後遺症が残った事故の逸失利益|計算方法と職業別の具体例、相場はいくら? | 事故慰謝料解決ナビ

後遺症が残った事故の逸失利益|計算方法と職業別の具体例、相場はいくら?

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後遺症が残った事故の逸失利益|計算方法と職業別の具体例

事故にあうと、怪我の治療を受けても何らかの後遺症が残ってしまう可能性があります。

後遺症が残ってしまうと、事故前と同じように働くことがむずかしくなり、将来的な収入が減少してしまう状況に陥ることになるでしょう。このような将来的な収入が減少することに対する補償として、「逸失利益」を請求することが可能です。

逸失利益は、どんな職業でも共通する計算式を用いて計算することになります。しかし、計算するうえで職業別に異なる点もあるので、具体的に解説していきたいと思います。

正しい逸失利益の計算方法を身につけて、適切な金額の逸失利益を手に入れましょう。

後遺障害逸失利益の計算方法|基本編

後遺障害逸失利益を求めるための計算式と、計算式に用いる項目について解説します。
基本をおさえておくことで、あとから解説する職業別の計算方法も理解がより深まるでしょう。

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益は、以下のとおり決められた計算式を用いて金額を算定します。

後遺障害逸失利益の計算式

  • 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

後遺障害逸失利益を求めるには、計算式に登場する「基礎収入」「労働能力喪失率」「労働能力喪失期間」「ライプニッツ係数」という4つの項目について、数値をまず確定するところからはじめねばなりません。

計算式に登場する項目について、ひとつずつ確認していきましょう。

計算式の項目「基礎収入」

基礎収入は、事故前年の収入をもとに割り出すことになります。

ただし、職業別に基礎収入の計算方法が少し異なってくるので注意が必要です。

  • 給与所得者(会社員/サラリーマン)
  • 事業所得者(自営業/フリーランス)
  • 家事従事者(主婦/主夫)
  • 高齢者
  • 子ども
  • 失業者

給与所得者や事業所得者など、事故前に実際の収入がある方は基礎収入についてイメージしやすいでしょう。

家事従事者や子どもなど、事故前に実際の収入がない方でも基礎収入を求めることが可能です。事故前に実際の収入がない場合は、賃金センサスを用いて基礎収入を計算します。賃金センサスとは、厚生労働省が平均賃金を調査した結果をまとめたものです。

計算方法の基本を解説し終わったら、職業別に基礎収入の求め方と具体例を用いて解説しますので、このまま最後までご覧ください。

計算式の項目「労働能力喪失率」

労働能力喪失率は、後遺症が残ったことでどのくらい労働能力が落ちたのかを数値で表したものになります。

事故前の状態を労働能力喪失率0%とすると、後遺症によって労働能力がどのくらい喪失したのかがパーセンテージでわかるのです。

後遺症の程度に応じて14つに区分された後遺障害等級ごとに、労働能力喪失率はあらかじめ目安が決まっています。以下の表をご覧ください。

労働能力喪失率

等級労働能力喪失率
1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害等級の数字が小さいほど障害の程度は重いので、労働能力喪失率も高くなっていることがわかります。

計算式の項目「労働能力喪失期間」

労働能力喪失期間は、後遺症が残ったことで労働能力が失われる期間のことです。

原則として、症状固定から67歳までの年数が労働能力喪失期間となっています。もっとも、属性によっては原則と異なる労働能力喪失期間になりますので注意が必要です。

属性労働能力喪失期間
原則症状固定~67歳まで
18歳未満18歳~67歳まで
大学生大学卒業時点~67歳まで
67歳に近い年齢の者「67歳までの年数」と「平均余命の半分」のいずれか長い方
67歳以上の高齢者平均余命の半分
神経症状のみ12級:10年程度
14級:5年程度

