離婚成立の別居期間は?1年や2年でできる条件と裁判の相場

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別居期間

離婚を切り出しても相手が離婚に応じない、離婚条件の折り合いがつかないなど、話し合いでは離婚に至らないケースは多く見られます。

このような場合でも別居期間を置くことで、裁判離婚できる可能性をひらくことができます。

離婚実務では、3年~5年以上の別居期間を置くと、離婚原因として認められ、裁判離婚の可能性がでてくるといわれています。

とはいえ、法律に別居年数3年で離婚を認めるなどと明記されているわけではありません。あくまで、総合考慮です。

同居期間と別居期間の長短、夫婦関係の修復の余地など、総合考慮され、裁判離婚の可否が決まるのです。不貞行為など別の離婚原因がある場合は、別居年数にかかわらず離婚が認められる場合もあります。

まずは目安となる期間ごとの裁判離婚の可能性を一覧で確認しましょう。

別居期間裁判離婚の可能性
半年や1年原則として困難
2年状況による
3年可能性が高い
5年以上ほぼ認められる

※期間はあくまで一般的な目安であり、個別の事情により判断は異なります。

なぜ2年だと判断が分かれるのか、短い期間でも認められる例外とは何か、裁判離婚に必要な別居年数、注意点等を実例や裁判の傾向にもとづいて分かりやすく解説します。

現在、別居中の方、離婚をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

統計では別居期間1年未満での離婚成立が最多

別居期間1年未満で離婚する割合が最多?

まず始めに、別居開始してから離婚に至るまで何年かかったか調査した統計をご紹介します。

下の円グラフをご覧ください。

厚生労働省の統計によると、令和2年度、別居の後に離婚した夫婦の別居期間について、最も多いのは1年未満で、全体の82.8%を占めています。

次いで、別居年数1年以上5年未満で離婚した夫婦が11.7%、5年以上が5.5%と続きますので、離婚までの別居年数としては1年未満が圧倒的に多いことが分かります。

厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計の概況」P18の情報を円グラフにまとめました。

次に離婚の方法による別居期間の違いも確認してみましょう。

協議離婚の別居年数も1年未満が断トツ!

協議離婚した夫婦の別居期間についても、最も多い別居年数は1年未満で、86.2%に上ります。

厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計の概況」P18の情報を円グラフにまとめました。

こちらの数字から、協議離婚の場合、別居を開始すると多くの夫婦がそれほど時間をかけずに離婚の合意に至っていることがわかります。

裁判離婚も1年未満は多いが長期化の傾向も

裁判離婚した夫婦の別居期間についても実は、最多が1年未満56.8%、次に多いのが1年以上5年未満で34.1%となっています。

厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計の概況」P18の情報を円グラフにまとめました。

※ここで言う「裁判離婚」には、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚及び判決離婚の5種が含まれます。

裁判離婚では、別居期間が1年以上となるケースが、協議離婚の約3倍に増えます。

裁判離婚の別居期間が長くなる2つの理由

裁判離婚をする夫婦の別居年数が長期化する理由は、二つ考えられます。

一つ目は、スムーズに円満離婚できず、裁判にもつれこむ程に話し合いがこじれたため、時間がかかり別居年数を重ねてしまったという理由です。

裁判所を利用する離婚方法では、少なくとも半年から1年程度、離婚するまでにかかるので、別居年数が長期化しやすいものです。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

令和6年度の離婚の平均審理期間は、15.5か月という調査結果もあります(裁判所「人事訴訟事件の概況」)。

裁判所の審理期間を考えると、裁判離婚のほうが、離婚成立までの別居期間が長期化しやすいといえます。

また、別居そのものを裁判離婚の理由にするために、長期の別居期間をもうけたという理由も考えられます。

岡野タケシ弁護士
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別居による婚姻関係破綻を理由とする離婚の場合、ある程度、長期の別居期間をもうけることが必要となります。

これも、裁判離婚成立までの別居期間が長引く要因のひとつでしょう。

別居何年で裁判離婚できる?3年以上?

