会社の相続と自社株の承継|相続税の評価方法と事業承継の手続き

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会社の相続とは、亡くなった経営者が持っていた自社株や出資持分を引き継ぐことです。

会社という法人そのものは相続の対象にはならず、株式や出資持分を承継することで、経営権が次の世代へと移ります。

しかし、業績が良いほど自社株の評価額が高額となり、相続税額は重くなります。

また、事前の準備を怠ると、後継者にスムーズな経営のために必要となる分の株式が相続されない恐れがあるでしょう。

帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査」によると、後継者が見つからずに事業継続を断念する「後継者難倒産」は2025年(1〜10月)で425件発生しており、そのうち45.6%が「代表者の病気または死亡」を直接の原因としています。

この記事では、自社株の評価方法・相続税額を減らすための方法・会社相続の際の対応ポイントを、経営者の遺族や後継者候補の方に向けてわかりやすく解説します。

会社の相続とは

会社そのものは相続できない

「会社を相続する」という表現はよく使われますが、法律上、会社(法人)そのものを相続することはできません。

会社は法律上、人間とは独立した「法人」という別の存在です。

経営者が亡くなっても会社が消えるわけではなく、法人として存続し続けます。

では、実際に相続の対象となるのは何かというと、亡くなった方(被相続人)が持っていた「株式」や「出資持分」です。

日本の中小企業の多くは、株式の所有者と経営者が同一人物です。

議決権(会社の重要事項を決める権利)を持つ株式を引き継ぐことで、経営権も次の世代へと移ります。

個人事業主なら相続できる

会社が法人となっていない、いわゆる個人事業主である場合は事業用財産(機械・在庫等)が相続の対象となります。

個人の相続手続きと同様に、事業主が有していた財産について負債も含めて相続することとなるのです。

自社株(出資持分)が相続財産になる

法人の形態によって、相続の対象となる財産は異なります。

株式会社の場合は「株式(自社株)」、特例有限会社の場合も同様に「株式」が相続財産となります。

2006年の会社法施行以降、有限会社の新設はできなくなっています。既存の有限会社は「特例有限会社」として、会社法上は株式会社として存続しています。

有限会社の株式を相続した場合の名義変更や代表者変更、相続税の流れは『有限会社の相続手続きと相続税をわかりやすく解説|社長の死亡後にすべきこと』で詳しく解説しています。

株式を有する株主は、株主総会の議決権を有しています。

株主総会において経営上の重要事項が決まるため、会社の相続においては経営の後継者に今後の経営に支障が出ない程度の株式を相続することが重要となるのです。

具体的には、重要な事項の多くについて議決権を有することができる、発行済み株式の3分の2以上を相続させることとなるでしょう。

合同会社では株式ではなく持分を相続する

合同会社の場合は注意が必要です。

社員(出資者)が亡くなると原則として退社扱いとなり、定款に「相続人が持分を承継する」旨の定めがない限り、持分そのものは相続されません

定款に定めがない場合、相続人が受け取れるのは「出資の払戻請求権」となります。

法人形態相続財産になるもの
株式会社株式(自社株)
合同会社出資持分
※定款の定めが必要
特例有限会社株式

オーナー社長が保有していた自社株を相続人が引き継ぐことで、経営の実権である議決権も移転します。

つまり「会社の相続」の本質は、自社株を通じた経営権の承継といえるでしょう。

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自社株の相続には特有のリスクがある

自社株の相続には、一般的な相続にはない注意点が3つあります。

  • 相続税が高額になりやすい
  • 経営権が分散するリスクがある
  • 納税資金の準備が難しい

相続税が高額になりやすい

自社株の評価額は、会社の利益や純資産をもとに算出されます。

業績が良いほど評価額が上がる仕組みのため、会社が成長しているほど相続税の負担も重くなってしまうのです。

経営権が分散するリスクがある

遺言がないまま相続が発生すると、株式が複数の相続人に分割される可能性があります。

議決権が分散すると、経営判断が滞ったり、株主間でトラブルが生じたりするリスクが高まってしまうでしょう。

納税資金の準備が難しい

自社株は上場株式と異なり、市場で自由に売却できません。

相続財産の大部分が自社株である場合、手元の現金だけでは相続税を賄えないケースも少なくありません。

こうしたリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

自社株(取引相場のない株式)はどう評価される?

