離婚前にやってはいけないこと|離婚後に後悔しないためのガイド
「離婚したい」と思った場合、つい感情的な言動をとってしまい、大きな後悔をすることになるケースが少なくありません。
特に、養育費、面会交流、婚姻費用、財産分与、慰謝料、年金分割などの法的問題は慎重に対応する必要があります。
離婚前に何をすべきか、何を避けるべきか知っておくことは離婚後の人生を大きく左右します。
この記事では、離婚を考え始めた女性が後悔しないために「離婚前にやってはいけないこと」を解説します。
法的知識を身に付けて冷静に行動すれば、ご自分と家族の将来を守ることにつながります。
目次
子どもの将来のためにやってはいけないこと
感情的になって離婚問題に子どもを巻き込む
夫婦間に子どもがいる場合、絶対にやってはいけないのが感情的になって子どもを離婚問題に巻き込むことです。
例えば、子どもに両親の争いを見せたり、一方の親の悪口を言ったりすれば、子どもの心身に大きな負担を与えてしまいます。
離婚は相当にストレスのかかる問題であるため、どうしても感情的になってしまいがちです。
しかし、特に親権者や養育費、面会交流など子どもの問題に関しては、お互いに冷静になり、子どもの利益を最優先して話し合いをしてみましょう。
その上で、今後の生活がどうなるか子どもにもわかりやすい言葉で伝えると、子どもの気持ちが安定するでしょう。
子どもがいる場合の離婚の進め方については、裁判所ホームページのビデオ「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」が参考になります。
養育費の取り決めをしない
養育費は、離婚後の子どもの生活や教育にとって非常に大切なお金です。
離れて暮らす親は、養育費のうち自分の負担部分を支払う義務があります。
ところが、「相手と関わるのが嫌だから」と養育費について何ら取り決めをせず離婚をしてしまう方も少なくありません。
実際、母子世帯の51.2%が養育費の取り決めをしていません(厚生労働省 令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告)。
離婚後も養育費をしっかりと受け取れるようにするため、離婚前に養育費の額や支払方法などについて具体的に決めておく必要があります。
養育費の適正な金額の目安については、アトム法律事務所の婚姻費用・養育費計算機にお互いの収入を入力すればで簡単に算出できます。
養育費について合意できたら、不払いの事態に備えて強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておくことをおすすめします。
相手との話し合いが難航した場合は、家庭裁判所に早めに調停を申し立てましょう。
関連記事
面会交流の話し合いをしない
養育費同様、「相手と関わりたくないから」という理由で面会交流についての取り決めをせずに離婚するケースが多いのが現状です。
しかし、面会交流は子どもが両親から共に愛されていると実感しながら成長するために欠かせないものです。
子どもが相手からDVを受けているなど例外的な場合を除き、面会交流ができる限り実現するよう父母双方が協力することが大切です。
離婚前に、面会交流の頻度や受け渡し場所、父母の連絡方法などを具体的に決めておきましょう。
夫婦のみで話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の調停を利用すると良いでしょう。
関連記事
経済面での後悔を防ぐためにやってはいけないこと
離婚後の生活設計をしない
離婚したいという気持ちが強くなると、感情的になって相手に離婚を切り出してしまいがちです。
しかし、離婚後の生活設計を何もしないまま離婚してしまうのは非常に危険です。
離婚後は、相手方の収入が得られなくなるだけでなく、家賃など新たな負担も生じます。そのため、無計画に離婚してしまうと途端に生活が立ち行かなくなる可能性があるのです。
離婚後の生活をスムーズに始めるためには、離婚後の生活設計をしっかりと立てておく必要があります。
離婚後の生活費、離婚後の収入源、公的支援などの情報を十分に収集し、離婚後に必要なお金はいくらで、そのために今自分はどのような行動をとるべきか、一歩ずつ計画を立てましょう。
特に、専業主婦の方や熟年離婚を検討中の方は、離婚後の生活について不安が大きいでしょう。
そのような方にとって有益な情報を関連記事にまとめてありますので、ぜひそちらもご覧ください。
関連記事
・専業主婦の離婚で知っておくべきこと|専業主婦の離婚準備を解説
婚姻費用を請求しない
離婚を検討中の方が見落としがちなのが、婚姻費用の請求です。
婚姻費用とは、結婚生活に必要な生活費や養育費です。
夫婦には扶養があるため、扶養を必要とする方の配偶者は、別居中の婚姻費用を相手に請求できます。
このことを知らず、離婚を決意して別居した方が、別居中に相手方から何ら金銭を受け取っていないケースが非常に多いのです。
実際、協議離婚経験者の41.6%にも上る方が婚姻費用について知らなかったと答えています(法務省 協議離婚に関する実態についての調査研究業務報告書(令和3年))。
婚姻費用の適正な金額の目安はアトム法律事務所の婚姻費用・養育費計算機にお互いの収入を入力すれば簡単に算出できます。
通常、婚姻費用は請求したとき以降の分しか認められませんので、適正額がわかり次第、できる限り早期に請求することをおすすめします。
相手が支払を拒否する場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てましょう。
関連記事
・離婚と婚姻費用|別居中の生活費・相場は?離婚前提でも請求できる?
