被相続人とは誰のこと?相続人との違いや法定相続人の範囲もわかりやすく整理

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家族が亡くなり、相続の手続きを調べ始めると、「どっちが被相続人で、どっちが相続人?」と混乱してしまう方も多いでしょう。

結論からお伝えすると、被相続人は亡くなった方相続人は亡くなった方の遺産を受け取る方のことです。

この記事では、「被相続人とは誰のことか」をわかりやすく解説します。相続人との違いや、誰が相続人になれるのかという範囲・順位まで整理することで、相続の基本をスムーズに理解できるようになります。

※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

被相続人とは誰?

被相続人とは、「亡くなったことにより、自分が持っていた財産や権利・義務を他の人に引き継がせる人」を指します。

例えば

父親が亡くなり、その財産を妻と子どもが受け取る場合、父親が被相続人にあたります。

【ポイント】
「被」という漢字には「~される」という意味があるため、「被相続人」とは「財産を相続される人」と覚えるとわかりやすいでしょう。

法律上でも民法第882条に、相続は被相続人の死亡によって開始する旨が定められており、被相続人とは財産を残して死亡した側の人であることが分かります。

相続に関する書類や解説では、「亡くなった方」を一貫して「被相続人」と呼びます。この言葉が出てきたら「財産を残した亡くなった人のことだ」と理解すると、内容がスムーズに読み取れるようになるでしょう。

「被相続人」が使われる場面の具体例

  • 相続税申告書
    「被相続人の氏名・死亡年月日」を記載する欄がある
  • 遺産分割協議書
    「被相続人〇〇(享年〇〇歳)の遺産について…」と記載する
  • 戸籍・住民票の取得
    「被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要」と説明される
  • 相続税の解説記事
    「被相続人の遺産総額をもとに相続税を計算する」といった形で使われる

相続人と被相続人の違いは?

相続人は、被相続人の財産を受け取った人

被相続人と相続人の違いは、次の通りです。

  • 被相続人:財産を残して亡くなり、財産を渡す
  • 相続人:財産を受け取る

たとえば、父親が亡くなり妻や子どもが財産を受け取る場合、父親が「被相続人」妻や子どもが「相続人」にあたります。

このように、「誰が亡くなった人か」「誰が財産を受け取る人か」を整理すると、両者の違いが理解しやすくなります。

相続税を支払うのは相続人

相続税は、財産を受け取る側、つまり相続人が支払います。

「被相続人の相続税」という表現が使われることがありますが、これは「被相続人の財産に対してかかる相続税」という意味であり、被相続人が支払う相続税という意味ではないので注意しましょう。

なお、誰が相続人になるかは、本記事内で後ほど解説するように民法によって決められています。しかし、相続人に該当しない人であっても、遺言があれば遺贈という形で財産を受け取れます。

この場合も、遺言によって財産を受け取った人(受遺者)は相続税を支払わなければなりません。

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どっちが被相続人でどっちが相続人?具体例で確認

被相続人は財産を残して亡くなった方、相続人はその財産を受け取る方を指します。

ここではどっちが被相続人でどっちが相続人なのかを、具体例で確認してみましょう。

  • ケース(1)
    祖父が亡くなり、父と父の弟(ともに祖父の子)が財産を受け取る場合
    → 祖父=被相続人、父と父の弟=相続人
  • ケース(2)
    母が亡くなり、配偶者(父)と子ども2人が財産を受け取る場合
    → 母=被相続人、父と子ども2人=相続人
  • ケース(3)
    独身の兄が亡くなり、弟が財産を受け取る場合
    → 兄=被相続人、弟=相続人

相続人は被相続人との関係で決まる

相続人になれる人は誰でもよいわけではなく、民法によって「誰が相続人になれるか」が定められています。これを法定相続人といいます。

法定相続人の範囲や順位は、被相続人(亡くなった人)との関係性によって決まります。

法定相続人の範囲

配偶者(夫・妻)は、常に相続人になります。

それ以外の親族については、第1順位にあたる人がいれば第1順位の人、第1順位の人がいなければ第2順位の人、第2順位の人もいなければ第3順位の人というように決定されます。

  • 第1順位:子ども(直系卑属)
    子がすでに死亡している場合は、孫が代わりに相続(代襲相続)
  • 第2順位:親・祖父母(直系尊属)
  • 第3順位:兄弟姉妹
    兄弟姉妹が先に死亡している場合は、甥・姪が代わりに相続(※代襲相続は一代限り)
相続税 法定相続人

たとえば、被相続人に子どもがいる場合、第1順位の子どもと配偶者が相続人になります。親や兄弟姉妹は、このケースでは相続人にはなりません。

なお、子が死亡・欠格・廃除で相続人になれない場合、孫がいれば孫が代襲相続人になります。第1順位の直系卑属については、孫がいなければひ孫というように何世代でも代襲相続が可能です。

一方、第3順位である兄弟姉妹については、代襲相続が認められるのは一代限りで、被相続人から見た甥・姪までとなります。

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相続人になれない場合もある

法定相続人の範囲に入っていても、次のような事情がある場合は相続人になれないことがあります。

  • 相続欠格(不正行為などにより相続権を失った)
  • 廃除(被相続人の意思により相続権を剥奪された)

また、自らの意思で相続を放棄する「相続放棄」も、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

ただし、基礎控除の計算(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)においては、相続放棄した人も法定相続人の数に含めます。

