熟年離婚の準備でやるべきことは?進め方を弁護士が解説

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熟年離婚したい

熟年離婚の準備としてやるべきことは「財産の把握」「証拠の確保」「生活基盤の整備」「離婚手続きの選択」の4つです。いずれも、配偶者に離婚の意思を悟られる前に着手しておくことが重要になります。

婚姻期間20年以上の熟年離婚では、財産分与・年金分割の対象金額が大きくなりやすく、準備不足のまま離婚を切り出すと後悔につながりやすい点が特徴です。

厚生労働省の「令和6年人口動態統計」によると、同居期間が判明した夫婦のうち、20年以上の夫婦の離婚件数は年間40,684件にのぼり、全体の23.8%を占めます。約4組に1組が熟年離婚という計算です。

本記事では、熟年離婚の準備として何をいつやるべきか、決意から離婚届提出後までの進め方を時系列で解説します。

熟年離婚とは

熟年離婚の定義は明確に定められてはいませんが、一般的には20年以上に渡って結婚している夫婦の離婚を指します。

熟年離婚の特徴

熟年離婚には、そうでない夫婦の離婚と比べてこのような特徴があります。

熟年離婚の特徴

  1. 子どもが手を離れており、親権争いが起きづらい
  2. 婚姻期間が長いため、財産分与や年金分割が問題になりやすい
  3. 離婚後の生活に経済的な不安を抱える人が多い

①子どもが手を離れており、親権争いが起きづらい

未成年の子どもがいる場合は、離婚の際に父母の一方(単独親権)または双方(共同親権)のいずれが親権を持つかを決める必要があります。

熟年離婚の場合は子どもがすでに成人していることも多く、その場合は法律上そもそも親権の対象外となるため、親権者を定める必要はありません。

親権問題で離婚が長引く心配がない点は、熟年離婚のひとつの特徴といえます。

②婚姻期間が長いため、財産分与や年金分割が問題になりやすい

多くの場合、財産分与年金分割で分け合う金額は、結婚生活が長くなるにつれ大きくなっていきます。また、これらのお金には老後の生活を支えるという意義もありますので、年齢の高い夫婦にとっては死活問題であり、話し合いがもつれてしまう可能性があります。

③離婚後の生活に経済的な不安を抱える人が多い

熟年離婚をする方の中には、専業主婦(主夫)であったり、長い間アルバイト・パートとして働いてきた方も多くいらっしゃいます。そういった方がすぐに働き口を見つけて自分の生活を支えることは簡単ではありませんし、配偶者の扶養に入っていた方は、配偶者に比べて少ない年金しか受け取れません。また、働ける健康状態ではない方もいるでしょう。

このような、経済的な不安のために離婚をためらう方も多いのです。

熟年離婚の理由

多くの方が、以下のような理由で熟年離婚を考えています。

  • 性格の不一致
  • 相手の親の介護
  • 不倫
  • 暴力やモラハラ

長年こういった悩みを抱え、子どもが独立したタイミングや、定年退職のタイミングで離婚を切り出す方も多いようです。

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熟年離婚の準備はいつから始めるべき?

熟年離婚の準備は、配偶者に離婚の意思を切り出す前から始める必要があります。離婚を切り出した後では、相手が財産を移動させたり、証拠を消したりするリスクがあるためです。

熟年離婚を決意してから離婚届提出までのステップ

熟年離婚の準備は、「切り出し前」「交渉・手続き中」「離婚後」の3つの時期に分けて進めます。

  1. 切り出し前の準備(配偶者に悟られる前)
  2. 離婚の交渉・手続き(切り出しから離婚成立まで)
  3. 離婚後の手続き(離婚届提出後)

ひとつずつ見ていきましょう。

切り出し前の準備

離婚を切り出す前に済ませておくべき準備です。

  • 相手名義の預金通帳・証券口座の確認
  • 不倫・DVなど有責事由がある場合の証拠収集(写真・日記・通帳など)
  • 離婚後の住居のめどをつける
  • 離婚後の収入・生活費の試算

