仮面夫婦をやめて離婚したい!仮面夫婦の特徴や離婚のきっかけを解説

「仮面夫婦でいることに疲れた」
「仮面夫婦の状態から抜け出して、離婚する方法を知りたい」
仮面夫婦とは、表面上は仲のよい夫婦を装っているものの、実際には関係が冷えきっている状態を指します。長くその状況が続くと、「もう疲れた」「このままでよいのか」と悩む方も少なくありません。
こうした状態から離婚すること自体は可能ですが、同居を続けている場合、裁判では「婚姻関係が破綻している」と認められにくいというハードルがあります。
一方、法務省の委託調査研究(令和2年度)によると、協議離婚をした人のうち約57%は別居をせずに離婚しています。同居したままでも、実質的に夫婦関係が破綻するケースは少なくありません。
この記事では、仮面夫婦の特徴や離婚のきっかけとあわせて、仮面夫婦が離婚するための法的条件・手続き・タイミングを裁判例に基づいて解説します。
目次
仮面夫婦から本当に離婚できる?
同居中は婚姻破綻と判断されにくい
仮面夫婦の状態から離婚を考えるとき、まず押さえておきたいポイントがあります。それは、仮面夫婦であることだけでは「婚姻関係が破綻している」とは必ずしも判断されない点です。
協議離婚や調停離婚であれば、夫婦が合意すれば成立します。
ただし、相手が離婚に応じず裁判に進んだ場合は事情が異なります。裁判で離婚を認めてもらうには、「婚姻関係の破綻」と「法定離婚事由」の両方が必要です。
法定離婚事由とは、以下の5つです。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
※2026年4月1日の民法改正で、回復の見込みのない強度の精神病は法定離婚事由から削除されます。
仮面夫婦であっても同居を続けている場合、裁判では「婚姻関係が破綻している」と簡単には認められません。生活費のやり取りや家事・育児の分担が続いていると、夫婦としての実態が一定程度残っていると判断されることがあります。
そのため、法的に破綻を主張するには、単に気持ちが冷めているだけでは不十分です。別居の実績や不貞行為、長期間のセックスレスといった客観的な事情を積み重ねていくことが重要になります。
もっとも、長年のセックスレスや過去の不貞行為などがある場合には、同居中であっても婚姻関係の破綻が認められることもあります。
仮面夫婦に関する裁判例
仮面夫婦の状態と婚姻破綻の関係について、裁判所はどのように判断しているのでしょうか。実際の裁判例を紹介します。
仮面夫婦発言があっても婚姻破綻を否定した裁判例
東京地判令6・1・23(令和4年(ワ)26708号)
妻がかつて夫に「セックスレスの仮面夫婦として同居しましょう」と綴った長文メールを送付。その後夫は態度を改め、家族旅行なども続けていたが、夫が30年来の知人女性と温泉ホテルに同室宿泊し不貞行為に至った。
不倫相手は「婚姻関係はすでに破綻していた」と反論したが、破綻の有無と慰謝料額が争点となった。
裁判所の判断
「婚姻関係が破綻していたとは認めるに足りない」
東京地判令6・1・23(令和4年(ワ)26708号)
- 仮面夫婦状態でも婚姻関係の破綻とは認められず。
- 別居の理由は子どもの通学事情によるもので破綻の証拠にならず。
- 妻への慰謝料132万円(慰謝料120万円+弁護士費用12万円)を認容。
この裁判では、妻が夫の不倫相手に慰謝料を請求したのに対し、不倫相手は「すでに夫婦関係は破綻していた」と反論しました。その根拠として、妻が夫に送った仮面夫婦メールが証拠として示されています。
しかし、メールの後に夫が態度を改め、夫婦関係が回復していたことを示すやり取りや写真があったことや、別居に合理的な理由があったことが考慮され、裁判所は不倫当時も婚姻関係は有効に続いていたと判断しました。
過去のトラブルだけでは破綻とは認定されず、その後の関係の経緯が重要な判断材料となることを示しています。
仮面夫婦状態で婚姻破綻を認定した裁判例
東京地判令3・3・23(令和1年(ワ)34258号)
夫のデイバッグから不倫相手名義の預金通帳を何度も発見した妻が、夫と不倫相手の不貞行為によって婚姻関係が壊されたとして220万円の慰謝料を請求。
夫はかつて「もう愛情はない。あなたも勝手にしてくれていい。」と妻に伝えており、別居開始時には会話もない仮面夫婦の状態となっていた。婚姻関係が破綻した時期が最大の争点となった。
裁判所の判断
「その婚姻関係が破綻していたと認められる」
東京地判令3・3・23(令和1年(ワ)34258号)
- 会話のない仮面夫婦状態であったことを重視。
- 別居開始時点をもって婚姻関係の破綻を認定。
- 不貞行為は破綻後の行為として不法行為に該当しないと判断。
- 妻の慰謝料請求を棄却。
こちらも、妻が夫の不倫相手に慰謝料を請求した事案です。この裁判では、夫が「もう愛情はない。あなたも勝手にしてくれていい」と妻に伝え、会話のない仮面夫婦の状態にあったことが判断材料とされました。さらに、別居直後に夫側から離婚調停が申し立てられていた事実も認定されています。
仮面夫婦の状態や別居、離婚調停の申立てといった複数の事実を総合して、婚姻関係の破綻が認められた事例です。
仮面夫婦の特徴は?