ここでは、裁判離婚に必要な別居期間に関する実務や判例の考え方について、詳しく解説します。

離婚裁判で別居期間が重要となる法的根拠

協議離婚や調停離婚で合意に至らなかった場合、離婚訴訟を提起して、裁判離婚を目指すことになります。

離婚訴訟で離婚できる条件は、法定離婚事由が存在することです。

法定離婚事由とは、不貞行為をはじめとする、次の1~5までに該当する事由です(民法770条1項)。

法定離婚事由

  1. 不貞行為
    例:肉体関係のある浮気
  2. 悪意の遺棄
    例:生活費を入れない
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復見込みのない強度の精神病
  5. 婚姻を継続し難い重大な事由
    →夫婦関係の破綻
    例:上記1~4に該当しないもの、DV、長期の別居

法定離婚事由について、詳しくは『離婚できる理由とは?|5つの法定離婚事由を解説』という関連記事をご覧ください。

別居と法定離婚事由の関係

実務上、別居は法定離婚事由のなかでも「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるケースが最も多いといわれています。

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦関係が破綻し修復の見込みがないことを指します。

そして、長期間の別居期間があることも、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するケースがあります。

「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められる別居期間は、夫婦の有責性が同程度の場合、一般的に3〜5年程度が目安となります。

岡野タケシ弁護士
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弁護士

有責性とは、婚姻関係を破綻させた責任を意味します。

ただし、別居年数が3年~5年であれば必ず離婚事由に該当するという形式的な判断はされません。

裁判離婚が認められる法律要件はあくまで「婚姻を継続し難い重大な事由」であって、「3年~5年の別居期間を経ること」ではないからです。

過去の判例や裁判例は、同居期間と対比した場合の別居期間の長さ未成熟子の存否別居後の婚姻費用の分担状況などを総合的に考慮したうえで、「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を判断しています。

判断要素の例

  • 同居期間と対比した場合の別居期間の長さ
  • 社会的・経済的に自立していない未成熟子の存否
  • 別居後の婚姻費用の分担状況
岡野タケシ弁護士
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夫婦の事情はそれぞれで、裁判所の判断もケースによって分かれます。

離婚成立を目指す場合は、まずは離婚をあつかう弁護士に、どのような対策が必要なのか相談してみるのもよいでしょう。

別居2年から3年がひとつの境界線

協議や調停で合意に至らなかった場合、離婚訴訟を提起して裁判離婚を目指すことになります。

このとき重要になるのが別居期間の長さです。

離婚裁判において別居期間が2年を超えてくると、実務上の判断傾向が少し変わり始めます。

2年という期間は、単なる夫婦喧嘩や一時的な冷却期間とは異なり、婚姻関係の破綻が現実味を帯びてくると評価されやすくなるからです。

ただし、2年の別居期間でも「関係修復の余地がある」として離婚が認められなかった裁判例もあります。

別居期間3年になると、離婚が認められる可能性は高まります。

夫婦としての交流がなく、生計も完全に別々である状態が3年も続いていれば、もはや婚姻関係は破綻しており、夫婦としての実態がないと判断されやすいためです。

別居期間について法律上の明確な規定はありませんが、過去の判例や実務の傾向では、3~5年程度の別居期間で離婚が認められるケースが多く見られます。

別居半年や1年で離婚できるケース

別居期間が半年や1年でも、裁判で離婚が認められるのは以下のようなケースです。

必要な別居期間が短くなる事情

  • 相手からのDVやモラハラがあり身の危険がある
  • 相手が不貞行為、いわゆる浮気をしている明白な証拠がある
  • 相手が生活費を渡さない
  • 婚姻期間が短い

