離婚したら保険はどうなる?生命保険・健康保険はそのまま?

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離婚したら保険は?

離婚するときは生命保険と健康保険の両方で手続きや見直しが必要です。

生命保険は契約者・受取人の変更手続きを行わないと、離婚後に元配偶者へ保険金が支払われるリスクがあります。健康保険は配偶者の扶養から外れる場合、離婚から14日以内に国民健康保険への加入手続きが必須です。

この記事では、離婚時に必要な保険の手続きと、損をしないための見直しポイントを弁護士が解説します。

手続きを怠ると保険金を受け取れなかったり、医療費を全額負担することになる可能性もあります。離婚前に必ず確認しておきましょう。

離婚したら生命保険はどうなる?

離婚する前に必ず生命保険の契約内容を確認!

離婚時に生命保険の契約内容を見直しておかないと、将来損をしてしまう可能性があります。契約者・被保険者・保険金受取人が誰であるか、保険料、保障の内容を必ず確認しておきましょう。

確認した結果、何らかの手続きが必要と分かった場合は、離婚前に手続きを済ませておくことを強くおすすめします。

生命保険の変更手続きは契約者本人でなければできませんが、配偶者が契約者であった場合、離婚後に連絡が取れなくなってしまうおそれがあるためです。

離婚しても生命保険はそのまま?解約してもいい?

離婚して独身になるからといって、むやみに生命保険を解約するのはおすすめできません。

後で再加入したくなった時、健康状態によっては加入できなかったり、保険料が高くなってしまう可能性があるため、子どもがいなくても解約は慎重に考えなければなりません。

また、仮に自分が子どもを引き取らなかった場合も、養育費を支払う義務は残ります。しかし、自分が働けなくなったら養育費を支払うことができません。そういった時のために、保険金の受取人を子どもとして生命保険に加入し続けるというような取り決めを離婚時に行うことがあります。

解約返戻金を財産分与することも

積立型・貯蓄型の保険に入っている場合、解約返戻金が財産分与の対象になります

離婚時に生命保険を解約した場合は実際の解約返戻金を、解約しない場合は、仮にその時点で解約した場合に受け取れる返戻金を、財産分与の額に含めることができます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

なお、掛け捨て型の保険は返戻金がないため、財産分与の対象にはなりません。

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離婚時には契約内容を見直そう!

離婚時に、契約内容や保障内容を見直した方がよいケースもあります。

生命保険の契約者を変更しよう

生命保険には、契約者・被保険者・保険金受取人という3つの立場があり、契約者と被保険者が異なる場合があります。

例えば、契約者が夫で、妻が被保険者といった形です。

この場合、離婚の際に契約者を夫から妻に変更しておく必要があります。

契約者が夫のままになっていると、離婚後に夫が勝手に保険を解約し、解約返戻金を持ち逃げしてしまう可能性があります。

契約者変更の手続きと必要書類

生命保険の契約者を変更するには、保険会社に連絡して所定の手続きを行います。一般的に求められる書類は次のとおりです。

  • 契約者変更請求書(申請書)
  • 本人確認書類
  • 保険証券
  • 被保険者の同意書

必要書類や手続きの詳細は保険会社によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

生命保険の受取人を変更しよう

多くの夫婦は、互いを生命保険の受取人にしていますが、離婚後も受取人を元配偶者のままにしていると、万が一の際の保険金はそのまま元配偶者に支払われます。その結果、自分の子どもや再婚相手が保険金を受け取れない可能性があります。

さらに、元配偶者が再婚していれば新しい家族に渡ることがあり、元配偶者がすでに亡くなっている場合は、その相続人が受取人となってしまいます。加えて、離婚後も受取人変更をせずに保険金が支払われると、税務上は贈与とみなされ、元配偶者に贈与税が課されるおそれもあります。