非上場株式の主な評価方式は3種類

上場企業の株式は証券取引所で日々売買されているため、市場での取引価格をそのまま評価額として使えます。

一方、中小企業などの非上場株式(自社株)には市場での取引価格がありません。

そのため、国税庁が定めた「財産評価基本通達」のルールに基づいて評価額を算出します。評価方式は会社の規模や株主の状況によって異なり、主に3種類があります。

評価方式適用される主なケース特徴
類似業種比準方式大会社・中会社※収益力・業績が反映される
純資産価額方式小会社・資産保有型の会社資産の実態が反映される
配当還元方式少数株主(同族外)評価額が低くなりやすい

※中会社の場合は、この方式と純資産価額方式を併用します

①類似業種比準方式(るいじぎょうしゅひじゅんほうしき)

同じ業種の上場企業の株価を参考に、対象会社の「配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3要素を比較して評価する方式です。

主に大会社・中会社に適用され、会社の収益力が評価額に反映されます。

②純資産価額方式(じゅんしさんかがくほうしき)

会社の資産総額から負債(および含み益に対する法人税額等相当額)を差し引いた純資産をもとに、1株あたりの価値を算出する方式です。

主に小会社や、土地・株式を多く保有する会社に適用されます。

中会社も類似業種比準方式と併用して適用します。

③配当還元方式(はいとうかんげんほうしき)

経営に深く関与していない少数株主(同族株主以外)に適用される方式で、その株式を持つことで受け取れる配当金額をもとに評価します。

具体的には、直前期末以前2年間の年配当金額の平均額を還元利率(原則10%)で割り戻して1株あたりの価額を算定します。①・②と比べて評価額が低くなりやすい特徴があります。

自社株の評価額が高くなりやすい会社の特徴

次のような会社は、自社株の評価額が高くなりやすい傾向があります。

  • 利益が出続けている優良企業
  • 不動産など多くの資産を保有している会社
  • 長年にわたって内部留保を積み上げてきた会社

類似業種比準方式では、会社の利益金額が評価要素の一つとなります。

業績が好調なほど評価額が上がるため、経営をがんばってきた会社ほど相続税の負担も重くなりやすい構造です。

純資産価額方式では、会社が保有する資産の実態が評価に直接反映されます。

不動産や株式を多く持つ会社は、それだけ評価額も高くなりやすくなるのです。

また、利益を社内に蓄積し続けると、純資産が膨らみ、株価の上昇につながります。

社歴が長く堅実に経営してきた会社ほど、評価額が高くなりやすい点に注意が必要です。

このような会社では、自社株の評価額が億単位になることも珍しくありません。

非上場株式はすぐに現金化できない財産であるため、多額の相続税が発生した場合、納税資金の確保に苦労するケースがあります。

自社株の相続税を軽減する方法

自社株の相続では、相続税が多額になりやすいため、使える特例や控除を事前に把握しておくことが大切です。ここでは代表的なものをご紹介します。

事業承継税制|自社株の相続税を猶予・免除する制度

事業承継における最も重要な制度が「事業承継税制」です。

後継者が非上場株式を相続する際、一定の要件を満たせば相続税の納税を猶予(先送り)でき、最終的に免除を受けられる制度です。

事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。

特例措置は期間限定の制度で、要件が大幅に緩和されているため、多くのケースで活用が検討されます。

区分特例措置一般措置
対象株数議決権株式の全株発行済議決権株式総数の3分の2が上限
納税猶予割合100%対象株式に対応する相続税額の80%
適用期限2027年9月30日までに「特例承継計画」の提出が必要
(相続・贈与の適用期限は2027年12月31日)
なし
(恒久的な制度)
雇用維持要件弾力的に運用可能
(8割を下回った場合も、理由報告と認定支援機関の指導・助言により猶予継続が可能)
原則として承継後5年間平均で雇用8割維持が必要

事業承継税制の活用には実績が積み上がっています。

中小企業庁によると、2018年度の特例措置創設以降、特例承継計画の提出件数は年平均約3,000件に増加し、2023年度には5,357件に達しました。

税制を活用した企業の96%が雇用確保要件を達成しており、特例措置期間の認定企業が雇用した従業員数の合計は約27万人にのぼります。

なお、特例措置を利用するには、2027年9月30日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要があります。

