介護事故で賠償責任を問えるケースとは?安全配慮義務や賠償額について解説 | 事故弁護士解決ナビ

介護事故で賠償責任を問えるケースとは?安全配慮義務や賠償額について解説

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安全配慮義務違反賠償責任の生じるケース

介護施設では転倒や誤嚥、徘徊による車との衝突などさまざまな事故が起きる危険があります。

介護施設に預けていた大事な家族が事故の被害者になってしまったら、正当な補償を受けるのは権利といえるでしょう。介護事故では、介護施設側に法的な責任が存すると裁判所が判断すれば、損害賠償金の支払いを受けられます。

本記事では介護事故における賠償責任の具体的な内容、賠償額の範囲や相場などを解説します。事故の争点になりやすい賠償額の金額や責任の所在についてわかるので、ぜひご一読ください。

介護事故における法律上の賠償責任とは

介護事故について介護施設側に法的な責任が認められれば、利用者は損害賠償金を請求可能です。
ただし、請求できる賠償額は事故に関係する項目に限られます。

ここでは介護事故における賠償責任の範囲や賠償額の相場を紹介します。

賠償責任の範囲|被害者が請求できるものは?

介護事故の被害者が請求できる賠償項目は大きく4つに分かれます。

積極損害

1つ目が事故が原因で支出を余儀なくされた費用である積極損害です。介護事故の場合、治療費や通院費、入院費などさまざまな損害項目があげられます。

積極損害では実際に拠出した額のみ賠償が認められる点に留意しましょう。

消極損害

賠償項目2つ目の消極損害は、積極損害とは逆に事故発生によって得ることができなかった利益を指します。たとえば、労災事故では事故で働けなくなった場合、得られる予定だった賃金を消極損害として請求できます。

しかし、介護事故の場合、事故の被害者は基本的に就労していないため、賃金の消極損害が問題になりません。

介護事故で消極損害として請求できるのは、年金です。被害者が事故で亡くなってしまうと、生存していれば得られたはずの年金が消極損害として請求できる場合があります。

慰謝料

賠償項目の3つ目が精神的苦痛に対する慰謝料です。
介護事故の慰謝料では、以下のような3種類の慰謝料が請求可能となります。

  • 入通院慰謝料
    治療のために行った入通院による手間や不便さに対する精神的苦痛へ支払われる慰謝料をいいます。
  • 後遺障害慰謝料
    今後回復が見込めない身体や精神的な障害が発生した時に生じる精神的苦痛対して支払われる慰謝料となります。
    後遺障害による慰謝料の請求が認められるためには、事故によって身体能力や精神状態が低下したことを医学的に証明する必要があります。
  • 死亡慰謝料
    死亡によって被害者に生じる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
    被害者の家族に生じる精神的苦痛についても別途請求が可能となっています。

慰謝料には決まった一定の金額はありませんが、おおよその相場について検討を付けることは可能です。介護事故に関する慰謝料の相場を知りたい方は、関連記事『介護事故での慰謝料相場とは?請求をする際に必要な法的知識を解説』も併せてお役立てください。

弁護士費用

賠償項目の4つ目が弁護士費用です。すべてのケースではありませんが、裁判所は弁護士費用についても賠償項目に含めてくれる場合があります。

以上のように、介護事故で損害賠償請求の対象となる項目は多岐に渡ります。

介護事故における損害賠償金の相場

では、実際の介護事故ではどの程度の賠償金額が認められるのでしょうか。介護事故で多い、転倒事故と誤嚥事故の裁判例を参考に賠償額の相場を解説します。

おおまかな傾向として、転倒による骨折事故の場合、賠償金は1,000万円未満が多いです。
介護事故で最も多い事故が転倒事故であり、高齢者は骨が弱っていることから骨折のリスクも高いです。転倒による骨折事故の危険はかなり高いといえるため、賠償金の相場を知っておくと何かと役に立つでしょう。

また、転倒事故に続いて、発生の可能性が高いのは誤嚥事故です。
誤嚥事故は被害者が死亡する事案も多いため、賠償額の相場が転倒事故よりも高くなります。誤嚥事故の賠償額は、2,000万円~3,000万円にのぼるケースも少なくありません。
例えば、配膳台に置かれていたお菓子を誤食したことが原因で植物状態になり、その後、死亡したケースでは介護施設側に4,600万円の賠償命令が発出されています。

介護事故における施設・職員の賠償責任

介護事故では、介護施設側に法的な責任が認められれば損害賠償金を請求できると紹介しました。具体的には、介護施設に安全配慮義務違反がある場合には法的な責任が認められます。