こうした不本意な結果を防ぐため、離婚時には必ず保険金の受取人を見直し、子どもや親、再婚相手など適切な人に変更しておきましょう。

生命保険の保障を厚くするケース

生命保険の契約者や受取人だけでなく、保障内容も見直しましょう。

ひとり親家庭になる場合は、自分が働けなくなってしまったら子どもの生活が立ち行かなくなるおそれがあるため、保障を厚くしておくと安心です。

生命保険の保障内容を厚くするには、主に3つの方法があります。

①追加契約

現在契約している生命保険に加えて、新たに保険を契約する方法です。

②特約の中途付加

現在契約している生命保険に、新たに特約を付ける方法です。死亡保障を増額するための定期保険特約や、病気やケガに備えるための疾病入院特約などが代表例です。

③転換

現在契約している生命保険を解約し、より手厚い保障のある生命保険に入り直す方法です。

現在契約している保険の積立部分や積立配当金を「転換(下取り)価格」として、新しい契約の保険料に充てることができるため、保険料の負担を抑えられる場合があります。

生命保険の保障を減らしてもいいケース

一方、離婚によって養うべき家族が減る場合は、保障内容を減らすことで保険料の負担を少なくすることができます。

保障内容を減らすには、以下の2つの方法があります。

①一部解約(減額)

現在契約している保険の一部分のみを解約する方法です。保障内容は少なくなりますが、保険料を安く抑えることができます。解約した部分について、解約返戻金が支払われる場合もあります。

②特約の解約

現在契約している保険の特約のみを解約する方法です。特約部分の保障は受けられなくなりますが、保険料を安く抑えることができます。

離婚したら健康保険はどうなる?

健康保険の制度をおさらい

日本国民は、全員が何かしらの健康保険に加入しています。大きく分けると、会社員・公務員やその家族が入る社会保険(被用者保険)か、自営業や無職の方などが入る国民健康保険のいずれかです。

なお、75歳以上の方は、全員が後期高齢者医療制度に入っています。

健康保険の制度

パート・アルバイトの方も、一定の要件を満たせば社会保険に入ることができます。要件を満たさない方や勤務先に社会保険がない方は、国民健康保険に加入します。

広義の社会保険は、健康保険や雇用保険、介護保険、厚生年金保険などを含みます。ただし、この記事では社会保険のうち健康保険の部分(被用者保険)のみを扱います。

自分の勤務先で社会保険に入っている方は、配偶者や子どもを自分の扶養に入れることができます。扶養されている配偶者や子どもは、被扶養者という立場で勤務先の社会保険に入っていますが、離婚すると被扶養者としての資格を失うため、健康保険の加入手続きが必要です

一方、国民健康保険には扶養という概念がありません。一家の大黒柱が国民健康保険に入っている場合も、配偶者や子どもは、扶養に入るのではなく単独で国民健康保険に入っています。

そのため、離婚したことによって国民健康保険の資格を失うことはありません

離婚時に健康保険の手続きが必要なのはこんな人

離婚に伴う健康保険の手続きは、これまでの加入状況によって「保険自体を変える(切り替える)」か「登録情報を変える(変更する)」かの2つに分かれます。

健康保険の切り替えが必要

  • 配偶者の勤務先の社会保険に加入していた人
  • 配偶者を世帯主とする国民健康保険に加入していた人

専業主婦(主夫)などで配偶者の社会保険の被扶養者であった場合や、配偶者を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合は、離婚によりその資格を失います。健康保険に未加入の期間が生じると、医療費を全額自己負担することになるため、できるだけ早く加入手続きを行いましょう

