離婚と持ち家|家の財産分与で押えるべきポイントを完全解説

更新日:

離婚を考える中で、持ち家の行方は将来の生活基盤にも関わる重要な問題です。

夫婦で購入した家や結婚後に取得した不動産は、通常、財産分与の対象となります。

しかし、家の財産分与はその方法や評価額の決定に複雑な要素が絡みます。住宅ローンの残債がある場合は、その負担をどのようにするかも決めなければなりません。

本記事では、弁護士の視点から、離婚時の持ち家の取り扱いと財産分与のポイントを詳しく解説します。

目次

離婚時の持ち家と財産分与の基本

財産分与とは何か|家も財産分与の対象

財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた共有財産を離婚時に公平に分け合うことです。

婚姻中に取得した財産であれば、通常は名義や持ち分に関わらず夫婦の共有財産とみなされます。具体的には、家や土地、預貯金、株式、車などが財産分与の対象になります。

ただし、婚姻前から所有している財産や、相続や贈与によって取得した財産は、財産分与の対象とはなりません。

財産分与の割合は、原則として2分の1とされています。ただし、夫婦で合意があれば自由に割合を決めることも可能です。婚姻期間の長さや、夫婦の収入や資産の状況などによって、割合が変更されることもあります。

夫婦が婚姻中に購入した家は、原則として夫婦の共有財産です。そのため、離婚する際には、家をどのように財産分与するかを決める必要があります。

関連記事

離婚時の財産分与がわかる!対象・手続き・割合を徹底解説

持ち家が財産分与の対象となる条件

持ち家が財産分与の対象となるのは、婚姻中に購入され、夫婦の共同資金が使われ、家が共有財産となっている場合です。名義が片方でも、取得時期や資金源が重要な判断材料となります。

取得時期

持ち家が婚姻中に購入された場合、その家は共有財産として扱われ、財産分与の対象となります。婚姻期間中に夫婦の共同生活の一環として取得された財産は、原則として分与の対象です。

資金源

家の購入資金が夫婦の共同の収入や貯蓄から支払われた場合、その家は財産分与の対象になります。夫婦が共働きであったか、片方が専業主婦・主夫であっても、婚姻期間中の収入や貯蓄が使われた場合は、家は共有財産と見なされます。

名義

家の名義が夫婦どちらか一方になっていても、婚姻中の取得であり、共同の資金で購入された場合は、財産分与の対象となる可能性が高いです。名義が片方のものでも、実際に家を取得・維持するための費用が夫婦の共同資産から出ていれば、その家は分与の対象です。

関連記事

夫婦の共有財産|離婚時に財産分与の対象になる共有財産とは?

離婚時に家が財産分与の対象にならないケース

例外的に、離婚時に家が財産分与の対象とならない場合には、以下のようなケースがあります。

  • 婚姻前から所有していた家
  • 相続や贈与によって得た家
  • 家を共有財産にしないことを合意した場合

これらの家は、離婚時に財産分与の対象とはなりません。

婚姻前に夫婦の一方が購入した家は、その人の個人財産として扱われます。例えば、夫が結婚前に購入した家は、離婚後も夫が単独で所有します。

また、婚姻中であっても、相続や贈与によって得た家は、受け取った人の個人財産とされ、共有財産には含まれません。例えば、妻が相続した実家や、両親から贈与された家などは、離婚後も妻が単独で所有します。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

婚姻前から所有していた家や、相続や贈与で得た不動産であっても、婚姻期間中にローン返済や改築などで家の価値が増加した場合、その増加分は共有財産とされ、その部分は財産分与の対象になることがあります。

夫婦間で、家を共有財産にしないという合意をしている場合も、その家は財産分与の対象から外れます。こうした合意は、後々のトラブルを避けるために、必ず離婚協議書や合意書として書面に残しておくことが重要です。

関連記事

財産分与の対象にならないものは?特有財産の具体例と証明方法を解説

財産分与はどうやって決める?