※ 平均余命は厚生労働省ホームページ「簡易生命表(基幹統計)」で確認可能です。

どの属性に当てはまるかで労働能力喪失期間の年数が変わってくるので、しっかりと確認しておきましょう。

計算式の項目「ライプニッツ係数」

ライプニッツ係数は、中間利息を控除するために用いる係数のことです。

逸失利益は、本来であれば少しずつ手にするはずの収入を一括で手にすることになります。そうすると、資産運用や預金の利息などによって利益が生じることになり、実際の収入より多くの金額を得てしまいかねません。
このように、もらいすぎてしまう利息をあらかじめ調整しておくために、ライプニッツ係数を用いて中間利息の控除が行われるのです。

ライプニッツ係数は、労働能力喪失期間に応じて数値が決まっています。ライプニッツ係数を一部抜粋した表を紹介します。

ライプニッツ係数の抜粋(18歳以上のとき)

労働能力喪失期間2020/3/31以前2020/4/1以降
1年0.95240.9709
2年1.85941.9135
3年2.72322.8286
4年3.5463.7171
5年4.32954.5797
6年5.07575.4172
7年5.78646.2303
8年6.46327.0197
9年7.10787.7861
10年7.72178.5302
15年10.379711.9379
20年12.462214.8775
25年14.093917.4131
30年15.372519.6004
40年17.159123.1148
50年18.255925.7298
60年18.929327.6756

民法改正にともない、事故発生日が2020年3月31日以前と2020年4月1日以降でライプニッツ係数が異なるので注意しましょう。

18歳未満かつ未就労者のライプニッツ係数

症状固定時に事故の被害者が18歳未満の未就労者である場合は、先ほど紹介したライプニッツ係数を単純に当てはめるだけだと適正な金額の逸失利益になりません。

たとえば、5歳の幼稚園生が症状固定となった場合、5歳が労働者になることはあり得ません。18歳未満の場合は、多くの場合で労働能力喪失期間のスタートを18歳からに設定することになるので、「67歳までのライプニッツ係数」から「18歳に達するまでのライプニッツ係数」を差し引く必要があります。

18歳未満のライプニッツ係数

  • 67歳までのライプニッツ係数 – 18歳に達するまでのライプニッツ係数

もっとも、このような計算をするのは手間になるので、18歳未満の場合は下記表のライプニッツ係数を用いると便利です。

ライプニッツ係数(18歳未満のとき)

事故時の年齢2020/3/31以前2020/4/1以降
0歳7.549514.9795
1歳7.926915.4289
2歳8.323315.8918
3歳8.739416.3686
4歳9.176516.8596
5歳9.635217.3653
6歳10.117017.8864
7歳10.622918.4230
8歳11.154118.9756
9歳11.711719.5449
10歳12.297320.1312
11歳12.912120.7352
12歳13.557821.3572
13歳14.235621.9980
14歳14.947422.6579
15歳15.694923.3376
16歳16.479624.0377
17歳17.303524.7589

※ 大学進学の蓋然性が認められると、数値が異なる場合もあります。

こちらも民法改正にともない、事故発生日が2020年3月31日以前と2020年4月1日以降でライプニッツ係数が異なるので注意してください。

職業別に後遺障害逸失利益の具体例を知る

後遺障害逸失利益の基本的な計算方法がわかったところで、職業別に具体例を用いて計算してみます。

職業別に基礎収入の割り出し方が異なりますので、それぞれ確認していきましょう。(計算例は、2020年4月1日以降に発生した事故を想定しています。)

給与所得者(会社員/サラリーマン)

サラリーマンや会社員といった給与所得者の場合、原則通りに事故前年の収入をもとに基礎収入を割り出すことになります。

事故前年の「源泉徴収票」や「給与明細」から基礎収入を算定し、賞与や手当なども含みます。社会保険や税金を控除する前の総支給額が基礎収入として扱われるので注意しましょう。

もっとも、新入社員など若手労働者の場合、事故前年の収入ではなく賃金センサスを用いて計算することになります。一般的に、30歳未満の若手労働者は低い賃金で労働している傾向にあるので、全年齢を対象にした平均賃金を用いて基礎収入として扱うのです。

