病院への悪質な口コミや悪い評判への対処法は?削除や投稿者特定の流れも解説
口コミは病院を利用した人の生の声を聞ける貴重な場ですが、悪質な口コミによって病院の印象操作をされてしまえば、患者様の信用を失いかねません。
さらには悪質な口コミを放置することで、取引先やスタッフからの信頼低下にもつながる恐れがあるでしょう。
- 新しい患者から選ばれづらくなる
- 患者との信頼関係に影響を及ぼす
- 取引先との信頼関係に影響が出る
- 人材の流出や確保難で経営に悪影響
こうしたデメリットを避けるためにも、口コミは放置せず、適切な対処を検討せねばなりません。
この記事では、病院に対する悪質な口コミの対処法として(1)口コミの削除(2)口コミ投稿者の特定(3)警察に訴える(4)患者対応や職場改善の検討という4つの方法を紹介します。
悪質な口コミへの対処法
- 口コミの削除
- 口コミ投稿者の特定
- 警察に訴える
- 患者対応や職場改善の検討
口コミを放置することには多くのデメリットがあるので、早急に対応を検討していきましょう。
目次
対処法(1)口コミの削除
病院の「Google口コミ」や看護師向けの情報サイト「ナスコミ」を例に悪質な口コミの削除する方法を紹介します。
また上記のサイト以外にも、掲示板型サイトやSNS、ブログなどで悪質な口コミを書かれた時の対応についても、あわせてみていきましょう。
さらに、こうした口コミ投稿サイトへの削除申請が認められないときには、仮処分申立てという裁判手続きで削除を目指す方法もありますので、説明します。
Googleの口コミ削除方法
Google口コミの削除方法は、口コミの報告(通報)と、法的な理由でのコンテンツ報告の2通りがあります。
口コミを報告(通報)する
病院のレビューに書き込まれた「悪い口コミ」を削除するには、口コミに設置してある「報告(通報)ボタン」から違反報告を行います。
削除したい口コミの右上にある「三点リーダー」から「違反コンテンツを報告」し、問題点を選んで報告する流れです。
あるいはGoogleビジネスプロフィールのオーナーの場合は、管理画面で口コミ一覧を表示させてから該当の口コミを選択し、違反報告もできます。
報告ボタンによる通報は簡単ですが、あくまでGoogleへの問題通知のみです。
具体的な権利侵害の説明や問題のある文言の指摘には、専用のフォームページから削除申請する必要があります。その方法が、続いて説明する「法的な理由でコンテンツを報告する」方法です。
法的な理由でコンテンツを報告する
権利侵害の内容をGoogleに詳しく説明する場合には、「Legalヘルプページ」から削除を求めましょう。
Legalヘルプページでは、口コミが具体的にどんな違反をしているのか、Google側に示すことができます。
しかしながら、権利侵害の指摘には法律の専門的知識が必要となりますので、削除依頼する場合は、口コミの内容について事前に弁護士に相談しておきましょう。
法律相談を利用するときには、該当する口コミURLや投稿者の名前(ハンドルネーム)も伝え、投稿内容の確認をしてもらうようにしてください。実際にそのページをURLを含む形式でスクリーンショットして持参する方法も有効です。
口コミ投稿のどういう部分に法的問題が認められるのか確認の上、今後の対処方法のアドバイスがもらえます。Google口コミの削除についてはこちらの記事も参考にしてください。
ナスコミの口コミ削除方法
ナスコミは病院に勤める看護師が就職・転職先を探すときに使われるサイトのひとつです。施設の求人情報や働いている人の口コミが投稿されるサイトでもあります。
問い合わせフォームから削除依頼
ナスコミ内のお問い合わせフォームにて削除依頼が可能です。
問い合わせフォームにはナスコミ会員メールアドレス、病院名、投稿ID、URL、投稿内容、削除理由を記載して送信しましょう。
削除理由を説明する際には、利用規約のどの部分に違反しているのか、どういった権利侵害を受けているのかなどをわかりやすく記載してください。
以下の関連記事ではナスコミの口コミ削除方法についてくわしく解説しています。ナスコミの口コミ削除をしたい方はあわせてお読みください。
SNSや掲示板で悪い評判を投稿されたときの削除方法
口コミサイトだけでなく、SNSや掲示板の投稿も削除の対象となります。
