子供と親(配偶者)で株式を相続するときに知っておきたいこと
父または母の一方が亡くなったときは、子供と親(配偶者)が相続人となります。故人名義の株式を相続する際には、相続の手順や名義変更、相続税の評価方法などについて理解しておく必要があります。相続に関する知識を身につけておくことで、スムーズな手続きや円満な相続につながるでしょう。
この記事では、子供と親(配偶者)で株式を相続するときの基礎知識についてわかりやすく解説します。
『子供と親(配偶者)による株式の相続』に関する基本事項
法定相続分による相続割合【子供と親(配偶者)で相続する場合】
相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるのが法定相続分です。
被相続人の子供と親(配偶者)の相続割合は2分の1ずつです。子供が複数人いる場合は、遺産の2分の1を子供の人数で均等に分割します。
法定相続人 | 相続割合 |
---|---|
子1人+親(配偶者) | 子:1/2 親(配偶者):1/2 |
子2人+親(配偶者) | 子:1人あたり1/4 親(配偶者):1/2 |
子3人+親(配偶者) | 子:1人あたり1/6 親(配偶者):1/2 |
被相続人が亡くなって1億2,000万円の相続が発生し、子供2人と親(配偶者)が相続人となった場合、子供の法定相続分は3,000万円ずつ、親(配偶者)の法定相続分は6,000万円となります。
ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。それぞれの相続割合によって相続税の総額が変わることがあるので、税負担も考慮した遺産分割を行う必要があります。
株式を相続するときの手続きの流れ
被相続人名義の株式を相続する場合は、以下のような流れで手続きを行います。
1.遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。
2.相続人を確認する
相続人となるのは被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。
3.保有している株式を確認する
被相続人が保有している株式の種類や銘柄、株数などを調べます。上場株式は取引をしている証券会社に、非上場株式は株式を発行する会社に問い合わせをします。
4.株式以外の相続財産を確認する
相続財産調査を行い、不動産や預貯金など、株式以外にどのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。
5.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、相続財産をどのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。
6.株式の名義変更手続きを行う
株式の名義変更手続きを進めます。上場株式の場合は、証券会社に連絡をして手続きを進めます。非上場株式の場合は、株式を発行する会社に連絡をして手続きを進めます。
7.準確定申告を行う
相続する株式に収益が発生している場合は、準確定申告が必要となります。準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得に関する確定申告のことです。準確定申告の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
8.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、相続税額が発生した場合は納税も行います。
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上場株式(公開株)の相続税評価額を計算する方法
上場株式の相続税評価額は、原則として、被相続人が死亡した日の株式の最終価格(終値)と株数から算定します。ただし、株式は急激な価格変動が起こりやすいことから、以下のうち最も低い価額をもとに算定できます。
- 相続が発生した日の株価の終値(最終価格)
- 相続が発生した月の毎日の終値(最終価格)の平均
- 相続が発生した前月の毎日の終値(最終価格)の平均
- 相続が発生した前々月の毎日の終値(最終価格)の平均
平均株価は、証券会社が発行する残高証明書やインターネットで調べることができます。
例えば、被相続人が亡くなった日の終値が1株10万円で、100株を保有していた場合、相続税評価額は1,000万円となります。
非上場株式(未公開株)の相続税評価額を計算する方法
非上場株式の相続税評価額は、以下のうちいずれかの方法で算定します。
純資産価額方式による評価
純資産価額方式は、評価対象の会社の純資産額(相続税評価額による資産)をもとに算定する方法です。
類似業種比準方式による評価
類似業種比準方式は、類似する業種の上場株式の株価をもとに評価額を算定する方法です。
配当還元方式による評価
配当還元方式は、株式の配当利回りを参考にして評価額を算定する方法です。
非上場株式の相続税評価は、上場株式の評価と比べてかなり複雑です。相続する遺産に非上場株式が含まれる場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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株式を遺産分割する方法
株式を遺産分割する方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
現物分割
株式を株式のまま相続人で分割する方法です。相続人が株式を取得したい場合や、株式を売却せず保有したい場合に適しています。
代償分割
代償分割は、相続人が株式を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。たとえば、評価額が2,500万円の株を2人で相続する場合、1人は株式を取得し、取得しなかったもう1人に代償金として1,250万円を支払うように、相続分に応じて分割します。
換価分割