そのため、介護事故を争う裁判では、安全配慮義務違反の有無が重要な争点となります。
また、法的な責任以外にも、介護施設や担当職員が負うべき責任が存在します。

介護事故において、介護施設と担当職員が負うべき責任は以下の通りです。

介護施設側の責任

介護施設側が担うべき責任は「法的責任」と「道義的責任」に分かれます。

介護施設の法的責任

法的責任については、安全配慮義務違反があれば認められます。
具体的には、事故の発生を予見できたにもかかわらず、回避のための措置を怠ったといえる場合に安全配慮義務違反があったと判断されるのです。

どのようなケースで安全配慮義務違反に該当するかはケースバイケースです。たとえば転倒事故の場合、以前にも介護施設内で転倒が発生していたり、被害者が過去にも転倒していた事実が見受けられたりすれば、安全配慮義務違反が認められやすいでしょう。

一方で、転倒の危険を予測し安全な場所に移したり、介助者がつきっきりで看護していたりするなど事故の発生を回避するため十分な対応を取っていたのならば、安全配慮義務違反は認められない可能性が高いです。

どんなに悲惨な事故が起きても、介護施設側が安全配慮義務を全うしていたのならば、損害賠償の請求はできません。介護事故は、故意や過失に関わらず賠償責任を負う結果責任が問われるのではないためです。

つまり、不可抗力で発生した事故であれば、介護施設側は法的責任を負わなくてもいいということになります。

介護施設の道義的責任

介護事故では道義的責任も考慮する必要があります。道義的責任とは、簡単にいえば人として果たすべき責任です。

たとえば、自ら運営する介護施設で利用者が事故で負傷してしまった場合、運営上の瑕疵が認められないとしても真摯な謝罪が求められます。
また、利用者やその家族に対して事故の状況について説明し、今後の事故防止のために調査を行い、調査結果の報告も行うべきです。

しかし、道義的責任を全うしたからといって、安全配慮義務違反を認めたことにならない点に注意しましょう。

謝罪がないことで精神的苦痛を受けたと主張し、慰謝料を請求することはむずかしいのです。

職員個人の責任

原則として、利用者と契約関係にない担当職員については法的な責任を問うことがむずかしいです。実際、職員に対して賠償請求が行われるケースはほとんどありません。

ただし、余程の悪質な行為があったのならば、民事上の不法行為責任(民法709条)を問われたり、刑事上では業務上過失致死傷罪(刑法211条)などが適用される余地はあります。

賠償責任の請求をするなら弁護士に相談しよう

弁護士に相談するメリットとは

介護事故における賠償責任を請求する場合には、弁護士への相談を行いましょう。

損害賠償請求を行うには、介護施設に損害賠償責任が存在することの証明や、正確な請求額の計算には専門的知識が必要となります。

弁護士に相談すれば、損害賠償請求のために必要な証拠の内容や、請求可能な具体的金額についてアドバイスを受けることが可能です。

また、損害賠償請求を行うには、介護施設に対する示談交渉や訴訟手続きが必要です。
弁護士に依頼すれば必要な交渉や手続きを代わりに行ってくれるので、希望する解決となる可能性が高いといえるでしょう。

弁護士に依頼することによるメリットを詳しく知りたい方は『介護事故で弁護士に相談する代表的なメリット3つ。事例も紹介』の記事をご覧ください。

相談するなら無料の法律相談がおすすめ

弁護士に相談すべきであるとしても、相談の費用が気になっている方は多いでしょう。
そのため、まずは無料の法律相談を受け、損害賠償請求のために行うべきことや、依頼した際のメリットなどを確認すべきでしょう。

アトム法律事務所では、無料の法律相談を行っています。
弁護士への依頼を検討している方は、是非一度ご相談ください。

ご連絡は電話だけでなくLINEでも可能です。

介護事故で利用できる賠償責任保険を紹介

認知機能に問題がある家族の徘徊によって、車や電車に衝突したり、暴力をふるったりするケースがあるかもしれません。こういった場合、認知症患者の家族は被害者に対して損害賠償金を支払うことになる可能性もあります。

認知症患者による事故リスクへ対応できる保険を紹介するので、ぜひ確認してみてください。

認知症の個人賠償責任保険

市区町村が、認知症が原因で生じた損害について、法的に生じた賠償金を補填する事業を行っている場合があります。

たとえば、大津市では認知症等の高齢者が第三者に損害を与えたケースで、これを補償する賠償責任事業を展開しています。大津市の事業では保険金の上限が1億円とかなりの高額です。利用条件に該当すれば、申込書を役所に提出することで負担金なしで加入できます。

お住まいの自治体にも個人賠償責任保険があるかもしれないので、気になる方は問い合わせてみましょう。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点