相手とコンタクトが取れるのであれば、誤解を解き、口コミの削除を依頼することも一つの方法です。
しかし、直接のやり取りで感情的になってさらに相手の怒りを買ったり、直接削除を依頼すること自体が炎上につながったりする恐れもあります。
そのため、相手と直接やり取りするよりも、各掲示板やSNSの利用規約にのっとって削除を申請する方法が有効と言えるでしょう。
ただし掲示板によって手順も違うので、まずはネットトラブルにくわしい弁護士に相談して助言を受けることもポイントです。関連記事では、各媒体の削除依頼についてまとめていますのであわせてお読みください。
削除されないときは仮処分申立ても検討
各サイトには口コミを報告・通報する仕組みや、削除を申請するフォームが設けられています。しかしそれらを通して削除を試みても、必ずしも削除してもらえるわけではありません。
サイトのポリシーや利用規約に違反しているように思えても、運営側から「違反している」と判断を受けなければ削除は難しいのです。
そこで、こうした任意の削除申請が通らないときの方法として、裁判所に削除の仮処分申立てをおこなう方法があります。
削除の仮処分申立てという方法
仮処分申立てとは、通常の判決結果が出るまでにも被害が進んだり、仮処分命令がなければ権利侵害が発生する恐れがあったりするとき、裁判所から暫定措置を命じるように申立てる手続きになります。
削除の仮処分命令が発令されれば、被害者による削除申請が通らなかったケースでも、サイト側が削除に応じる可能性は十分あるでしょう。
仮処分申立てから命令発令までの主な流れを以下に示します。
仮処分申立ての流れ
- 申立書の作成と裁判所への提出
- 裁判官との面談や双方審尋
- 担保金の納付
- 裁判所が仮処分命令を発令
スムーズに進めば、削除請求の仮処分申立てに要する期間はおよそ1ヶ月から2ヶ月ほどです。
それでも裁判官との面談にて資料の追加提出を求められたり、書類の不備を指摘されたりすると進行は遅くなります。
仮処分申立てのメリットは迅速性にあるため、書類の作成不備や証拠の再提出などで時間をロスしてしまうと、メリットは薄れてしまうのです。
重要なことは、仮処分申立書の着実な作成と証拠の十分な収集です。書面の作成や証拠収集に力を入れ、説得力のある主張をしなければ仮処分申立ては認められません。
こうした事情から仮処分申立てについては弁護士に任せる方も多いです。
削除請求の仮処分申立てについては関連記事でも解説しています。理解を深めておきたい方はあわせてお読みください。
対処法(2)投稿者を特定して損害賠償請求
口コミの削除以外にも、発信者情報開示請求という手続きによって口コミ投稿者を特定する方法があります。投稿者を特定できれば、口コミによって受けた損害の賠償請求が可能です。
口コミによって受けた被害についての賠償請求をしたいなら、開示請求による特定が必須になります。
発信者情報開示請求の進め方
発信者情報開示請求の大まかな流れは以下のとおりになります。
開示請求の流れ
- 投稿されたサイトにIPアドレスの開示を請求
- IPアドレスを元に投稿時のプロバイダを特定
- プロバイダに対して発信者情報の開示を請求
- 発信者情報の開示を受けたら本人に賠償請求
一連の流れは法的手続きになる可能性が高いので、書類の作成や証拠の収集などの準備が必要です。裁判所に提出する書類になるため、一般の人が独力でやることは難易度も高いといえます。
そのため弁護士を話し合った結果、弁護士に発信者情報開示請求の対応を依頼するケースも多いです。
発信者情報開示請求のくわしい解説は費用相場については、関連記事もあわせてお読みください。
発信者情報開示請求は失敗することもある
投稿から日が経過しすぎていると特定に必要なログは消えてしまいます。あるいは口コミが権利侵害とまではいえないと判断される可能性もあるのです。
発信者情報開示請求は必ず成功するとは限らず、失敗すれば損害賠償請求は困難になるのです。
発信者情報開示請求を成功させるためには、的確かつ早急な判断が必要になります。
発信者情報開示請求が通らないケースについては関連記事でくわしく解説しているので、参考にしてみてください。
対処法(3)犯罪行為として警察に訴える
悪質な口コミ投稿が犯罪行為にあたるときには、警察への被害届や告訴状の提出も検討すべきです。