この段階で特に重要なのは、相手の財産の把握と証拠の確保になります。

離婚の交渉・手続き

配偶者に離婚を切り出した後は、財産分与・年金分割・慰謝料の条件を交渉します。

  • 財産分与の対象財産のリストアップと交渉
  • 年金分割の割合の決定(合意分割の場合)
  • 慰謝料の請求(有責事由がある場合)
  • 離婚協議書または公正証書の作成

当事者同士での話し合いが難しい場合は、弁護士への依頼や調停の申立てを検討しましょう。

離婚後の手続き

離婚届の提出後も、速やかに行うべき手続きがあります。

  • 財産分与の請求
  • 年金分割の請求
  • 健康保険・年金の切り替え手続き
  • 氏名変更に伴う各種手続き

財産分与・年金分割の請求にはそれぞれ期限があるため、離婚成立後は早めに動き出すことが大切です。

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準備を始めるタイミングの判断基準

熟年離婚を考え始めても、すぐに準備に踏み切れない方も多いでしょう。

以下のいずれかに当てはまる状況になったタイミングが、準備を始める目安になります。

  • 子どもが独立し、親権・養育費の問題が生じない状況になった
  • 定年退職が近づき、退職金・年金の全体像が見えてきた
  • 配偶者のDV・不倫など有責事由の証拠が確保できた
  • 別居の見通し(住居・生活費)が立った

準備が整っていない段階で離婚を切り出すと、財産分与や慰謝料の交渉で不利になる可能性があります。焦らず、一つひとつ準備を進めることが大切です。

熟年離婚の準備でやるべきこと

熟年離婚で後悔しないためには、離婚を切り出す前からの準備が欠かせません。

精神的・経済的・生活面の備えを整えたうえで、確実に離婚を進めるための準備を進めましょう。

精神的な備え

熟年離婚は、長年家族として暮らしてきた人と離れて1人になるということですから、精神的な負担が大きいものです。

配偶者に離婚を切り出す前に、以下のような点について考えておきましょう。

離婚の理由は何か、離婚以外の解決策はないか

まずは、離婚すべき理由が本当にあるのか、離婚以外の解決策はないのかといった根本的な部分を検討しましょう。

話し合いの余地はないか、自分にも悪いところはなかったか、離婚以外の方法で解決できないかなどを、よく考えてから離婚の決断をするべきです。

離婚以外の方法としては、たとえば夫婦関係調整調停(円満)というものがあります。夫婦関係調整調停は、離婚について話し合うためによく使われる手続きですが、円満に夫婦関係を継続するための話し合いの場としても使うことができます。

また、別居をすることもひとつの手段です。ある程度の期間別居をすることで互いに冷静になれる可能性もありますし、別居をしたまま夫婦関係を維持するという方法もあります。

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離婚によって失うものと得るものは何か

とにかく配偶者と離れたい一心だけで離婚に踏み切るのは避けましょう。

離婚をすれば、自由な生活や新しい出会いなどが手に入ります。

一方で、自分に酷い態度を取っていた配偶者でも、いざいなくなってしまうと家の中が静まり返って寂しく感じるかもしれませんし、やはりまだ愛情が残っていると気づくかもしれません。

また、家のことを全て自分でやることになったら、病気になってしまったら、本当に配偶者の力なしで生活できるでしょうか。こういった見通しを立てておかなければ、離婚したことを後悔してしまうかもしれません。

失うものと得るものを比較すると、本当に離婚すべきなのかが分かるでしょうし、準備すべきことも見えてきます。

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子どもの気持ちはどうか

離婚についてどう思うか、どちらについて行きたいかなどを、子どもとよく話し合っておくことが重要です。

子どもにとってはたった2人の親ですから、子どもの気持ちはもちろん大切にすべきです。また、子どもが味方になってくれれば、相手との話し合いで有利に働くこともあります。