健康保険の情報変更が必要

  • 自分自身の勤務先で社会保険に加入している人
  • 自分自身が世帯主として国民健康保険に加入している人

ご自身の勤務先で保険に入っている場合などは、保険自体を変える必要はありません。ただし、状況に応じて登録情報の更新や扶養に関する手続きが必要です。

離婚時の健康保険の手続き

離婚に伴う健康保険の手続きは、加入している保険の種類によって手続き先が異なります。

国民健康保険の手続きは市区町村役場で行うため、離婚届や転出・転入届と同時に済ませることができますが、社会保険の手続きは勤務先を通じて行います。

なお、従来の紙やプラスチック製の健康保険証は廃止されており、現在は医療機関での資格確認にマイナンバーカード(マイナ保険証)または資格確認書を使用します。

マイナンバーカードの氏名・住所に変更がある場合は、離婚の14日以内に市区町村での券面記載内容の変更手続きをおこなってください。

①離婚前に国民健康保険に加入していた場合

国民健康保険の世帯主が配偶者の場合、離婚後も国保を続けるのであれば、世帯主の変更手続きが必要です。国保の保険料は世帯主に請求されるため、世帯主を元配偶者のままにしていると、元配偶者に請求が続き、トラブルの原因になります。

国民健康保険をやめて社会保険に加入する場合は、国保の脱退手続きを忘れると保険料が二重に請求されることがあるため注意してください。

離婚を機に別の市区町村へ引っ越す場合は、転出元で資格喪失手続きを行い、転入先で改めて加入手続きを行う必要があります。国民健康保険は自治体ごとに管理されているためです。

これらの国民健康保険に関する加入・脱退・世帯変更の手続きは、原則として離婚後14日以内に市区町村役場の窓口で行うこととされています。

②離婚前に自分の勤務先の社会保険に加入していた場合

離婚により氏名や住所が変わった場合、マイナンバーと基礎年金番号が紐付け(連携)されていれば、住民票の異動情報が自動で反映されるため、届出は原則として不要とされています。

マイナンバーとの連携がされていない場合は、「被保険者氏名変更(訂正)届」や「住所変更届」を勤務先に提出する必要があります。

配偶者を扶養に入れていた場合は、離婚により被扶養者の要件を満たさなくなるため、扶養から外す手続きが必要です。「健康保険被扶養者(異動)届」を離婚後5日以内に勤務先へ提出しましょう。

③離婚前に配偶者の勤務先の社会保険に加入していた場合

配偶者の健康保険の被扶養者だった場合、離婚によりその資格は失われ、離婚後は同じ保険を使い続けることはできません。そのため、就職して勤務先の健康保険に加入するか、国民健康保険に加入する手続きが必要になります。

いずれの場合も、「健康保険資格喪失証明書」が必要となるため、配偶者の勤務先で発行してもらいましょう。

就職する場合

離婚後に正社員・アルバイト・パートとして働く場合は、新しい勤務先を通じて健康保険の加入手続きを行います。社会保険に加入できれば、子どもを自分の扶養に入れることも可能です。

ただし、アルバイトやパートの場合は、勤務時間や契約期間などの条件を満たさなければ加入できないことがあり、勤務先が社会保険に対応していない場合もあります。

就職しない・社会保険に加入できない場合

就職しない場合や社会保険に加入できない場合、自営業・フリーランスとして働く場合は、市区町村役場で国民健康保険の加入手続きを行います。子どもがいる場合は、あわせて加入手続きが必要です。

国民健康保険の加入手続きは、原則として離婚後14日以内に行いましょう。

子どもを元配偶者の扶養に入れ続けることもできる

子どもを連れて離婚する場合、子どもの健康保険には以下の選択肢があります。

  1. 自分の社会保険(勤務先の健康保険)の扶養に入れる
  2. 自分と同じく国民健康保険に入れる
  3. 元配偶者の社会保険の扶養に入れたままにする

離婚後は、子どもを養育する親(多くの場合は母親)と同じ健康保険に子どもを入れるのが一般的です。ただし、状況によっては、子どもを元配偶者(多くの場合は父親)の社会保険の扶養に入れたままにできることもあります。

この場合、養育する親には子どもの保険料の負担がなく、元配偶者も扶養控除を受けられるというメリットがあります。

その反面、扶養を継続するには、元配偶者が養育費を継続して支払うなど、実際に子どもを扶養している状況が必要です。また、健康保険の手続きの際に、元配偶者と連絡を取る必要がある点を負担に感じる人もいます。

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国民健康保険の加入手続きが14日を過ぎたらどうなる?

