配偶者から不動産を相続したときの基礎知識

更新日:
不動産を相続

配偶者が亡くなって不動産を相続する際、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、相続税を減らすためにさまざまな制度を活用できます。ご自身の状況に合わせて、適切な対策を検討しましょう。

『配偶者による不動産の相続』に関する基本事項

相続税の基礎控除とは

相続税は、被相続人の財産を相続した人に課される税金です。相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。

【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

たとえば、法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。なお、遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、申告の義務があり、相続税額が発生する場合があります。

関連記事

相続税はいくらから生じる?|基礎控除額も解説

相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説

相続税の申告期限や申告書の提出方法

遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に、被相続人の納税地を所轄する税務署に申告します。

申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。

関連記事

相続税の申告はネットで可能!やり方やe-Taxが使えない人も解説

相続税申告書に記載が必要な項目

相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。不動産を相続する場合は、以下の項目などを記載する必要があります。

  • 不動産の種類
  • 不動産の所在地
  • 不動産の面積
  • 不動産の評価額

また、不動産を相続する際に適用する控除などがある場合は、適用を受ける旨の記載も必要です。

相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。

関連記事

相続税申告書の書き方!相続税の申告書を誰でも簡単に作成するコツ

相続税申告で失敗しないために!|評判の良い税理士の探し方

配偶者控除の適用で不動産の相続税を大幅に減らせる

相続税における配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、被相続人の配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分までは相続税額が0円となる制度です。

たとえば、配偶者の相続額が1億6,000万円以下の場合、配偶者に相続税はかかりません。

不動産などの価額が高い遺産を相続する場合、配偶者控除を活用することで、相続税の負担を大幅に軽減することができます。

関連記事

相続税の配偶者控除の要件・計算方法|注意点も解説

不動産の相続税評価額の計算方法

不動産を相続するにあたり、不動産の評価額を算定する必要があります。不動産のうち土地は路線価方式または倍率方式のいずれか、建物や家屋は倍率方式で算定します。

路線価方式

路線価方式は、国税庁により設定された、道路に面する宅地の1㎡あたりの価額をもとに、土地の価額を算定する方法です。

倍率方式

倍率方式は、不動産の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて土地の価額を算定する方法です。倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価額を算定する場合などに使われます。

関連記事

土地の相続税の仕組みは?計算方法、評価額、特例、控除などを解説

路線価から土地の相続税評価額を計算|補正のかけ方・路線価の調べ方

不動産を相続する場合は小規模宅地等の特例が検討できる

小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住していた宅地や事業用地を相続した場合に、土地の価額を減額できる特例です。たとえば、被相続人(配偶者)が居住していた宅地を相続した場合、330㎡(約100坪)までに限り、価額を80%減額できます。

小規模宅地等の特例の適用により、土地の相続税負担を大幅に軽減できます。土地を相続する場合は、小規模宅地等の特例を適用できるかどうかも確認しましょう。

関連記事

ケース別・小規模宅地等の特例の計算方法と計算例!適用要件や注意点も解説

家屋に住み続ける場合は配偶者居住権も要チェック

配偶者居住権とは被相続人の死亡後、被相続人の所有していた建物に、亡くなるまでまたは一定の期間、配偶者が住み続けることができる権利です。

配偶者居住権を設定することにより、配偶者は、被相続人が所有していた建物に住み続けながら、ほかの財産も相続しやすくなります。配偶者居住権は、配偶者が家屋に住み続ける場合に、有効な手段となるのです。

不動産を相続した場合は税務調査に注意

税務調査は、申告内容に誤りや不正の疑いがある場合に行われるものですが、不動産の相続で調査を受けることもあります。税務調査を受けやすい例として、以下が挙げられます。

  • 相続財産の評価額が高い
  • 相続人が多い
  • 被相続人の資産状況が不透明
  • 相続税の申告内容に疑わしい点がある

不動産を相続した場合には、税務調査を受ける可能性があることを念頭に置き、適切な対策を講じることが大切です。具体的には、以下の対策が挙げられます。

  • 相続税の申告は、相続税に詳しい税理士に依頼する
  • 相続財産の評価額を正確に算定する
  • 被相続人の資産状況を正確に把握する
  • 相続税の申告書提出時に必要な資料をもれなく添付する

事前に対策を講じて、税務調査のリスクを回避しましょう。

関連記事

相続税の税務調査とは?対象になる人の特徴やならない方法を解説

相続税の脱税は税務調査でばれる?|ペナルティや回避方法を解説

相続税の相続税の無料相談

『配偶者による不動産の相続』に関するよくある質問

被相続人が亡くなった後、不動産を相続するためには何をすればいいですか?

不動産の相続税申告は、以下の流れで進めます。

  • 1.相続人の確定と遺産分割協議

被相続人が遺言書を残している場合は、遺言書の内容に従います。遺言書がない場合は相続人を確定し、遺産分割協議で誰がどの財産を相続するのかを決めます。

  • 2.相続登記

被相続人から相続人に、不動産の名義変更手続きをします。相続登記をしないと、相続人が不動産を売却したり、担保にしたりすることができません。

  • 3.相続税の申告・納付

財産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納付が必要です。相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内が期限となっています。

配偶者居住権を設定するにはどうすればいいですか?

配偶者居住権の設定は、被相続人の遺言書または遺産分割協議により行います。また、必須ではありませんが、長期に配偶者居住権を設定する場合は、登記をすることで居住の権利を主張できるようになります。なお、登記手続きは法務局で行います。

配偶者居住権を設定するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 被相続人と法律上の結婚関係にある
  • 被相続人の死亡当時に配偶者が居住していた家屋である
  • 遺産分割や遺贈、死因贈与、家庭裁判所による審判のいずれかにより配偶者居住権を取得している

配偶者居住権を設定した場合、相続税はかかりますか?

建物の居住権に対する相続税がかかります。土地と建物を相続する場合と比べて、配偶者居住権を設定することにより、建物以外の遺産も受け取りやすくなります。

小規模宅地等の特例を適用しても、相続税はかかりますか?

相続税がかかる場合もあります。小規模宅地等の特例は、相続税の課税対象となる土地の価額を減額する特例ですが、土地の面積が広い場合や土地の評価額が高い場合などは、相続税が発生する可能性があります。

不動産を相続すると、税務調査を受けやすくなりますか?

数億円規模の不動産を相続した場合は、税務調査のリスクが高まるでしょう。一般的に、相続財産の中でも不動産は評価額が高く、税務調査の対象になりやすいと言えます。また、不動産の相続には小規模宅地等の特例といった控除を適用するケースも多く、申告内容に誤りがある場合にも、税務調査の対象となりやすいです。

相続税の相続税の無料相談

他にもおさえておきたい相続の基本

いざというときに備えて、相続対策や相続手続きについて理解しておくことは大切です。ほかの記事でも相続の基礎知識について詳しく解説しておりますので、ぜひお役立てください。

≫相続税を計算する

≫相続税の節税対策をする

≫相続手続きをする

≫相続税について税理士に相談する

≫不動産の相続税について知る

≫費目別の相続税について知る

≫贈与税について知る

≫相続放棄について知る

弁護士アイコン

監修者情報

アトムグループ 協力税理士

全国/電話相談可能

相続税の無料相談をする