財産分与の準備をしない
財産分与は、離婚時の最も重要な取り決めの一つです。
特に熟年離婚の場合は、対象財産の金額が大きくなるため、財産分与をいかにしっかりと行うかが老後の生活に大きく影響します。
婚姻期間中に築いた夫婦共有財産を公平に分けるため、離婚前から十分に準備しておくことが不可欠です。
しかし、財産分与に必要な証拠を十分集める前に別居してしまうケースが少なくありません。
別居する前に、相手方の給与明細、銀行口座、不動産、株式、退職金などに関する資料をできるだけ多く集めコピーしておきましょう。
相手方の財産隠しが疑われる場合、時間が経つと手遅れになってしまうおそれがあります。
そのような場合は、早めに弁護士に相談してください。
弁護士は、弁護士会照会制度など一般の方には利用できない手続きを活用し、相手方の財産を調査できます。
関連記事
慰謝料を請求しない又は過大な請求をする
相手方がDVやモラハラ、不貞行為(不倫、浮気)をしていた場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料請求は、被害者の正当な権利です。
もしあなたが相手方からの被害に苦しんできたのなら、正当な権利の行使をためらう必要はありません。
自分で請求するのが不安であれば、弁護士に相談してみてください。
弁護士は、被害者であるあなたの話を丁寧に聴き取り、証拠も十分確認した上で、適正な慰謝料額をアドバイスしてくれるでしょう。
一方、慰謝料を請求できる事案だからと言って、相場を大幅に超える過大な請求をするのは避けた方が良いでしょう。
なぜなら、感情に任せて過剰な慰謝料請求をすると、相手方の態度が硬化し、離婚問題全体の解決が遠のくおそれがあるからです。
慰謝料を請求できる事案か、請求できるとして適正な金額はいくらか知るには、専門家である弁護士に直接相談するのがおすすめです。
無料法律相談を実施している事務所も多いので、少しでも気になる方は、一度相談してみてください。
関連記事
年金分割の準備をしない
年金分割は、離婚に際し、婚姻期間中に納付した厚生年金の保険料納付記録を分割する制度です。
相手方が厚生年金に加入していれば、年金分割を請求できます。
「手続きが面倒」という理由で年金分割について準備をしない方がおられるかもしれませんが、それは避けるべきです。
年金分割をきちんと行えば、老後に受け取れる年金額が増えるケースが多いからです。
離婚前から年金見込額の調査をしておくことが必要です。
具体的には、「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所に提出し、「年金分割のための情報通知書」を取得します。
50歳以上の方で老齢年金の受給資格期間を満たしている方は、「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」も取得できます。
また、年金分割を受けるには、原則として離婚成立日の翌日から2年以内に、年金事務所に改訂請求を行う必要があります。
離婚成立日は、協議離婚なら離婚届の届出日、調停離婚なら調停離婚成立日、裁判離婚なら判決離婚確定日です。
離婚成立後に、忘れずに手続きを行うようにしましょう。
関連記事
・離婚時の年金分割手続きとは?必要書類は?共働き・拒否した場合も解説
法的トラブルを避けるためにやってはいけないこと
不貞行為をする
離婚前に不貞行為や不貞行為を疑われる言動をするのはやめましょう。
不貞行為を行った配偶者は「有責配偶者」に当たり、様々なペナルティを受ける可能性があるからです。
具体的には、婚姻費用の請求について、有責配偶者本人の生活費分は請求できなくなります(子どもの生活費分については請求できます)。
また、有責配偶者からの離婚請求が離婚裁判で認められるには相当高いハードルがあります。
離婚調停の場合、不貞行為をすると調停委員に与える印象は悪化してしまいます。そうなると、調停委員が有責配偶者の言い分が通るよう相手方を積極的に説得してくれる可能性は低くなります。
有責配偶者は、他方配偶者から慰謝料請求される可能性も高いです。
なお、夫婦関係が破綻した後に異性関係をもっても不貞行為には該当しません。しかし、その証明は困難な場合が少なくないのです。
メールやSNSなどで不貞行為を疑われる言動を安易にしないよう十分注意してください。
関連記事
・離婚調停中にやってはいけないこと&不利な発言は?対処法も解説!
離婚協議書や公正証書を作成しない
養育費や財産分与などの離婚条件について口約束だけで終わらせ、書面は作成しない方が少なくありません。
しかし、口約束は非常に危険です。
特に、養育費や財産分与などお金に関する合意は、口約束だけではトラブルになる可能性がかなり高いと思っておいた方が良いでしょう。
離婚条件については離婚前に合意し、公正証書か、少なくとも離婚協議書を作成しておくことを強くおすすめします。
これらの書面を作成しておけば、強制執行や裁判の際に役立ちます。
法的な書面の作成は、弁護士のサポートを受けると安心です。
関連記事
離婚問題が複雑化してから弁護士に相談に行く
夫婦間の対立が激しくなり、離婚問題が複雑化してから弁護士に相談に行くケースが少なくありません。
しかし、そのようなケースは解決までに時間を要する場合が多く、経済的な面でも当事者の負担が大きくなってしまう可能性があります。
離婚問題について少しでもお悩みがある場合は、できる限り早いタイミングで弁護士に相談にいくのがポイントです。
「こんなことで相談に行っていいの?」と迷う必要はありません。
弁護士の関与が早いほど、離婚条件に関する法的な見落としや、不利な取り決めをしてしまうリスクが低くなります。
ご自分の権利を守り、スムーズな離婚を実現するために、早期に弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了