まなかったり、折り合いがつかなかったりする場合もあるでしょう。

そこで、次にとられる方法で考えられるのが「調停」です。調停とは、裁判所の調停委員などが話し合いの間に入ってくれるものです。

示談交渉と同様に話し合いで進められていく方法ですが、当事者と利害関係を持たない公平で中立的な第三者の調停人が介入するという点に違いがあります。

請求方法(3)裁判

任意での示談交渉や調停による解決がむずかしければ、「裁判」を行うことになるでしょう。

裁判とは、裁判所が当事者双方の言い分を聞いたり、証拠を調べたりした後に判決による紛争の解決を図る方法です。

いずれにしても証拠が大切になります。専門家と相談をしながら、証拠の保全に努めましょう。

介護事故における裁判事例の紹介

介護事故における裁判例を紹介します。ここでは、どのような事案でいくらの慰謝料が生じているのかという点を詳しく見てみたいと思います。

転倒して頭部を負傷した事案(大阪地裁平成29年2月2日判決)

この事案では、介護施設利用者であるAがトイレに行こうとした際に転倒して、頭部を負傷して硬膜下血腫を発症したというものです。Aは、いわゆる植物状態に準じる状態になり、意思疎通は不可能で回復可能性もほとんど無い状態になりました。

裁判所は、「本件事故後の治療経過、Aの年齢、健康状態等の一切の事情を踏まえ、慰謝料総額を1300万円と認めるのが相当である」と判断をしました。

なお、この事案では、Aもナースコールを押して職員を呼ぶなどするべきであったとしてAの過失も4割あると判断されております。

死亡した事案(東京高裁平成28年3月23日判決)

この事案では、介護老人保健施設の認知症専門棟に短期入所していたAが、2階にある食堂の窓を解放して身を乗り出したところ落下し死亡しました。窓の開放制限措置が不適切であったことから、施設の義務違反があったと認定をし、損害賠償請求が認められております。

裁判所は、「本件事故の態様のほか、本件事故当時のAの家族状況、Aの年齢(84歳)、Aは認知症患者であったが、運動能力の面では年齢相当を超える衰えがあったことをうかがわせる証拠は無いこと、その他本件に表れた一切の事情を考慮すれば、Aの死亡慰謝料額は2000万円と認めるのが相当である」と判断をして死亡慰謝料2000万円が認められました。

ベッドから転落して負傷した事案(東京地裁令和2年6月24日)

この事案では、Aが特別養護老人ホームBに入所していたところ、ベッドから転落して打撲などの傷害を負ったものです。

この事案では入院期間が約3ヶ月であること等を考慮して、入通院慰謝料として165万円が認められました。

また、後遺障害について、Aは本件受傷後、声かけに対する反応の低下が認められているものの、受傷前から声かけに対して目を開くといった反応であったことを考慮され、30万円が相当であると判断をされております。

介護事故で慰謝料請求するなら弁護士に相談

弁護士に相談するメリット

介護事故における慰謝料相場はあくまで目安です。個別の事案を丁寧に紐解いていくことで、適正な金額の慰謝料というものを算定することができます。
そのため、法律の専門知識がないと、慰謝料の算定はむずかしいでしょう。

また、慰謝料を請求する際は、介護施設側との示談交渉や裁判が必要となりますが不安が多いと思います。

弁護士に相談することで、慰謝料を含め、損害賠償請求によりいくら請求が可能であるのかを知ることが可能です。
さらに、弁護士に依頼すれば代わりに介護施設側への損害賠償手続きを行ってくれるので、手続き面における不安もなくなります。

以上のようなメリットが存在するため、介護事故に関するお困りごとやお悩みをお持ちの方は、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。

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弁護士に相談するとしてもどこに相談すべきなのか、相談費用がいくらになるのかと迷っているという方は、相談費用を気にせず弁護士に介護事故の悩みを相談することが可能です。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了