相続税を払う人の割合は?10人に1人発生しているって本当?
「相続税を払う人の割合はどれくらい?」
「相続税を払う人が増えているって本当?」
「私は相続税を払う必要がある?」
そのような疑問をお持ちの方に向け、この記事では相続税を払う人の割合について解説します。
実は相続税を払う人の割合は年々増えています。「私には関係ない」と放っておくと、想定外の相続税の負担を負うことになりかねません。
相続税を払う必要があるか簡単に確認する方法もご紹介しますので、ぜひ一度チェックしてみてください。
目次
相続税が発生する割合は約10人に1人
国税庁の「相続税の申告実績の概要」によると、令和4年の相続税が発生する割合は、約10人に1人という結果でした。
これは、令和4年に亡くなった方のうち、相続税が課税された割合が9.6%だったことからわかります。
なお、実際に相続税を払った人が9.6%なのではなく、あくまで令和4年に亡くなった方のうち、相続税が課税されるほどの財産を所有していた方が9.6%という意味なので注意してください。
相続税を払う人の割合は増えている
相続税の課税割合の推移
下図は、被相続人数(亡くなった方の人数)に対する相続税の申告件数の割合をまとめたものです。この割合を「課税割合」といいます。
つまり、平成26年から令和4年の間に、課税割合が倍になっているのです。
言い換えると、相続税が発生する割合は、平成26年は約23人に1人だったものが、令和4年には約10人に1人にまで大幅に増加しているのです。
さらに、東京都の場合、令和4年の課税割合は15%にも上ります。
この数字は、東京都では、約7人に1人の割合で相続税がかかることを意味しています。
相続税は決して他人事ではありません。
「自分に相続税は関係ない」と思っている方こそ、ぜひ一度相続税について、税理士に相談することをおすすめいたします。
※参考
平成26年分から平成29年分
「国税庁|相続税の申告状況について」「東京国税局|相続税の申告状況について」
平成30年分から令和4年分
「国税庁|相続税の申告実績の概要」「東京国税局|相続税の申告実績の概要」
課税対象者の増加は基礎控除額の引き上げが原因
相続税の課税割合が倍増した原因は、平成27年の税制改正による基礎控除額の引き下げにあります。
基礎控除額とは、簡単にいうと、相続税がかかるかどうか決まるボーダーラインです。
改正前の基礎控除額は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の人数)」で計算されました。
一方、改正後の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で計算されるようになったのです。
具体的には、改正前は課税価格の合計額(※)が6,000万円を超えるまで相続税は課税されませんでした。
しかし、改正後は課税価格の合計額が3,600万円を超えれば相続税が課税される可能性が出てきたのです。
都市部に不動産を所有しているケースでは、相続税が発生する可能性は十分あります。
※「課税価格の合計額」とは?
課税価格とは、相続税の課税対象となる財産の価格を意味します。
各人の課税価格の合計が課税価格の合計額になります。
課税価格の詳しい計算方法については、「相続税は基礎控除改正でどう変わった?基礎控除の計算や節税対策も紹介」をぜひお読みください。
相続税額の推移
ここでは、相続税額の推移をご紹介します。
平成27年の基礎控除額引下げによって、従来より少額の相続税額を納税する相続人が増えました。
その結果、令和4年分の被相続人1人当たりの相続税額は、基礎控除額引下げ前の平成26年分に比べ600万円以上減少しています。
一方、令和3年分の全体の相続税額は、平成26年分と比べ1兆円以上も増加しています。
これらの数字は、被相続人1人当たりの相続税額は減ったものの、相続税を支払う人の割合が大幅に増えたことを表しています。
※参考
平成26年分から平成29年分
「国税庁|相続税の申告状況について」
平成30年分から令和4年分
「国税庁|相続税の申告実績の概要」
相続財産の金額の構成比の推移
直近6年分の相続財産の金額の構成比は、次のように推移しています。
これらの数字から、どの期間でも現金・預貯金だけでなく、不動産(土地及び家屋)も相続財産の中で大きな割合を占めていることが分かります。
相続財産のうち不動産が大半を占める場合、すぐに売却するのが難しく、相続税の納税資金の確保が困難となる可能性があります。
相続税が払えない可能性がある方は、ぜひ関連記事『相続税が払えないときの解決方法を7つ紹介!【税理士監修】』をお役立てください。
※参考
「国税庁|令和4年分 相続税の申告実績の概要」
あなたには相続税の納税義務がある?