人前では仲良くふるまう
仮面夫婦の特徴として、人前では仲良くふるまう傾向にあることが挙げられます。
一般的な仲の悪い夫婦の場合は、そもそも一緒に外出しなかったり、外に出ても喧嘩をしてしまったりすることが多いでしょう。仮面夫婦の場合は、人前でも仲の良い夫婦を演じ、自然にコミュニケーションをとる傾向があります。
また、子どもがいるという場合は、子どもの参観日や運動会といった行事に夫婦そろって参加することが多いです。お互いの実家に帰省したり、地域行事に参加したりと、円満な家庭を演出するという特徴があります。
お互いに興味がなく、会話がない
仮面夫婦の特徴として、お互いに愛情がなくなっており、関心を持ったり、家庭内で会話をしたりすることがない傾向にあります。
一般的な仲の悪い夫婦の場合は、会話の中で口論になったり、相手が浮気をすれば喧嘩をしたりすることがあると思います。
配偶者について関心がないため、場合によっては浮気や不倫といった不貞行為も黙認していることもあります。セックスレスの状態にあるというのも特徴の一つです。
生活費の受け渡しや家事などはおこなっていることが多い
仮面夫婦の特徴として、夫がきちんと生活費を渡していたり、妻がきちんと家事や育児をこなしていたりすることが多いです。
一般的な仲の悪い夫婦の場合は、夫が生活費を渡すのを放棄したり、妻が家事や育児をすることをやめてしまったりといったこともあるでしょう。
仮面夫婦の場合は、「夫は家庭にお金を入れてくれるだけの人」「妻は家事や育児をしてくれるだけの人」と、お互いに割り切っているという特徴があります。
家庭内別居に陥ることも
場合によっては、家の中では一緒に食事をとらなかったり、ほとんど別々の生活をしていたりと、家庭内別居の状態に陥ることもあるようです。
家庭内別居についてくわしく知りたい方は、『家庭内別居とはどういう状態?離婚率は高い?離婚するならここに注意』をご覧ください。
仮面夫婦になったきっかけは?