家庭裁判所の実務では、婚姻関係の破綻が明白であり、修復の可能性がない場合は、別居期間の長さにかかわらず離婚が認められる傾向があります。

離婚までの別居期間が長くなるケース

以下の事情があると、離婚が認められる別居期間が長くなる傾向があります。

必要な別居期間が長くなる事情

  • 婚姻期間が長い
  • 離婚を請求する配偶者の有責性が比較的高い
  • 未成熟子がいる
    など

離婚を請求する配偶者の有責性が比較的高いというのは、不貞行為をした側からの離婚請求、DVをした側からの離婚請求などのケースが考えられます。

このような有責配偶者からの離婚請求が裁判で認められるには、そうでない場合と比べて、2倍以上の別居年数が必要になる傾向があります。

くわしくは後述しますので、このまま本記事を読み進めていってください。

別居年数と裁判離婚の成立

○別居期間1年で離婚成立の事例

別居期間約1年の夫婦について、80歳になる夫からの離婚請求が認められた裁判があります(大阪高判平成21・5・26)。

この事案では、妻が夫のアルバムを焼却するなど、関係修復が絶望的であることを示す事情があったため、短期間でも認められました。

▼裁判所の認定・判断

  • 婚姻期間は約18年間
  • 大きな波風は立たないが、結婚当初に比べて収入が減り、夫婦で口論も
  • 平成15年、夫が手術を受けて退院後、妻が準備するのは夕飯のみ
  • 平成19年、妻が、先妻の位牌を勝手に長男宅に送る、夫のアルバムを大護摩で焼却する等した
  • 平成20年、長女の学校卒業式の後、口論になり、夫が家を出て別居開始
  • 別居期間は約1年

通常、1年という別居期間は短いと判断されがちです。

しかし、この事案では、妻が夫の気持ちを理解できず、夫婦関係の修復についても真摯に語らないこと等から、裁判所は夫婦関係の修復困難と判断し、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるとして、別居期間が1年余でも離婚成立となりました。

✕ 別居期間2年で離婚不成立の事例

別居期間約2年の夫婦について、妻からの離婚請求を認めなかった裁判があります(東京高判平成25・4・25)。

この事案では、直前まで表面的には平穏に暮らしており、別居が唐突だったため、まだ修復の余地があると判断されました。

▼裁判所の認定・判断

  • 夫の女性問題や暴行等により、妻は離婚の意思を固めたが、表面的には穏やかな婚姻生活を継続していた
  • 離婚の申し出が唐突で、「夫婦関係改善の努力をしたが別居に至った」などの経緯はない
  • 離婚を強く望んでいるが、夫婦関係を回復する見込みが全くないとまではいえない

このように、別居に至るまでの経緯に修復の努力が見られない場合、2年の別居期間だけでは関係破綻とは認められないケースもあります。

○別居期間4年10か月で離婚成立の事例

同居期間約10年に対し、別居期間は4年10か月余りの事案で、妻からの離婚請求が認められた裁判があります(東京高判平28.5.25)。

この事案では、別居期間の長さに加え、夫が生活費(婚姻費用)を十分に支払わなかったことが決定打となりました。

▼裁判所の認定・判断

  • 夫のモラルハラスメントにより、妻は、精神科に通院するようになった
  • 妻が、長男を連れて別居を開始した
  • 婚姻期間は約10年
  • 別居期間は約4年10か月(第一審時点の別居期間は約3年5か月)
  • 妻の離婚意思は強固(第一審では離婚不成立のため控訴)
  • 夫は調停で命じられた婚姻費用を十分に支払わない

妻の離婚請求は第一審で棄却されましたが、第二審の高等裁判所では、妻の強い離婚意思に対し、夫が関係修復に向けた具体的な行動を取っていなかったことや、婚姻費用の支払いも十分ではなかったことなどが考慮され、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められました。
これにより、約4年10か月の別居期間で裁判離婚が成立しました。

なお、第一審で請求が棄却された理由としては、妻の精神疾患が妻自身の思考パターンに起因する面が大きいとされたこと、子どもと夫の関係が良好であったこと、同居期間約10年に比べ別居期間が約3年5か月と短いと判断されたことなどが挙げられます。

一度離婚が認められなくても、別居を継続する、その別居期間中に夫婦関係の修復に努めないなどの事情がある場合、結論が変わり、離婚判決をだしてもらえることもあります。

有責配偶者は別居何年で離婚できる?

