機械への巻き込まれ事故は誰が責任を負う?損害賠償請求の可否は? | アトム法律事務所弁護士法人

機械への巻き込まれ事故は誰が責任を負う?損害賠償請求の可否は?

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機械への巻き込まれ事故|誰が責任を負う?

仕事上、機械を使用する業種は数多く存在します。
機械にはさまざまな種類がありますが、どれをとっても使い方を誤ると大事故に発展する危険性があります。また、誤作動により事故を招くという危険性もあるでしょう。

このような事故に巻き込まれた場合、労災保険から補償を受けとることができますが、労災保険だけでは補償が不十分な場合も多いです。会社側に責任を問える場合は、不足する補償や慰謝料を損害賠償請求することが可能です。

今回は、業務中に起きた巻き込まれ事故をテーマに、責任の所在や損害賠償請求をわかりやすく解説します。

機械に巻き込まれた災害事例

就業中の労働者が機械に巻き込まれて怪我をした事例は、これまでにも数多く発生しています。

以下では実際に発生した事例を紹介しますが、怪我にとどまらず労働者が命を落としてしまった事例も少なくありません。

プレス機械による被災事故

労働者が圧力能力80トンのプレス機械で家電部品を加工中、下型に材料が詰まってプレス機械が停止したため、詰まった材料を取り出そうとしたところ、安全装置のスイッチを切っていたために、スライドが下降して被災したという事例です。

災害発生当日、被災した労働者はプレス機械作業主任者から切替えキーを借りて作業を行いましたが、このとき金型が安全装置と干渉するため安全装置をオフにして作業を行いました。

なお、このときの安全措置としては、安全囲いを取り付けたのみでした。

原因としては、安全装置をオフにしたことにつき、プレス機械作業主任者との間で協議が行われていなかったことや、加工中に材料が詰まるといった異常時における作業標準が定められていなかったことなどがあげられています。

ショベルローダーによる死亡事故

産業廃棄物処理リサイクルセンターの選別作業場において、選別作業にあたっていた労働者がショベルローダーに轢かれて死亡したという事例です。

事故発生当日、産業廃棄物処理リサイクルセンターの選別作業場において、通常どおりショベルローダーなどによる廃棄物の搬入と作業者による廃棄物の選別作業が行われていました。

被災した労働者は、選別した物を所定の場所へ置きに行こうと、作業中であったショベルローダーの後方を横切った際に、後退してきたショベルローダーの右後輪に轢かれて死亡しました。

作業場では、ショベルローダーの作業エリアと作業者の通路が区別されておらず、ショベルローダーの誘導者も配置されていませんでした。

また、事故発生時、ショベルローダーの運転者は前照灯と後照灯を点けておらず、ショベルローダーの後退灯と警報装置は故障していました。

原因としては、ショベルローダーの作業エリアと作業者の作業エリアが混在していたことや、ショベルローダーの点検整備が行われていなかったことなどがあげられています。

麺帯機による死亡事故

製麺工場で麺帯機を使って作業にあたっていた労働者が、餃子の皮を製造する機械である麺帯機の攪拌羽根に巻き込まれて死亡したという事例です。

事故発生当日、被災した労働者は、麺帯機を使って餃子の皮を製造していた際、誤って攪拌機内部で回転する攪拌羽根に接触して巻き込まれました。

その後、麺帯機の前に労働者がいないことに気づいた職長が駆け寄ったところ、すでに労働者は死亡していました。

麺帯機は工場で20年以上使用されているものでした。麺生地は原料の小麦粉や水、調味料などを攪拌し、練り具合を確認しながら、必要に応じて水を少量ずつ加えていく必要があったため、麺帯機の蓋にはインターロック機構がなく、蓋を開けたままで攪拌する必要があったようです。

原因としては、麺帯機の蓋にインターロック機構がなく、格子状のガードも設けられていなかったことや、作業ステップから容易に操作できる場所に非常停止スイッチが設けられていなかったことなどがあげられています。

巻き込まれ事故の責任の所在

巻き込まれ事故による被害は甚大です。後遺障害が残ってしまったり、場合によっては命を落とすこともあります

このような重大事故が発生した場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか。

使用者が責任を負うケース

巻き込まれ事故は、本人の不注意によって発生することもありますが、使用者(自分が所属する会社)の安全対策が不十分であったために発生することもあります。

使用者は労働者に対して安全配慮義務を負っており、労働者が安全な環境で仕事ができるように配慮しなければなりません。

たとえば、故障している機械を労働者に使わせていたことや、安全装置を停止させて作業を行わせたりしていたことが原因となって発生した労災は、安全配慮義務違反となる可能性があります。