一方で、子どもの反対を押し切って離婚した場合、子どもと縁が切れてしまったり、子どもに老後のサポートをしてもらえなくなる可能性もあります。

どのように離婚を切り出すか

配偶者に離婚を切り出すには、相当な覚悟が必要です。心の準備をしておきましょう。

また、きちんと理由を伝えずに離婚を突きつけても、相手は納得してくれないかもしれませんので、離婚したい理由を自分の中でまとめ、どのように伝えるかを考えておきましょう。メモや手紙を作成するのも有効です。

自分の口で伝える方法の他にも、内容証明郵便を送付したり、弁護士を通して離婚を請求する方法などもあります。

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経済的な備え

熟年離婚の特徴として、経済的な不安が大きいというものがあります。こんなに生活が苦しくなるとは思わなかった、こんな生活になるなら離婚しなければよかったという後悔はしたくないものです。

新しく家を買ったり、賃貸住宅を借りたりして別居を始めるとなると、まとまった額の初期費用も必要になります。安心して新しい人生のスタートを切るためには、離婚前からの準備が必要です。

離婚後の生活費として期待できるものとしては、自身が働いて得る収入や、配当金、年金、貯蓄などのほか、配偶者からの財産分与や年金分割があります。それぞれどのくらいあてにできるのか、見通しを立てておきましょう。

また、住宅ローンが残っていたらどうするか、持ち家をどうするかなども検討する必要があります。住宅ローンがある場合の財産分与は非常に複雑です。事前に知識を身につけておきましょう。

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生活面の備え

離婚後の生活基盤も、離婚前から準備しておきましょう。

たとえば、住む場所働き口です。

住む場所の選択肢としては、新たに家を買ったり借りたりするほかにも、実家や友人の家に身を寄せるなどがあります。

一人暮らしを始める場合、自分が病気になったときはどうでしょうか。子どもや友人など、近所に頼れる人はいますか?離婚前から周りに相談しておくのが良いでしょう。

また、家事はすべて一人でできるでしょうか。やらなければならないのは炊事、洗濯、掃除、買い物やゴミ出しだけではありません。一人で行うのが難しいときは家事代行サービスも活用できますので、あらかじめ調べておくと安心です。

仕事を始めたい場合は、どの地域でどんな仕事をするか、いくらくらい稼ぎたいか、どのくらいなら身体を壊さずに働けるかを考えておきましょう。

場合によっては、すぐに別居を始めた方が良いこともありますので、離婚を切り出す前に引っ越し先にある程度の見通しをつけておいた方がスムーズです。

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確実に離婚するための備え

相手が離婚を頑なに拒む場合は、弁護士に交渉を依頼したり、調停や裁判といった手続きを使って、離婚に向けた話し合いを行うことになります。

裁判で離婚を認めさせるためには、4つの法定離婚事由のうちいずれかが存在しなければなりません。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

※2026年4月1日施行の民法改正により、「回復の見込みのない強度の精神病(改正前民法770条1項4号)」は法定離婚事由から削除されました。

証拠は離婚を切り出す前に確保する

裁判では法定離婚事由があることを証明するための証拠が必要です。

証拠を確保する前に離婚を切り出すと、相手が証拠を消してしまう可能性があるので、離婚を切り出す前に証拠を押さえておきましょう

証拠としては、たとえばDVや不倫があったことを示す写真や映像、日記、生活費を支払っていないことが分かる通帳などが有効です。

実際に裁判まで進むつもりはなくても、証拠があれば「裁判を起こせば勝てる」状態になるため、話し合いにおいても有利になります。

別居を始めることも有効な準備

不貞行為や悪意の遺棄といった具体的な離婚事由が見つからなくても、長期間にわたって別居をしていれば、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」にあてはまり、離婚が認められる可能性があります。

過去の裁判では、約47年半の婚姻期間のうち12年以上の別居が続いたケースで婚姻関係の破綻が認められた事案があります(京都家判令元・6・21)。

したがって、別居を始めるのも、確実に離婚をするために有効な準備といえます。

ただし、別居期間の長さだけで離婚が認められるわけではありません。

約30年間の同居後に6年以上別居していても、障害のある子の介護を一方的に放棄した事情などが考慮されて離婚請求が棄却された判例もあります(名古屋高判令3・11・17)。

