遺産分割協議書を税務署に提出|提出期限や他の提出先も解説

遺産分割協議書は、税務署での相続税の申告だけでなく、預金口座の解約(金融機関)、不動産の相続登記(法務局)、有価証券や自動車の名義変更(証券会社・運輸支局)でも提出を求められる書類です。
ただし、遺言書どおりに遺産を分ける場合や、相続人が1人だけの場合、法定相続分どおりに分ける場合は、そもそも協議書自体が不要になることもあります。
また手続きごとに提出期限やその他の必要書類は大きく異なります。(EX.相続税の申告が10か月以内、相続登記が3年以内、自動車の名義変更が15日以内など)この記事では、5つの提出先それぞれについて、提出が必要になるケース・必要書類・提出期限を解説します。
※本記事の情報は2026年9月時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
遺産分割協議書を税務署に提出する場合のポイント
まずは、遺産分割協議書を税務署に提出しなければならないケースやその期限、合わせて提出すべき書類を解説します。
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、誰がどの相続財産をどれだけ相続するかについて、相続人全員の合意内容をまとめた書類です。
遺産分割協議書の作成のポイントは、以下の3つです。
- 相続財産を具体的に記載する
- 相続人全員が氏名住所を記載した上で実印を押し、印鑑証明書を添付する
- 相続人の人数分作成し、各自保管する
遺産分割協議書に一度署名押印してしまうと、後から合意内容を否定するのは非常に難しくなります。
遺産分割協議書の作成方法の詳細は関連記事『相続税申告に遺産分割協議書は必要か?必要・不要な場面を徹底解説』をご確認ください。
税務署への遺産分割協議書の提出が必要なケース
遺産分割協議書を税務署に提出するのは、相続税の申告時です。ただし、遺言書があり、その内容どおりに遺産を分割する場合は、遺産分割協議書ではなく遺言書の写しを提出します。
遺言書がない場合や、遺言書の内容と異なる割合で遺産分割する場合は、遺産分割協議書の提出が必要です。特に、次の特例を適用したい場合は提出が必須になります。
- 小規模宅地等の特例:土地の相続税評価額が減額される制度
- 配偶者の税額軽減:配偶者が相続する財産について、「1億6,000万円」「配偶者の法定相続分」のいずれか大きいほうまでが相続税が非課税になる制度
遺産分割協議書等の必要書類は、「被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署」に提出しましょう。
なお、遺産分割協議書を税務署に提出しない場合でも、法定相続分(民法で定められた遺産分割割合。遺言や相続人の合意で異なる割合)や遺言とは違う割合で遺産分割する場合は、遺産分割協議書を作っておくことをおすすめします。のちの遺産分割に関するトラブルになることを防ぐためです。
関連記事
相続税申告は不要でも、遺産分割協議書の作成は必要
相続財産の正味の遺産額が、基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数)を下回る場合、原則として相続税自体が発生しないため相続税申告も不要です。
ただし、相続人が1人しかいない場合や、法定相続分・遺言どおりに遺産分割する場合を除き、預金口座の解約や不動産の相続登記といった相続手続きや、親族間でのトラブルを防ぐために、遺産分割協議書の作成は必要です。
関連記事
遺産分割協議書を税務署に提出する期限
相続税の申告期限は、「相続開始を知った日(通常、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内」です。申告期限までに遺産分割が成立しており、遺産分割協議書の写しを提出する場合は、その他の必要書類と一緒に提出しましょう。
相続税の申告期限までに申告をしなければ、ペナルティとして延滞税や無申告加算税が課されるなどデメリットが生じます。
相続税の申告が遅れた場合のペナルティや、申告が間に合わない時の対処法は関連記事『相続税の申告期限が過ぎたらどうする?間に合わない場合の対処法とペナルティ』にてご確認ください。
遺産分割協議書と一緒に税務署に提出する書類
ここでは、相続税の申告に関する主な必要書類をご紹介します。
なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用を受ける場合、また、相続財産の種類によっては別途書類が必要です。
基本の必要書類
- マイナンバーカードの表裏の写し等の本人確認書類
- 被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本
- 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
- (遺産分割協議書の写しを提出する場合)相続人全員の印鑑証明書
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用を受けない場合、遺言書や遺産分割協議書の写しの提出は任意になります。
また、特例の適用を受ける場合、相続人全員の印鑑証明書の提出は原本のみとなります。
相続財産に関する必要書類
- 残高証明書、既経過利息計算書、通帳の写し又は預金取引履歴
- 登記簿謄本、固定資産評価証明書、名寄帳、公図又は測量図、住宅地図、賃貸借契約書
- 有価証券の残高報告書、配当金支払通知書
- 生命保険証書、死亡保険金支払通知書、保険契約の解約返戻金がわかる書類、死亡退職金の支払調書
関連記事
税務署以外にもある!遺産分割協議書の提出先
相続する財産の内容によっては、税務署以外にも遺産分割協議書の提出が必要になることがあります。
主な提出先は、以下のとおりです。
| 手続き | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 預金口座の解約 名義変更等 | 金融機関 | 期限なし |
| 相続登記 (不動産の名義変更) | 法務局 | 相続による 所有権取得を知った日から 3年以内※ |
| 有価証券の名義変更 | 証券会社、 株式を発行した会社 | 期限なし |