給与所得者の逸失利益計算例

給与所得者の一例をもとに、逸失利益を計算してみましょう。

基本情報

収入500万円
後遺障害等級11級
労働能力喪失率20%
症状固定時の年齢42歳
労働能力喪失期間25年
ライプニッツ係数17.4131

以上の基本情報を、逸失利益の計算式に当てはめてみます。

500万円(基礎収入) × 20%(労働能力喪失率) × 17.4131(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

1741万3100円

事業所得者(自営業/フリーランス)

自営業やフリーランスといった事業所得者の場合も、原則通りに事故前年の収入をもとに基礎収入を割り出すことになります。

事故前年の「確定申告で申告した所得額」から基礎収入を算定します。所得額とは、売り上げから経費を差し引いた金額のことです。売り上げのすべてが基礎収入とはならないので注意しましょう。青色申告控除や専従者控除をする前の総収入が基礎収入として扱われるので注意してください。

確定申告をしていない場合や、確定申告で申告した金額と実際の収入が異なる場合、実際の収入を証明できる資料が揃っていれば基礎収入を算定することもできるでしょう。実際の収入を証明できる資料というと、請求書・領収書・通帳の履歴などがあげられます。

もっとも、証拠となる正確な資料が残っていないケースも多いため、実際の収入にもとづく逸失利益の請求がむずかしくなる傾向にあると覚悟せねばなりません。
確定申告は嘘偽りなくしなければならないことを実感できるのではないでしょうか。

事業所得者の逸失利益計算例

事業所得者の一例をもとに、逸失利益を計算してみましょう。

基本情報

収入1000万円
後遺障害等級5級
労働能力喪失率79%
症状固定時の年齢37歳
労働能力喪失期間30年
ライプニッツ係数19.6004

以上の基本情報を、逸失利益の計算式に当てはめてみます。

1000万円(基礎収入) × 79%(労働能力喪失率) × 19.6004(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

1億5484万3160円

家事従事者(主婦/主夫)

主婦や主夫といった家事従事者の場合、賃金センサスをもとに基礎収入を割り出すことになります。

事故前年の収入がないので、賃金センサスの「女性労働者における全年齢平均賃金」から基礎収入を算定します。後遺障害逸失利益の計算では、「症状固定した年度の賃金センサス」を用いることが一般的です。

男性の主夫であっても、女性労働者における全年齢平均賃金を用いるので注意しましょう。

近年の賃金センサスをあわせて紹介しますので、ご確認ください。

女性労働者における全年齢平均賃金

賃金センサス
2017年約378万円
2018年約383万円
2019年約388万円
2020年約382万円

主婦と仕事を両立する兼業主婦の場合は、事故前年の収入と賃金センサスを比べて、いずれか高い方を基礎収入として扱います。

家事従事者の逸失利益計算例

家事従事者(専業主婦)の一例をもとに、逸失利益を計算してみましょう。

基本情報

収入382万円※
後遺障害等級7級
労働能力喪失率56%
症状固定時の年齢52歳
労働能力喪失期間15年
ライプニッツ係数11.9379

※ 症状固定の年度を2020年とし、その年度の賃金センサスを用いています。

以上の基本情報を、逸失利益の計算式に当てはめてみます。

382万円(基礎収入) × 56%(労働能力喪失率) × 11.9379(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

2553万7556円

高齢者

高齢者の場合、仕事や家事をしていれば若い方と同じように基礎収入を割り出すことができます。

  • 仕事をしている:給与所得者または事業所得者の場合と同様に基礎収入を計算
  • 家事をしている:家事従事者と同様に基礎収入を計算

高齢者であっても、仕事や家事をしている場合は年齢に関係なく逸失利益を請求できるのです。

また、たとえ無職の状態であっても就労の意欲と就労の蓋然性があれば、賃金センサスを基礎収入として扱います。

もっとも、年金を受け取っており、就労の可能性がない場合、逸失利益を請求することはできません。年金は後遺障害が残っても減るものではないので、逸失利益にはあたらないのです。

高齢者の逸失利益計算例

高齢者(男性)の一例をもとに、逸失利益を計算してみましょう。

基本情報

収入280万円
後遺障害等級10級
労働能力喪失率27%
症状固定時の年齢70歳
(令和2年の平均余命16.18年)
労働能力喪失期間約8年
ライプニッツ係数7.0197

