協議離婚と調停離婚の違い|どちらを選ぶべき?費用や手続きを比較!

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協議離婚と調停離婚

離婚の方法には、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがあります。

このうち、最も多く用いられているのが協議離婚で、2番目に用いられているのが調停離婚です。

協議離婚は夫婦が直接交渉するのに対し、調停離婚は家庭裁判所の調停委員会を介して話し合うというのが、両者の最も大きな違いです。

また、協議離婚と調停離婚には、手続きの流れや必要期間、費用、取り決めの強制力にも違いがあります。

この記事では、協議離婚と調停離婚の違いや、協議離婚と調停離婚どちらを選べばよいかについて解説します。

協議離婚と調停離婚とは?

協議離婚|最もベーシックな離婚方法

協議離婚とは、夫婦が話し合って離婚やその条件を決める、最も一般的な離婚の方法です。

協議離婚に複雑な手続きは必要なく、合意の上で離婚届を提出すれば完了します。

夫婦が話し合って決める事項には、以下のようなものがあります。

  • 親権者
  • 養育費
  • 面会交流
  • 慰謝料
  • 財産分与
  • 年金分割

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調停離婚|家庭裁判所で話し合う方法

離婚調停とは、裁判所の調停委員会のもとで解決を図る離婚の方法です。

当事者同士の話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。

調停では、夫婦が交互に調停委員と面談をして、意見の調整を行います。面談は1人ずつ行われますので、相手と顔を合わせることはほとんどありません。

このように調停は裁判所で調停委員が仲介して行う手続きですが、あくまで当事者間での話し合いを目的とするものです。

裁判所が離婚の成立や離婚の条件を一方的に決めてくれるわけではなく、当事者間での合意が必要です。

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協議離婚と調停離婚の割合は?

令和4年度 離婚に関する統計の概況によると、離婚件数のうち協議離婚が88.3%を、調停離婚が8.3%を占めています。

そのほか、審判離婚や裁判離婚などの離婚方法は、合計で3.4%程度にとどまっています。

このように、協議離婚は、多くの夫婦に選ばれている最も一般的な離婚方法です。

※その他には審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚を含む

協議離婚と調停離婚の違いは?

協議離婚と調停離婚の違いは、手続き、期間、費用、強制力にあります。それぞれの違いについてみていきましょう。

協議離婚調停離婚
①手続き簡単やや複雑
②期間短い長い
③費用0円~3,000円程度
④強制力なし*あり

※強制執行認諾文言付き公正証書があれば強制執行が可能

①手続きの違い|協議離婚は離婚届の提出だけ

協議離婚の手続き

協議離婚に必要な手続きは離婚届の提出のみです。

離婚届の用紙は、役所に行って受け取ったり、インターネットでダウンロードしたものを印刷して使うことができます。

離婚届の提出先は市区町村役場で、夜間窓口での提出や郵送での提出も可能です。

なお、協議離婚の届出の際には、2名の証人に署名してもらう必要があります。

調停離婚の手続き

離婚調停を行うためには、必要書類を用意して家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行う必要があります。