配偶者の浮気や不倫
仮面夫婦になったきっかけとして、配偶者の浮気や不倫といった不貞行為が発覚し、相手への信頼がなくなった、といったことが挙げられます。
一度不貞を許したとしても、愛情が冷めてしまったり、何度も不貞行為を繰り返されたことで相手のことについてどうでもよくなってしまったりといったケースがあるようです。
とくに子どもがいる場合は、世間体や子どもの影響を考えたうえで、離婚せずにそのまま夫婦関係を継続することがあるようです。そして、そのまま仮面夫婦の状態になってしまうことが多いと考えられます。
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生活リズムが合わない
配偶者と生活リズムが合わず、会話をしないことに慣れてしまった結果、仮面夫婦の状態になることもあるようです。
会話が疎遠になってしまい、会話をするといっても、相手と自分のスケジュールを話すだけの事務的な連絡をするにとどまってしまう場合があります。
セックスを拒絶され、セックスレスになった
配偶者にセックスを拒絶されてしまったり、セックスレスに陥ったりすることで、仮面夫婦の状態になる場合があります。
一度強くセックスを拒絶されてしまうと、ショックを受けてセックスレスになることもあるでしょう。また、子どもが生まれて「女性として見れなくなった」という理由でセックスレスになることもあるようです。
セックスレスになった結果、相手への気持ちが薄れてしまい、結果として仮面夫婦の状態に陥ってしまうケースがあります。
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夫婦の価値観が合わずに喧嘩した
夫婦の価値観が合わず、大喧嘩した結果、相手と歩み寄ることをあきらめ会話が疎遠になって、仮面夫婦の状態になることもあるようです。
性格の不一致が原因ですれ違いが積み重なることで、相手への愛情が薄れてしまうということがあります。
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結婚当初から愛情がなかった
結婚を急いだり、相手のことをよく知らないまま結婚したりして、相手について無関心な状態で結婚した結果、仮面夫婦の状態になることもあるでしょう。
相手について無関心なため、「会話がない」「相手のすることに興味がない」といった状態に陥ることが多いです。
仮面夫婦が離婚しない理由は?
子どものため
仮面夫婦が離婚しない理由として、子どもへの影響を考えているということが挙げられます。
離婚をしてしまうと、どちらかの親と一緒に住まなくなることが大半ですので、子どもにとっては大きな影響を与えることになります。
「苗字が変わる場合がある」「転園や転校をしなくてはならない場合がある」など、子どもを取り巻く環境が変化してしまうことは否めません。
子どもに対する影響を考えて、離婚をしないまま仮面夫婦の生活を続けるという夫婦もいるようです。
ただし、子どもが夫婦の関係性に気付いており、居心地の悪さや精神的なつらさを感じている場合があります。子どもの気持ちに寄り添ったうえで、どういった形の生活がよいかを今一度考えてみることが重要です。
お金のため
お金の問題で、仮面夫婦を続けるというケースがあります。
たとえば、専業主婦(夫)の場合は、離婚することを選ぶと経済的に厳しくなってしまうリスクがあります。子どもを引き取ってひとり親家庭になるという場合であれば、なおさらです。
結婚していると、配偶者控除を受けられるというメリットもあります。遺産相続や年金の観点から、あえて結婚したままで過ごすという仮面夫婦もいるでしょう。
お金を家に入れている側からしても、「家事はきちんとしてくれる」という理由で、離婚をすることなく夫婦生活を続けるということも多いです。
離婚の手続きが面倒
離婚に伴う手続きや、離婚条件について検討することが面倒で、離婚をせず仮面夫婦の生活を続ける夫婦もいるでしょう。
離婚する際は、「財産分与はどうするのか」「慰謝料は発生するのか」「子どもがいるときは親権・養育費はどうするのか」といった、さまざまな離婚条件について検討しなければなりません。
離婚についての話し合いがまとまらなければ、離婚調停や離婚裁判にもつれ込むこともあるでしょう。
離婚に関する手続きが煩雑なため、それを嫌って仮面夫婦のまま過ごすというケースがあります。
世間体のため
仮面夫婦の状態を継続する夫婦のなかには、「離婚したことで世間体が悪くなることを防ぎたい」と考えている夫婦もいるでしょう。
「離婚したことが同僚や友人に知られたら恥ずかしい」「職場での評価に響くから離婚したくない」「実家や親類からの視線が気になる」といった理由で、離婚を選ぶのではなく仮面夫婦の生活を続けるケースがあります。
仮面夫婦でいることに疲れて離婚したいと思ったら
「仮面夫婦の状態になっていて、疲れてしまった」という方もいらっしゃると思います。
ここでは、仮面夫婦でいることに疲れたときの相談先や対処法について解説します。
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第三者や外部の相談窓口に相談する
「仮面夫婦の状態に疲れてしまった」という方は、現在の状況を親類や知人といった第三者や、外部の相談窓口に相談してみてもよいかもしれません。
第三者の意見を聞いてみることで、気持ちが和らいだり、自分が次にどういった行動をとればよいかが分かったりすることもあるでしょう。