相続税がかかるか確認する計算方法
相続税は、課税価格の合計額が基礎控除額より大きい場合に課税されます。
課税価格の合計額が基礎控除額より大きいかどうか確認する方法は、次の4ステップです。
ステップ1:法定相続人の人数を把握する
ステップ2:相続税の基礎控除額を計算する
ステップ3:課税価格の合計額を計算する
ステップ4:課税価格の合計額から基礎控除額を引く
以下、各ステップについて解説します。
ステップ1 法定相続人の人数を把握する
法定相続人とは、民法で決められた、被相続人の財産を相続できる人のことです。
遺言書などで、特定の人物への相続の指定がない場合には、法定相続人の中で遺産を分割し、それぞれ財産を相続、相続税を申告・納付することになります。
配偶者は常に法定相続人になります。さらに、「子ども→直系尊属(父母など)→兄弟姉妹」の順で法定相続人になります。
【注意点】
- 子が被相続人より前に死亡した場合、孫が代襲相続人になります。
- 子や孫がいない場合、またはこれらの者がすべて相続放棄した場合に限り、直系尊属が相続人になります。
- 子、孫、直系尊属がすべていない場合、またはこれらの者がすべて相続放棄した場合に限り、兄弟姉妹が相続人になります。
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ステップ2 相続税の基礎控除額を計算する
次の基礎控除額の計算式に、ステップ1で求めた法定相続人の数を当てはめます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人だった場合は、「3,000万円+(600万円×3人)」となるため、基礎控除額は4,800万円となります。
ステップ3 課税価格の合計額を計算する
まず、相続人ごとに課税価格を求めます。
各相続人の課税価格は、以下の計算式で求めます。
各相続人の課税価格=相続財産+みなし相続財産(死亡保険金、死亡退職金など)-非課税財産+相続時精算課税に係る贈与財産の贈与時の価額-債務・葬式費用+相続開始前3年以内の贈与財産
計算式の形にすると複雑に見えますが、簡単にいうと「プラスの財産から、マイナスの財産と非課税になる財産を引いて、最後に一部相続税がかかる贈与財産を足す」という流れです。
次に、各相続人の課税価格を合計します。
ステップ4 課税価格の合計額から基礎控除額を引く
ステップ3で求めた課税価格の合計額から、ステップ2で求めた基礎控除額を差し引きます。
その結果算出される金額を「課税遺産総額」といいます。
この課税遺産総額が0円を上回ると、相続税が課税されます。
ただし、相続税にはここから税額軽減できる制度や特例がいくつか存在するため、それらを適用することで相続税が0円になるケースも多いです。
相続税を軽減できる制度や特例について詳しくは、関連記事『相続税を減額できる特例・控除の適用要件』をお読みください。
なお、相続税のシミュレーションは『相続税計算機』もご参照ください。
相続税について税理士に相談するメリット
相続税について少しでも気になっている方は、ぜひ早いうちから相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。
ここでは、税理士に相談する具体的なメリットを3つご紹介します。
最適な相続税対策が可能になる
相続発生前から税理士に相談しておけば、ご相談者様に最適な相続税対策が可能になります。
税理士は、相続人、相続財産を調査し、相続税額をシミュレーションします。その上で、生前贈与をはじめとする節税対策をご提案します。
一口に「相続税対策」といっても、何が最適な方法なのかはご相談者様の状況により様々です。
また、税金に関する法制度は度々変わるため、最新の税制を把握している専門家のアドバイスが欠かせません。
さらに、忘れてはならないのが納税資金の確保です。
先にもご説明しましたが、不動産など換金が難しい相続財産が多い場合、納税資金が不足するおそれがあります。
なぜなら、相続税は現金一括払いが原則とされているからです。
税理士は、生命保険等を活用した納税資金の確保方法についてもわかりやすくアドバイスいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
関連記事
【相続税の抜け道】税理士が厳選した4つの相続税対策を徹底解説!
土地の評価額を下げられる
相続税額額を軽減したいなら、土地の評価額をいかに下げるかがポイントです。
土地の評価方法は非常に複雑です。税理士によって、土地の評価額が大きく変わるケースも少なくありません。
土地の評価額を下げる事情を的確に把握し、評価額を下げるには相続税に強い税理士へ相談するのが最善の方法です。
関連記事
土地の相続税の仕組みは?計算方法、評価額、特例、控除などを解説
税務調査のリスクを回避できる
相続税申告を税理士が行えば、税務調査の回避が期待できます。
相続人ご本人の申告は、申告漏れのおそれが高く、税務調査の可能性が高くなると言われています。
税務調査で申告漏れを指摘されれば、加算税などのペナルティが課されるおそれが高いです。
税理士に申告を依頼すれば、当初から疑念を抱かれない申告書を提出でき、相続税申告をスムーズに行うことができます。
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監修者情報
アトムグループ 協力税理士