離婚を希望するに至った経緯を説明するための陳述書などを作成することも多いため、ある程度の手間がかかります。

離婚調停の開始後は、夫婦が合意できるまで繰り返し家庭裁判所に出向いて話し合いを行います

離婚調停は、裁判所が開いている平日の日中に行われるため、仕事を休んで出席しなければならない方も多いでしょう。

②期間の違い|協議離婚は最短0日、調停は数か月

協議離婚の期間

協議離婚に必要な手続きは離婚届の提出のみなので、夫婦が合意さえすればその日のうちに協議離婚することができます

ただし、話し合いが難航すれば、数年単位で時間がかかってしまうケースもあります。協議離婚するのにかかる期間は、その夫婦次第ということです。

調停離婚の期間

離婚調停には平均3か月~1年程度の期間が必要です。

まず、申し立てをしてから第1回期日が開かれるまでには、1~2か月かかるのが普通です。

調停が終了するまでの期間は、最短で1か月以内、長いと2年以上かかるものもありますが、約6割が3か月~1年で終了しています。

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③費用の違い|協議離婚は0円~、調停は3,000円~

協議離婚の費用

協議離婚の基本費用は0円です。

ただし、離婚届を本籍地以外の役所に提出する場合は戸籍謄本も併せて提出する必要があるため、450円の費用が必要です。

なお、公正証書を作成する場合には5,000円~数万円の公証人手数料がかかります。手数料は、公正証書の中で取り決める支払い金額に応じて決められています。

たとえば、支払う金額が100万円以下ならば手数料は5,000円、100万円以上200万円以下ならば7,000円などと、額が大きくなるごとに手数料も上がっていきます。

したがって、協議離婚にかかる費用は総額で0円~数万円となります。

協議離婚を弁護士に依頼する場合、弁護士費用の相場は40万~90万円程度といわれています。

費目費用
離婚届0円
戸籍謄本の取得費用450円
公正証書作成費用(任意)5,000円~数万円
弁護士費用(任意)40万~90万円程度

調停離婚の費用

一方で、調停離婚の費用は3,000円程度です。費用の内訳は以下の通りです。

費目費用
収入印紙代1,200円
戸籍謄本の取得費用450円
切手代1,000円程度(裁判所によって異なる)
弁護士費用(任意)50万~110万円程度

これらのほか、裁判所に提出する証拠や資料を用意するために費用がかかることがあります。

なお、離婚調停を弁護士に依頼する場合の弁護士費用は、50万~110万円程度が相場とされています。

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④取り決めの強制力の違い|調停で決めたことは強制力あり

協議離婚と調停離婚は、取り決めが離婚後に強制力を持つかという点で違いがあります。

言い換えると、離婚時に約束した金銭の支払いや子どもとの面会などが履行されなかった時に、強制的に実現させられるかということです。

調停離婚の効力

離婚調停の調停調書があれば、強制執行が行えるようになります

調停調書とは、離婚調停が成立したときに裁判所で作成される文書で、離婚調停の取り決めの内容が記されます。

調停で養育費を払うと約束したのに、離婚後に支払いが途絶えてしまった場合は、相手の給与や財産を差し押さえて強制的に支払わせることができます

協議離婚の効力

一方で、協議離婚の取り決めには、強制執行ができるほどの効力はありません。強制執行をしたい場合は、後から調停や裁判を起こして認めてもらう必要があります。

ただし、協議離婚の際に強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておけば、一定の額の金銭の支払いについては強制執行が可能になります。

公正証書とは、公証役場にて公証人に依頼して作成してもらう公文書です。

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協議離婚と調停離婚の共通点は?

このように、協議離婚と調停離婚には、費用や期間、手続き、効果などの面で違いがありますが、共通点もあります。

大きな共通点は以下の2つです。

協議離婚と調停離婚の共通点

  • 当事者の合意がなければ離婚できない
  • 離婚理由や離婚条件が自由

協議離婚と調停離婚は、いずれも夫婦の合意によって離婚する方法であり、裁判官の判断で離婚する裁判離婚とは異なります。

そのため、どのような理由で離婚するか、どのような条件を設定するかは、相場や判例に縛られず自由に決めることが可能です

相手が離婚を拒否している場合、協議や調停で強制的に離婚させることはできないため、何としても離婚したいならば、離婚裁判を起こす必要があります。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

相手が離婚に応じないからといって勝手に離婚届を出しても、離婚は法的に無効です。

協議離婚と調停離婚どちらがいい?

