デイサービスの送迎事故|損害賠償請求方法と内容、事例別の重要ポイント | アトム法律事務所弁護士法人

デイサービスの送迎事故|損害賠償請求方法と内容、事例別の重要ポイント

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デイサービスの送迎事故の損害賠償請求

デイサービスの送迎中に事故が発生したのであれば、誰にどのような請求を行えばよいのでしょうか?

デイサービスの送迎中に事故が発生し、利用者がケガや死亡した場合には、損害賠償請求できる可能性があります。損害賠償請求する方法は、交渉、調停、裁判の3つです。

この記事では、デイサービスの送迎業務について、デイサービスの送迎事故の事例、デイサービスの送迎事故に対して請求できる損害賠償、デイサービスの送迎事故に対して損害賠償請求する方法について解説します。

デイサービスの送迎業務について

デイサービスなどの通所介護施設においては、利用者の送迎は重要な業務のひとつです。送迎には特別な資格が必要なわけではなく、普通自動車第1種運転免許があればだれでも送迎が可能です。施設側で送迎マニュアルを用意しているかなどの対策が用意されているかを確認しておきましょう。

送迎業務に必要な資格

デイサービスなどの施設と利用者の自宅の間の送迎では、施設の従業員が行っている場合もあります。送迎に関してはタクシーの運転手のような特別な資格が必要なわけではなく、普通自動車第1種運転免許があれば送迎が可能です。

ただし、有料で送迎を行っている場合は、道路運送事業者にあたるため、第2種の運転免許が必要になります。

送迎業務のマニュアル

デイサービスの送迎は、ただ利用者を送り届けるだけではありません。乗車や降車時に介護をしたり、利用者が車いすのまま安全に乗降できるようにサポートすることも必要です。

送迎時には、運転手に介護の経験があるのか、介護スタッフが同乗するのかも確認しておきましょう。施設によっては送迎業務のマニュアルが用意されている場合もあります。

もし送迎事故が起こった場合には、送迎業務のマニュアルはきちんと整備されていたのかマニュアルを遵守した行動がとられていたのかなどを慎重に調べましょう。これらが不十分であった場合、デイサービス側に事故の責任を問える可能性があります。

送迎時の居宅内介助

デイサービスの送迎では、家の中での介助が必要な場合もあります。送迎時に居宅内介助を行う場合には、一定の資格と経験が必要です。無資格で勤続年数3年未満の職員は、送迎時の居宅内介助の対象外です。

居宅内介助で必要とされる資格には以下のようなものがあります。

  • 介護福祉士
  • 介護職員実務者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修課程修了者
  • 旧ホームヘルパー1級研修課程修了者
  • 介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー 2級研修課程修了者を含む)
  • 看護職員
  • 機能訓練指導員

デイサービスの送迎で居宅内介助が必要な場合は、送迎担当の運転手や職員に資格や十分な経験があるかを確認しておきましょう。もし居宅内介助が資格を持たない方によって行われ、その結果として利用者が負傷してしまった場合には、デイサービス側に事故の責任を問える可能性があります。

デイサービスの送迎事故にあったら確認すべきこと

デイサービスの送迎事故には、歩行者や車両との交通事故だけでなく、同乗している利用者に対する事故もあります。デイサービスの送迎事故の事例ごとに確かめるべき点をみていきましょう。

送迎事故の事例|交通事故

送迎中に交通事故が起きた場合、事故自体は軽微だったとしても、中にいる利用者がケガをする可能性があります。デイサービス送迎中に交通事故に巻き込まれてケガをした場合、次のような状況を確認しておきましょう。

  • シートベルトは適切に締められていたか
  • 車椅子は車両に適切に固定されていたのか

シートベルトできちんと身体が固定されていないことで、身体がシートから投げ出されてしまったり、より大きな衝撃を受けることにつながってしまいます。

また、車椅子のまま乗り込む場合は不安定になりやすいので注意が必要です。車両にしっかり固定されていなかったり、緩んでいたりすれば、停車や発信時に転倒する恐れもあります。

デイサービス送迎での交通事故が発生したときには、シートベルト着用状況車椅子の固定など、デイサービス側の対応も争点のひとつになるでしょう。

デイサービス送迎中の死亡事故

デイサービス送迎中に起こった交通事故で、損害賠償請求が争われた判例があります。

この事故はデイサービスの送迎車が電柱に衝突するという自損事故でした。同乗していた利用者は右肋骨多発骨折、外傷性血胸、皮下血腫などと診断されて、その後死亡してしまったのです。

