子連れ離婚で後悔しないために|やるべき準備や手順を弁護士が解説
「子連れ離婚の準備で必要なことを知りたい」
「子連れ離婚で何をすべきかわからない」
子どもを連れて離婚したいと思ったとき、何をすべきかわからないという方はいらっしゃいませんか。
子連れ離婚した後の生活がどうなるのか、不安になってしまう気持ちもわかります。
今回は、子連れ離婚で後悔しないためにやっておくべきことや手順、子連れ離婚のメリット・デメリット、子連れ離婚をするタイミングや子連れ離婚後の住まいなどについて解説します。
目次
後悔しない子連れ離婚の具体的な手順
子連れ離婚で後悔しないために、やることリストを作成しておくことをおすすめします。
子連れ離婚でやるべきことについて、とくに順番はありません。しかし、子連れ離婚を決意したら、できるだけ早めに動くことが大切です。
以下は、子連れ離婚をするときにやっておくべきことをまとめたリストの一例です。
子連れ離婚でやっておくべきこと
- 離婚理由と証拠の準備
- 離婚後の生活の収入源を準備
- 財産を把握しておく
- 離婚条件を明確にする
- 離婚後の住居を準備する
- 離婚の手続きについて調べる
- 子どもがいる場合は転園・転校先を調べる
- 離婚後の立ち直り方を考える
- 公的支援を調べる
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子連れ離婚をする場合は、リストの内容について抜け漏れがないよう、一つずつ順番に進めていくことが重要になります。
また、「子連れ離婚後の手続きについてのリストや順番について知りたい」という方は、こちらをご覧ください。
▼手続きをまとめたリスト
離婚後の手続きチェックリスト
子連れ離婚でまずすること
親権や養育費、面会交流について決めておく
子連れ離婚をするときには、とくに親権や養育費、面会交流といった子どもに関わる離婚条件について決めておく必要があります。
親権については、「母性的な関わりをしてきた方が有利」「今まで子どもの世話をしていた方が有利」という観点から、基本的に母親が得ることが多いです。
もし親権を取得した場合は、相手方から養育費を受け取ることができます。当事者同士の話し合いで養育費についての取り決めをおこなった場合、その証拠として離婚協議書や合意書を作成し公正証書にしておくことをおすすめします。
公正証書とは、公証人の立会いのもとで作成する公的な文書です。この公正証書に強制執行認諾文言を入れておけば、裁判を経ずに強制執行(債務者の財産を差し押えて、債権者に代わって強制的に回収する手続き)ができるようになります。
離婚したあと、元夫と子どもがどう交流していくか、面会交流についても「頻度はどれくらいか」「どこで会うのか」といったことを決めておく必要があります。
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子どもの苗字や戸籍について考えておく
子連れ離婚をするときは、子どもの苗字や戸籍をどうするかについて考えておくことが必要です。
離婚して母親が親権者となっても、子どもがただちに母親の苗字に変わることはありません。
離婚時、子どもは苗字を変えなかった方の親(多くの場合父親)の戸籍に残ったままとなり、苗字も変わらないことになります。
子どもの苗字や戸籍が親権者とは異なるという状態になりますが、母親が親権をおこなううえで大きな問題が起きる可能性は低いといえます。
子どもの苗字が変わるのを避けたいという方は、そのままにするのが望ましいでしょう。
子どもに母親の苗字を名乗らせたり、母親と同じ戸籍に入れたりしたいという場合もあると思います。その場合は、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立をおこない、認められた後に裁判所から交付される「子の氏の変更許可審判書の謄本」を持って市区町村役場へ行き、「入籍届」を併せて提出します。
子連れ離婚をするときは、子どもの苗字や戸籍について考えておく必要があることを覚えておきましょう。
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保育園を確保しておく
子どもがまだ幼いうちに子連れ離婚をしてひとり親家庭になるという場合は、保育園など子どもを見てくれる預け先を確保することも重要な準備です。
もし離婚する前は専業主婦だったという場合は、離婚を機に家計を考えて働きに出るという方も多いでしょう。
その場合は、専業主婦だったときのように子どもを見ることは難しいため、保育園や学童保育といった預け先を確保しておくことが重要になります。
子連れ離婚のメリット・デメリット
「子連れ離婚に踏み切るかどうか迷っている」という方もいると思います。
ここでは、子連れ離婚をするときのメリット・デメリットについて解説します。
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・女性の離婚のメリット・デメリット|リスクを理解して後悔ない離婚を
子連れ離婚のメリット
夫から子どもを守れる