最大限お金を受け取るための備え

離婚時に、配偶者から慰謝料や財産分与、年金分割といった形でお金を受け取れる可能性があります。特に退職後の離婚の場合は、財産分与と年金分割が離婚後の生活を大きく左右します。

これらのお金には、離婚前の貢献を清算する意味合いもありますし、離婚後の生活を支えるという目的もあります。最大限に請求するためには、知識を身に着けるとともに、離婚を切り出す前からの準備が必要不可欠です。

たとえば、相手の財産を把握しておくことが非常に重要です。

財産分与の額を決定する際には、互いの財産を全て明らかにして、半分ずつに分ける必要があります。しかし、そこで相手が財産を隠していたら、相手はたくさん財産を持っているのに、もらえる財産が少なくなったり、こちらが財産を分け与えなければならないという事態が起きてしまいます。

そういったことを防ぐために、離婚の意思を悟られる前に、相手の預金通帳をおさえておくというような準備が必要になるのです。

また、相手のDVや不倫などに対して慰謝料を請求しようと思っている場合は、暴力を振るわれた証拠不倫の証拠を、相手に消される前に確保しておかなければなりません。

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専門家に相談する

離婚の流れや離婚後の生活についてイメージがわかない方、相手との話し合いが不安な方は、離婚カウンセラーや弁護士などの専門家への相談も検討してみましょう。

離婚カウンセラーは、夫婦関係や離婚についてのカウンセリングやアドバイスを行う専門家です。カウンセリングを通して、気持ちの整理の手助けをしてくれるでしょう。

ただし、離婚カウンセラーという資格はなく、何の資格を持っていない人でも離婚カウンセラーを名乗ることができます。ですので、本当にそのカウンセラーが信頼できる人なのかは、よく検討しましょう。

弁護士は、依頼者の代理人となって交渉をすることが法律で認められている、唯一の資格者です。自分の代わりに相手との話し合いをしてほしい方や、裁判を考えている方は、弁護士に相談するのが良いでしょう。

どこに相談すればいいか分からない、弁護士費用が払えないなどの場合は、法テラスが活用できます。法テラスとは、国民向けに法的支援を行う機関で、電話やメールで相談をすると適切な相談窓口などを案内してくれるほか、経済的余裕のない人に対しては、無料の法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替えといったサービスを提供しています。

DVで悩んでいる方は、政府や自治体が設置しているDVの相談窓口も利用できます。公的機関に相談履歴を残しておくことは、後の裁判などでDVの証拠になることもありますので、ためらわずに相談してみてください。

また、離婚後の生活設計について知りたい方は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるのも良いでしょう。ファイナンシャルプランナーは、暮らしに関するお金のプロフェッショナルです。

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熟年離婚後の生活を支えるお金の種類

熟年離婚後の生活を支えるお金には、配偶者からの財産分与・年金分割のほか、自身の収入・貯金・年金、公的支援制度があります。

離婚前の段階から、それぞれどのくらい見込めるかを把握しておくことが重要です。

財産分与

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合う手続きです。

対象となる財産は、預貯金・不動産・自動車・退職金・有価証券など多岐にわたります。現物を取得する方法や、金銭の支払いを受ける方法など、状況に応じた形で財産分与を受け取ることが可能です。

財産分与の割合は夫婦の話し合いで決められますが、原則は2分の1です。

2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与を請求できる期間は離婚後5年以内に延長されました(民法768条)。2026年3月31日以前に離婚した場合は、従来どおり離婚後2年以内が請求期限です。

請求期間が延びたことで、離婚後の交渉をより落ち着いて進めやすくなりました。

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年金分割

年金分割とは、配偶者が第2号被保険者(勤務先の社会保険に加入していた人)であった場合に、婚姻期間中に積み立てた厚生年金を分け合う制度です。

割合の上限は2分の1で、その範囲内で夫婦が話し合って決めることができます。

年金分割の請求期限は、2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚した日の翌日から5年以内、2026年3月31日以前に離婚した場合は離婚した日の翌日から2年以内です。