株式を売却し、現金化して相続人で分割する方法です。
相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は遺産のすべてに対して課税されるわけではなく、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生します。また、場合によっては相続税額が発生することもあります。
相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
2人(子1人+親(配偶者)) | 4,200万円 |
3人(子2人+親(配偶者)) | 4,800万円 |
4人(子3人+親(配偶者)) | 5,400万円 |
たとえば、法定相続人が子供2人と親(配偶者)の場合は4,800万円、子供3人と親(配偶者)の場合は5,400万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
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配偶者控除で配偶者分の相続税負担を軽減
相続人に配偶者が含まれる場合は、配偶者控除(配偶者の税額軽減)が適用できます。
相続税における配偶者控除とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 遺産分割が完了している
- 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出する
たとえば、被相続人の子供と配偶者で1億2,000万円の遺産を相続する場合、配偶者の法定相続分は6,000万円ですが、配偶者控除を適用することで、配偶者分の相続税は0円になります。
ただし、のちに配偶者が亡くなって配偶者の財産を子供が相続するときに、相続税負担が増える可能性があるため注意が必要です。相続税の節税対策について検討したい場合は、税理士に相談することをおすすめします。
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相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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株式の名義変更手続きに必要な書類
株式の名義変更手続きには、以下の書類などが必要です。くわしくは、上場株式の場合は証券会社、非上場株式の場合は株式を発行している会社に確認しましょう。
上場株式(公開株)の場合
- 相続手続き依頼書
- 相続人全員の同意書
- 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から亡くなるまでのすべての謄本)
- 相続関係を示す戸籍謄本等(相続人全員が確認できるもの)
- 相続人全員分の印鑑登録証明書
- 遺産分割協議書の写し(遺産分割協議を行った場合)
非上場株式(未公開株)の場合
- 株券(発行されている場合)
- 株式名義書換請求書
- 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から亡くなるまでのすべての謄本)
- 相続関係を示す戸籍謄本等(相続人全員が確認できるもの)
- 相続人全員分の印鑑登録証明書
- 遺産分割協議書の写し(遺産分割協議を行った場合)
税務調査の対象になりやすいケース
税務調査とは、税務署が納税者の申告内容を調査し、正確な申告が行われているかどうかを調査するためのものです。税務調査は、納税者全員に行われる可能性がありますが、特に、以下の場合は税務調査の対象になりやすいと考えられます。
- 相続税の申告額が大きい場合
- 相続税の申告内容に不審な点がある場合
- 過去に悪質な申告漏れや申告内容に誤りがある場合
税務調査の対象となった場合、税務署から申告内容について説明を求められることがあります。また、申告内容に不備や誤りがあると、修正申告を促される場合もあります。
税務調査のリスクを避けるためにも、申告書の記載内容や添付書類を誤りなく作成することが重要です。税理士に相談して、申告書の作成や税務調査対策を依頼することも検討しましょう。
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『子供と親(配偶者)による株式の相続』に関するよくある質問
所有者が亡くなると株はどうなる?
株を故人名義のまま放置すると、配当金の受け取りや売却ができません。そのため、相続人の口座に移管する必要があります。
故人が保有する株を調べる方法は?
上場株式の場合は、手元にある取引報告書などから取り引きをしている証券会社を特定し、証券会社に問い合わせます。非上場株式の場合は、株式を発行する会社に直接問い合わせます。
子供と親(配偶者)の相続割合は?
法定相続分による子供と親(配偶者)の相続割合は、2分の1ずつです。子供が複数人いる場合は、2分の1をさらに人数分で分割します。
株の相続で必要な手続きは?
株式の相続手続きは、以下の流れで進めます。
1.遺言書の有無を確認する
2.相続人を確認する
3.保有する株式を確認する
4.遺言書がない場合は相続人同士で遺産分割協議を行う
5.株式の名義変更手続きを行う
6.被相続人に所得が発生している場合は準確定申告を行う
7.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
株式の遺産分割はどうすればいい?
株式を遺産分割する方法は、現物分割、代償分割、換価分割の3種類があります。現物分割は、株式を株式のまま相続人で分割する方法です。代償分割は、相続人のうちの1人または数人が株式を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。換価分割は、株式を売却して得た売却代金を相続人ごとに分割する方法です。
他にもおさえておきたい相続の基本
いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士