離婚後の養育費はいつまで?どう終わる?再婚や大学進学の影響も解説
- 離婚したら養育費は何歳までもらえる?
- 大学卒業まで養育費を払ってもらうことはできる?
- 養育費の支払い期間はどうやって決める?
離婚後に子どもを育てていく親にとって、子どもが何歳になるまで養育費を受け取れるのかは気になるところです。
養育費の終期は、一般的には20歳とされていますが、絶対の基準はなく、父母の話し合いによって、養育費をいつまで支払うかを決めることができます。
養育費の支払い期間に影響する要素として、子どもの進学や病気、親の再婚などといった事情が挙げられます。
この記事では、養育費をいつまでもらえるのか、どのような場合に養育費の支払う期間が変わるのか、養育費の支払いはどのように終わるのかについて解説します。
養育費はいつまでもらえる?
養育費がもらえるのは何歳まで?
一般的に、養育費は子どもが20歳になるまでが目安とされています。ただし、両親や子どもの事情に合わせて個別に判断されます。
養育費の支払いの対象となるのは未成熟子であるとされています。
未成熟子とは、経済的に自立することを期待することができない子どものことを指す言葉で、未成年とは異なる概念です。
したがって、20歳を超えていたとしても、状況によって養育費の支払いの対象になることは十分にありえます。反対に、20歳に達する前に養育費の支払いが終了する場合もあります。
20歳以上でも養育費を受け取れるケース
- 子どもが大学や専門学校に進学した
- 子どもに病気や障害があって働けない
上記のようなケースでは、子どもが20歳を超えても養育費を受け取れる可能性があります。
通常、学校を卒業するまでは経済的な自立は期待できません。そのため、在学中の子どもは未成熟子として扱う場合があります。
また、程度によりますが、子どもが病気や障害のために働けないケースでも、20歳を超えて養育費を受け取れる場合があります。
これらについては、後ほどさらに詳しく解説します。
20歳未満で養育費が終了するケース
- 子どもが就職して経済的に自立した
- 子どもと再婚相手が養子縁組した
- 元配偶者が再婚相手の連れ子と養子縁組した
こういったケースでは、子どもが20歳を迎える前に養育費の支払いが終了したり、養育費が減額になる可能性があります。
子どもが20歳未満でも、就職して経済的に自立すれば養育費は必要なくなります。
また、養育費を支払う側・受け取る側の再婚が、養育費の終期に影響することがあります。
再婚と養育費の関係については、後ほど詳しく解説します。
養育費はいつから発生する?
養育費を受け取れる子どもの年齢に下限はなく、離婚した時から養育費を請求できます。
また、離婚せず別居をしている間は、監護親(子どもと一緒に暮らす親)の生活費と合わせて婚姻費用という名目で養育費を受け取ることができます。
ただし、胎児のうちは養育費を受け取る権利がありません。したがって、妊娠中に離婚した場合、養育費を受け取れるのは子どもが生まれた後となります。
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養育費は何月まで?
20歳まで養育費を支払うといっても、「20歳になった月まで」なのか「20歳になった年の年度末まで」なのか、認識をすり合わせておく必要があります。
これについては、「子が満20歳に達する日の属する月まで」という取り決め方をする場合が多いです。つまり、20歳の誕生月で養育費はおしまいということです。
もっとも、年度末まで養育費を支払ってもらう取り決めも可能です。
例えば、子どもが大学や専門学校に進学した場合は、卒業する月まで養育費を支払ってもらった方が安心です。
この場合、「子が満20歳に達した後に初めて到来する3月まで」などといった文言を使います。
成人年齢引き下げによる養育費への影響は?
2022年4月1日に民法が改正され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
成人年齢が18歳になるということは、養育費も18歳までしかもらえなくなってしまうのでしょうか。
成人年齢の引き下げが養育費に与える影響について、法務省は以下のような見解を明らかにしています。
- 養育費は、子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われる
- 成人年齢が18歳に引き下げられたとしても、ただちに養育費の支払い期間が18歳までになるわけではない
- 両親の経済状況等の個別の事情を踏まえて個別に判断する
したがって、子どもが18歳に達しても、経済的に自立していない場合は養育費支払いの対象となる可能性が高いといえます。
なお、2022年4月よりも前に「子が成年に達するまで養育費を支払う」という取り決めをしていた場合、取り決め当時の成人年齢に従い20歳まで養育費を支払うとされています。
大学卒業まで養育費をもらえる?