財産分与の決め方には大きく分けて、当事者間の協議による方法と、家庭裁判所の調停や裁判による方法があります。

【財産分与の方法と特徴】

方法特徴メリットデメリット
協議合意で決定柔軟な解決
時間とコストを抑えられる
専門知識がないと不利になる可能性
調停調停委員の仲介中立的な立場からの助言時間がかかる場合あり
裁判裁判官が判断法的に明確な解決時間とコストがかかる

まず、当事者間で話し合いを行って、合意が得られれば、その内容を離婚協議書に記載します。この方法が最も一般的で、柔軟な解決が可能です。

〇離婚協議書とは

離婚について話し合い、離婚の条件について合意した内容をまとめた書類。詳しくは『離婚協議書の書き方・効力|内容は?無効になる場合とは?』をご覧ください。

しかし、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を利用することになります。調停では、調停委員が間に入って合意形成を支援します。

それでも解決しない場合は、最終的に裁判官による裁判で決定されることになります。

関連記事

財産分与の調停とは|財産分与を拒否されたら調停?流れや手続きを解説

離婚時の家の取り扱いと具体的な分割方法

持ち家の取り扱いは、夫婦の状況や希望によって異なります。主な選択肢は以下の通りです。

  • 家を売却して現金化し分割する
  • どちらかが居住を継続し、相手に金銭で補償する
  • 賃貸物件として貸し出す

どの選択肢が最適かは、ローンの状況や家の価値、夫婦の収入、子どもの有無、今後の生活設計などさまざまな要素を考慮して決定する必要があります。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

このほか、珍しいケースとしては家を共有のまま維持したり、物理的に分割する(マンションの2戸や隣接する土地など、分割可能な不動産の場合)方法もあります。

家を売却して現金化し分割する(換価分割)

家を売却してその代金を現金で分け合う方法を「換価分割」といいます。これは、離婚後に双方が新生活を始めるための資金を得やすい方法としてよく選ばれます。

たとえば、持ち家を4,000万円で売却し、ローンの残債1,500万円を返済した後、諸経費を差し引いた2,400万円を夫婦で折半するといったケースです。

換価分割のメリット

  • 新生活の資金が得られる
    家を売却して現金化するため、双方が新しい生活を始めるための資金をスムーズに得られます。
  • 明確な金額で分割できる
    持ち家を現金化することで、明確な金額が得られ、夫婦間でのトラブルが起こりにくい点が大きな利点です。現金で分け合うため、財産分与がわかりやすくなります。

換価分割のデメリット

  • 売却に時間がかかる可能性
    不動産市場の状況や物件の立地、状態によっては、買い手が見つかるまでに数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあります。その間は固定資産税や管理費などの維持費を支払い続ける必要があります。また、売却が長期化すれば離婚手続き全体にも影響を及ぼし、新生活のスタートが遅れる可能性もあります。
  • 価格下落のリスク
    不動産市場の変動によって、家を購入した時よりも価値が下がってしまう場合があります。この場合、当初期待していた金額で売却できないリスクがあり、損失が発生することも考えられます。
  • ローン残債が売却価格を上回るリスク
    住宅ローンが残っている場合、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」の状態になると、売却後に追加の返済が必要になることもあります。
  • 安値で売却してしまうリスク
    売却を急ぐあまり、市場価格よりも低い金額で売却してしまう可能性もあります。この場合、想定よりも少ない現金が手元に残り、財産分与の額が減少してしまう恐れがあります。

換価分割のまとめ

換価分割は、新しい生活を始めるための資金を得やすく、トラブルが少ない方法ですが、売却までの時間や不動産市場の動向によるリスクも考慮する必要があります。売却スケジュールや市場状況をしっかりと確認し、余裕を持って進めることが大切です。

また、売却の際のリスクや不安を軽減するために、不動産の専門家や弁護士と相談しながら進めることをおすすめします。

どちらかが居住を継続し、相手に金銭で補償する(代償分割)

夫婦の一方が居住を継続し、その代わりに相手に金銭や他の財産を支払って清算する方法を「代償分割」といいます。

たとえば、市場価値4,000万円の家に妻が住み続ける場合、夫に対して2,000万円相当の金銭や他の財産を支払うことで合意するケースが典型的です。。

代償分割のメリット

  • 慣れた環境での生活維持
    一方が家に住み続けることで、生活環境の大きな変化を避けることができます。特に子どもがいる場合、学校や友人関係など、子どもの生活基盤を守れるため、子どもへの精神的負担を軽減する効果があります。
  • 引越しの手間や費用を回避
    居住を継続する側にとっては、引越しに伴うコストや新しい生活環境への適応が不要になります。新たな住居探しの負担も避けられます。