場合によっては、「夫が子どもを虐待している」「子どもの前でDV・モラハラを受けている」「子どもの前で夫婦喧嘩をするなど、険悪な空気で過ごしている」といったこともあるでしょう。
こういった環境は、子どもに悪影響を与えます。離婚をすれば、子どもを守ることに繋がります。
また、このような状況を見てきた子ども自身が、両親の離婚を望んでいる場合もあります。
自分と子どものために時間を使える
離婚をすれば、夫の分の家事をしなくてよくなるうえに、ひとりで過ごす時間も増えます。また、夫の帰宅時間や生活リズムに気を遣う必要もありません。
空いた時間を自分の趣味や子どものために使ったり、好きなように仕事をしたりと、有意義な使い方ができるでしょう。
子連れ離婚のデメリット
子どもの父親がいなくなる
子どもが父親を失ってしまうのは、子連れ離婚の大きなデメリットといえます。
父親がいないことで、金銭的に苦労を強いるおそれもありますし、寂しい思いをさせてしまうこともあるでしょう
また、学校行事に父親が来ないといったことがあると、子どもは周りの目が気になると感じます。自分の家庭が普通ではないことを、コンプレックスに感じる子どももいるようです。
もちろん、夫がDVやモラハラをおこなっているという場合は、子どものことを考えても離婚を検討することをおすすめします。
経済的に苦しくなる
女性は離婚後に経済的に苦境に立たされるリスクが非常に高いため、注意が必要です。
とくに、離婚前は専業主婦だった方や、パート・アルバイトで働いていた方にとっては、すぐに十分な収入を得るのは簡単ではありません。
離婚前から仕事を探しておく、貯金を作っておくなどの備えがあると安心です。
家事・育児の負担が増える
子連れ離婚をすると、家事をしながらワンオペで育児をすることになります。
自分の仕事や子どもの世話の合間にすべての家事をおこなうのは、簡単ではありません。体力的にも厳しいと感じる方が多いと思われますので、その点については覚悟が必要でしょう。
子どもを預ける場合は、保育園・幼稚園やベビーシッターの費用もかかります。
再婚のハードルが高くなる
新しくパートナーを見つけたいと思っても、再婚のハードルが高くなってしまうおそれがあります。
子どもとの相性はどうか、子どもは新しく親になるパートナーについてどう思っているか、子どもの精神的なケアが必要になるでしょう。
子連れ離婚のタイミングは?
「子連れ離婚をするタイミングはいつがいいだろう」と考えている方もいらっしゃると思います。
ここでは、子連れ離婚のタイミングとして考えられるケースについて解説します。
子どもがまだ幼いとき
子どもが小学校に入る前の時期に離婚するケースがあります。
小学校に入る前の幼い時期であれば、子どもの記憶に残りにくく、心の傷をできるだけ小さくすることができます。父親という存在を強く認識してから離婚すると、子どもの心に喪失感が生じてしまうおそれがあります。
また、苗字が変わったとしても、とくに本人にとって大きな影響を与えるということもないでしょう。
ただし、子どもが幼いうちに離婚する場合は、子どもを保育園に預けるのか、どうやって生活をしていくのかを考えていく必要があります。
子どもが進学したとき
子どもが小学校、中学校、高校に上がったり、大学進学をしたりといったタイミングも子連れ離婚のタイミングとしてあり得るケースです。
離婚をすれば、母親の旧姓にあわせて子どもの姓を変えるということもあるでしょう。進学のタイミングであれば、周りの環境も変化しますので、姓を変えても周囲の人に離婚について触れられるおそれが小さくなります。やはり、姓が変わるということは、子どもにとって精神的に大きな影響を与えます。
もちろん、受験期など勉強に集中しているときに離婚することは、子どもの気持ちが不安定になるリスクもあるためおすすめできません。
子どもが成人したとき
成人したり、就職したりするなど、子どもが自立したタイミングで離婚をするというのも一つの手です。
子どもが自立したタイミングで離婚すれば、子どもに影響を与えることも少ないでしょうし、養育費や親権について争う必要もありません。
急を要する場合はすぐに別居や離婚を検討
夫からDVやモラハラなどを受けており、その様子を子どもが見ている、あるいは夫が子どもにもDVやモラハラをしているというような状態であれば、すぐに別居や離婚などの対応策をとるようにしましょう。
離婚のタイミングを考えていても、取り返しのつかない事態に発展してしまうおそれがあります。子どもの安全を守るためにも、なるべく早く行動するようにしましょう。
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・離婚前に別居した方がいいの?メリット・デメリットと注意点を解説
子どもに離婚を伝えるときはケアを忘れない
「いつ子どもに離婚の事実を伝えるべきか」について悩んでいる方もいるでしょう。
子どもに離婚したという事実を伝えるときは、「子どもに非はないこと」「相手の悪口を言わないようにすること」を念頭に置きながら説明することをおすすめします。
いざ伝えるときに相手の悪口を言ってしまうと、子どもにとって精神的な負担をかけるおそれがあるので注意するようにしましょう。
子連れ離婚した後の住まいは?
