離婚裁判で負ける理由は?勝つための方法と対策
離婚裁判を起こして負ける場合とは、どのようなケースなのでしょうか。
この記事では、離婚裁判で負ける理由をわかりやすく解説します。併せて、離婚裁判に勝つための対策や離婚裁判で負けた後の対応についてもお伝えします。
これから離婚裁判を起こそうと考えており、「負けないために何を準備すればよいのか知りたい」という方に有益な情報を掲載しております。ぜひ参考になさってください。
目次
離婚裁判で負ける理由と対策①離婚ができない場合
離婚裁判で負ける割合は?
離婚裁判で「負ける」とは、離婚請求が認められなかったことを意味します。
これを「棄却」といいます。
令和4年に終了した離婚裁判の中で、原告が負けたもの、すなわち棄却されたものは、全体の4.3%でした。
他方、原告の請求が認められたもの、すなわち認容されたものは、全体の32.9%でした(一部認容を含む)。
さらに、認容よりも多かったものが和解離婚で、全体の37.4%に上ります。
和解離婚とは、離婚訴訟を提起した後に当事者で合意の上、離婚する方法です。
離婚裁判の終わり方 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
認容(裁判離婚) | 2,673 | 32.9% |
棄却 | 349 | 4.3% |
却下 | 7 | 0.09% |
和解(和解離婚) | 3,040 | 37.4% |
取下げ | 1,802 | 22.2% |
その他 | 246 | 3.0% |
※「人事訴訟事件の概況ー令和4年1月~12月ー」(裁判所)より作成
離婚裁判で負ける理由は?
離婚裁判で負ける理由は、大きく分けて2つです。
一つ目は、法定離婚原因が認められないこと。
二つ目は、有責配偶者からの離婚請求であることです。
以下、それぞれの理由について詳しくご説明します。
法定離婚原因が認められないと裁判離婚できない
法定離婚原因とは、民法に定められた離婚原因です。
離婚裁判で離婚が認められるには、5つある法定離婚原因のうち少なくともいずれか1つに該当しなければなりません。
【法定離婚原因(民法770条1項)】
- 1号:不貞行為
- 2号:悪意の遺棄
- 3号:3年以上の生死不明
- 4号:強度の精神病
- 5号:婚姻を継続し難い重大な事由
実務上、最も重要なのは「婚姻を継続し難い重大な事由」です。
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、「夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復が全くない状態に至った場合」を意味します(最判昭62.9.2)。
簡単に言うと、婚姻関係が破綻している状態のことです。
離婚裁判で負ける理由として多いのは、相手方の有責行為がなく、別居期間が短いため、婚姻関係が破綻しているとは言えないと判断されるケースです。
例えば、相手方の不貞行為(不倫、浮気)やDVはなく、性格の不一致を理由に離婚を決意し別居したものの、第一審の口頭弁論終結時点で別居期間が2年に満たないケースでは、離婚裁判で負ける可能性が高いでしょう。
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性格の不一致で離婚するには?
相手方の有責行為と、それが原因で別居に至った経緯を具体的に主張し、裏付けとなる証拠を提出することが重要です。
性格の不一致(価値観の違い)を理由に離婚したい場合は、有責行為に当たる他の事情(不貞行為、DV、モラハラ、悪意の遺棄など)と組み合わせて、夫婦関係が破綻していることを証明することが有効です。
別居期間については、実務上、3年以上になると裁判離婚が認められやすくなります。
別居期間が短い場合は、婚姻費用の請求をした上で別居を続けるのが良いでしょう。
別居期間が2年程度になってから離婚裁判を起こせば、口頭弁論終結時点で別居期間が3年程度になっていると考えられるため、裁判離婚できる可能性が高くなります。
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有責配偶者からの離婚請求が原則として認められない
有責配偶者とは、婚姻関係の破綻の主な原因をつくった配偶者をいいます。
離婚裁判を起こした側が有責配偶者に当たる場合、離婚請求は原則として認められません。
例えば、自分が不貞行為をしたにもかかわらず、相手方配偶者に離婚を求めても、裁判では基本的に離婚は認められません。
有責配偶者が離婚請求するときのポイント
有責配偶者からの離婚請求であっても、離婚できる方法はあります。
まず、話し合いや離婚調停によって離婚する方法です。
協議離婚や調停離婚であれば、当事者間で合意が成立しさえすれば離婚できます。