裁判の結果、死因は「病死および自然死」と記載されているものの、死亡と事故の因果関係が認められました。その結果、入院慰謝料266万円、死亡慰謝料1,800万円、葬祭費100万円など合計約2,460万円の損害賠償請求が認められたのです。一方で、逸失利益などの一部損害の請求は認められませんでした。(大阪地方裁判所 平成22年(ワ)第10601号 損害賠償請求事件 平成23年3月28日)

送迎事故の事例| 乗降時の転倒

通常時は歩行ができる場合でも、送迎車への乗降時には注意が必要です。デイサービス側は、利用者一人ひとりに合わせた介助をして、安全な乗降をさせる必要があります。

足場が不安定であったり、手に荷物を持ったまま乗ろうとしたりすれば転倒のリスクが高くなります。ドアに手や身体を挟まれるケースも想定されるでしょう。

乗降時に利用者が負傷してしまった場合には、デイサービス側の介助は適切であったのか安全に乗り降りできるような体制が整っていたのかなどを確認しておきましょう。

送迎事故の事例| 自宅内での事故

デイサービスから自宅まで送り届けてもらい、送迎車を降りてから自宅内の部屋まで介助してもらう間に転倒する場合もあります。

デイサービス側には事前に取り決められたサービスを履行する義務がありますが、取り決めの範囲を超えた内容の事故については責任が認められない恐れがあります。

家に送り届けるまでなのか、家の中に入って靴を脱がせて椅子に座らせるところまでなのかなど、デイサービスと具体的な取り決めを確認しておきましょう。

ポイント

どのような対応を取っていたのか、まずは事故発生時の状況をデイサービス側に確認を取りましょう

デイサービスの送迎事故に対して請求できる損害賠償

デイサービスでの送迎事故が起こった場合に請求できる損害賠償について、慰謝料それ以外の損害に分けて紹介します。

デイサービス送迎事故での慰謝料

慰謝料とは、事故による精神的な苦痛に対する賠償金のことで、以下の3つがあります。

  1. 入通院慰謝料
  2. 後遺障害慰謝料
  3. 死亡慰謝料

入通院慰謝料は、事故によるケガを治療するために入院や通院を行ったという精神的苦痛に対して支払われる金銭です。ケガの程度や治療期間の長さで算定することが多く、入院を要するような重傷であったり、治療が長期間にわたるほど、慰謝料額は高額になります。

後遺障害慰謝料は、ケガが完治せずに後遺障害が残ったという精神的苦痛に対する慰謝料です。後遺障害の部位や症状によっておおよその相場があり、既往症があれば減額される可能性もあるでしょう。

死亡慰謝料は事故によって利用者が死亡した本人の精神的苦痛に対する慰謝料です。家庭内での立場に応じておおよその相場があり、高齢者の場合には1,000万円~2,000万円ほどが見込まれます。
また、利用者の家族が個別に慰謝料を請求し、認められることもあります。

慰謝料の相場額に関する情報をもっと詳しく知りたい方は『介護事故での慰謝料相場とは?請求をする際に必要な法的知識を解説』の記事をご覧ください。

慰謝料以外も請求が可能

送迎事故が原因とした損害は、慰謝料だけに限りません。慰謝料以外に請求可能な損害とは、以下のようなものです。

  • 治療費
    ケガの治療をするために必要となった費用全般
  • 介護費
    ケガが原因で介護が必要となった場合に請求可能
  • 入院雑費
    入院中の日用雑貨や通信費などの雑費全般の費用
  • 通院交通費
    治療のために通院する際に発生する交通費
  • 休業損害
    ケガにより仕事を休んだために発生する損害
  • 後遺障害逸失利益
    ケガによって生じた後遺障害が原因で仕事ができず、本来得られたはずの収入が得られなくなったという損害
  • 死亡逸失利益
    事故により死亡したために本来得られたはずの収入が得られなくなったという損害

すべての損害に賠償責任が認められるわけではなく、因果関係を考慮したうえで判断されます。デイサービスの利用者は一般的に就労していないので、休業損害や後遺障害逸失利益は発生しません。

主に利用者が死亡した場合の年金収入が死亡逸失利益となりますが、得られるはずだった年金額すべてが損害として認められるわけではありません。生きていれば必要になる生活費などを差し引いた金額が損害額となります。

