遺産分割協議書を税務署に提出|提出期限や他の提出先も解説

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遺産分割協議書

遺産分割協議書の提出が求められる代表的な相続手続きは、「相続税の申告」です。

さらに、遺産分割協議書は、預貯金の相続、相続登記、有価証券や自動車の名義変更でも必要です。

この記事では、各相続手続きの申告期限や必要書類をわかりやすくご説明します。

遺産分割協議書を税務署に提出する場合のポイント

まずは、遺産分割協議書を税務署に提出しなければならないケースやその期限、合わせて提出すべき書類を解説します。

税務署への遺産分割協議書の提出が必要なケース

遺産分割協議書を税務署に提出するのは、相続税の申告時です。

遺産分割協議書の提出は義務ではありませんが、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などを適用したい場合は提出が必要です。

遺産分割協議書等の必要書類は、「被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署」に提出しましょう。

なお、遺産分割協議書を税務署に提出しない場合でも、法定相続分や遺言とは違う割合で遺産分割する場合は、遺産分割協議書を作っておくことをおすすめします。

のちに遺産分割に関して親族間でトラブルになることを防ぐためです。

法定相続分とは

民法によって定められた、遺産分割の割合。
ただし、必ずしも法定相続分通りに遺産分割しなければならないわけではない。

相続財産が基礎控除額以下なら、そもそも相続税申告が不要

相続財産の課税価格の合計額が、基礎控除額を下回る場合、相続税自体が発生しないため相続税申告も不要です。

課税価格とは、簡単に言うと、預金等のプラスの財産から債務等のマイナスの財産を引いた価格です。
相続税は相続財産の全額ではなく、課税価格に対して課されます。

基礎控除額の計算式は、以下のとおりです。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

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遺産分割協議書を税務署に提出する期限

遺産分割協議書は、相続税の申告期限である「相続開始を知った日(通常、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内」に、その他の必要書類と一緒に提出しましょう。

相続税の申告期限までに申告をしなければ、ペナルティとして延滞税や無申告加算税が課されるなどデメリットが生じます。

相続税の申告が遅れた場合のペナルティや、申告が間に合わない時の対処法は関連記事『相続税の申告期限が過ぎたらどうなる?間に合わないときの対応を解説』にてご確認ください。

遺産分割協議書と一緒に税務署に提出すべき書類

ここでは、相続税の申告に関する主な必要書類をご紹介します。

なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用を受ける場合、また、相続財産の種類によっては別途書類が必要です。

全員提出が必要な書類

  • マイナンバーカードの表裏の写し等の本人確認書類
  • 被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本
  • 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し(注1)
  • 遺産分割協議書の写しを提出する場合は、相続人全員の印鑑証明書(注1)(注2)

相続財産に関する必要書類

  • 預貯金の残高証明書、既経過利息計算書、通帳の写し又は預金取引履歴
  • 登記簿謄本、固定資産評価証明書、名寄帳、公図又は測量図、住宅地図、賃貸借契約書
  • 有価証券の残高報告書、配当金支払通知書
  • 生命保険証書、死亡保険金支払通知書、保険契約の解約返戻金がわかる書類、死亡退職金の支払調書

(注1)

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用を受けない場合、遺言書の写し又は遺産分割協議書の写しの提出は任意です。

(注2)

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用を受ける場合、相続人全員の印鑑証明書についてコピーの提出は認められません。

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税務署以外にもある!遺産分割協議書の提出先

相続する財産の内容によっては、税務署以外にも遺産分割協議書の提出が必要になることがあります。

主な提出先は、以下のとおりです。

相続手続き提出先期限
預貯金の相続(払戻、名義変更等)金融機関期限なし
相続登記手続き法務局期限なし
※ただし、令和6年4月1日から、「相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内」の相続登記が義務化されます。
有価証券(株式、投資信託など)の名義変更証券会社、株式を発行した会社期限なし
※ただし、有価証券の売却を可能にするため、できるだけ早期に完了することが望ましいです。
自動車の名義変更陸運局所有者の変更があったときから15日以内