代償分割のデメリット

  • 補償金の用意が難しい場合がある
    相手に渡す補償金が高額になるケースが多く、その資金を準備するのが難しいことがあります。たとえば、妻が住み続ける場合、夫に2,000万円の金銭を用意する必要があり、この金額を現金で支払うことが難しい場合は、ローンを組むなどの対応が必要になります。
  • 金額の算定で争いが起きやすい
    家の価値や補償金額の算定において、夫婦間で意見が食い違うことが多く、交渉が長引く原因となることがあります。市場価値やローン残高をどう反映させるかなど、細かい条件をめぐって争いが生じることもあります。
  • ローンの負担問題
    住宅ローンが残っている場合、誰がローンを返済するのかを決める必要があります。通常、家に住み続ける側がローン返済を引き継ぐことが多いですが、ローン返済能力があるかどうかが問題になることもあります。

代償分割のまとめ

代償分割は、家に住み続けたいという希望を叶えながら、財産分与を行う方法です。特に子どもがいる場合、生活環境を維持できるメリットは大きいですが、補償金の準備や金額の算定、ローン返済の問題など、クリアしなければならない課題も多く存在します。

こうした問題に対処するためには、不動産の評価や財産分与に関して専門家(弁護士や税理士など)のアドバイスを受けることが重要です。

賃貸物件として貸し出すのも選択肢

「マイホームを購入したけれども、すぐに離婚してしまった」という方も少なくありません。

このとき、通常の財産分与のように、「家を売却する」「夫婦の一方が住み続けて、もう一方が現金を受け取る」といった分け方に加えて、「賃貸物件として貸し出す」という選択肢もあります。

賃貸物件として貸し出すことは、住宅ローンが残っていても可能です。誰かに借りてもらえば、家賃を住宅ローンの返済に充てることができるでしょう。ただし、夫婦のどちらが家を所有するのかは決めておく必要があります。

持ち家を売却して財産分与を行う際の流れ

家を売却して現金化し、それを夫婦で分けるときの流れをわかりやすく解説します。

1. 売却方法の選択

まず、家をどのように売却するかを決めます。主な選択肢は次の3つです。

  • 不動産会社に仲介を依頼
    不動産会社に査定を依頼し、売却価格を決めた後、不動産会社が買い手を探して売買契約を進めます。この方法は、一般的で市場価格に近い金額で売却できる可能性がありますが、売れるまで時間がかかることもあります。
  • 不動産買取業者に依頼
    不動産買取業者に直接買取を依頼します。業者が査定し、買取価格を決定後、すぐに現金を手にすることが可能です。売却までのスピードは速いものの、仲介売却に比べて価格が低くなることが多いです。
  • 自分で売却
    自分で買い手を探し、売買契約を結ぶ方法です。コストは抑えられるものの、手間がかかるため専門的な知識やサポートが必要です。

2. 住宅ローンの残債確認

家を売却する前に、住宅ローンの残高を確認します。これは、売却時にローンを完済するために必要な金額を把握するためです。ローンの残高は以下の方法で確認できます。

  • 毎年金融機関から郵送される残高証明書を見る
  • 返済予定表で確認
  • インターネットで確認する(対応している金融機関の場合)

関連記事

オーバーローンの家は離婚のときどうなる?払えない場合は?

3. 不動産の名義人確認

次に、家の名義人が誰であるかを確認します。これは非常に重要です。例えば、住宅ローンはペアローンでも、家自体の名義が夫一人である場合、夫が売却手続きを進めることになります。また、不動産が共同名義の場合、双方の合意がなければ売却手続きは進められません。

4. 家の評価額を査定してもらう

住宅ローンの残高を確認したら、次は家の市場価値を調べます。不動産会社に査定を依頼し、複数の業者に見積もりを依頼することで、より正確な相場を把握することができます。

5. 家を売却して現金を分け合う

家の評価額が確定し、売却することが決まったら、不動産を売却し、ローンを返済します。その後、残った現金を夫婦で分けます。

原則的には2分の1ずつ分けますが、夫婦の合意があれば、割合を変えることも可能です。

持ち家の財産分与で注意すべきポイント

購入時期と婚姻期間の関係

持ち家の購入時期と婚姻期間の関係は、財産分与の対象となるか、またその割合をどうするかを決める重要な要素です。

  • 婚姻中に購入:原則として財産分与の対象となります。
  • 婚姻前に購入:原則として対象外ですが、婚姻中のローン返済分は考慮される可能性があります。
  • 婚姻後すぐに購入:婚姻前の貯蓄が充てられている場合、その部分は個人財産として扱われることがあります。

婚姻期間が長いほど、共有財産としての性質が強くなる傾向があります。例えば、結婚後30年住んだ家と、結婚後2年で離婚することになった家では、財産分与における取り扱いが異なる可能性が高いでしょう。