当事者間での合意が望める場合は協議離婚

離婚について双方の意見がある程度一致しており、当事者間の合意が望めるのであれば、期間も費用もかけずに離婚できる協議離婚がおすすめです。

円満に離婚したい場合は協議離婚

なるべく揉め事を少なくし、円満に離婚したいのであれば、協議離婚を目指すのがよいでしょう。

調停離婚も二人の合意によって成り立つとはいえ、対立感情が生まれやすいため、円満解決にはなりにくいといえます。

また、協議離婚か調停離婚かは戸籍に記載されます

したがって、自分の子どもや再婚相手が戸籍謄本を取得した際に、どのような方法で離婚したかが分かってしまいます。

調停で離婚したこと、すなわち離婚時に揉めてしまったことを知られたくないという方は、協議離婚を選びます。

離婚後の戸籍の記載方法

協議離婚の場合:【離婚日】〇年〇月〇日

調停離婚の場合:【離婚の調停成立日】〇年〇月〇日

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すぐに離婚したい場合は協議離婚

離婚手続きを早く済ませたいという方には、協議離婚がおすすめです。

離婚調停は平日の日中に裁判所に出向く必要があるため、多忙な方は日程を調整するのに苦労する可能性がありますが、協議離婚であれば時間や場所を選ばずに話し合いをすることができます。

ただし、離婚を急ぐあまり、財産分与や養育費について十分に話し合わず、不利な条件で離婚してしまわないように注意が必要です。

相手と直接話し合いたくない場合は調停離婚

離婚調停では、原則として相手と顔を合わせることがありません。

したがって、DVやモラハラを受けていて相手と会うことに不安を感じる方や、相手と同席するとヒートアップしてしまいそうという方には、離婚調停がおすすめです。

とはいえ協議離婚の場合でも、親族に間に入ってもらったり、弁護士に交渉を依頼すれば、相手と会わずに離婚について話し合うことは可能です。

相手が話し合いに全く応じない場合は調停離婚

相手が離婚の話し合いに全く応じない場合は、早めに離婚調停を起こすのがよいでしょう。

調停を申し立てても、相手方が調停の欠席を繰り返せば離婚調停は不成立になります。しかし、離婚調停が不成立で終わってしまっても、無駄にはなりません。

話し合いに応じない相手と離婚するには裁判で判決を得るしかありませんが、離婚裁判を起こすには、調停が不成立になっていることが求められます(調停前置主義)。

また、裁判所から調停の呼出状が届くと、驚いて話し合いに応じるケースもあります。

したがって、離婚の話し合いに応じない相手との離婚は、早い段階で調停を起こすことが近道となります

差し押さえ以外の強制執行を考えている場合は調停離婚

調停での取り決めは、強い強制力を持つため、強制執行を視野に入れている場合は離婚調停を利用するのがよいでしょう。

具体的には、離婚調停で取り決めがあれば財産分与や慰謝料、養育費の強制執行ができるほか、面会交流の履行を求める履行勧告や、面会交流が実現されるまでのあいだ間接強制金を課す間接強制が使えるようになります。

協議離婚の時でも、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成すれば、給与や財産の差し押さえを行えるようになりますが、公正証書で強制執行ができるのは一定の額の金銭の支払いのみです。

そのほかの取り決め、たとえば面会交流についての強制執行は、公正証書ではできません。

このように、取り決めの強制力の点では、離婚調停が勝ります。

公正証書と離婚調停の効力の違いについては、『離婚の公正証書を徹底解説!作り方や内容、効力は?』の中で詳しく解説しています。

また、強制力を持たせるための費用の面でも、離婚調停に軍配が上がります。

協議離婚で強制執行をするには、数千円~数万円の手数料を払って公正証書を作成する必要があります。

一方、離婚調停では、3,000円程度の申し立て費用のみで強制執行ができるようになるため、公正証書の作成費用を抑えるために離婚調停を選択するケースもあります。

協議離婚と調停離婚の流れ

協議離婚と調停離婚の流れについて見てみます。

協議離婚と調停離婚の流れ

協議離婚の流れ

協議離婚の流れ

  1. 夫婦間で話し合いを行う
  2. 離婚届に記入する
  3. 離婚届を提出する

協議離婚の流れはシンプルで、離婚することや離婚条件を話し合い、離婚届にサインをして役所に提出するだけです。

なお、協議離婚をする際に、任意で離婚協議書や公正証書を作成することがあります。

離婚協議書とは、夫婦が話し合って決めた内容をまとめた契約書のようなもので、書式や書く内容は自由です。

離婚協議書を作成しておけば、後から「言った言わない」のトラブルが起きるのを防ぐことができます。

公正証書とは、離婚協議書の内容を公文書にしたもので、公証人に依頼して作成することができます。

公正証書の作成には費用がかかりますが、強制執行認諾文言を付した公正証書を作成しておくと、金銭の支払いの約束が守られなかった場合に、財産の差し押さえを行って強制的に支払いを実現させることができるようになります。