特例措置の対象となる相続・贈与の期限は2027年12月31日です。

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猶予の取り消しのリスクに注意

事業承継税制を利用して相続税の納税猶予を受けた場合、猶予が取り消される恐れがある点に注意が必要です。

猶予が取り消される例としては、以下のような事情が挙げられます。

  • 後継者が代表者を退任する
  • 株式を一定割合以上、第三者に譲渡する
  • 会社が資産管理会社に該当することになった
  • 5年間の平均で一定の基準を下回る雇用実績となった(一般措置の場合)

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自社株の評価額を下げる

相続の対象となる自社株の評価額を下げることで、相続税額を減らすことが可能です。

自社株の評価額を下げる方法としては、以下のようなものが考えられます。

  • 先代経営者への退職金支給
    先代経営者が亡くなった際に死亡退職金を支給して、会社の財産を減少させます。
  • 遊休資産の売却
    経営に利用していない遊休資産を適正な価格で売却することで、純資産価額が減少し、自社株評価額の引下げにつながる場合があります。
  • 投資不動産の購入
    金融機関から借り入れをして投資不動産を購入します。
    不動産の評価額が購入額より低いことが多いので、借入額の評価額との差額分、会社の資産価格の評価額を減らすことが可能です。

どのような対策が効果的なであるのかは、専門家である税理士に相談しましょう。

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小規模宅地等の特例の利用

会社の事業に使っている土地(事業用宅地)には、「小規模宅地等の特例」が適用できる場合があります。

一定の要件を満たせば、土地の評価額を減額できる制度です。

ただし、対象となるのは「会社が所有している土地」ではなく、「個人(被相続人)が所有していて会社に貸している土地」である点に注意が必要です。

会社(法人)名義の土地は法人の財産であり、個人の相続財産には含まれません。

小規模宅地等の特例は、会社の事業内容・土地の所有関係・相続人の役員就任状況などによって適用の可否や減額割合が変わるため、個別の状況を専門家に確認することをおすすめします。

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配偶者の税額軽減の利用

配偶者が自社株を相続する場合、「配偶者の税額軽減」を適用できます。

配偶者が相続した財産が「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までであれば、相続税がかからない制度です。

ただし、配偶者が後継者でない場合は注意が必要です。

一次相続では税負担を抑えられても、配偶者が亡くなった際の二次相続で、自社株が再び相続財産となります。

二次相続では相続人の数が減って基礎控除額が下がるため、一次相続よりも税負担が重くなるケースが少なくありません。

配偶者への財産集中は目先の節税になる一方、二次相続まで含めたトータルの税負担をシミュレーションしたうえで判断することが重要です。

なお、相続税の課税額がゼロとなる場合であっても、この軽減を受けるためには相続税の申告書を期限内に提出することが必要です。

また、申告期限までに遺産分割が完了していることが原則ですが、分割が間に合わない場合でも「分割見込書」を添付して申告し、申告期限から3年以内に分割が完了すれば適用可能です。

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会社を相続する手続きの流れ

会社の相続は、一般的な相続手続きと並行して進める必要があります。

大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 相続人・相続財産の確認(死亡後すみやかに)
  2. 株式の評価(相続税の申告期限までに)
  3. 遺産分割協議
  4. 株主名簿の書き換え・登記変更
  5. 相続税の申告・納税(相続発生から10か月以内)

具体的にみていきましょう。

(1)相続人・相続財産の確認

まず、戸籍調査によって法定相続人を確定させ、遺言書の有無を確認します。

自社株については、株主名簿や定款を確認して、被相続人の持株数・持株比率を把握しましょう。

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(2)株式の評価

税理士などの専門家に依頼して、自社株の相続税評価額を算出します。

評価方式の選択や計算には専門的な知識が必要です。

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(3)遺産分割協議

相続人全員で話し合い、誰が自社株を引き継ぐかを決めます。

経営権を守るうえでは、後継者に自社株を集中させることが重要なポイントです。

株式が分散すると、少数株主からの買取請求や株主代表訴訟といったリスクが生じ、経営の安定が損なわれるおそれがあります。

事業承継税制を利用する場合、相続開始の翌日から8か月以内に都道府県知事への認定申請が必要です。

そのため、遺産分割協議はできるだけ早期に完了させることが求められます。

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(4)株主名簿の書き換え・登記変更

遺産分割協議が成立したら、株主名簿の名義変更を行います。

被相続人が代表取締役だった場合は、役員変更の登記も必要です。

なお、事業承継税制の納税猶予を受けるには、相続開始の翌日から5か月を経過する日までに後継者が代表権を取得していることが要件の一つとなっています。

これは、都道府県知事への認定申請(相続開始後5か月経過後〜8か月以内)の前提となる要件であり、相続税の申告期限(10か月以内)よりも早い段階での対応が求められていることに注意しましょう。