有責配偶者とは?自分からの離婚請求は可能?

有責配偶者とは、法定離婚事由(民法770条1項各号)にあたる行為をして、離婚の原因をつくった側の配偶者のことを指します。

有責配偶者の典型例は、不貞行為(浮気、不倫)をした配偶者などです。

有責配偶者の例

  • 不倫した夫
  • 悪意の遺棄
    ・理由もなく、一方的に家出
    ・生活費・婚姻費用を入れない
  • DVやモラハラをする旦那
    など

実務では、不貞相手と再婚したいなどの理由から、有責配偶者が離婚裁判を提起するケースも一定数見られます。

有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められませんが、別居期間が長期に及び、婚姻関係がすでに破綻していると評価される場合には、例外的に認められることがあります。

岡野タケシ弁護士
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簡単にお伝えすると、①長期間の別居期間、②夫婦間に未成熟の子どもがいないこと、③離婚請求された側が苛酷な状況におちいらないことの3つの要件が満たされた場合に、有責配偶者からの離婚請求が認められます。

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離婚成立のためには別居期間10年が必要?

離婚実務上、有責配偶者からの離婚請求の場合、別居期間が10年を超えるときは、離婚成立の可能性が高まると言われています。

ただし、別居期間は一つの目安であって、あくまで総合考慮によります。

双方の経済状況、別居後の婚姻費用の分担状況や、離婚後の他方配偶者の経済状況への配慮など、様々な事情を総合考慮して、離婚の成立・不成立は判断されます。

有責配偶者の別居期間と離婚裁判例

有責配偶者からの離婚請求が認められた事案と、認められなかった事案をそれぞれご紹介します。

岡野タケシ弁護士
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なお、こちらでご紹介するのは裁判の一例にすぎません。

ご自身のケースで離婚成立の可能性があるかどうかについては、弁護士の個別相談などを活用してご確認ください。

○別居期間約6年で離婚成立

別居期間6年で有責配偶者である夫からの離婚請求が認められた事案があります(東京高判平14.6.26)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • もともと会話の少ない夫婦であり、妻が不貞を疑わせるような行動をしたことにより夫婦間の溝が大きく広がった
  • 妻が相当な収入を得ている
  • 夫が妻に対する離婚給付として、夫名義の自宅建物を分与し、住宅ローンの残りも完済するまで支払続ける意向を示している 
    など

✕ 別居期間9年以上で離婚不成立

同居期間約14年、別居期間9年以上で有責配偶者である夫からの離婚請求が認められなかった事案です(東京高判平19.2.27)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚不成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • 夫婦間の子は、重い障害を有するため、日常生活全般にわたり介護を必要する状況にある
  • 子の世話をする相手方配偶者(妻)は、54歳であり就業して収入を得ることが困難な状態である
  • 離婚すると、妻は現住居から退去しなければならなくなる可能性があり、経済的に困窮することが十分予想される 
    など

✕ 同居約18年、別居期間約9年4か月で離婚不成立

同居期間約18年、別居期間約9年4か月で、有責配偶者である夫からの離婚請求が認められなかった事案もあります(仙台高判平25.12.26)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚不成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • 夫は不貞行為をした有責配偶者
  • 妻は離婚を望んでいない
  • 夫婦の子はまだ大学生(未成熟子)
  • 夫の不貞・別居後、妻はうつ病になり思うように働けず、離婚をすると、妻は精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる 
    など

○同居約10か月、別居期間約10年3か月で離婚成立

同居期間約10か月、別居期間約10年3か月で、有責配偶者である妻の離婚請求が認められた事案があります(最一小判昭和63・3・25)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • 夫婦双方の年齢
  • 同居期間と比べ、別居期間が長期間におよぶ
  • 夫婦には子がない
  • 妻との離婚で、夫が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等の事情がない
    など