| 自動車の名義変更 | 運輸支局、 軽自動車検査協会 | 所有者の変更があったときから15日以内 |
※令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。令和6年4月1日より前に発生した相続も対象となり、同日より前に不動産を相続したことを知っていた場合は、令和9年3月31日までに相続登記が必要です。
それぞれについて詳しく解説します。
金融機関|預金口座の解約・名義変更
被相続人の預貯金を相続する場合は、その手続き(解約または名義変更)の際に遺産分割協議書などを金融機関へ提出する必要があります。
手続きの流れは以下のとおりです。
- 銀行等の金融機関に残高を問い合わせる
- その他の相続財産も全て洗い出す
- (遺言書がある場合)遺言書に従って遺産分割する
(遺言書がない場合)相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する - 必要書類をそろえて金融機関に提出します。
必要書類の内容は、「遺言書がある場合」と「遺産分割協議をした場合」で異なります。
主な必要書類は以下のとおりです。
遺言書がある場合の必要書類
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書
(公正証書遺言、または法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要) - 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または全部事項証明書
- 預金を相続する人の印鑑証明書
- 相続届(金融機関によって名称が異なる)
- 被相続人の通帳、キャッシュカード
遺産分割協議をした場合の必要書類
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続届
- 被相続人の通帳、キャッシュカード
戸籍謄本や印鑑登録証明書等は原本を提出する必要があります。
原本の返却を希望する場合、書類提出時にその旨を申し出ましょう。そうすれば、金融機関がコピーを取った後、原本を返却してもらえます。
なお、遺言内容や相続財産の内容(外貨預金、投資信託、公共債、ローン等)によって、必要書類は異なります。
提出先の金融機関に事前に問い合わせるのが確実です。
法務局|不動産の相続登記
不動産を相続する場合は、相続登記の際に遺産分割協議書などを法務局へ提出する必要があります。
相続登記の具体的な流れは以下のとおりです。
- 固定資産納税通知書や名寄帳等をもとに、被相続人が所有していた土地や建物を確定する
- (遺言書がある場合)遺言書に従って相続する
(遺言書がない場合)相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する - 必要書類をそろえて、申請する不動産の所在地を管轄する法務局に提出する
必要書類の内容は、「遺言書がある場合」と「遺産分割協議をした場合」で異なります。
主な必要書類は以下のとおりです。
遺言書がある場合の必要書類
- 登記申請書(法務局ホームページよりダウンロード可能)
- 相続関係説明図
- 収入印紙
- 不動産を相続する者の住民票
- 固定資産評価証明書
- 委任状(専門家に依頼する場合)
- 被相続人の死亡が確認できる戸籍・除籍謄本※
- 被相続人の住民票除票
- 不動産を相続する者の戸籍謄本
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書
(公正証書遺言、または法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要)
※相続人以外への遺贈や遺言執行者がいない場合は、出生から死亡までの戸籍謄本・相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書が別途必要になることがあります。
遺産分割協議をした場合の必要書類
- 登記申請書(法務局ホームページよりダウンロード可能)
- 相続関係説明図
- 収入印紙
- 不動産を相続する者の住民票
- 固定資産評価証明書
- 委任状(専門家に依頼する場合)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改正原戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑登録証明書
相続登記の申請では、遺産分割協議書等はコピーではなく原本を提出しなければなりません。その際、「原本還付」という手続きを利用すれば、提出した原本の返却を受けることができます。
原本還付とは、遺産分割協議書等のコピーを作成し、そこに「原本に相違ない」旨を記載して署名・押印したものを、原本と一緒に提出する手続きです。法務局にコピーを保管してもらうことで、原本が返却される仕組みになっています。
相続登記の期限は3年
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。
相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
令和6年4月1日より前に発生した相続も対象で、同日より前に不動産を相続したことを知っていた場合の期限は令和9年3月31日までとなります。
正当な理由なく、相続登記を行わないままでいると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記を行うには、不動産をもれなく調査したり、多くの必要書類をそろえる必要があり、思った以上に手間がかかります。
期限を過ぎてしまわないよう、早い段階で専門家に相談して準備を整えておくことをおすすめします。
関連記事
証券会社|有価証券の名義変更
被相続人が有価証券を持っていた場合、それが上場株式か投資信託なら、相続手続きの際に遺産分割協議書などを証券会社に提出します。
非上場株式の相続手続きの流れや必要書類については、株式を発行している会社に問い合わせましょう。
