非上場株式(未公開株)を相続したら?評価方法・手続き・換金方法を総合解説

非上場株式(自社株・未公開株)は市場価格がないため、相続税評価額は類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式などの税法上のルールで算定します。
また、証券取引所で売却できないため、発行会社への売却やM&Aなど限られた方法で換金することになります。
中小企業のオーナーが亡くなった場合は、「いくらで評価するのか」「誰が引き継ぐのか」「売却できるのか」で悩むケースも少なくありません。
この記事では、非上場株式の相続税評価額の計算方法から、手続き、売却方法、節税対策まで分かりやすく解説します。
目次
非上場株式(取引相場のない株式)とは
非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社の株式のことです。「未公開株」「取引相場のない株式」とも呼ばれます。
まずは、それぞれの用語の違いと、非上場株式が相続財産となるケースを確認しましょう。
非上場株式・未公開株・取引相場のない株式は同じ意味
非上場株式・未公開株・取引相場のない株式は、いずれも「証券取引所に上場していない会社の株式」を指しており、意味は同じです。
| 呼び名 | 使われる場面 |
|---|---|
| 非上場株式 | 一般的な呼び名 |
| 未公開株 | 投資・金融の文脈でよく使われる |
| 取引相場のない株式 | 税法上の正式用語 |
税務申告の書類では「取引相場のない株式」という表現が使われますが、この記事では読みやすさを優先して非上場株式に統一します。
非上場株式が相続財産になるケース
中小企業オーナーが株式を保有したまま亡くなると、その株式は相続財産として相続人に引き継がれます。相続人が会社の経営に関わっていない場合でも、株式は自動的に遺産分割の対象になるため、適切な評価と手続きが必要です。
非上場株式の相続税評価額はいくら?評価方法を解説
相続税評価額とは、相続税の計算において、その財産をいくらとするかを示したものです。
上場株式であれば証券取引所での取引価格をもとに算定しますが、非上場株式には市場価格がありません。そのため、税法で定められた評価方法によって相続税評価額を算出します。
ただし、会社の財務状況や規模、相続人の株主区分などによって適用される評価方式が異なります。
どの方式を採用するかの判断方法と、各方式の算定方法について見ていきましょう。
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評価方式は4種類|株主区分などで決まる
非上場株式の相続税評価額は、類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式・配当還元方式の4つの評価方式のいずれかで算定します。
まずは、相続した株式について相続人が同族株主等に該当するかを確認します。
- 同族株主等
会社の経営を左右できる立場の株主。原則として「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「併用方式」のいずれかで評価する。 - 少数株主
議決権が少なく経営に関与しない株主。原則として「配当還元方式」で評価する。
さらに、同族株主等に該当する場合は、会社の規模(大会社・中会社・小会社など)に応じて、どの評価方式を適用するかが決まります。

同族株主の場合に必要となる会社規模の判定には、従業員数や取引金額、総資産価格などを用います。詳しい判定基準は、関連記事『株式の相続税はいくらかかる?上場・非上場株式の評価額と計算方法を解説』をご覧ください。
方式(1)原則的評価方式「類似業種比準方式」
類似業種比準方式は、評価対象の会社と似た業種の上場企業の株価を参考にして、自社の株価を算出する方法です。
事業内容が類似する上場企業の株価をベースに、自社の「配当金額・利益額・純資産額」を比較して評価額を求めます。
参考:国税庁「類似業種比準価額」
方式(2)原則的評価方式「純資産価額方式」
純資産価額方式は、会社が保有している資産と負債を相続税評価額に換算し直したうえで、1株あたりの純資産額を算出する方法です。
純資産価額方式は主に特定の評価会社・小会社で用いられます。
イメージとしては「会社をいま解散したとしたら、1株あたりいくらになるか」を計算するようなものです。
不動産を多く保有しているケースなど資産が多い会社は評価額が高くなりやすく、相続税負担が重くなる可能性があります。小会社はこの方式を原則として用います。
方式(3)原則的評価方式「併用方式」|会社規模による使い分け
併用方式とは、類似業種比準方式と純資産価額方式を会社規模に応じた割合で組み合わせる評価方式です。
会社の規模(従業員数・売上・総資産)によって、どの評価方式をどのような割合で使うかが異なります。
| 会社規模 | 評価方式 |
|---|---|
| 大会社 | 原則として類似業種比準方式(例外的に会社の状況等により純資産価額方式を用いる場合あり) |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の折衷 |