健康保険の資格を失ったあとは、14日以内に国民健康保険の加入手続きを行う必要があります。

14日以内に加入手続きをすれば、資格を喪失した日まで遡って医療費の給付を受けることができます。

しかし、14日を過ぎてしまうと、手続きが完了した日以降しか医療費の給付を受けられない可能性があります。つまり、それまでの間は医療費の全額を自費で負担することになってしまいます。

国民健康保険の加入手続き期限

一方で、保険料は本来加入すべきだった時まで最長2年遡って請求されるため、医療費の給付を受けられなかった期間の分も保険料を納める必要があります。

健康保険の切り替え中に病院を受診する必要が出たら?

健康保険の切り替え手続き中でも、マイナンバーカードがあればマイナ保険証として医療機関を受診できます。ただし、手続き直後はシステムへの反映が完了しておらず、すぐに利用できない場合もあります。

マイナンバーカードがない場合は、従来の健康保険証に代わる「資格確認書」を利用しますが、加入手続きから手元に届くまで通常1〜2週間程度かかります。

その間に受診が必要な場合は、いったん医療費を全額(10割)自己負担し、後日、加入先の保険者に請求することで、自己負担分を除いた金額の払い戻しを受けることができます。

離婚と保険に関するよくある質問

離婚後も元配偶者を生命保険の受取人のままにしていて大丈夫?

離婚後も受取人を元配偶者のままにしていると、万が一の際、保険金はそのまま元配偶者に支払われます。その結果、子どもや再婚相手は保険金を受け取れません。さらに、元配偶者が再婚している場合には、その配偶者や子どもにまで保険金が渡る可能性があります。

また、税務上は贈与とみなされ、元配偶者に贈与税が課されるリスクもあります。こうしたトラブルを防ぐため、離婚時には必ず保険金の受取人を見直しましょう。

離婚したら生命保険は解約すべき?

離婚したからといって、必ずしも生命保険を解約する必要はありません。安易に解約すると、将来あらためて加入しようとした際に、健康状態によっては加入できなかったり、保険料が高くなったりすることがあります。

特に子どもがいる場合は、万が一働けなくなったときの生活保障として、保険を継続しておくと安心です。

ただし、離婚後は受取人や契約者の変更が欠かせません。解約を考える前に、まずは保障内容の見直しを検討しましょう。

子どもの健康保険は離婚後どうなる?

離婚後は、原則として親権者である親と同じ健康保険に子どもを加入させます。

ただし、元配偶者が養育費を継続的に支払っている場合には、子どもを元配偶者の社会保険の扶養に入れたままにできることもあります。この場合、親権者の保険料負担はありませんが、元配偶者が転職や退職をすると、子どもも保険資格を失うリスクがあります。

後のトラブルを防ぐため、離婚協議の段階で、子どもをどちらの健康保険に入れるかを決めておくことが大切です。

離婚後に健康保険の資格喪失証明書がもらえないときは?

元配偶者の勤務先に連絡し、離婚によって被扶養者の資格を失ったことを伝えて、証明書の発行を依頼しましょう。それでも難しい場合は、加入予定の健康保険の窓口に相談します。

国民健康保険に加入する場合は、市区町村役場で「離婚届受理証明書」や「離婚の記載がある戸籍謄本」を提出すれば、資格喪失証明書の代わりとして認められることがあります。

新しい勤務先の社会保険に加入する場合も、人事担当者に事情を説明すれば、離婚を証明する書類で手続きを進められるケースが多いです。ただし、対応は自治体や保険者によって異なるため、早めに確認しておくことが大切です。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了