○家庭内別居約11年、完全別居約5年で離婚成立

家庭内別居約11年、完全別居約5年で、不貞行為をした夫からの離婚請求が認められた事例があります(名古屋高判平成17・5・19)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • 同居期間(家庭内別居を含む)は約40年間
  • 夫婦双方の年齢が高齢
  • 住まいを完全に分けた別居期間は約5年間
  • 子どもは成人した
  • 夫に対する信頼や愛情が感じられる妻の言動がない
  • 夫婦ともに関係回復の努力をほとんどしていない
  • 妻は株などで利益を得ている

    →離婚によって、妻が精神的・社会的・経済的に極めて困難な状態におかれるとまでは言えない

裁判離婚の別居期間でよくある質問

Q.家庭内別居は別居期間に含まれる?

「婚姻を継続し難い重大な事由」を主張するのであれば、完全別居のほうが効果的です。

ただし、家庭内別居状態の夫婦の事情が考慮されるケースもあります。

たとえば、寝室や食事を別々にするなど、夫婦共同生活を営んでいるとはいえないような場合、夫婦関係の破綻を基礎づける一事情として、裁判で評価される可能性はあります。

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Q.単身赴任は別居期間に含まれる?

通常、単身赴任による別居は、裁判離婚の理由になる別居期間には含まれません。
仕事上の理由で別居しているだけであって、夫婦関係に亀裂が生じて別居するに至ったものではないからです。

単身赴任中に事情が変化して、離婚の前提となる別居が始まったと評価できる場合は、その時点から離婚事由となる別居期間が始まったと判断される可能性はあります。

具体的には、単身赴任中に不貞行為が始まり、夫婦関係が悪化した場合が考えられます。

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不貞行為による離婚・慰謝料請求では、単身赴任中の不貞行為の時点で、夫婦関係が破綻していないことが分かる証拠も必要になります。

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Q.別居期間なしでも離婚成立は目指せる?

不貞行為(民法770条1項1号)など、ほかの法定離婚原因を証明できれば、別居期間の長さにかかわらず裁判で離婚成立を目指すことができます。

不貞行為を証明するには、配偶者と不倫相手が肉体関係をともなう関係であったことを示す具体的な証拠が必要です。たとえば、メールやLINEのやりとり、録音・録画データ、探偵の調査報告書などが挙げられます。

直接的な行為の証拠がなくても、親密なメッセージのやりとりや、二人きりでホテル等に滞在した事実といった状況証拠を積み重ねることで、不貞行為が認められるケースもあります。

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離婚に向けた別居期間の注意点

別居前に証拠収集を完了する

相手が離婚に応じない場合、相手に離婚原因があることを証明する証拠をいかに揃えるかが重要です

自分の主張を裏付ける証拠が充実しているほど、離婚調停で調停委員会の納得を得やすくなります。

調停委員会の理解を得れば、相手方を離婚に向けて説得してくれやすくなります。

離婚訴訟においても証拠は非常に重要です。

すでにご説明したとおり、裁判離婚するには、法定離婚事由が必要です。

そのため、法定離婚事由に当たる事実(不貞行為、DV、モラハラなど)を証明する証拠が多いほど、裁判離婚できる可能性が高まります。

証拠が多いほど、慰謝料の面でも有利になります。

以上の理由から、別居を考えている方は、別居前に証拠収集をできる限り終えておくことが望ましいです。

不貞行為を証明するためには、メールやLINEのやりとりなどが有効です。

DVやモラハラであれば、録音・録画、日記などがあれば主張が認められやすくなります。

DVやモラハラに限らず、別居に至る経緯を日記に書いておくと後々役に立ちます。必ず日付を書いた上、相手の言動などを具体的に記載します。

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相手の有責性の高さを証明できれば、別居期間が短くても離婚が認められる可能性が高くなります。