それぞれについて詳しく解説します。

金融機関|預金口座の解約

被相続人の預金口座を解約したい場合は、遺産分割協議書などを金融機関に提出し、手続きをしましょう。

手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 銀行等の金融機関に残高を問い合わせる
  2. その他の相続財産も全て洗い出して遺産分割の割合を決める
    この際、遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
  3. 必要書類をそろえて金融機関に提出します。

必要書類の内容は、「遺言書がある場合」と「遺産分割協議をした場合」で異なります。

主な必要書類は以下の表のとおりです。

遺言書がある場合の必要書類

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書
  • 預金を相続する人の印鑑証明書
  • 相続届(金融機関によって名称が異なる)
  • 被相続人の通帳、キャッシュカード

遺産分割協議をした場合の必要書類

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続届
  • 被相続人の通帳、キャッシュカード

戸籍謄本や印鑑登録証明書等は原本を提出する必要があります。

原本の返却を希望する場合、書類提出時にその旨を申し出ましょう。そうすれば、金融機関がコピーを取った後、原本を返却してもらえます。

なお、遺言内容や相続財産の内容(外貨預金、投資信託、公共債、ローン等)によって、必要書類は異なります。

詳しくは、金融機関に事前に問い合わせるのが確実です。

法務局|不動産の相続登記

不動産を相続する場合は、相続登記のため法務局に、遺産分割協議書などを提出しましょう。

具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 固定資産納税通知書や名寄帳等をもとに、被相続人が所有していた土地や建物を確定する
  2. 遺言書があればそれに従って相続する
    遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
  3. 必要書類をそろえて、申請する不動産の所在地を管轄する法務局に提出する

必要書類の内容は、「遺言書がある場合」と「遺産分割協議をした場合」で異なります。

主な必要書類は以下の表のとおりです。

共通で必要な書類

  • 登記申請書(法務局ホームページよりダウンロード可能)
  • 相続関係説明図
  • 収入印紙
  • 不動産を相続する者の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 委任状(専門家に依頼する場合)

遺言書がある場合の必要書類

  • 被相続人の戸籍・除籍謄本
  • 被相続人の住民票除票
  • 不動産を相続する者の戸籍謄本
  • 遺言書
  • 検認調書(公正証書遺言以外の場合)

遺産分割協議をした場合の必要書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改正原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑登録証明書

相続登記の申請に必要な遺産分割協議書等の書類は、原本を提出する必要があります。

しかし、申請人が遺産分割協議書などのコピーを作成して、そのコピーに申請人が「原本に相違ない」旨を記載したうえで署名すれば、原本を返却してもえます。

これを「原本還付」の手続きといいます。

相続登記の期限は3年

令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

正当な理由なく、相続登記を行わないままでいると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記を行うには、不動産をもれなく調査したり、多くの必要書類をそろえる必要があり、思った以上に手間がかかります。

期限を過ぎてしまわないよう、早い段階で専門家に相談して準備を整えておくことをおすすめします。

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相続登記の登録免許税|計算方法や免税措置は?必要書類や手続きも解説

証券会社|有価証券の名義変更

被相続人が有価証券を持っていた場合、それが上場株式か投資信託なら、遺産分割協議書などを証券会社に提出し、名義変更します。

非上場株式の相続手続きの流れや必要書類については、株式を発行している会社に問い合わせましょう。

上場株式や投資信託の名義変更をする際の具体的な流れは、次のとおりです。

  1. 証券会社に取引内容を問い合わせる
  2. 株式や投資信託を相続する相続人名義の証券口座を開設する
  3. 名義変更に必要な書類を証券会社に提出する

必要書類の内容は、「遺言書がある場合」と「遺産分割協議をした場合」で異なります。

主な必要書類は以下の表のとおりです。

遺言書がある場合の必要書類

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 株式を相続する人の印鑑証明書
  • 各社所定の相続手続き書類
  • 被相続人の株券等