| 小会社 | 原則として純資産価額方式(通達上の区分に応じて類似業種比準方式との折衷となる場合あり) |
大会社・中会社・小会社の区分は、業種ごとに定められた従業員数・売上高・総資産の基準で判定します。
方式(4)少数株主向けの評価方式「配当還元方式」
配当還元方式は、会社から受け取れる配当金をもとに株式の評価額を計算する方法です。
少数株主は会社の経営に対する影響力が小さく、株式を保有することで得られる経済的メリットは主に配当です。そのため、評価額も配当金額を基準とした比較的シンプルな計算式で算出されます。
一般的に原則的評価方式よりも評価額が低くなるため、少数株主にとっては税負担が軽くなることが多いです。
非上場株式の評価額を抑える節税・事業承継対策
非上場株式の評価額は、相続発生後には基本的に下げることができません。税負担を軽くするためには、被相続人が存命のうちから対策を講じておくことが重要です。
評価額を抑えるための方法としては、「生前贈与」「持株会社の活用」「事業承継税制(特例措置)」「生命保険(死亡保険金)の活用」などがあげられます。
生前贈与
生前贈与では、後継者へ株式を計画的に移転することで、相続時の財産を減らせる可能性があります。
ただし、生前贈与された財産は、相続財産に持ち戻され、相続税の対象となることがあります。
たとえば亡くなる前の一定期間内に贈与された財産は、生前贈与加算によって相続税の対象となります。2026年12月31日までに発生した相続では原則3年以内の贈与が対象ですが、2027年以降は対象期間が段階的に延長されます。
詳しくは関連記事『生前贈与をわかりやすく解説!メリット・デメリットや注意点などがわかる』をご覧ください。
持株会社の活用
持株会社を通じて株式を保有し、評価額を圧縮する方法です。
ただし、適用できるケースは限られ、手続きも複雑です。検討する場合は、事業承継に詳しい税理士へ相談しましょう。
事業承継税制(特例措置)
事業承継税制の特例措置は、一定の要件を満たせば後継者へ承継する非上場株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予され、最終的に免除される場合もある制度です。
一方で、適用には会社や後継者に関する要件を満たす必要があり、適用後も継続的な管理や手続きが求められます。利用を検討する場合は、相続税や事業承継に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。
詳しくは関連記事『事業承継税制をわかりやすく解説|会社引き継ぎの税金と相続対策』をご覧ください。
生命保険(死亡保険金)の活用
死亡保険金は、非上場株式の相続税評価額を下げることにはつながりません。
しかし、死亡保険金は遺産分割が完了する前でも受け取れるため、現金化しにくい非上場株式を相続した場合でも、納税資金を確保しやすいというメリットがあります。
なお、死亡保険金も相続税の対象ではありますが、相続人が受取人である場合には、以下の非課税枠も適用されます。
- 500万円×法定相続人の数
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 法定相続人の数に含められる養子は、原則として、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです
詳しくは関連記事『生命保険の死亡保険金に相続税はかかる?非課税枠や税金の計算を解説』をご覧ください。
非上場株式を相続する際の手続きの流れ
非上場株式の相続は、評価・協議・名義変更・申告と複数のステップがあります。特に、相続税の申告には期限があるので、その点も意識しながら順を追って進めましょう。
(1)相続財産の調査・株式の確認
まず、被相続人がどの会社の株式をどれだけ保有していたかを確認します。株主名簿の閲覧請求などを通じて情報を収集しましょう。
(2)相続税評価額の算定
前述の評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式・配当還元方式)を用いて、株式の相続税評価額を計算します。会社の財務資料(決算書など)が必要になるため、会社側の協力を得ることが重要です。
(3)遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの株式を相続するかを決めます。非上場株式は分割しにくい財産のため、誰が引き継ぐかで争いになるケースもあります。
(4)株主名義書換え
遺産分割協議が成立したら、会社に株主名義書換えを申請します。
相続後の株主名義書換え手続き
相続によって株式を引き継いだら、会社に対して株主名義書換え(名義変更)の手続きを行う必要があります。
必要書類の例は次のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
- 相続人の印鑑証明書
会社によって必要書類が異なる場合があるため、事前に会社側に確認しましょう。
関連記事
株の相続での名義変更の手続きや必要書類、費用は?変更しないとどうなる?
