子なし夫婦の離婚で後悔しないための進め方と円満に解決するポイント

更新日:
子なし夫婦

子なし夫婦の離婚は、親権や養育費、面会交流などを決める必要がないため、子どもがいる場合に比べて手続きがシンプルです。

厚生労働省の人口動態統計(令和6年)によると、未成年の子がいない夫婦の離婚は全体の48.7%を占めています。

この記事では、子なし夫婦が円満に離婚するための準備や手続きの進め方、後悔しないための判断のポイントを、弁護士監修のもとわかりやすく解説します。

子なし夫婦が離婚を選ぶ理由は?

未成年の子がいない夫婦の離婚は全体の約半数

厚生労働省の人口動態統計(令和6年)によると、親権を行う未成年の子がいない夫婦の離婚件数は90,468組で、全離婚件数の48.7%を占めています。

なお、この統計上の「子なし」には、子どもが全くいない夫婦だけでなく、子どもがすでに成人している夫婦も含まれる点には留意が必要です。

離婚全体のほぼ半数が親権の取り決めを伴わないものであり、子なし夫婦の離婚は決して少数ではなく、多くの夫婦が同じ状況で離婚の決断をしていることがわかります。

子なし夫婦の離婚理由と踏みとどまる理由

以下は、子どもを持たない夫婦が離婚を選ぶ理由の代表例です。

  • DV・モラハラ
  • セックスレス
  • 子どもがほしいのに協力してくれない・年齢が適さない
  • 好きではなくなった・異性として見られなくなった
  • 性格の不一致・価値観の違い
  • 不倫・好きな人ができた
  • 浪費癖

他方、子どもを持つ夫婦は、男女というよりも父母や家族という関係性になり、離婚したいと思う原因も変化すると考えられます。

反対に、子どものいない夫婦が離婚を踏みとどまる理由はこのようになっています。

  • 仮面夫婦でも問題ない・会話する必要がない
  • 別居・家庭内別居すればよい
  • 世間体が気になる
  • 離婚後の金銭面の不安
  • まだやり直せるかもしれない
  • 再婚できるかわからない

子どもがいる場合、夫婦仲が冷めきっていたとしても、強制的に会話をし、協力しなければいけません。

一方で、子どもがいない夫婦は、相手と関わらなくても生活していくことができます。結婚生活を続けていれば、世間体は守られますし、金銭面でも支えを得ることができるため、あえて離婚しなくてもいいと考える方もいるようです。

子なし夫婦が離婚を決意するタイミング

子なし夫婦の離婚が多いのは、どの年代なのでしょうか。

令和4年度 離婚に関する統計の概況から、離婚時の年齢ごとの「親権を行う子がいない離婚」の件数を見てみましょう。

令和4年度 離婚に関する統計の概況より「親権を行う子がいない離婚」の件数(妻)
令和4年度 離婚に関する統計の概況より「親権を行う子がいない離婚」の件数(夫)
令和4年度 離婚に関する統計の概況より

子どもが成人する50代以降の夫婦には、当然多くなるため、ここでは除きます。それより若い夫婦では、男女ともに30~34歳のときに、子どものいない夫婦の離婚件数が最も多くなっていることがわかります。

なお、子なし離婚の割合でいうと、男性は同じく30~34歳、女性は25~29歳が最も高くなっています。

20代後半から30代前半といえば、気力・体力が充実し、再婚も容易なタイミングですので、この年代に子なし離婚が多いのも頷けます。

子なし離婚に対する社会意識

子なし夫婦の離婚に対する社会の見方も、データから読み取れます。

内閣府の「離婚と子育てに関する世論調査(令和4年)」では、未成年の子がいない夫婦について、「双方が望むなら離婚した方がよい」が43.1%、「一方でも望むなら離婚した方がよい」が42.4%と、合計85.5%が前向きに捉えています。