子連れ離婚をした後に気になるのは住まいの問題です。
子連れ離婚した後、母子家庭(シングルマザー)になった世帯のおもな住宅状況は、以下のようになっています。
住まいの種類 | 世帯の割合(1,195,128) |
---|---|
本人名義の持ち家 | 15.9%(189,929) |
他人名義の持ち家 | 18.5%(220,619) |
公営住宅 | 12.4%(148,137) |
賃貸住宅 | 36.7%(438,578) |
同居 | 11.6%(138,702) |
上に挙げた住宅状況のほかに、公社・公団住宅に住んだり、間借という形で暮らしたりしている方もいます。母子世帯の住居状況は、持ち家が約34%、賃貸住宅が約36%となっています。
実家に住む
子連れ離婚して家を出るという方のなかには、実家に帰ることを考える方も多いのではないでしょうか。
実家が近くにあれば、自分や子どもの生活圏を変える必要もありませんし、賃料も無料、あるいは安く済むというメリットがあります。両親(子どもにとっては祖父母)が子育てに協力してくれるというのもポイントです。
ただし、親に気を遣ってしまったり、逆に親と子育ての方針が合わずに意見がぶつかってしまったりといったデメリットも考えられます。
また、親の収入が高い場合は、児童扶養手当がもらえないということもあるでしょう。
離婚して実家に戻るという場合は、子どもにとって環境が悪化しないかどうか、十分に考えたうえで決断することをおすすめします。
新しく賃貸物件に住む
離婚して家を出て、新しく賃貸物件に住むというのも一つの方法です。
「金銭的に余裕がなく、審査に通るか不安だ」という方は、「預貯金審査をしてもらう」「両親に代理契約をしてもらう」「連帯保証人を立てる」といった対応をとることをおすすめします。
離婚で自分が家を出るとなった場合に、「相手に引っ越し費用を請求したい」と考える方も多いと思います。しかし、元配偶者に対して、法的な手続きによって強制的に引っ越し費用を支払わせることはできません。
ただし、離婚条件に含めて交渉することはできます。相手の合意があれば引っ越し費用をもらうことはできるので、離婚をする際に引っ越し費用についても話をしておきましょう。
そのまま今住んでいる家に住み続ける
なかには夫が出ていき、そのまま自分と子どもだけがその家に残る、ということを選ぶ家庭もあるでしょう。
ただ、今の住宅が賃貸かどうかや、ローンは残っているかどうかなど、状況によってとるべき対応が異なってきます。
そのまま子どもと一緒に今の家に住みたいとお考えの方は、『離婚したら賃貸契約はどうなる?住み続ける方法や名義変更について解説』や『離婚後も住宅ローンのある家に妻が住む5つの方法とは?注意点も解説!』をご覧ください。
貯金がなくても子連れ離婚をサポートする公的支援
「子連れ離婚するには貯金が足りない」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、貯金が少ない状態でも子連れ離婚をサポートしてくれる、離婚後にもらえるお金や公的支援制度について解説します。
児童手当などの手当や公的支援
離婚したあと、児童手当などの手当を受け取ることができます。もらえる手当には、以下のようなものがあります。
離婚後もらえる子ども関連のお金
- 児童手当
- 児童扶養手当(母子手当)
- 児童育成手当
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- 就学援助
このほかにも、各自治体ごとにひとり親家庭への支援制度や、医療費の助成制度などを整備している場合があります。
手当の内容について詳しく知りたいという方は、『離婚したらもらえるお金は?手当や公的支援を解説!』をご覧ください。
生活保護を受ける
離婚をしたあとであっても、収入が最低生活費(厚生労働省が定める最低限の生活費)に達していなければ、生活保護を受給できます。
離婚の結果シングルマザー(母子家庭)となり養育費をもらうことになったとしても、生活保護を受けられなくなるといったことはありません。
ただし、生活保護を受給したいと考えている方は、ひとり親家庭への手当などほかの公的支援を先に受給する必要があるので注意しましょう。
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・離婚後に生活保護は受給できる?申請できる条件や注意点を解説
子連れ離婚は弁護士に相談!
子連れ離婚で後悔しないために、「親権や養育費など子どもに関する離婚条件はどうするか」「子どもの苗字はどうするか」「子どもの預け先となる保育園はどうするか」といったことを決めておくことをおすすめします。
子連れ離婚について困ったことがあるという方は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、離婚条件をどうするかについて適切なアドバイスをもらえたり、配偶者との話がもつれてしまっても代理で交渉してもらえたりできます。
また、子連れ離婚をした後に受けられるサービスや公的扶助といった制度の準備についてもアドバイスをもらえるでしょう。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了