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相手に別居する旨と今後の方針を伝える

別居をする際、できれば事前に相手の同意を得ることが望ましいです。

なぜなら、何も言わず家を出てしまうと、夫婦の同居義務(民法752条)に反する「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に当たると主張され、慰謝料を請求されるおそれがあるからです。

もっとも、現実には事前の同意を得るのが難しいケースが大半でしょう。

その場合は、置き手紙が有効です。手紙には、別居を決めた理由や今後の方針を簡潔かつ冷静に書いておきます。

相手から「黙って出て行った」と主張されないために、置き手紙のコピーをとっておきましょう。

離婚を迷うなら別居半年~1年で協議を

離婚を明確に決意できない場合もあるでしょう。

そのような場合は、別居合意書を作成し、別居期間を明確に定め、一定の時期をむかえたら今後について協議する旨を約束しておくとよいでしょう。

長期の別居期間は、法定離婚原因に該当しやすくなるリスクがあります。

そのため、復縁を視野に入れる場合、別居開始から、長くても半年~1年以内には、夫婦の話し合いの機会をもうけるのが無難です。

離婚の話し合いが難航→離婚調停の申立て

別居をして冷静に話し合いができる状態になれば、当事者で協議離婚に向けて話を進めましょう。

それが難しければ、弁護士に早めに相談して離婚調停を申し立てるのがおすすめです。

離婚調停では、離婚だけでなく、親権者、面会交流、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割などの離婚条件についても決められます。

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別居後は早期に婚姻費用を請求する

婚姻費用は、夫婦が婚姻している間の生活費です。

たとえ別居しても、収入の多い方の配偶者は婚姻費用の支払義務があります。

婚姻費用の支払義務は、基本的に請求時点から生じます。

したがって、別居後は、できる限り早く婚姻費用の支払を求めましょう

相手が支払に応じなければ、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。離婚調停と一緒に申し立てる場合も多いです。

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別居期間中に離婚後の生活設計を立てる

別居して離婚の決意が固まった場合、離婚後の生活設計を具体的に立てることが大切です。

就職や、養育環境の整備、公的支援を調べるなど、別居期間を活用して再出発の準備を着々と整えましょう。

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離婚・別居期間のアドバイスは弁護士にお尋ねください

離婚成立に必要な別居期間まとめ

「別居何年で離婚できるの?」
「うちは別居期間が1年未満…離婚できる?」
「別居期間3年だけど離婚慰謝料は貰える?」

このような疑問・不安をお持ちの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

話し合いによる離婚の場合、別居半年、別居期間1年というケースでも、夫婦で合意できれば離婚可能です。

一方、裁判離婚の場合は、離婚が認められる別居期間の目安として、一般的には約3年~5年程度が見込まれます。ただし、別居期間が3年~5年になれば必ず離婚できると決まっているわけではありません。

一般的に3~5年程度の別居期間が必要と言えども、同居期間と比べた別居期間の長さも問題になります。

また、不貞など法定離婚事由になる行為をした側が、裁判離婚を主張する場合、別居年数は少なくとも10年程度必要になるでしょう。

離婚できる別居年数、離婚事由は、夫婦によって様々です。

弁護士は、あなたのお話しをお聴きし、裁判例に照らし合わせて、別居期間をはじめとする離婚問題の解決に向けたアドバイスをいたします。

配偶者の不倫になやまされ、しまいには離婚を切り出されてしまったという方も、納得のいく解決をさぐるためにも、離婚をあつかう弁護士の無料相談を活用してみてください。

離婚をあつかう弁護士は、離婚に有利な別居期間だけでなく、慰謝料や財産分与など、離婚問題全般に関するご相談にも対応できます。

弁護士相談の内容(一例)

  • 離婚成立のための別居期間の長さ
  • 離婚までの婚姻費用の請求
  • 離婚慰謝料の請求
  • 離婚にともなう財産分与
  • 年金分割
  • 養育費
    etc.

離婚に踏み切る決意ができていない方も、将来の選択肢を広げるために、早期に情報収集をしておくことに越したことはありません。いつでもお気軽にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了