ただし、離婚請求する側が有責配偶者に当たる場合、相手の同意を得るには、相場より高めの慰謝料を支払うなどの方策が必要でしょう。
次に、協議離婚や調停離婚が成立しなかった場合は、相当期間の別居を続けてから離婚裁判を提訴することが考えられます。
有責配偶者からの離婚請求の場合、裁判離婚が認められるのに必要な別居期間は、一般的に10年以上と考えられています。
ただし、裁判例の中には、婚姻費用の支払や、財産分与や慰謝料の点で相手方配偶者に対し誠意ある対応をした場合は、別居期間が10年より短くても有責配偶者からの離婚請求を認めた事案があります(最判平成2年11月8日)。
したがって、自分が有責配偶者に当たる場合は、相手方への誠意ある離婚条件の検討も重要になります。
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離婚裁判で負ける理由と対策②希望の条件が認められない場合
離婚条件が認められない場合もある
離婚裁判では、離婚請求に加え、慰謝料、財産分与、親権者の指定、養育費、年金分割なども求めることができます。
これらの離婚条件が自分の主張どおりに認められない場合も、離婚裁判に「負ける」場合に入るでしょう。
離婚条件が認められない、あるいは、一部しか認められない理由で多いのは、証拠が不十分であることです。
そのため、離婚条件の面で負けないためには、別居前から証拠を十分に収集しておくことが重要です。
以下では、離婚条件ごとに、離婚裁判で負けないための対策を詳しく解説します。
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慰謝料請求が認められるための対策
離婚に際し慰謝料請求できる典型例は、相手方が不貞行為、DV、モラハラをした場合です。
不貞行為の証拠は、メールやLINEでのやりとり、配偶者と不倫相手がホテルに出入りする写真などです。
配偶者や不倫相手が不貞を認めた場合は、念書などの書面を作成しましょう。その際、自発的に不倫を認めた証拠として録音をしておくと、裁判で役立ちます。
また、離婚調停で調停委員を味方につけやすくなります。
DVやモラハラの証拠は、録音、録画、日記、診断書、公的機関への相談記録です。
相手方が作成した書面に、モラハラを裏付ける記載があれば、それも有力な証拠になります。
本人尋問やわかりやすい陳述書も大切
離婚裁判では、原告と被告の本人尋問が行われます。
原告は、尋問において離婚を決意するに至った経緯を裁判官の面前で話します。
本人尋問の機会は基本的に1回しかないので、争いになっている点や特に強調したい事実について伝えることが大切です。
さらに、自分の主張を裁判官にきちんと伝えるためには、陳述書も重要です。
陳述書には、争いになっていない事実も含め、離婚に至った経緯を詳しく記載します。
陳述書は裁判官が判決を書くときに必ず読み返すものなので、わかりやすく事情をまとめておくと自己に有利な結果に結びつきやすくなります。
陳述書の作成は、専門家である弁護士に任せるのがおすすめです。
財産分与が認められるための対策
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を分配する手続きです。
財産分与の対象財産は、別居時に存在する夫婦の共有財産です。
離婚裁判では、原告と被告がそれぞれの名義の預貯金通帳などを提出します。
もっとも、相手方がそもそも裁判を欠席し続けたり、財産開示を拒否する場合は、相手方の財産をしっかりと調査する必要があります。
離婚裁判になった場合、財産の調査方法としては、調査嘱託の申立てが考えられます。
例えば、別居時における相手方の預貯金口座の残高は、調査嘱託の申立てによって判明する可能性があります。
また、相手方が財産分与を逃れるために、別居前に預貯金を引き出して隠してしまうケースもあります。
そのような場合は、文書送付嘱託の申立てをして、別居前に相手方が預貯金を引き出した痕跡が残っていないか取引履歴を調べるとよいでしょう。
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養育費が認められるための対策
実務では、養育費は改定標準算定表に従って決められる方法が定着しています。
離婚裁判では、原告と被告の収入資料がポイントになります。
別居前に、相手方の源泉徴収票や課税証明書、確定申告書の控えなどのコピーをとっておくと良いでしょう。
子どもの進学などを理由に算定表の金額より増額を求めたい場合は、相応の主張立証が必要になります。
弁護士に依頼すれば、類似の審判・裁判例を調べ、有利な構成を組み立ててくれるでしょう。
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親権者に指定されるための対策
離婚裁判では、これまで主に監護養育を担ってきた者が親権者とされる可能性が高いです。