外部の相談窓口には、24時間対応しているところもありますので、活用してみることをおすすめします。
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カウンセリングを受ける
仮面夫婦で離婚するかどうか悩んでいるという場合は、離婚カウンセラーに相談してみるのもよいかもしれません。
離婚カウンセリングとは、夫婦間の離婚問題についてカウンセラーによるアドバイスやサポートを受けることができるサービスです。
離婚をする方法だけでなく、離婚を回避し、夫婦関係を修復するための解決方法も含めてカウンセリングを受けることができるため、検討してみるのもおすすめです。
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別居してみる
「仮面夫婦状態から抜け出して離婚したい」と思う場合は、別居を検討してみるのも一つの手です。
別居をすることで、相手と離れて自分の考えを冷静に整理することができる場合があります。
また、「別居をする」というステップを踏むことで、相手にこちらが「仮面夫婦の関係をやめて、本気で離婚したい」と思っているということを伝えることもできるでしょう。
一般的に、別居期間がおおよそ3年~5年程度あれば、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断してもらえ、離婚できる可能性が高くなります。
もし「とくに不貞行為などの理由はないけれど、仮面夫婦の状態になっているから離婚したい」という場合は、別居を検討してみることをおすすめします。
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弁護士に相談する
「仮面夫婦状態から抜け出して離婚したい」と考えている場合は、弁護士に相談するのもよいでしょう。
弁護士に相談すれば、法的な観点から離婚についてのアドバイスをもらえます。「離婚する理由がない」と思っていても、法的に見れば十分離婚理由になるような事実を指摘してくれる場合もあります。
離婚の交渉を代理することも可能ですので、とくに「離婚の手続きが面倒だから仮面夫婦として過ごしている」という方は検討してみることをおすすめします。
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仮面夫婦が離婚する方法とポイント
離婚の手続きは通常の夫婦と変わらない
仮面夫婦の状態だからといって、離婚の方法が通常と変わるわけではありません。
離婚は基本的に「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」とステップを踏んでいくことになります。
「仮面夫婦の状態をやめて離婚したい」と考えている方は、離婚の手続きについて確認しておくとよいでしょう。
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タイミングの多くは子どもが大きくなったら
仮面夫婦が離婚するタイミングとしてよく挙げられるのが、「子どもが大きくなったら離婚する」というものです。
子どもが大きくなってから離婚する理由として、「子どもの生活環境を変えたくない」「子どもから父親(母親)を奪ってしまうことにつながる」といった理由が挙げられます。
しかし、無理をして仮面夫婦として生活を続けることが、子どもにとって幸せであるとは限りません。
子どもを守るために離婚をするべき状況もありますので、今一度現在の状況を見つめなおしてみることも重要です。
仮面夫婦をやめて離婚する前にすべき準備
仮面夫婦をやめて離婚しようと思い立ったら、まずは離婚に向けた準備をしておきましょう。
準備をすることなく離婚をしてしまうと、不利な条件での離婚を強いられたり、離婚後の生活が苦しくなってしまったりといったリスクがあります。
「離婚後の住居・仕事はどうするのか」「子どもの転校先はどうするのか」「財産分与や養育費といった、金銭面の条件はどうするか」といったことについて準備しておきましょう。
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仮面夫婦の状態から離婚を進める際は、弁護士に相談することで、法的なアドバイスを受けたり、離婚交渉を任せたりすることができます。
手続きの煩雑さから離婚に踏み出せず、仮面夫婦のまま過ごしている場合は、一度相談を検討してみるとよいでしょう。
仮面夫婦の離婚についてよくある質問
Q. 仮面夫婦でも離婚できる?
仮面夫婦であっても離婚は可能です。ただし、同居を続けている場合は「婚姻関係が破綻している」と認められにくく、裁判で離婚するには法定離婚事由(民法770条)が必要になります。
Q. 仮面夫婦の状態は婚姻破綻になる?
会話がない、セックスレスといった状態だけでは、婚姻破綻と判断されにくい傾向があります。長期間の別居や不貞行為など、客観的な事情の積み重ねが重要な判断材料となります。
Q. 仮面夫婦でも不貞行為の慰謝料は請求できる?
仮面夫婦であっても、法的に婚姻関係が破綻していないと判断されれば、不貞による慰謝料を請求できます。破綻しているかどうかは、同居の状況や関係修復の有無などを踏まえて判断されます。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