これに対し、子どもがいる場合は肯定的な回答が59.3%にとどまり、「できるだけ避けるべき」とする意見も37.2%にのぼります。

子なし夫婦の離婚は、比較的理解を得やすい傾向があるといえます。

子なし離婚のメリット・デメリット|子あり離婚との違い

子なし夫婦の離婚のメリット

  • 子どもに配慮する必要がない
  • 親権や養育費、面会交流の話し合いが不要
  • 元配偶者や義両親と関係を継続する必要がない
  • 再婚しやすい

未成熟の子どもがいる夫婦が離婚する場合は、親権や養育費、面会交流など子どもに関する条件が折り合わず、もめごとになるケースが少なくありません。それに比べると、夫婦のあいだに子どもがいないのは、円満に離婚しやすい状態であるといえます。

また、連れ子がいないと比較的再婚がしやすいため、離婚のハードルは低いと考えられます。

関連記事

離婚と子どもの法律知識|子どもがいる離婚のチェックリスト

子なし夫婦の離婚のデメリット

  • 一緒に過ごす子どもがおらず孤独
  • 他者との関わりが希薄になる
  • 老後に頼れる人がいない

子なし夫婦の離婚には、一般的な離婚のデメリット以上の特筆すべきデメリットは多くはありません。

とはいえ、子どももおらず再婚もしないという方は、孤独感を感じたり、老後や困った時に頼れる先が少なくなってしまうというデメリットがあるといえます。

関連記事

離婚のメリットとデメリットは?女性のリスクを弁護士が解説

子なし離婚のその後は?

離婚後はどこに住む?

離婚後の住居には、主に以下のような選択肢があります。子どもがいなければ、離婚後の住居は比較的柔軟に決められます。

  • 実家に戻る
  • 婚姻中の家に住み続ける
  • 新しく賃貸を借りる
  • 新しく家やマンションを買う

実家に帰れば、自分の親と時間を過ごすことができますし、金銭的にも負担が軽くなります。

婚姻中の家に住み続けることができれば、引っ越し費用がかからず、環境の変化も少ないというメリットがあります。ただし、家にどちらが住み続けるのか、もしくは手放すのかは、離婚時に争いになることがよくあるため、必ずしも希望通りになるとは限りません。

また、新たに家を買ったり、賃貸物件を借りたりすれば、心機一転新しい環境で人生を再スタートすることができます。

元配偶者のいる場所から離れて暮らすことを最優先に住居を選ぶ方もいます。ご自身の経済状況やライフスタイルに合わせて住居を選ぶのがよいでしょう。

離婚後も苗字を使い続ける?

離婚後、多くの女性は夫の苗字から旧姓に戻りますが、婚氏続称(こんしぞくしょう)といって、役所で手続きを行えば夫の苗字を使い続けることができます

子どもを連れて離婚した母親は、子どもの苗字が変わってしまうことを避けるために婚氏続称を選ぶことがあります。

また、子どもがいない方でも、苗字が変わることによる仕事への影響や名義変更の手間を抑えるために、夫の苗字を使い続ける方もいます。

関連記事

離婚後に苗字を変えない理由は?婚氏続称のメリット・デメリット

離婚後は再婚する?

厚生労働省の人口動態統計(令和6年)によると、夫婦のどちらかが再婚であるケースは24.2%(117,518組)で、およそ4組に1組にあたります。令和2年の26.4%をピークにやや減少しているものの、再婚という選択は広く定着しています。

内訳を見ると、夫が再婚の割合は17.9%、妻が再婚の割合は15.6%です。

これを見ると、再婚のチャンスはたくさんあるように思えます。また、子どもがいない方は、さらに再婚のハードルは低いといえます。

再婚すれば、金銭的に余裕ができたり、老後もパートナーと支え合って生きていくことができます。

他方、再婚しない方は、自分の時間やお金を自由に使うことができます。友人と時間を過ごしたり、趣味や仕事に没頭するのもよいでしょう。

どちらも素晴らしい人生の選択肢です。自分の将来を自分だけのために決められるのは、子なし離婚のメリットです。

離婚後の生命保険はどうする?