住宅ローンの残債がある場合の財産分与の取り扱い

持ち家にローンが残っている場合、その取り扱いは財産分与の重要なポイントです。

たとえば、住宅ローンの名義が夫である場合、夫がローン返済を続け、妻が引き続きその家に住むという選択肢も一応は可能です。しかし、この方法には、夫がローンの返済を滞らせた場合、家が差し押さえられ、妻は家を失うリスクがあります。

したがって、離婚時に住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンの残債額、家の価値、夫婦の収入、夫婦の希望など、さまざまな要素を考慮して、適切な対処法を選択する必要があります。

主な対応方法には以下のようなものがあります。

  • 一方が家とローンを引き継ぐ
    ローンの名義変更や借り換えによって、家を取得する側がローンも引き継ぐ方法です。ただし、銀行の承諾が必要で、収入や信用力の審査があります。
  • ローンを完済して分与する
    家を売却するか、他の資産を活用して住宅ローンを完済し、その上で財産分与をする方法です。
  • ローン残債を考慮して評価額を調整する
    家の評価額からローンの残債を差し引いた金額をもとに財産分与を行う方法です。たとえば、家の価値が1,000万円でローンの残債が500万円ある場合、差額の500万円を財産分与の対象として調整します。

いずれの方法を選択する場合も、将来のリスクを考慮し、弁護士や金融機関とよく相談した上で決定することが重要です。

特にペアローンや共同名義のローンを利用している場合、離婚後も両者に返済義務が残る可能性があるため、契約の見直しや解除について金融機関と交渉する必要があります。

ローン残債の取り扱いは、将来の金銭的負担に直結する問題です。安易な判断は避け、弁護士や金融の専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

関連記事

離婚したら住宅ローンはどうなる?折半すべき?財産分与の方法を解説

家の財産分与にともなう税金や維持費の注意点

財産分与は贈与ではないため、通常は贈与税を支払う必要はありません。

しかし、場合によっては贈与とみなされる可能性もあります。例えば、税金逃れを目的とした不自然な財産分与や、分与額が非常に大きい場合です。このような場合、贈与税が課されることがありますので注意が必要です。

財産分与に関しては、以下のような税金も忘れてはいけません。

  • 登録免許税
    登記名義を変更する際に発生する税金です。財産の名義を新たに変更する場合に必要となります。
  • 固定資産税
    不動産の所有者が毎年支払う税金で、所有している限り継続的に課税されます。
  • 不動産取得税
    不動産を取得した場合にかかる税金ですが、通常の財産分与(清算的財産分与)であれば課税されないのが一般的です。

これらの税金の有無や税額は、個々の状況によって異なるため、財産分与の前にしっかりと確認しておくことが重要です。また、税金の申告が必要かどうかも必ず確認しましょう。

関連記事

離婚の財産分与で贈与税はかかる?不動産譲渡の税金は?例外も解説!

家の維持費の負担にも注意する

財産分与で持ち家を保有することになる場合、固定資産税以外にも、管理費や修繕費といった維持費が必要です。これらは長期的には大きな負担となる可能性があるため、将来の家計をしっかりと見据えて財産分与を考えることが大切です。

正確な判断と適切な対応のためには、税理士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

養育費などほかの離婚条件も考慮する

財産分与で家をもらうことを考えるときには、養育費などほかの離婚条件も考慮したうえで財産分与の内容を決めていくことをおすすめします。

たとえば、「親権は妻が取得して家に住み続け、ローンは夫が支払う」という形をとると、夫は養育費とローンを支払うことになります。すると、養育費とローンの支払いが経済的な負担となってしまい、将来的に養育費もローンも支払われなくなるおそれがあります。

住宅ローンを夫に支払ってもらうという場合は、養育費などほかの離婚条件も加味することが重要です。

関連記事

離婚時に住宅ローンと養育費を相殺して妻が家に住み続ける方法

子どもの居住権への配慮

子どもがいる場合、離婚後の家の問題は子どもの生活環境や安定に大きく関わるため、慎重に検討することが求められます。住む場所や教育環境を安定させることがとても大切です。

可能であれば離婚後も子どもが双方の親との関係を保てるような住環境を整えられるとよいでしょう。

また、子どもが成長して進学や就職などの節目を迎えたときに、柔軟に対応できるような取り決めを考えておくことも必要です。養育費や住居費の負担は、両親が無理なく公平に分担できるようにすることが望ましいといえます。