(5)相続税の申告・納税

相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

事業承継税制を利用する場合も、この期限内に必要書類をそろえて申告する必要があります。

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会社相続のポイント

後継者に自社株を集中させることが最優先

会社の相続を行う際には、後継者となる子ども1人に自社株を集中させ、他の相続人には代わりに不動産や預貯金を相続してもらう形が理想的です。

相続人が複数人いる場合、自社株を平等に分けると経営権が分散してしまいます。

たとえば3人の子どもに均等に分けると、それぞれの持株比率が下がり、過半数を持つ人がいなくなってしまうでしょう。

経営権の分散が実際にどのようなリスクをもたらすか、以下の数字でも示されています。

中小企業基盤整備機構の「事業承継実態調査報告書」によると、少数株主の存在による課題として「株式の買取りを請求された」が29%、「株主代表訴訟のリスクがある」が20%、「株主総会が混乱する」が13%という結果が出ているのです。

また、同調査では経営者の平均株式保有割合が66.4%で、50%超を保有している経営者が61.4%を占めています。

後継者への自社株集中は、経営安定の観点から実務上の一般原則となっています。

後継者以外の相続人への配慮も必要

後継者に自社株を集中させた場合、他の相続人の取り分についての配慮が必要です。

相続人のうち、配偶者・子(および代襲相続人)・直系尊属(父母・祖父母等)には遺留分が認められています。

「遺留分(いりゅうぶん)」とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の相続分のことです。

後継者以外の相続人が遺留分侵害額請求を行うと、後継者は金銭を支払わなければなりません。

このリスクを避けるには、生前に遺留分に配慮した遺言書を作成するか、経営承継円滑化法による民法の特例を活用して遺留分対策を講じることが有効です。

一方、兄弟姉妹には遺留分が認められていないので、後継者以外の相続人が兄弟姉妹の場合は、このような問題が少ないといえます。

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相続税の納税資金を確保しておく

自社株は現金化しにくいため、相続税の納税資金が不足するリスクがあります。

生命保険の活用や、役員報酬・配当として事前に資金を蓄えておくことも対策のひとつです。

相続発生後に納税資金が不足した場合の実務的な手段として、「自社株買い(金庫株)」があります。

後継者が相続した自社株を会社に買い取ってもらうことで現金を確保し、相続税に充てる方法です。

通常、非上場株を発行会社に売却するとみなし配当として総合課税の対象となり、所得状況によっては最大約55%程度の高税率が課される可能性があります。

しかし「相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」を適用すると、一律20.315%の譲渡所得課税に抑えることが可能です。

この特例は、相続の開始があった日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に譲渡するなどの要件があるため、相続発生後は早期に専門家へ相談することをおすすめします。

会社の相続における相続放棄は慎重に

相続人は、株式を相続したくない場合に「相続放棄」を選択できますが、すべての財産を手放すことになるため慎重な判断が必要です。

会社の業績不振の場合、会社の債務については、経営者であった被相続人が連帯保証人となっている可能性があるため、株式以外のマイナスの財産も相続してしまう恐れがあります。

また、業績が良好であっても経営を引き継ぐ意思がなければ、換金性のない株式のために多額の相続税を負担することを避けたいでしょう。

相続放棄により負担を回避することが可能ですが、相続放棄を行うと株式や借金だけでなく、土地や建物といったすべての権利を引き継げなくなります。

そのため、相続人は慎重に有利・不利を検討しましょう。

相続放棄は、相続の開始があったことを知ってから3か月以内に行う必要があるので、検討する期間が十分に取れない場合には、弁護士や税理士などの専門家に相談を行いましょう。

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事業承継と相続の違い|生前対策の重要性

事業承継と相続は別の概念

「事業承継」と「相続」は混同されがちですが、異なる概念です。

項目事業承継相続
タイミング生前でも死後でも可能死亡後に発生
目的経営の継続・会社の存続財産の引き継ぎ
方法贈与・売買・相続など法定相続・遺言など
計画性計画的に進められる急に発生することも