子なし離婚の場合、生命保険を見直した方がよい場合があります。

離婚によって、死亡後に養わなければならない家族が減るからです。その場合は、解約するか保障を少なくすれば、保険料を節約することができます。

とはいえ、自分の親へ保険金が渡るようにしたり、自分の葬儀費用に充てるために、生命保険をそのまま継続する方もいます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

保険金の受取人を配偶者にしている方は多いかと思いますが、離婚時に親や再婚相手などに変更するのを忘れないでください。

関連記事

離婚したら保険はどうなる?生命保険・健康保険はそのまま?

子なし離婚で後悔している?

  • 仕事を続けていれば金銭的に苦労しなかった
  • 相手への愛情が残っていた
  • やっぱり子どもがほしかった

子どもを持たずに離婚した方の中には、このようなことで後悔している方もいます。

子なしの離婚で後悔しないためには、離婚を決断する前に相手と十分話し合い、仕事やお金、生活面などについて、しっかりと準備しておきましょう。そして、周囲の目を気にせず、自分にとっての幸せを追求することが大切です。

子なしで円満離婚するためのポイント

子なし夫婦の離婚は、親権や養育費をめぐる争いが起こりにくく、比較的円満に進めやすい傾向があります。

ただし、財産分与や慰謝料を曖昧なままにすると、後からトラブルに発展するおそれがあります。

感情的な対立を抑えつつ、法的なルールを正しく理解したうえで話し合いを進めることが、円満な解決につながります。

離婚条件を事前に整理する

話し合いを始める前に、次のポイントを整理しておくと協議がスムーズに進みます。

  • 夫婦の共有財産の洗い出し(預貯金・不動産・自動車・保険の解約返戻金など)
  • 不倫やDV、モラハラなど有責行為がある場合の証拠の確保
  • 離婚後の住まいや収入の見通し
  • 婚氏続称の希望の確認

離婚協議書は公正証書で作成しておくのが望ましい方法です。公正証書にしておけば、相手が取り決めを守らない場合でも、裁判を経ずに強制執行の手続きを進められます。

財産分与と年金分割の確認

子なし離婚においても、婚姻中に夫婦で築いた共有財産は財産分与の対象となります(民法第768条)。共働き夫婦であっても、財産分与の割合は原則として2分の1ずつです。

2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与を請求できる期間は離婚後5年以内に延長されました。2026年3月31日以前に離婚した場合は、従来どおり離婚後2年以内となります。

また、婚姻期間中の厚生年金記録を分割する年金分割についても、2026年4月1日以降の離婚では請求期限が離婚等をした日の翌日から5年以内に延長されています。2026年3月31日以前に離婚した場合は、従来どおり2年以内となります。

慰謝料請求のための証拠収集

不倫やDV、モラハラなど相手に責任のある行為がある場合は、民法第709条に基づいて慰謝料を請求できます。

ただし、慰謝料請求には有責行為を裏付ける証拠が欠かせません。離婚を切り出す前の段階から、相手に気づかれないよう慎重に証拠を集めておくことが重要です。

子なし夫婦の離婚の進め方

子どもがいてもいなくても、基本的な離婚手続きの流れは変わりません。

離婚の方法と手続きの流れ

関連記事

離婚手続きの進め方は?離婚の流れを解説

離婚を切り出す前の準備

相手に離婚を切り出す前に、いくつか準備が必要です。

財産分与や慰謝料請求のための証拠集めや、離婚後の生活に向けた準備は、この段階で行うことをおすすめします。

子なし夫婦の場合、スムーズに離婚が成立する場合が多いため、証拠集めなどの準備を飛ばしてしまうおそれがあります。しかし、それでは適切な慰謝料や財産分与が受け取れず、不利益を被る可能性があります。