施設側と利用者の過失は相殺される

送迎を行うデイサービス側に過失があり賠償責任が発生する場合でも、利用者側に過失があれば、請求できる損害賠償額が減額される可能性があります。(民法722条2項

例えば、職員の介助を無視して送迎車に乗り込もうとしてケガをしたり、勝手にシートベルトによる固定を解除していたためにケガをした場合などは、過失相殺による減額の対象となるでしょう。

また、損害賠償額を算定する際には、利用者の既往症が事故の発生に対して影響したかについても考慮されます。

ポイント

最終的な損害額は、相手方との交渉や、裁判でどこまで主張が認められるかによります

デイサービスの送迎事故に対して損害賠償請求する方法

デイサービスの送迎事故に対して損害賠償請求する方法は以下の3つです。

  1. 示談交渉
  2. 調停
  3. 裁判

示談交渉

双方の話し合いによって、慰謝料などの賠償額の合意により示談する方法です。裁判所などの外部の機関が介入しない分、早期解決が見込めます。

示談交渉は双方の合意のうえで成立させるものなので、賠償額で合意が得られなければ、解決まで時間がかかる場合や満足できない賠償額で合意する可能性もあります。

調停

調停とは、中立的な立場にある調停委員が双方の言い分を聞き、解決へのアドバイスや解決案の提示が受けられる方法です。裁判と比べると早期解決が見込めますが、交渉と同様に双方が合意しなければ不成立となります。

裁判

交渉でも調停でも合意が得られなければ裁判で争うことになります。介護事故の裁判においては、医療や介護の専門的な知識が必要で、事故の調査などに時間がかかる場合があります。

介護事故は、事故の状況や施設の状態、事故の被害者の要介護の程度、基礎疾患などさまざまな要素によって損害賠償の判断が行われます。事故に対する施設側の過失の割合や、事故と損害の因果関係など判断が難しいケースが多いようです。

医療や介護、法律の高度な専門知識が必要になるので、介護事故で裁判を起こす場合は弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼を行い、適切な訴訟対応を行ってもらいましょう。

誰に損害賠償請求をするのか

デイサービス送迎事故の損害賠償請求相手は事故態様によって違うので注意しましょう。

例えば、送迎車への乗降中の事故、居宅内への移動中に生じた事故は、デイサービス側との交渉になります。

しかし、送迎中の交通事故の場合はデイサービス側との交渉とは限りません。自損事故の場合はデイサービス側との交渉になりますが、他の自動車に追突されて送迎車が被害車両となった場合は、交渉相手は事故相手の保険会社となる可能性も出てくるのです。

このように損害賠償請求の相手が誰になるのかも事故態様によって異なるため、利用者側には柔軟な対応が求められるでしょう。

損害賠償請求を行うなら弁護士に相談しよう

弁護士に相談すべき理由

デイサービスの送迎事故について損害賠償請求を行うには、デイサービス側に法的責任が生じていることを明らかにする必要があります。法律知識が必要となってくるため、専門家である弁護士に相談するべきでしょう。

一方で、送迎中の交通事故の場合には、必ずしもデイサービス側に非があるとも言えず、事故相手との交渉が必要になる場合もあります。多くの場合、事故相手の加入する保険会社との交渉が予想され、交渉に慣れた担当者とのやり取りが必要になり、ご家族だけでは交渉が難しい場面も出てくるでしょう。

また、損害賠償請求をするうえで妥当な金額を理解していないと、交渉が長引いたり、利用者側にとって不当な内容で終わってしまう可能性すらあります。

送迎事故が起こった場合、損害賠償請求額の妥当性は弁護士に確認をとるべきです。

アトム法律事務所の無料相談

デイサービス送迎事故でご家族を亡くされたり、重い障害が残った場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。無料相談なので費用の負担を気にせず、損害賠償請求に関する相談を行うことができます。

  • 家族が送迎中にケガをしたけど、デイサービス側に責任は問えないのだろうか
  • デイサービス側に提案されている金額が適切なのか判断が難しい
  • デイサービス側の説明に納得がいかない

たとえばこういった疑問やお悩みにアドバイスが受けられたり、より良い解決に近づけられる可能性があります。

法律相談の予約受付は24時間体制なので、損害賠償請求を検討している方はいつでもご連絡ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了