遺産分割協議をした場合の必要書類

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 各社所定の相続手続き書類
  • 被相続人の株券等

なお、有価証券の相続手続きに必要な遺産分割協議書等は、原本の提出が必要です。

原本の返却を希望する場合は、各社所定の書類にその旨を記載して提出する必要があります。

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陸運局|自動車の名義変更

被相続人の自動車を相続し、名義変更する場合は、普通車なら陸運局、軽自動車なら軽自動車検査協会での名義変更が必要です。

具体的な流れは次のとおりです。

  1. 車検証で自動車の所有者を確認する
    ※所有者がクレジット会社等の第三者になっている場合、名義変更をするにはローンを完済する必要がある。
  2. 所有者が被相続人の場合、相続人全員で遺産分割協議を行い誰が自動車を相続するか決める
    話し合いの結果をまとめて、遺産分割協議書を作成する
  3. 陸運局または軽自動車検査協会に必要書類を提出し、名義変更の手続きをする

以下では、普通車の名義変更に関する主な必要書類をご紹介します。

普通車の名義変更に関する必要書類

  • 移転登録申請書
  • 手数料納付所(500円の検査登録印紙を貼付)
  • 自動車検査証(車検証)
  • 遺産分割協議書または遺言書等(注)
  • 戸籍謄本・戸籍の全部事項証明書
  • 新所有者の印鑑証明書と実印
  • 自動車保管場所証明書(車庫証明書)

なお、自動車の価額が100万円以下の場合、遺産分割協議書に代えて「遺産分割協議成立申立書」を提出することが認められています。

その場合、申請人である相続人が査定書又は査定価格を確認できる資料の写し等を添付する必要があります。

遺産分割協議成立申立書は、国土交通省ホームページからダウンロード可能です。

また、遺産分割協議書等の原本を返却してほしい場合、コピーをとって運輸局の窓口で原本と照合してもらいます。その後、原本の返却を受けれます。

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遺産分割協議書の書き方のポイント

遺産分割協議書の書き方のポイントは、以下の3つです。

  1. 相続財産を具体的に記載する
  2. 相続人全員が氏名住所を手書きした上で実印を押し、印鑑証明書を添付する
  3. 相続人の人数分作成し各自保管する

遺産分割協議書に一度署名押印してしまうと、後から合意内容を否定するのは非常に難しくなります。

少しでも疑問や不満がある場合は、署名押印する前にぜひ弁護士にご相談ください。

遺産分割協議書の提出についてよくある質問

最後に、遺産分割協議書の提出に関してよくある以下の質問にお答えします。

  • 遺産分割協議書はコピーでも良い?
  • 遺産分割協議書の提出がいらないケースは?
  • 期限までに遺産分割が終わらない場合はどうする?

遺産分割協議書はコピーでも良い?

遺産分割協議書は、基本的に原本を提出しなければならず、コピーは不可です。

通常は相続人1人につき1通の作成となるため、各種手続きで遺産分割協議書を提出した後は、提出先に原本の返却を求めましょう。

原本の返却をしてもらう方法は、提出先ごとに本記事内で解説しています。

遺産分割協議書の提出がいらないケースは?

遺産分割協議書は、以下の場合は必要ないことが多いです。

  • 相続人が1人しかおらず、その人が財産の全てを相続する
  • 法定相続分や遺言に従って遺産分割する

ただし、遺産分割協議書が必要かどうかは、何の手続きをするかにもよります。

手続きの内容ごとに確認することがおすすめです。

期限までに遺産分割が終わらない場合はどうする?

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合は、一旦法定相続分通りに遺産分割するものとして相続税を申告します。

その後、遺産分割の割合が決まったら所定の手続きをして、払い過ぎた相続税の還付などを受けましょう。

遺産未分割で相続税の申告をする方法は、関連記事『遺産未分割で相続税申告する方法とデメリット|遺産分割に期限はある?』にて詳しく解説しています。

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高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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