相続放棄をした場合の相続税の扱いや、他の相続人への影響について詳しくは、以下の関連記事でご確認ください。

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遺言で誰に遺産を渡すか決めることも可能

相続は、民法で定められた法定相続分だけでなく、遺言によって財産の渡し方を決めることも可能です。

たとえば、「特定の子どもに多く財産を残す」「法定相続人ではない人(内縁の配偶者など)に財産を渡す」といった内容も、遺言書を作成することで実現できます。

ただし、兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が認められており、相続人の取り分が遺留分を下回る場合には話し合いが必要になったり、調停(遺留分侵害額の請求調停)に発展したりする可能性があります。

そのため、遺言による相続を検討する場合は、ルールを理解したうえで慎重に内容を決めることが重要です。

被相続人が亡くなってから相続人がすべきこと

被相続人が亡くなった後は、相続人が中心となってさまざまな手続きを進める必要があります。

主な流れを見ていきましょう。

(1)誰が相続人に該当するか確認する

まずは、誰が相続人になるのかを確定させます。

相続人は、被相続人の戸籍(「除籍謄本」や「改製原戸籍謄本」も含む)を取り寄せて確認します。これにより、認知している子や前婚の子など、見落としがちな相続人も含めて正確に把握できます。

(2)被相続人の財産を把握する

次に、被相続人がどのような財産を持っていたのかを調査します。

具体的には、以下のようなものが対象になります。

  • 預貯金(通帳、残高証明書など)
  • 不動産(登記簿謄本、固定資産評価証明書など)
  • 有価証券(株式、投資信託など)
  • 借入金や未払金などの負債

プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて把握することが重要です。

相続税の対象となる財産について詳しくは、関連記事『相続税の課税対象が一覧でわかる!課税対象外の財産も解説』が参考になります。

(3)遺産分割の割合を決める

相続人と財産の内容が確定したら、誰がどの財産をどの割合で取得するかを決めます。

遺産分割の割合は、以下のいずれかで判断します。

  • 遺言の内容
  • 民法で定められた割合(法定相続分)
  • 話し合い(遺産分割協議)

遺言書がある場合は、原則としてその内容に従います。遺言がない場合は、法定相続分に従うか、遺産分割協議で分割の割合を決定しましょう。

法定相続分は次のとおりです。

【参考】法定相続分

遺産分割協議をする場合は、相続人全員の同意が必要です。1人でも欠けていると無効になるので注意しましょう。

(4)相続税の申告・納付をする

相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付する必要があります。

申告・納付する先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。

なお、相続税は「課税価格の合計額(遺産総額から非課税財産や債務控除などを差し引いた金額)」のうち、基礎控除を超える部分に対して課税されます。

つまり、課税価格が基礎控除以下であれば、相続税はかからないということです。

基礎控除

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円となります。この場合、課税価格の合計額が4,800万円以下であれば、原則として相続税はかかりません。

基礎控除により相続税がかからない場合は、相続税の申告は不要です。
ただし、配偶者の税額控除や小規模宅地の特例など、一部の特例を使う場合は、相続税がゼロでも申告は必要です。

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被相続人に関してよくある質問

被相続人が相続人にしたい人、したくない人を指定できる?

遺言を作成する方法、生前贈与をする方法があります。

被相続人は、遺言書で「誰に財産をどれだけ渡す」「誰には財産を渡さない」といった指定ができます。

ただし、財産を渡したくない相手を指定したとしても、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分といって最低限の取り分が定められてます。

取り分が遺留分に満たない場合は相続人の間でトラブルになる可能性もあるので、遺言の内容は慎重に検討しましょう。

相続以外の方法としては、生前に財産を贈与しておく(生前贈与)方法もあります。

生前贈与では贈与税がかかりますが、基礎控除や各種特例の活用などにより、贈与税を抑えることも可能です。相続とどちらが節税に効果的かも含めて検討するとよいでしょう。

相続人の相続税の負担を軽減する方法は?

各種特例の活用により、相続税の負担を軽減できることがあります。

代表的なものとしては、以下があります。

  • 配偶者の税額軽減
    配偶者は、法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い方までが無税
  • 小規模宅地等の特例
    自宅の土地などの評価額を最大80%減額できる
  • 未成年者控除
    相続人が未成年の場合、「相続開始から満18歳になるまでの年数×10万円」が税額から控除される
    ※余った控除額は、扶養義務者の税額から控除できる
  • 障害者控除
    相続人が障害者の場合、「相続開始から満85歳になるまでの年数×10万円」(一般障害者)または「相続開始から満85歳になるまでの年齢×20万円」(特別障害者)が税額から控除される
    ※余った控除額は、扶養義務者の税額から控除できる

なお、特例により相続税がゼロになる場合でも、申告が必要なケースがあります。

例えば配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例では、相続税の申告が必須です。

まとめ|「被相続人」は亡くなった人、「相続人」は財産を受け取る人

被相続人とは、亡くなった人(財産を残した人)のことを指します。一方で相続人は、その財産を受け取る人のことです。相続税は被相続人ではなく、相続や遺贈によって財産を取得した相続人や受遺者が負担します。

また、相続人になれる人は民法によって定められており、配偶者は常に相続人となり、それ以外の親族は「子ども→親・祖父母→兄弟姉妹」の順で決まります。

「被相続人」という言葉は、相続手続きや相続税の申告で何度も出てくる基本用語です。「亡くなった人のこと」と理解しておくだけで、その後の手続きの理解がスムーズになります。

相続手続きや相続税について不安がある場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談することも検討するとよいでしょう。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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