期限を過ぎると年金分割ができなくなるため、離婚後は早めに手続きを進めることをお勧めします。

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自身の収入

離婚後に自立した生活を送るために重要なのは、定期収入があることです。新たに仕事を始める必要がある方も多いでしょう。

熟年離婚後の働き方としては、正社員パート・アルバイトの2つがあげられます。

正社員として就職すれば、毎月安定した収入が得られ、雇用も安定している一方、求人が少ない点や柔軟な働き方ができない点はデメリットです。

パート・アルバイトとしての働き方は、求人が多く仕事を見つけやすい点や、自分の体調や予定に合わせてシフトを調整しやすい点がメリットですが、収入や雇用形態が不安定なのがデメリットです。

以前の職歴やスキルがあれば、就職に有利になります。また、離婚前からスキルアップや資格取得をして、備えておくことも可能です。

自身の貯金

自分自身の貯金があると安心ですが、その貯金が婚姻期間中に作ったものであれば財産分与の対象になってしまいます。

自分名義の財産の方が多かった場合は、財産分与によって貯金が減ってしまう可能性があります。

相手に黙って貯めていたへそくりがあっても、相手の知るところになれば、財産分与を請求される可能性があるため注意が必要です。

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自身の年金

年金を受給できる年齢であれば、自身の年金が生活の軸になるでしょう。

第3号被保険者(配偶者の扶養に入っていた人)は、厚生年金に加入して保険料を負担してきた人と比べ、将来受け取れる年金額が少なくなる傾向があります。受給額を増やす方法としては、60〜65歳の間に国民年金へ任意加入する年金の受給開始を繰り下げる、といった選択肢があります。

また、配偶者に年金分割を請求し、婚姻期間中の厚生年金記録を移転させることで、将来受け取る年金額を増やすことも可能です。

公的支援

離婚後に活用できる公的支援を紹介します。

生活保護

世帯の収入や資産が一定以下で、他の制度や親族からの援助を活用してもなお生活が困窮する場合、各自治体の福祉事務所に生活保護を申請できます。

受給には一定の要件があるため、要件を満たさない方は、次に紹介する貸付制度の活用も検討してみてください。

生活福祉資金

生活福祉資金は、低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯など、一定の要件を満たす世帯を対象とした貸付制度です。生活費や介護費のほか、就職のための技能習得など、さまざまな用途で利用できます。

返済が必要な貸付金ですが、金利は民間の金融機関と比べて低く、連帯保証人を立てられる場合は無利子での借り入れも可能です。生活を立て直す際に利用しやすい制度といえます。

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熟年離婚の流れと手続き

離婚の手続きには、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つの方法があります。

まずは当事者同士の話し合いによる協議離婚を試み、まとまらない場合は調停・裁判へと進むのが一般的な流れです。

協議離婚

協議離婚とは、夫婦の話し合いによって離婚やその条件を決める、最も一般的な離婚の方法です。裁判所が関与しないため、時間や費用をかけずに済み、離婚の条件を柔軟に決められる点がメリットといえます。

一方で、相手が話し合いに応じない場合は協議での離婚が困難になります。また、取り決めに漏れがあっても気づきにくく、後にトラブルへ発展するおそれがある点には注意が必要です。

こうしたトラブルを防ぐために、合意した内容は離婚協議書として書面に残しておくことをおすすめします。離婚協議書は費用をかけずに自作することも可能です。

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離婚協議書は公正証書にしておく

離婚協議書を公正証書として残しておく方法もよく取られています。公正証書とは、公証人に依頼して公証役場で作成する公文書です。

強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておくと、金銭の支払いに関する約束が守られなかった際に、裁判を経ずに強制執行が可能になります。