また、相手が離婚に応じない可能性がある場合は、裁判を視野に入れて離婚の準備をする必要があります。

裁判で離婚が認められるためには、「法定離婚事由」といわれる特定の離婚原因がなければいけません。法定離婚事由の存在を証明するための証拠を揃えておきましょう。

関連記事

離婚や慰謝料請求のために必要な証拠|慰謝料の相場も解説

離婚手続きの流れ

協議離婚

準備ができたら離婚を切り出し、話し合いを始めます。協議離婚は、夫婦が話し合って離婚することや離婚条件を決める離婚方法です。

話し合いの方法は自由です。対面でもいいですし、電話やメール、手紙を使うこともできます。また、弁護士を入れて話し合うこともよくあります。

話し合いで合意ができたら、離婚届を役所に提出すれば協議離婚の手続きは完了です。

調停離婚

夫婦間の話し合いで決着がつかなかった場合は、離婚調停を申し立てて、家庭裁判所の調停委員会の仲裁を受けながら話し合うことができます。

子どものいる夫婦の場合は、親権や面会交流、養育費をめぐって調停を起こすことがよくありますが、子なし夫婦が調停で話し合うのは、主に「離婚するかどうか」「財産分与・年金分割をどうするか」「慰謝料をどうするか」の3点です。

離婚調停も協議離婚と同じく、夫婦間の合意を目指すための手続きです。調停を繰り返す中で夫婦が合意できたら、調停は終了し、離婚が成立します。

裁判離婚

調停を行っても合意に至らなかった場合は、もう一度当事者間で話し合うか、家庭裁判所で離婚裁判を起こします。

裁判では、双方の意見が一致しなくても、最終的に判決によって結論が下されます。とはいえ、裁判を行う途中で当事者間の和解認諾によって離婚が成立することも少なくありません。

離婚後の手続き

どの方法で離婚した場合も、離婚届の提出は必須です。

子なし夫婦が離婚後にする必要のある手続きは、大きく分けて以下のようなものです。

  • 住民票や運転免許証など、身分証明書に関する手続き
  • 健康保険や年金、各種手当など、公的な手続き
  • 財産分与や年金分割に関する手続き
  • 各種サービスの名義変更の手続き

これらの手続きには、期限があるものや、手続きが遅れると損してしまうものもあるため、忘れずに済ませましょう。

関連記事

離婚後の手続きと優先順位│離婚届と同時にできることを弁護士が解説

子なし離婚に関するよくある質問

Q.子なしで離婚するなら早いほうがいいですか?

確かに、すぐに離婚すれば気持ちが楽になりますし、新しい相手を見つけて再出発するのも簡単です。また、家やマンション、自動車などの大きな買い物をする前の離婚であれば、財産分与でもめる可能性も低いといえます。

しかし、少しだけ辛抱して話し合いをしてみれば、うまくやり直せる可能性もあるでしょう。話し合うこともしたくないと感じるかもしれませんが、離婚をするにも話し合いは必要です。

離婚には少なからずデメリットがあります。あまりに離婚を急ぐのは考え物です。

Q.子なし夫婦の離婚で慰謝料を請求できますか?

相手方による不倫やDVなどの不法行為(有責行為)が原因で離婚することになった場合は、子どもの有無に関わらず離婚慰謝料を請求することができます。離婚慰謝料の相場はおよそ100万~300万円程度と言われており、様々な事情を考慮して金額が決定されます。

離婚慰謝料の額に影響する要素(例)

  • 精神的苦痛の程度
  • 有責行為の内容
  • 有責行為の態様、回数、期間
  • 婚姻の期間
  • 夫婦に子どもがいるか
  • 子どもの人数・年齢

子どもがいるにも関わらず不倫やDVなどを行うのはより悪質な行為であるため、夫婦の間に子どもがいるケースの方が、慰謝料の金額が高額になりやすいといえます。さらに、子どもの人数が多く、年齢が低いほど、慰謝料の金額が高額になりやすいとされています。

したがって、子なし夫婦の離婚で支払われる慰謝料は、子あり夫婦と比べると低額になる可能性があります。

関連記事

離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケース・種類・条件を弁護士が解説

Q.子なしで共働きの場合、財産分与はどうなりますか?

共働きで双方の収入に差があったとしても、財産分与の割合が原則2分の1ずつであるのは変わりません。

しかし、「自分の方が稼いでいるのに財産を渡さなければならないのか?」と不公平に感じる方もおり、軋轢が生まれやすいといえます。また、夫婦の財布を完全に分けており、相手がどんな財産を持っているか分からないという問題もあります。

財産分与の交渉が難航する場合は、弁護士にご相談されることをおすすめします。

関連記事

共働きで離婚するとき、財産分与の対象や年金分割はどうなる?

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了