相手方の最終的な刑事処分は、警察・検察の捜査や裁判所の判断で決まります。しかし、被害者が告訴をしないと裁判が開かれないケースもあるので、被害者の意思が重要です。
口コミ投稿で問題になりやすい犯罪
たとえば「この病院は患者に使った器具を使いまわし、院内感染を多発させている」という虚偽の投稿は、デマを世間に広め、人の無知につけこんで騙す行為で、偽計業務妨害罪にあたる可能性があります。
そのほか、「病院に火炎瓶を投げ込むぞ」「次の診察時にはナイフを持っていきます」などの投稿については、威力業務妨害罪の捜査がなされる可能性が高いです。
従業員や他の患者に危険が及ぶ可能性がある口コミが投稿されたら、警察にすぐに相談してください。
対処法(4)患者対応や職場改善の検討
口コミの内容が病院側に改善を促す批評的なものであるときや、あくまで個人の感想に過ぎないときには、法的対処ではなく、病院側での改善が必要なこともあります。
批評的な口コミを受け止めて改善
口コミに悪いことが書かれたからと言って、それらすべてが違法なものとは限りません。内容の真偽を確かめ、批評的な口コミにも真摯に向き合い見直しが必要なこともあるでしょう。
患者からの口コミについて、病院側にも落ち度がある場合には、マニュアルや接遇マナーの改善も視野に入れるべきです。
スタッフによる口コミサイト投稿に問題があるときには、スタッフの待遇改善や面談など、働く人の声を採り入れることも検討項目のひとつといえるでしょう。
批評的な口コミであっても、その内容をよく読み、向き合うことで患者・スタッフ双方にとっての良い環境づくりを目指すことが望ましいです。
こうした環境改善については、課題によって望ましい相談相手が異なります。
事例から良くない口コミへの対応を検討する
具体的な事例をあげて、口コミへの対応方法や法的根拠をみていきましょう。
「〇〇先生の診察が適当」と書かれたら?
診察が適当と感じたという部分は、一個人の感想にすぎないと判断される可能性があります。そのため、一概に「医師への名誉毀損」と断定できるものではありません。
しかし、医師の名前を出して虚偽の内容を投稿することや、医師の落ち度を断定するような表現、医師個人のプライベートな情報(例えば、「〇〇先生には離婚歴がある」)の投稿は早急な対応が望ましいでしょう。
こうした書き込みは名誉毀損や侮辱罪、あるいは名誉感情の侵害という法的根拠によって、刑事責任・民事責任を問える可能性があります。
もしGoogle口コミで書かれた場合、Googleのポリシーに照らして判断されます。削除を申請する際には、ポリシーのどの部分に違反しているのかを具体的に記載するようにしてください。
「スタッフ〇〇はノロマのブス」と誹謗中傷されたら?
ノロマやブスという表現は相手を侮辱する言葉のひとつです。こうした誹謗中傷は、ネット上では規約違反と規定されているケースが多いでしょう。
具体的に言えば、看護師向けの求職・口コミサイト「ナスコミ」では氏名の投稿を禁止しています。また他者を侮辱する表現も禁止されているので、利用規約違反を根拠に削除申請すれば、対応してもらえる可能性は十分高いです。
許可なく勝手に顔写真を公開されたら?
ネット上にスタッフの写真が無断で掲載されたときには、肖像権侵害にあたる可能性が高いです。
はっきりと顔が映るような写真については、削除申請によって削除されることも多いです。まずは肖像権侵害を法的根拠として、サイトに画像削除を申請しましょう。
病院の口コミで悪い評判が立つ前に弁護士に相談!
嫌な口コミを書かれたとき、つい感情的になってしまったり、強い対応を取ったりすることは望ましくありません。
法的にどんな対応が取れるのか、客観的な意見を弁護士にもらってから対応を考えることをおすすめします。
とくに次のようなケースでは弁護士への相談が望ましい可能性が高いです。
望ましいケース
- 事実無根または著しく誇張されている
- 名誉毀損に該当する可能性がある
- 病院の評判が大きく損なわれる可能性がある
- 病院が経済的な損害を被る可能性がある
悪質な口コミについて法的対処を検討したい方は、まずネットトラブルに強い弁護士への相談がおすすめです。関連記事ではネットトラブルにくわしい弁護士の見つけ方を解説していますので、あわせてお読みください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了