使用者に安全配慮義務違反が認められれば、被災した労働者は使用者に対して損害賠償を請求することが可能です。関連記事では安全配慮義務違反にあたるのかを判断する基準を解説しています。

関連会社が責任を負うケース

工場のように、多くの機械類が設置されている場所では、工場の運営会社に雇用される労働者だけでなく、よそから派遣されてきた労働者も一緒になって働いていることが少なくありません。

このような労働者が被災した場合には、使用者である派遣元だけでなく、派遣先に対しても損害賠償を請求することが可能です。

機械メーカーが責任を負うケース

機械の欠陥(設計上の欠陥や指示・警告上の欠陥)に起因して巻き込まれ事故が発生した場合、被災した労働者は機械メーカーに対して損害賠償を請求することが可能です(「製造物責任」といいます。)。

実際に、過去には製造物責任を根拠として機械メーカーに損害賠償を命じた裁判例があります。

労災事故の補償と損害賠償請求

労働者が就業中に機械に巻き込まれたり挟まれたりするなどして受傷した場合、まずは労災保険から補償を受けることが一般的です。

労災保険の種類と補償内容

労災保険にはさまざまな補償の種類が設けられており、被災した労働者本人をはじめ、労働者が亡くなった場合にはその遺族に対しても補償給付が行われるようになっています。

具体的には、病院での治療費を補償する療養給付や休業期間の収入を一定割合補償する休業給付、障害が残った場合に補償される障害給付、労働者が死亡した場合にその遺族に給付される遺族給付などがあります。

労災保険による補償の種類

もっとも、労災保険による補償は、労働者が実際に負担した費用の全額をカバーしてくれるものではありません

たとえば、休業給付は1日につき給付基礎日額の60%と特別支給金の20%を合わせた80%が給付されるに過ぎません。その他の補償についても、労災保険により決められた金額が給付されるだけなので、満足な補償が受けられない可能性が大いに考えられます。

補償の不足分や慰謝料は会社に請求することが必要

労災保険による補償だけでは、十分に補償を受けられないこともあります。

また、慰謝料にかぎっては、そもそも労災保険による補償の対象外です。

補償では足りない分や慰謝料を請求したいという場合には、自分が所属する勤務先に対して損害賠償請求を行うことで、これらを支払ってもらえる可能性があります。

もっとも、損害賠償請求を行うには会社側の安全配慮義務違反や使用者責任が認められることが条件となります。したがって、会社側に安全配慮義務に違反する事実があったことや、故意・過失があったことなどを労働者側において立証しなければなりません。

このように、労働者は労災保険による補償に加え、会社側に損害賠償を請求することも可能です。もっとも、損害賠償請求する場合は、法的知識も必要となるため、弁護士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

不足する補償や慰謝料の請求を検討中の方へ

会社側に対する損害賠償請求をご自身だけで対応するには、不安が大きいと思います。法律の専門知識をもった弁護士に任せることで、納得のいく結果が得られる可能性が高まるでしょう。

なぜ、弁護士に任せると納得のいく結果が得られる可能性が高まるのか解説します。

法的知識が必要な場面では弁護士が頼りになる

先述した通り、たとえ労災が認定されたとしても、事故で被った損害のすべてが補償されるとは限りません。また、労災保険からは慰謝料が支払われることがないので、会社側に慰謝料を求めたい場合は、示談交渉などを通して損害賠償請求する必要があります。

示談交渉は話し合いで進められていくので、交渉に不慣れだと相手のペースにのまれてこちらの希望を伝えられないことも多いです。示談交渉に慣れた弁護士に任せれば、代わりに希望を伝えてくれるでしょう。

また、そもそも損害賠償請求を行う場合、やみくもな金額を提示すればいいわけではありません。事故によってどのような損害を受け、その損害を回復するためにはどのくらいの補償や慰謝料が必要なのか、適切に算定しておくことが大切です。弁護士であれば、法的根拠に則った正確な金額で請求をしていくことができるでしょう。

不足する補償や慰謝料の請求をご検討されている方は、労災事故を専門的にあつかう弁護士に一度、相談してみることをおすすめします。

アトム法律事務所の無料相談

ここまでお読みいただき、さっそく弁護士相談を視野に入れたという方も多いと思います。

  • 事故で障害が残ったが、どのくらいの補償なら適正な金額なのか知りたい
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弁護士に相談してみたいけれど、気になるのは弁護士に相談した時の「相談料」ではないでしょうか。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了