(5)相続税の申告・納付
相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告と納付を行います。
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非上場株式の換金・売却方法と相続放棄
非上場株式は上場株式と違い、証券取引所で自由に売却できません。しかし、換金の手段がまったくないわけではありません。
会社(発行会社)への売却
相続した株式を発行会社に買い取ってもらう方法です。会社に自己株式取得の意思があれば、価格を交渉して売却できます。ただし、価格の決め方や税務上の取り扱いに注意が必要です。
他の株主への譲渡
既存の株主(他の同族関係者や従業員持株会など)に株式を譲渡する方法です。譲渡制限株式の場合は、会社の承認手続きが必要になります。
M&A・第三者への売却
会社ごと第三者に売却するM&Aの手法を活用すれば、株式を換金できる可能性があります。
M&A仲介業者や専門家を通じて買い手を探すことになりますが、手続きが複雑なため、専門家のサポートが不可欠です。
換金・売却できない場合の選択肢「相続放棄」
価値が低い株式であったり、会社の債務超過が疑われる場合は、相続放棄も選択肢の一つです。
ただし、相続放棄は株式だけを対象にすることはできず、すべての相続財産を放棄することになります。
【補足】譲渡制限株式は売渡請求に注意
非上場株式を相続しても、そのまま保有し続けられるとは限りません。
多くの中小企業では、譲渡制限株式を発行しています。譲渡制限株式とは、株式を譲渡する際に会社の承認が必要な株式です。
もっとも、相続による取得は法律上の「譲渡」には当たらないため、相続しただけで会社の承認を受ける必要はありません。
ただし、定款に売渡請求の定めがある場合は、会社から「株式を会社(または会社が指定する者)へ売り渡してください」と求められることがあります(会社法174条)。
売渡請求とは
売渡請求とは、会社が「相続で株式を取得した相続人に対して、その株式を会社に売り渡すよう請求できる」という制度です。
(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
会社法174条
株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。
売渡請求が発動される主な条件は以下のとおりです。
- 定款にあらかじめ売渡請求の規定が設けられている
- 会社が相続等により株式を取得した者があることを知った日から1年以内に請求する(会社法176条)
売渡請求が適法に行使された場合、相続人は原則として株式を売り渡す義務を負います。価格について合意できない場合は、裁判所に対して売買価格の決定を申し立てることができます(会社法177条)。手続きが複雑なため、対象となった場合は速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
非上場株式の相続税が払えない場合の対処法
非上場株式は現金化しにくい財産であるため、評価額が高くても納税資金が手元にないケースが生じやすいです。相続税の納付方法と、非上場株式特有の課題を確認しましょう。
延納(分割払い)の活用
現金での一括納付が困難な場合、税務署に申請することで延納(分割払い)が認められることがあります。
延納期間の上限は相続財産の内容等によって異なり、不動産等の割合が高い場合には最長20年、動産等が中心の場合には最長5年となります(相続税法38条)。
なお、延納には利子税が発生する点に注意が必要です。
また、延納をするには基本的に担保の提供が必要ですが、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には必要ありません。
物納(現物での納付)|非上場株式は認められないケースが多い
非上場株式等は、相続税の物納において、不動産・国債・上場株式等より後順位の財産として扱われます。そのため、先順位に適当な財産がある場合には、非上場株式等を物納に充てられないことがあります。
非上場株式は、物納に使える場合が限られています。特に、譲渡制限株式など、国が管理・処分しにくい株式は物納できません。
いずれにしても要件の判断は複雑なため、物納を検討する場合は必ず専門家に確認してください。
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非上場株式の相続は専門家に相談すべき理由
非上場株式の相続は、評価・手続き・換金のすべてにわたって専門知識が必要です。なぜ専門家への相談が不可欠なのか、また誰に相談すべきかを確認しましょう。
なぜ専門家が必要なのか
非上場株式の相続は、次のような理由から専門家なしで進めることが困難です。
- 評価方式の選択や計算が複雑で、誤りが生じやすい
- 会社の財務資料の読み取りに専門知識が必要
- 譲渡制限や売渡請求など、会社法上の問題が絡むことがある
- 評価額の誤りは税務調査で指摘されるリスクがある
相談すべき専門家の種類
非上場株式を相続する場合は、相談内容に応じて適切な専門家を選ぶようにしましょう。
| 専門家 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 税理士(相続税専門) | 評価方式の選択・相続税申告・節税対策 |
| 弁護士 | 遺産分割協議・売渡請求への対応・相続放棄 |
| M&Aアドバイザー | 株式の換金・会社売却の検討 |
特に評価方式の選択は、専門家の判断によって税額が大きく変わることがあります。相続税に強い税理士への早期相談が、結果的に節税にもつながります。
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【まとめ】非上場株式の相続で押さえるべきポイント
非上場株式は市場価格がないため、会社の規模や株主区分に応じた評価方式で相続税評価額を算定します。
また、証券取引所で自由に売却できないことから、評価だけでなく、相続後の名義変更や換金方法、納税資金の確保まで見据えて準備することが大切です。
特に中小企業の自社株は、評価額が高額になりやすく、事業承継にも影響します。
生前から事業承継税制や生前贈与などを活用できるか検討し、相続が発生した場合は早めに相続税に強い税理士へ相談すると安心です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