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調停離婚の流れ

調停離婚の流れ

  1. 家庭裁判所に申立書を提出する
  2. 家庭裁判所から呼出状が届く
  3. 調停期日に裁判所に行き、話し合いを行う
  4. 調停期日を繰り返す
  5. 成立または不成立となって調停が終了
  6. 離婚届を提出する

離婚調停を行うためには、夫婦の一方が家庭裁判所で申し立ての手続きをする必要があります。

まず、夫婦関係調整調停(離婚)申立書をはじめ、連絡先等の届出書、事情説明書、戸籍謄本など様々な書類を揃えます。

離婚調停の必要書類については、『【記入例あり】離婚調停の申し立て方法|申立書の書き方・必要書類』で確認できます。

離婚調停を申し立てると、裁判所から当事者双方に対し、第1回の調停期日を知らせる呼出状が届きます。

調停期日には、夫婦が家庭裁判所に出向いて、二人一組の調停委員と交互に面談を行います。1回の面談は30分程度で、これを2往復ほど繰り返します。

夫婦が合意に至るまでの間、この調停期日を1か月に1回ほどの頻度で繰り返します。

夫婦が合意に至れば、離婚調停は成立となり、同日に離婚が成立します。

当事者が調停に出席しなかったり、合意の見込みがないと判断されたら、調停は不成立となって終了します。この場合、夫婦は再度協議をするか、離婚裁判に移行するかを選びます。

離婚調停の成立後は、10日以内に離婚届を提出する必要があります。

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まとめ|協議と調停のメリット・デメリットを比較!

協議離婚のメリット・デメリット

協議離婚のメリット

  • 費用がかからない
  • 短期間で離婚できる
  • 手続きが簡単
  • 場所や時間を選ばない

協議離婚のデメリット

  • 合意できなければ長期化の可能性も
  • 強制執行認諾文言付き公正証書を作らなければ強制執行ができない

協議離婚は、手軽で費用もかからず、短期間で離婚できるというメリットがあり、多くの夫婦に選ばれています。

一方で、協議離婚では基本的に第三者の介入を受けずに交渉を進めるため、話し合いがうまくいかないとなかなか離婚できないという事態に陥る可能性もあります。

そのため、離婚の話し合いがこじれそうな場合は、弁護士に交渉を依頼したり、離婚調停を申し立てたりするとよいでしょう。

調停離婚のメリット・デメリット

調停離婚のメリット

  • 顔を合わせずに離婚の話し合いができる
  • 第三者の仲裁を受けられる
  • 強制執行ができる

調停離婚のデメリット

  • ある程度の期間が必要
  • 手続きが複雑
  • 平日の日中に裁判所に行く必要がある

調停離婚は、相手と会わずに離婚できる点や、第三者の仲裁を受けて冷静に話し合える点が大きなメリットです。

一方で、複雑な手続きが必要なほか、調停成立までに数か月はかかるため、すぐに離婚したい方にはあまり向きません。

協議離婚か調停離婚か迷ったら弁護士に相談!

協議離婚を選ぶべきか調停離婚を選ぶべきか、どちらの方が有利な結果になるかは個々の事情によって異なります。

どちらを選べばいいか迷ったら、まずは弁護士に相談し、見通しを聞いてみましょう。

弁護士は、依頼者の代理人となって相手方との離婚協議を行えるほか、離婚調停でどのように話すかのアドバイスなど、全面的なサポートが可能です。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了