大学卒業まで養育費を受け取ることは可能
養育費を受け取れなければ、子どもを大学に通わせられないという方も少なくないでしょう。
離婚時に子どもが大学等に進学している・進学が決まっている場合であれば、それを前提として、卒業する時まで養育費を支払う取り決めをすれば問題ありません。
一方、まだ大学に進学することが決まっていない場合、大学卒業まで養育費を支払うという取り決めができるのかが論点になります。
これについては、養育費を支払う方が大学進学を承諾していれば、大学を卒業するまで養育費を受け取ることができるという考え方が一般的です。
なお、父親が大学進学を承諾していなかった場合も絶対に受け取れないわけではなく、両親の学歴や資力などの事情を考慮して個別に判断されます。
たとえば、父親が明確に大学進学を承諾していなかった場合でも、両親が大卒であったり医師や経営者などで高収入の家庭は、自然と進学を想定していることが多いため、大学卒業まで養育費の支払いが認められやすい傾向があります。
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大学卒業まで払う場合の養育費の取り決め方
大学卒業まで養育費を払ってもらう場合、養育費の終期をどのような文言で取り決めるかが問題になります。
離婚の時点で既に大学に進学しているか、進学するのが確定的な状況であれば、大学卒業まで支払うと約束してもよいでしょう。
しかし、子どもがまだ小さく、大学に行くかすらも分からないという場合はどうすればよいでしょうか。
仮に大学卒業まで養育費を払うことで合意したとしても、以下のようなイレギュラーは十分に起こり得ます。
- 大学院に進学した
- 専門学校や短大に進学した
- 浪人・留年した
- 医学部や薬学部など6年制大学に進学した
- 進学せずに就職した
こういったイレギュラーに対しては、離婚時に以下のように取り決めをしておくことで、ある程度対応できます。
事情の変更があった場合には改めて協議する。
養育費の支払いの終期は、子が20歳に達する月とする。ただし、子が大学またはこれに準ずる高等教育機関に進学した場合には、卒業する日の属する月までとする。
障害児は何歳まで養育費をもらえる?
障害や病気を持つ子どもは、年齢が20歳に達していても、経済的・社会的な自立が難しいケースがあります。
そのため、障害や病気のある子どもは、20歳を超えていても養育費の支払い対象となるとする見方があります。
ただし、障害や病気があって通常どおりの就労が難しい子どもでも、必ず養育費を受け取れるわけではありません。
稼働力がまったくないのか、監護者の収入だけで生活費をまかなえないのかなどを判断要素として、20歳以降も養育費を支払うべきかを判断するのが一般的です。
再婚しても養育費をもらえる?
自分や相手が再婚しても、引き続き養育費を受け取れるのでしょうか。
この点、親が再婚したからといって、必ずしも養育費の支払いが終了するわけではありません。
ただし、再婚によって父または母の扶養関係に変更が生じたら、養育費の支払いが終了するか、減額される原因になり得ます。ここで重要になるのが、養子縁組です。
養育費をもらう側が再婚した場合
養育費を受け取る側(多くの場合母)が再婚し、再婚相手と自分の子どもとが養子縁組をした場合、元夫から受け取る養育費が減額になるか、養育費の支払いが終了する可能性があります。
養子縁組をすると、再婚相手にも子どもを扶養する義務が生まれます。そのため、元夫が養育費を支払う必要性は下がります。
なお、再婚しても養子縁組をしなかった場合は、元夫の養育費支払い義務はなくなりません。
養育費を支払う側が再婚した場合
養育費を支払う側(多くの場合父)が再婚した場合、以下の2つのケースでは、支払う養育費が減額になるか、養育費の支払いが終了する可能性があります。
- 再婚相手の連れ子と養子縁組した
- 再婚相手との間に子どもが生まれた
これらの場合、元夫には新たに扶養すべき子どもが増えます。そのため、元妻との間の子どもに養育費を支払う余裕が少なくなります。
再婚相手の連れ子と養子縁組していない場合は、引き続き養育費を支払う必要があります。
なお、養子縁組をした場合、子どもの相続権も発生します。
養子縁組をすると、子どもは、血縁関係のある親、養子縁組をした親の両方を相続することになります。この点については、くわしくは『離婚後も遺産相続できる?子供の相続権は?元妻は相続財産を貰える?』の記事をご覧ください。
養育費の終期は離婚協議書にどう書く?