理想は、生前から計画的に事業承継を進め、相続が発生したときに備えておくことです。

生前に行うべき5つの対策

経営者が突然亡くなった場合、遺族が自社株の評価・納税・経営権の引き継ぎを同時に進めなければならず、非常に混乱します。

特に以下の対策は、生前に行っておくことが強く推奨されます。

①遺言書の作成

後継者に自社株を集中させる意思を明確にしておくことで、遺産分割協議でのトラブルを防ぎます。

②生前贈与による株式の移転

暦年贈与や相続時精算課税制度を使って少しずつ株式を後継者に移転することで、将来の相続における課税対象財産を減らすこと(または、株価が低いうちに移転しておくこと)ができます。

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③事業承継税制の活用準備

特例措置の「特例承継計画」提出期限は2027年9月30日、特例適用の期限(贈与・相続の実行期限)は2027年12月31日です。

なお、株式等の贈与・相続が先に発生した場合でも、特例承継計画をその後に作成することは可能です。

ただし、都道府県知事への認定申請時までに計画を提出しておく必要があります。

④持株会社(ホールディングス)の設立

自社株を持株会社に移転し、相続税評価額の引き下げや事業承継をスムーズにする方法もあります。

専門家への相談が前提となりますが、有効な手法のひとつです。

⑤生命保険の活用

死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になりますが、相続人が受け取った死亡保険金については「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

後継者を受取人とした生命保険に加入しておくことで、相続税の納税資金を確保することが可能です。

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相続税の相続税の無料相談

後継者がいない場合はどうなる?

後継者不在は多くの中小企業が直面する課題です。

帝国データバンクの「全国企業後継者不在率動向調査」によると、2025年における日本企業の後継者不在率は50.1%で、中小企業に限ると51.2%、小規模企業では57.3%にのぼります。

また、2025年に代表者交代が行われた企業のうち、同族承継による就任は32.3%と、内部昇格(36.1%)を下回っており、親族外への事業承継が主流になりつつあります。

後継者がいない場合でも、会社をどうするかを早期に判断することが、会社と遺族双方を守るうえで重要です。

M&A(会社の売却・譲渡)

第三者への事業譲渡(M&A)という方法があります。

会社を売却することで、従業員の雇用を守りながら会社を存続させることが可能です。

廃業よりも多くの財産を残せるケースも多く、売却で得た資金は遺族の相続財産となります。

廃業・清算

事業の継続が難しい場合は、会社を解散・清算する方法もあります。

この場合、清算で残余財産が株主(相続人)に分配される場合、株主側で「みなし配当」等として所得税が課される可能性がある点に注意が必要です。

具体的な課税は分配の内訳等によって異なるため、専門家に確認をとりましょう。

役員や従業員への承継

従業員や役員が株式を買い取って会社を引き継ぐ方法も有力な選択肢です。

内部事情に精通した人材が承継するため継続性を保ちやすい一方、後継者候補の資金調達が課題となることがあります。

中小企業基盤整備機構「事業承継実態調査報告書」によると、役員・従業員への承継を考えている企業の20.1%が「後継者が株式を買い取ること」を課題として挙げています。

会社相続は専門家への相談が不可欠

会社(自社株)の相続は、一般的な相続と比べて専門的な知識と実務経験が求められます。

主な専門家の役割は以下のとおりです。

  • 税理士
    自社株の評価額の算出、相続税・贈与税の申告、事業承継税制の適用申請
  • 弁護士
    遺産分割協議のトラブル対応、遺留分問題、遺言書の作成、M&Aにおける契約書作成など
  • 司法書士
    法務局での役員変更登記などの手続き、株主名簿の名義変更サポート
  • 中小企業診断士
    事業承継計画の策定、後継者教育、承継後の経営戦略の立案

自社株が絡む相続では、評価額の算出方法の選択・特例の適用可否・遺産分割の方針など、判断すべき事項が多岐にわたります。

1人の専門家では対応しきれないケースも多いため、複数の専門家が連携した総合的なサポートを求めるべきでしょう。

まずは相続・事業承継に詳しい弁護士や税理士に相談し、早めに全体像を把握することが、会社と遺族を守るうえでの第一歩です。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

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