公正証書の作成には、目的の金額に応じて数千〜数万円の費用がかかります。自分で公証役場に依頼することもできますが、弁護士や行政書士に案文の作成や手続きのサポートを依頼することも可能です。

なお、離婚という手続きの性質上、公証役場での調印は原則として本人が行う必要があります。

2025年10月以降は手続きのデジタル化が進み、一定の要件を満たす場合はウェブ会議(リモート方式)で手続きを進める選択肢もあります。利用できるかどうかは公証人の判断によるため、事前に公証役場へ確認することをおすすめします。

調停離婚

協議で決まらなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。

調停では、裁判官と調停委員からなる調停委員会が間に入り、夫婦それぞれから個別に話を聞いて意見の調整を行います。面談は原則として1人ずつ行われるため、相手と顔を合わせることはほとんどありません。

調停では、離婚の可否のほか、慰謝料・親権・財産分与・年金分割などについて包括的に話し合うことが可能です。夫婦が合意に至ると調停が成立し、確定判決と同一の効力を持つ調停調書が作成されます。

調停は約1か月おきに行われ、半年程度で終了するケースが多いとされています。

調停離婚は、協議離婚と同じく柔軟な解決方法をとれる点がメリットです。また、調停調書に記載された慰謝料や財産分与の支払いが守られなかった場合は、裁判を経ずに強制執行を申し立てることができます。

一方で、相手が出席しなかったり、話し合いでの解決が困難と判断された場合は調停不成立となります。時間をかけて調停を行っても、結論が出ないまま終わってしまうリスクがある点は理解しておく必要があります。

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裁判離婚

調停を行っても合意に至らなかった場合は、離婚裁判を起こすことができます。裁判では裁判官が、夫婦を離婚させるべきか、どのような条件で離婚させるかを判断します。

協議や調停とは異なり、相手が出廷しなかったり折り合いがつかなかったりしても、裁判官の中立な判断のもとで必ず結論が出る点が裁判離婚のメリットです。

ただし、裁判で離婚を認めてもらうには法定離婚事由が必要であり、容易には認められません。

裁判には多くの場合、半年〜2年程度の時間がかかります。

日本では調停前置主義が採用されており、調停を経ずに離婚裁判を起こすことは原則できません。調停が先行する分、解決までの期間はさらに長くなる傾向があります。

裁判では弁護士に依頼するケースが多く、弁護士費用も自己負担となります。時間・費用ともに負担が大きくなる点は、裁判離婚のデメリットといえるでしょう。

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熟年離婚の準備についてよくある質問

Q. 熟年離婚したい!何から始めればいい?

熟年離婚を決意したら、まず相手の財産を把握して証拠を確保し、あわせて離婚後の住まいと生活費の見通しも立てておきましょう。離婚を切り出した後は、財産の移動や証拠の隠滅といったリスクが生じるため、事前に着手しておくことが大切です。

なお、万が一相手が財産を隠していた場合でも、2026年4月の法改正により、財産分与に関する裁判手続において家庭裁判所が当事者に財産情報の開示を命じる制度が新たに設けられています。

Q. 熟年離婚の準備はどのくらいの期間かかる?

熟年離婚の準備期間は、財産の把握・証拠収集・住居の確保などを含めると、数か月から1年程度が目安です。

2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与は離婚後5年以内に請求できます(民法第768条)。ただし、時間が経つほど相手が財産を処分するリスクが高まります。離婚を切り出す前の段階から、相手の財産状況を把握しておくことが重要です。

Q. 熟年離婚の準備中に別居しても問題ない?

別居自体は法律上の問題ありません。むしろ別居期間が長期にわたると「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法第770条1項4号)として離婚が認められやすくなります。

なお、別居中も婚姻費用(生活費)を相手に請求する権利があります。

Q. 熟年離婚の準備段階で弁護士に相談すべき?

離婚を切り出す前の段階から弁護士に相談することをお勧めします。財産分与の対象となる財産の把握方法・証拠収集のタイミング・相手への通知方法など、準備段階で弁護士の助言を得ることで、交渉や調停を有利に進めやすくなります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了