配偶者から土地を相続したら？相続税や手続きについて解説

更新日：2024/03/18

ケース別の相続税

配偶者が亡くなって土地を相続する場合、名義変更や相続の手続きが必要です。この記事では、相続における土地の評価方法や名義変更手続き、節税対策などについて解説します。

『配偶者による土地の相続』に関する基本事項
『配偶者による土地の相続』に関するよくある質問
他にもおさえておきたい相続の基本

『配偶者による土地の相続』に関する基本事項

土地を相続する場合の流れ

土地を相続する場合は、以下の流れで手続きを行います。

1.遺言書の有無を確認する

被相続人が遺言書を残していた場合は、遺言に沿って相続を行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。

2.相続人を確定する

相続人となるのは、被相続人の配偶者や子、父母、兄弟姉妹などです。相続人の親族関係を確認するための書類を用意して、相続人を確定します。

3.相続財産を調査する

相続財産は、現金、預貯金、株式、不動産など、被相続人が所有していたすべての財産です。被相続人の相続財産を調査し、特定します。

4.遺産分割協議を行う

遺言書がない場合は相続人同士で話し合い、相続財産をどのように分けるかを決めます。遺産分割協議書を作成し、相続人全員から署名押印をもらって遺産分割を確定します。

・遺産未分割で相続税申告する方法とデメリット｜遺産分割に期限はある？

5.相続登記を行う

相続登記とは、被相続人から相続人に土地の名義変更をする手続きです。相続登記をしないと、土地を売却したり、担保にしたりすることができません。相続登記は自身で行うこともできますが、司法書士に依頼するとスムーズに手続きを進められます。

・相続登記の登録免許税｜計算方法や免税措置は？必要書類や手続きも解説

・相続後の土地名義変更と相続税｜手続きの流れを解説

6.相続税の申告を行う

相続税の申告手続きを行います。相続税の申告には専門的な知識が必要になるため、税理士に依頼することをおすすめします。

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除とは、相続税の課税対象となる財産額から差し引くことができる金額です。相続税の基礎控除額は、以下のように計算します。

【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額＝3,000万円＋（600万円×法定相続人の数）

基礎控除額は、相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円です。なお、遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、申告の義務があり、相続税額が発生する場合があります。

・相続税はいくらから生じる？｜基礎控除額も解説

・相続税は基礎控除以下なら無税！計算方法やその他の控除も解説

相続税の申告期限は10か月以内

遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続の開始があったことを知った日（通常は被相続人が亡くなった日）の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。

申告書の提出方法は、持参や郵送のほか、e-Tax（電子申告）でも可能です。

・相続税の申告はネットで可能！やり方やe-Taxが使えない人も解説

相続税の申告書に記載する内容

相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。相続税申告書には、相続財産の評価額や相続人の情報などを記載します。土地などの不動産を相続する場合は、以下の項目などを記載する必要があります。

不動産の種類
不動産の所在地
不動産の面積
不動産の評価額

また、控除を適用する場合は、適用を受ける旨の記載も必要です。土地の相続税申告を行う際には、これらの項目を正確に記載しましょう。申告書の作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。

・相続税申告書の書き方！相続税の申告書を誰でも簡単に作成するコツ

・相続税申告で失敗しないために！｜評判の良い税理士の探し方

配偶者控除の適用で相続税の負担を大幅に軽減

相続税における配偶者控除（配偶者の税額軽減）とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

被相続人と法律上の結婚関係にある
遺産分割が完了している
相続税の申告期限までに申告書を提出する

相続財産が高額になる場合は、配偶者控除の適用も検討しましょう。

・相続税の配偶者控除の要件・計算方法｜注意点も解説

土地の相続税評価額の計算方法

土地の相続税評価は、路線価方式または倍率方式のいずれかで算定します。

路線価方式による評価方法

路線価方式は、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額をもとに価額を算定する方法です。路線価は、国税庁が毎年7月に公表しています。

倍率方式による評価方法

倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の価額を算定する方法です。固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算定します。

土地の相続税評価は専門的な知識を要するため、相続税に強い税理士に相談したほうがいいでしょう。

・土地の相続税の仕組みは？計算方法、評価額、特例、控除などを解説

小規模宅地等の特例で土地の相続税評価額を最大80%減額も

小規模宅地等の特例とは、要件を満たす土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。小規模宅地等の特例を適用すると、相続税の課税対象となる宅地等の価額が大幅に減額されるため、相続税負担をおさえることができます。

小規模宅地等の特例の適用要件は、以下のとおりです。

被相続人などが居住、または事業を営んでいた土地である
配偶者または要件を満たす親族が相続する
適用できる土地の面積は居住用地の場合は330㎡の面積に対応する部分まで、事業用地の場合は400㎡の面積に対応する部分まで
居住用地の場合、配偶者以外の相続人は相続税の申告期限まで居住すること

なお、小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税申告書への記載に加え、小規模宅地等の特例に関する書類を添付する必要があります。

・ケース別・小規模宅地等の特例の計算方法と計算例！適用要件や注意点も解説

税務調査を受けやすいケース

相続税の税務調査は、申告内容に疑義があると判断された場合に実施されます。特に、以下に該当する場合は、税務調査の対象となる可能性が高いでしょう。

相続税の申告金額が大きい
不動産や有価証券など、評価額に確認が必要な相続財産がある
相続人同士の遺産分割協議が紛争となっている
相続人や被相続人（配偶者）が過去に税務調査を受けたことがある

これらのケースに該当する場合は、相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。税理士に依頼すると、相続税の申告書の作成だけでなく、税務調査の対応についてもサポートしてもらえます。

・相続税の税務調査とは？対象になる人の特徴やならない方法を解説

・相続税の脱税は税務調査でばれる？｜ペナルティや回避方法を解説

『配偶者による土地の相続』に関するよくある質問

土地の相続税はいくらかかる？

土地の相続税額は、土地の評価額によって異なります。土地の評価額は、路線価方式または倍率方式のいずれかで算定されます。

路線価方式：国税庁が発表する土地の路線価に面積を乗じて算出

倍率方式：自治体が算定した土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出

相続後の土地の名義変更はどうすればいいの？

名義変更の手続きは、法務局で行うことができます。名義変更は、民法上では被相続人の死亡日から10年以内が時効とされていましたが、2024年からは相続登記は義務化され、3年以内に行う必要があります。名義変更をしない限り、登記簿上の名義は被相続人のままです。そのため、相続人は土地を売却したり、担保にしたりすることができません。