離婚協議書・公正証書を作るメリット
養育費について取り決めたら、離婚協議書または公正証書を作成しておきましょう。
離婚協議書とは、離婚時に任意で作成することができる、私的な契約書のような文書です。離婚時の取り決めについて記載することができ、離婚後に言った言わないのトラブルが起きるのを防ぐことができます。
公正証書とは、離婚協議書の内容を公的な文書にしたもので、公証役場で公証人に依頼して作成してもらいます。
公正証書は非常に強い効力を持っています。
後から養育費の支払いが途絶えたときに、強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、調停や裁判を経ずに強制執行(給与や財産の差し押さえ)を行って、強制的に養育費の支払いを実現させることができます。
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養育費の終期を20歳とする場合の例文
第〇条(養育費)
甲は乙に対し、子の養育費として令和〇年〇月〇日から子が満20歳に達する月まで、1人につき1か月あたり金〇万円を支払う義務があることを認め、これを毎月〇日限り乙の指定する口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲が負担するものとする。
養育費の支払い期間を20歳の誕生月までとする、最もシンプルな取り決めの例文です。
養育費の終期を大学卒業時とする場合の例文
第〇条(養育費)
甲は乙に対し、子の養育費として令和〇年〇月〇日から子が22歳に達した後に初めて到来する3月まで、1人につき1か月あたり金〇万円を支払う義務があることを認め、これを毎月〇日限り乙の指定する口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲が負担するものとする。
こちらは、養育費の終期を、一般的な4年制大学を卒業する22歳の3月とする書き方です。
学校を卒業するまでは経済的に自立するのは難しいため、誕生月で養育費を終了するより、卒業する月まで受け取った方が安心です。
「大学卒業まで」などという文言にすることも可能ではありますが、これでは留年・浪人などによって混乱をきたす可能性があるため、具体的な年齢を指定した方がトラブルになりづらいでしょう。
大学に進学するか分からない場合の例文
第〇条(養育費)
甲は乙に対し、子の養育費として1人につき1か月あたり金〇万円を支払う義務があることを認め、これを毎月〇日限り乙の指定する口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲が負担するものとする。
2 養育費の支払いの終期は、子が20歳に達する月とする。ただし、子が大学またはこれに準ずる高等教育機関に進学した場合には、卒業する日の属する月までとする。
子どもが大学や専門学校に進学するかまだ分からない場合は、進学した場合にもしなかった場合にも対応できる取り決めにすることが可能です。
強制執行認諾文言の例文
公正証書で養育費を取り決める場合は、強制執行認諾文言を忘れてはいけません。強制執行認諾文言がない場合、強制執行を行えるというメリットが失われてしまいます。
第〇条(強制執行認諾)
甲は、第●条の債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
養育費の期間に関するQ&A
Q1.養育費の支払い期間は後から変更できますか?
離婚時に決定した養育費の期間は、後から変更することが可能です。
- 子どもが就職したので養育費の支払いを終了したい
- 自分と再婚相手との間に子どもが生まれたので養育費を減額したい
- 子どもが病気で入院することになったので養育費を増額してほしい
離婚後にこういった事情が生まれれば、養育費を変更することも十分あり得ます。
離婚後に養育費の期間や金額などを変更したい場合は、まず父母間で話し合いを行います。
養育費の減額・増額や、支払い期間の延長・短縮は、双方の利益が激しくぶつかり合う部分ですので、話し合いでの解決が難しい場合も多いです。
父母間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に養育費の調停・審判を申し立てることも可能です。
調停とは、家庭裁判所の調停委員会を介して話し合いを行う方法で、基本的には相手方と直接顔を合わせることなく交渉を進めることができます。
審判とは、調停で合意ができなかった時に、裁判官が一切の事情を考慮した上で、養育費の変更について判断する手続きです。
Q2.養育費の終了時に手続きは必要ですか?
養育費の支払い期間が満了した際、支払う側・受け取る側ともに必要な手続きはありません。
ただし、養育費の終期を決めていなかった場合、子どもが20歳になったからといって勝手に支払いを辞めるのはトラブルの原因となります。期間の定めがない場合は、あらかじめ養育費の支払いを終了したい旨を申し出て協議を行いましょう。
養育費の終了時には、養育費を受け取った側から支払った親に対して、お礼のメールや手紙を送ることもあるようですが、これも本人の意思に任せられています。
Q3. 養育費の支払い中に再婚したら相手に言わないといけませんか?
養育費を受け取る側が再婚すると、元配偶者から受け取る養育費が減額されたり免除されたりする場合があります。
これを避けるために、再婚したことを元配偶者に言わずに、養育費を受け取り続けることはできるのでしょうか。
これについて、事前に取り決めをしていない限りは再婚を相手に通知する義務はなく、再婚したことを隠して養育費を受け取り続けることは、違法ではないとされています。
ただし、再婚したことが相手に発覚した時にトラブルになってしまう可能性は十分あり、再婚を隠していた期間の養育費の返還を求めて調停や裁判を起こされるケースもあります。
現状、裁判所が返還を命じる可能性は低いですが、相手の心証が悪くなってしまうのは避けられないでしょう。
こういったトラブルを避けるため、離婚協議書や公正証書を作成する際に、「再婚したら相手に通知する」という条項を作っておくことも有効です。
まとめ
養育費は、子どもが20歳になるまで支払うというのが一般的です。
ただし、子どもが大学に進学する場合や、障害があって経済的に自立するのが難しい場合は、20歳に達したあとも養育費を受け取れる可能性があります。
こうした養育費の支払い条件の決定は、基本的に夫婦の話し合いに委ねられています。子どもの安定した生活や教育環境を守るためには、離婚時にしっかりと養育費の取り決めをしておくことが重要です。
- 離婚時に養育費について何を決めればいい?
- 養育費を確実に払ってもらうには?
- 離婚条件の話し合いが不安・・・
離婚時の養育費の取り決めについて、このような不安をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
弁護士は、離婚交渉や離婚調停を徹底的にサポートし、あなたとお子様の離婚後の生活を守ります。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了