以上の基本情報を、逸失利益の計算式に当てはめてみます。

280万円(基礎収入) × 27%(労働能力喪失率) × 7.0197(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

530万6893円

子ども

子どもの場合、事故当時に収入はなくても将来的に働くことが想定されるので、賃金センサスをもとに基礎収入を割り出すことになります。

事故前年の収入がないので、賃金センサスの「男女別の全年齢平均賃金」から基礎収入を算定します。後遺障害逸失利益の計算では、「症状固定した年度の賃金センサス」を用いることが一般的です。

大学進学の可能性が高い場合は、大卒者の平均賃金を用いて算定することになるでしょう。

近年の賃金センサスをあわせて紹介しますので、ご確認ください。

男女別の全年齢平均賃金(2020年版)

男性女性
学歴計545万9500円381万9200円
大卒者637万9300円451万800円

女性の方が平均賃金が低くなるので、女児の場合は男女を合計した平均賃金を用いて計算する場合もあります。

また、大学生で内定が出ているような場合は、内定先の平均賃金を用いて算定する可能性もあるでしょう。

子どもの逸失利益計算例

子ども(男児)の一例をもとに、逸失利益を計算してみましょう。

基本情報

収入545万9500円
後遺障害等級8級
労働能力喪失率45%
症状固定時の年齢12歳
ライプニッツ係数21.3572

以上の基本情報を、逸失利益の計算式に当てはめてみます。

545万9500円(基礎収入) × 45%(労働能力喪失率) × 21.3572(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

5246万9835円

失業者

失業者の場合、事故当時に収入はなくても就労の意欲と就労の蓋然性があれば、基礎収入を割り出す方法はあります。

事故前年の収入がないので、以前に勤めていた会社の収入や内定先の平均賃金などを用いて基礎収入を算定します。

失業者の逸失利益計算例

失業者の一例をもとに、逸失利益を計算してみましょう。

基本情報

収入(失業前)400万円
後遺障害等級4級
労働能力喪失率92%
症状固定時の年齢47歳
労働能力喪失期間20年
ライプニッツ係数14.8775

以上の基本情報を、逸失利益の計算式に当てはめてみます。

400万円(基礎収入) × 92%(労働能力喪失率) × 14.8775(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

5474万9200円

後遺障害逸失利益の計算は弁護士に相談しよう

後遺障害逸失利益は計算式を用いれば算定することができますが、計算式に用いる項目をまず正確に確定しなければ、適正な金額の逸失利益を得ることはできません。

たとえば、基礎収入は職業別に計算方法が異なりますし、年齢や属性に応じて労働能力喪失期間が変わってきたりもします。人によっては何千万円~何億円にものぼる可能性がある逸失利益は、少しの間違いで最終的な金額に大きな影響を与えてしまいかねません。

いかに、正しく算定されているかどうかが逸失利益の計算には重要になってきます。弁護士であれば、事故の被害者が得られるであろう最大の逸失利益になるよう計算することができるでしょう。

また、本記事で解説した内容以外にも、逸失利益の計算が複雑になるケースが存在します。
複雑なケースは、仕事の内容やご自身の状況にあわせて細かく調整しながら逸失利益を計算しなければなりません。本記事を読んでもご自身に該当するケースが見当たらなかったという方は、弁護士に相談していただくことをおすすめします。

アトム法律事務所の弁護士に逸失利益の算定について相談しよう

事故で重い後遺障害を負ってしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談を利用して弁護士に相談してみましょう。

  • 逸失利益の計算方法がいまいちよくわからない
  • 自分で計算した逸失利益が妥当か確認してほしい
  • 事故の相手方から提示された逸失利益に納得いかない

事故で重い後遺障害を負ったうえ、以上のようなお悩みをお持ちの方は無料の法律相談をご活用ください。
逸失利益以外にも、ただしく請求すべきお金があると思います。事故に関する補償について、請求漏れなく手にできるようにするなら、弁護士に相談してみましょう。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点