上場株式や投資信託の名義変更をする際の具体的な流れは、次のとおりです。
- 証券会社に取引内容を問い合わせる
- 株式や投資信託を相続する相続人名義の証券口座を開設する
- 名義変更に必要な書類を証券会社に提出する
必要書類の内容は、「遺言書がある場合」と「遺産分割協議をした場合」で異なります。
主な必要書類は以下のとおりです。
遺言書がある場合の必要書類
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書
(公正証書遺言、または法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要) - 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
- 株式を相続する人の印鑑証明書
- 各社所定の相続手続き書類
- 被相続人の株券等
遺産分割協議をした場合の必要書類
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 各社所定の相続手続き書類
- 被相続人の株券等
なお、有価証券の相続手続きに必要な遺産分割協議書等は、原本の提出が必要です。
原本の返却を希望する場合は、各社所定の書類にその旨を記載して提出する必要があります。
関連記事
運輸支局|自動車の名義変更
被相続人の自動車を相続する場合は、名義変更の手続きの際に、普通車なら運輸支局(旧陸運局)、軽自動車なら軽自動車検査協会に、遺産分割協議書などを提出する必要があります。
具体的な流れは次のとおりです。
- 車検証で自動車の所有者を確認する※
- (遺言書がある場合)遺言書に従って、誰が自動車を相続するか確定する
(遺言書がない場合)相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が自動車を相続するか決めたうえで、遺産分割協議書を作成する - 運輸支局または軽自動車検査協会に必要書類を提出し、名義変更の手続きをする
※所有者がクレジット会社等の第三者になっている場合、名義変更をするにはローンを完済する必要がある。
普通車の名義変更に関する主な必要書類は以下の通りです。
普通車の名義変更に関する必要書類
- 移転登録申請書
- 手数料納付書(700円の検査登録印紙を貼付、OSS申請の場合600円)
- 自動車検査証(車検証)
- 遺産分割協議書または遺言書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・戸籍の全部事項証明書
- 新所有者の印鑑証明書と実印
- 自動車保管場所証明書(車庫証明書)※
※新所有者の使用の本拠の位置が、被相続人の使用の本拠の位置と異なる場合に必要
軽自動車の場合は、遺産分割協議書自体が不要というケースが一般的です。詳しくは軽自動車検査協会にご確認ください。
また、自動車の価額が100万円以下であることを確認できる査定書等がある場合は、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」(国土交通省ホームページからダウンロード可能)を提出する方法もあります。
なお、遺産分割協議書等の原本を返却してほしい場合、コピーをとって運輸支局の窓口で原本と照合してもらいます。その後、原本の返却を受けられます。
遺産分割協議書の提出についてよくある質問
最後に、遺産分割協議書の提出に関してよくある以下の質問にお答えします。
手続き時に提出する遺産分割協議書はコピーでも良い?
遺産分割協議書は、基本的に原本を提出しなければなりません。
ただし、税務署への相続税申告では、原則として写しの提出で足ります(特例適用時は印鑑証明書のみ原本が必要)。
通常は相続人1人につき1通の作成となるため、各種手続きで遺産分割協議書を提出した後は、提出先に原本の返却を求めましょう。
原本の返却をしてもらう方法は、提出先ごとに本記事内で解説しています。
遺産分割協議書の提出がいらないケースは?
遺産分割協議書は、以下の場合は必要ないことが多いです。
- 相続人が1人しかおらず、その人が財産の全てを相続する
- 法定相続分や遺言に従って遺産分割する
ただし、遺産分割協議書が必要かどうかは、何の手続きをするかにもよります。
手続きの内容ごとに確認することがおすすめです。
関連記事
期限までに遺産分割が終わらない場合はどうする?
相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合は、一旦法定相続分通りに遺産分割するものとして相続税を申告します。
その後、遺産分割の割合が決まったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことで、払い過ぎた相続税の還付を受けられます。
なお、未分割申告の時点では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は使えません。申告期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、分割確定後の更正の請求でこれらの特例を適用できます。
関連記事
- 遺産未分割で相続税の申告をする方法:相続税は遺産未分割でも申告が必要|デメリットと申告書の書き方
- 相続税の還付を受ける方法:相続税還付とは?還付金が生じやすいケースや期限・手続きなどを解説
相続手続きのお悩みは専門家へ
相続が発生すると、相続税の申告や預金口座の解約、不動産の相続登記など、さまざまな手続きが必要になります。
また、相続税の申告は10か月、相続登記は3年、自動車の名義変更は15日以内など期限が設けられているものも多くあります。
さらに、それらの手続きには、財産の評価や必要書類の判断など、専門的な判断が必要になる場面も少なくありません。そのため相続の専門家に依頼すると、負担を軽減することができます。
相続税の申告は税理士、相続登記は司法書士、遺産分割協議がまとまらない場合の交渉は弁護士が、それぞれの専門分野です。なお、遺産分割協議書の作成自体も、これらの専門家に依頼できます。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士