その他にも、子どもの意向や、現在の監護態勢、育児を支援してくれる親族の有無、父母の就労状況などを総合的に判断して、親権者が決められます。
親権者になりたい場合、自分が主に監護養育を担ってきたことを基礎づける証拠として、母子手帳や保育園や幼稚園の連絡帳を提出しましょう。
また、子どもの監護に関する陳述書を説得的な内容にまとめることもポイントです。
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和解離婚も検討する
ここまで、離婚裁判に「勝つ」「負ける」といった視点でご説明してきましたが、自分の主張を100%通すことだけが最善の方法とは限りません。
離婚裁判は、控訴・上告まで合わせると2年以上のかかることも珍しくなく、時間的にも経済的にも大きな負担がかかります。
このような負担を避けるため、和解離婚を選択した方が早期解決につながり、全体としてのメリットが大きくなる場合も少なくありません。
もちろん、絶対に譲ることのできない離婚条件もあると思います。
納得のいく離婚を実現するためには、事前に離婚条件の優先順位をつけておくことが大切です。
その際、法律の専門家である弁護士をつけておくと、バランスのとれたアドバイスを受けられるでしょう。
また、和解離婚すべきかどうか迷った際も、弁護士のサポートがあれば、ご本人にとって最適な選択をするのに有益でしょう。
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離婚裁判で負けた場合どうする?その後の流れと対応
離婚裁判が棄却された割合は、全体の4.3%にすぎず、「離婚を認めない」という判決になることはそう多くはありません。
裁判で離婚が不成立になれば、その後は夫婦円満に暮らすことになる……というわけにもいかず、その後は婚姻費用をもらって(支払って)別居を続けることになるのが普通です。
また、離婚裁判で負けた場合でも、必ずしも離婚できないわけではありません。以下、離婚裁判で負けた後の選択肢を詳しく説明します。
控訴審での勝訴を目指す
離婚裁判の第一審判決に不服がある場合、控訴することができます。
控訴期間は、判決書を受け取った日から14日以内です。控訴審は、高等裁判所で行われます。
控訴して離婚が認められるかどうかは第一審で負けた理由によるところが大きいです。まずは判決内容をしっかりと検討しましょう。
別居期間が短いことが大きな理由で負けた場合
別居期間が短いことが大きな理由である場合、控訴しても離婚が認められる可能性は低いです。
この場合、別居を継続してから、再度訴えを提起するのが現実的です。
不貞やDVなどの事実が認定されずに負けた場合
この場合、裁判官の事実認定に誤りがあると考えるなら、控訴することで認定が覆る可能性はあります。主張内容と証拠をよく検討し、弁護士と相談してください。
控訴して和解を目指す
どうしても離婚したい場合は、控訴することで離婚できる可能性はあります。
なぜなら、控訴審の裁判官が和解を勧めてくる可能性が高いからです。
控訴することで、離婚意思が強固であることが相手方にあらためて伝わるため、相手が和解に応じる可能性も第一審より高くなることも期待できます。
事情変更を理由に再度裁判を起こす
離婚裁判で判決が確定した場合、同じ離婚理由で再度裁判を起こすことはできません。
しかし、夫婦の婚姻関係の場合、時間が経つことで事情も変わるため、判決後の事情変更を理由に再度離婚訴訟を提起できる場合があります。
その一例が、別居期間が長期に及ぶ場合です。したがって、裁判に負けたとしても、別居を継続したうえで、数年後にあらためて離婚訴訟を提起することは可能です。
再度離婚裁判を提起する場合は、離婚調停を申し立てる必要はなく、いきなり裁判から始めることも可能です。もっとも、再度調停を経るべきかどうかは最終的には裁判官の判断になるため、裁判官の判断で調停のやり直しをするよう指示される可能性はあります。
再度話し合いでの離婚を目指す
裁判で離婚が不成立となったからといって、協議での離婚もできなくなるわけではありません。
時間や状況が変われば、考えが変わることもあります。また、離婚を拒んでいるのが収入の多い側である場合は、別居が続くことで婚姻費用の負担が重くなり、最終的に離婚に応じるようになるということもあるようです。
離婚裁判のアドバイスなら弁護士へ
離婚裁判で負けないためには、法定離婚原因や有責配偶者の該当性など専門的な判断が必須になります。
また、弁護士がついていれば、書面の作成や証拠の提出、相手方の弁護士や裁判官とのやりとりといった場面でも心強いサポートが受けられます。
離婚裁判はご相談者様の新しい人生を始めるための大切な手続きです。
少しでもご不安がある方は、いつでもお気軽に弁護士にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了