関連記事

離婚と子どもの法律知識|子どもがいる離婚のチェックリスト

持ち家の財産分与をめぐるトラブルとその対処法

1.家の評価額をめぐる争い

持ち家の評価額を巡っては、しばしば意見の相違が生じます。家の市場価値を正確に把握し、公平な財産分与を行うためには、適切で客観的な評価が不可欠です。

トラブルの例

  • 市場価値と愛着による価値の乖離
    持ち家に対する愛着から、家の価値を高く見積もりたいと考える人もいます。一方で、市場価値は客観的な基準に基づくため、このギャップが問題になることがあります。
  • 購入時と現在の価値の変動
    家を購入した時点の価値と、現在の市場価値が大きく異なる場合があります。例えば、購入時よりも大幅に価値が上がったり、逆に下がったりすることがあります。この変動が財産分与の際の評価に影響します。
  • 内装や設備投資の評価
    内装のリフォームや設備への投資が行われている場合、それらの追加価値をどのように評価するかも争点になりやすいです。特に、投資額に対して市場価値への影響が必ずしも比例しない場合があります。

対処法

  1. 複数の不動産鑑定士に評価を依頼する
    一人の不動産鑑定士の意見に頼らず、複数の鑑定士から評価を依頼することで、より客観的で信頼性の高い評価額を得ることができます。異なる鑑定士の意見を比較し、公平な評価額を見つけることが重要です。
  2. 中立的な第三者(調停委員など)の意見を聞く
    評価額について双方が対立して解決が難しい場合、中立的な第三者の意見を聞くのも一つの方法です。調停委員や裁判所の指示による鑑定など、公正な立場からのアドバイスを得ることができます。
  3. 双方が納得できる評価方法を事前に合意する
    事前に、どのように持ち家の評価額を決定するかを話し合い、双方が納得できる評価方法に合意することも効果的です。これにより、評価額を巡るトラブルを防ぎ、スムーズな財産分与が可能になります。

公平性を保つため、感情的にならず、客観的な基準に基づいて評価額を決定することが重要です。

2.「特有財産」か「共有財産」かをめぐる争い

離婚時の財産分与において、しばしば問題となるのが「特有財産」と「共有財産」の区別です。実際の財産分与では、この区別が曖昧になることがあり、トラブルの元となっています。

トラブルの例

  1. 婚姻中に不動産を購入したが、購入資金の一部が婚姻前の貯金から出ている場合
    夫婦で協力して購入した不動産か、それとも婚姻前の資産として扱うべきかが問題になります。
  2. 婚姻前に購入した不動産のローンを、婚姻中の収入で返済した場合

婚姻前に購入した不動産に対してローンを組み、その返済に婚姻中の共有財産(夫婦の収入や貯金)を使った場合、その支出が財産分与の際にどのように扱われるかが争点となります。

  1. 相続した不動産を管理・修繕・改築した場合
    相続した不動産の管理や修繕、改築に、一方が大きく時間や労力を費やした場合、どのように評価されるかが問題となることがあります。

対処法

  1. 資金の出所を明確に記録する

資金が婚姻前のものであることを証明するために、銀行の取引記録や契約書を保管しておくことが有効です。

  1. 住宅に関する支出(ローン返済、管理費等)の記録を詳細に残す
    不動産のローン返済や管理費に、夫婦の共有財産が使われた場合、その支出の詳細な記録を残しておくことが重要です。これにより、財産分与の際に公平な判断ができるようになります。
  2. 家の維持管理への貢献度合いを客観的に示せる証拠を収集する
    住宅の維持や管理に貢献した場合、その労力や費用を証拠として残しておくことが大切です。修繕費用の領収書や作業内容を記録しておくことで、財産分与の際に貢献度を主張しやすくなります。

このような特有財産と共有財産の境界が曖昧なケースでは、往々にして感情的な対立に発展しやすいものです。しかし、重要なのは客観的な事実と法的な解釈に基づいて、公平な解決を目指すことです。

複雑な財産分与の問題は、専門的な法律知識と交渉技術が必要となるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

家の財産分与を弁護士に相談するメリットとタイミング

弁護士のアドバイスが必要な理由

離婚時の財産分与、特に持ち家の取り扱いは、法律的にも感情的にも複雑な問題です。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

【弁護士相談のメリット】

  1. 法的権利の明確化:自身の権利と義務を正確に理解できます。
  2. 公平な解決策の提案:感情的になりがちな交渉を、客観的な視点からサポートします。
  3. 将来のリスク回避:見落としがちな長期的なリスクを指摘し、対策を提案します。
  4. 交渉力の強化:相手方との交渉において、専門的知識に基づいた主張ができます。
  5. 手続きの円滑化:離婚や財産分与に関する法的手続きをスムーズに進められます。

弁護士のアドバイスを得ることで、より公平で満足度の高い解決に近づくことができます

弁護士に相談するタイミング

弁護士への相談は、離婚を考え始めた早い段階で行うことをおすすめします。適切なタイミングは以下の通りです。

  1. 離婚を真剣に考え始めたとき
  2. 配偶者から離婚を切り出されたとき
  3. 財産分与について話し合いを始める前
  4. 配偶者との交渉が行き詰まったとき
  5. DV(家庭内暴力)や経済的虐待がある場合は即時

早期の相談により、自身の立場を有利にし、不利な合意を避けることができます。また、相手方が弁護士を立てた場合は、速やかに自身も弁護士に相談することが賢明です。

弁護士選びのポイント

適切な弁護士を選ぶことは、円滑な離婚手続きと公平な財産分与を実現する上で極めて重要です。ここで紹介するポイントを参考に、自分に合った弁護士を見つけましょう。

  1. 離婚・財産分与の専門性:離婚問題、特に財産分与に精通している弁護士を選びます。
  2. 経験と実績:多くの離婚案件を手がけた経験豊富な弁護士が望ましいです。
  3. コミュニケーション能力:あなたの話をよく聞き、分かりやすく説明してくれる弁護士を選びます。
  4. 方針の一致:話し合いによる解決を重視するか、法的手段を積極的に取るかなど、あなたの希望する方針と合致しているかを確認します。
  5. 費用の透明性:料金体系が明確で、予想される総費用の見積もりを提示してくれる弁護士を選びます。

初回相談を利用して、複数の弁護士に会ってみることをおすすめします。直接話をすることで、相性や信頼感を確認できます。

持ち家の財産分与に関するよくある質問

Q1: 離婚時、持ち家は必ず売却しなければいけませんか?

 いいえ、必ずしも売却する必要はありません。夫婦の合意があれば、一方が居住を継続し、他方に金銭で補償する方法や、共有のまま維持する方法もあります。状況に応じて最適な選択肢を検討できます。

Q2: 持ち家のローンが残っている場合、財産分与はどうなりますか?

ローン残債は負債として考慮されます。家の評価額からローン残債を差し引いた額が、実質的な財産分与の対象となります。ローンの支払い責任の分配も、話し合いで決める必要があります。

Q3: 配偶者が持ち家に住み続けたいと主張しています。私にはどのような選択肢がありますか? 

配偶者の居住継続を認める代わりに金銭的補償を受ける、一定期間後の売却を条件に一時的な居住を認める、あるいは売却を主張して現金化するなどの選択肢があります。状況に応じて最適な方法を検討できます。

Q4: 持ち家の評価額について配偶者と意見が合いません。どうすればいいですか?

中立的な不動産鑑定士に評価を依頼するのが一般的です。複数の鑑定士の評価を比較したり、裁判所が選任する鑑定人の評価を受けるなどの方法もあります。弁護士に相談し、適切な対応を検討するのがよいでしょう。

Q5: 離婚協議中に、配偶者が勝手に持ち家を売却しようとしています。止める方法はありますか? 

はい、あります。裁判所に「財産処分禁止の仮処分」を申し立てることで、勝手な売却を防ぐことができます。このような事態が予想される場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

持ち家の財産分与はアトムの弁護士にお任せください!

離婚時の持ち家の取り扱いと財産分与は、将来の生活設計に大きな影響を与える重要な問題です。本記事で解説したように、この問題には法律的にも感情的にも複雑な要素が絡んでいます。公平で満足のいく解決を目指すためには、正確な情報と専門家のアドバイスが不可欠です。

特に強調したいのは、早い段階での弁護士相談の重要性です。離婚を考え始めた時点で弁護士に相談することで、自身の権利を守り、将来のリスクを最小限に抑えることができます。また、感情的になりがちな交渉においても、客観的な視点からのサポートを得られます。

アトム法律事務所 新宿支部(新宿駅から徒歩4分)では、ただいま初回60分無料で、弁護士の離婚相談を実施しています。

私たち弁護士は、あなたの状況を丁寧に聞き取り、最適な解決策を提案いたします。持ち家の財産分与に関する不安や疑問、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。あなたの新しい人生のスタートを、法的な側面からしっかりとサポートいたします。

一人で悩まず、専門家のアドバイスを受けることで、より良い解決への道が開けます。ぜひ、弁護士相談を検討してみてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了