配偶者と親で金・金地金を相続するときに知っておきたいこと
亡くなった夫との間に子供がいない場合は、妻と親で遺産を相続します。金や金地金の相続にあたっては、相続の流れや評価方法について理解しておく必要があります。相続に関する知識を身につけておくことで、スムーズな手続きや円満な相続につながるでしょう。
本記事では、配偶者と親で金や金地金を相続するときの基礎知識をわかりやすく解説します。
目次
『配偶者と親による金・金地金の相続』に関する基本事項
法定相続分による相続割合【配偶者と親で相続する場合】
相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるのが法定相続分です。
配偶者と親の相続割合は、配偶者が3分の2で親が3分の1です。なお、父母ともに健在の場合は6分の1ずつで分割します。
法定相続人 | 相続割合 |
---|---|
配偶者+父または母 | 配偶者:2/3 父または母:1/3 |
配偶者+父母 | 配偶者:2/3 父母:1人あたり1/6 |
被相続人が亡くなって1億5,000万円の相続が発生し、配偶者と父母が相続人となった場合、配偶者の法定相続分は1億円、父母の法定相続分は2,500万円ずつとなります。
ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。それぞれの相続割合によって相続税の総額が変わることがあるので、税負担も考慮した遺産分割を行う必要があります。
相続の課税対象となる金の種類
貴金属以外で相続税の課税対象となる金には、以下の種類があります。
金地金(インゴット)
貴金属を固めた塊を、金地金(インゴット)といいます。インゴットは金、銀、プラチナなどで作られることが多く、重量と純度によって価値が決まります。純度が99.99%以上のものは資産価値が高く、投資対象として人気があります。
金貨
金貨は資産保全や投資手段として、世界中で人気を集めています。たとえば、国際的に認められた法的通貨でもあるウィーン金貨やメイプルリーフ金貨は、純度99.99%の金で作られています。
純金積立
純金積立とは、一定の金額で金地金を積立購入する金融商品の一種です。少額から始めることができ、受け取りは現金や現物となります。
金を相続するときの手続きの流れ
金や金地金を相続する場合は、以下のような流れで手続きを行います。
1.遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを行います。遺言書がない場合は、遺産分割協議などを行って相続手続きを進めます。
2.相続人を確認する
相続人となるのは、被相続人の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹などです。このとき相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認する場合もあります。
3.相続財産を確認する
相続財産調査を行い、金地金や不動産、預貯金など、どのような財産があるのか、評価額はいくらなのかを確認します。
4.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、相続財産をどのように分割するかを決めます。遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。
5.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。また、相続税額が発生した場合は納税も行います。
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金の相続税評価額を計算する方法
金地金の相続税評価額は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の販売業者の買取価格などに、重量をかけたもので算定します。
評価額 =被相続人が亡くなった日(相続開始日)の買取価格×重量
たとえば、1kgの金地金(インゴット)を2本保有していて買取価格が1gあたり1万円の場合、相続税評価額は2,000万円となります。
金や金地金の評価を鑑定士に依頼することで、地金の種類、品位、重量などから適切に算定してもらえます。また、鑑定士が作成した鑑定書を相続税申告書に添付できるため、相続手続きがスムーズに進められます。
金や金地金の相続税評価は、相続税額に大きく影響するため、正確に評価することが重要です。
相続税における基礎控除の概要と計算方法
相続税は遺産のすべてに対して課税されるわけではなく、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生します。また、場合によっては相続税額が発生することもあります。
相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
2人(配偶者+父または母) | 4,200万円 |
3人(配偶者+父母) | 4,800万円 |
たとえば、法定相続人が配偶者と母の場合は4,200万円、配偶者と父母の場合は4,800万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。
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配偶者控除で配偶者分の相続税負担を軽減
相続人に配偶者が含まれる場合は、配偶者控除(配偶者の税額軽減)が適用できます。
相続税における配偶者控除とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 被相続人と法律上の結婚関係にある
- 遺産分割が完了している
- 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出する
たとえば、被相続人の配偶者と父母で1億5,000万円の遺産を相続する場合、配偶者の法定相続分は1億円ですが、配偶者控除を適用することで、配偶者分の相続税は0円になります。
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相続税の申告方法と申告期限
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告します。申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。申告書の提出方法は、持参または郵送のほか、e-Tax(電子申告)でも可能です。
相続税の申告書作成は、自分で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、税理士に依頼することをおすすめします。
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税務調査の対象になりやすいケース
税務調査とは、税務署が納税者の申告内容を調査し、正確な申告が行われているかどうかを調査するためのものです。税務調査は、納税者全員に行われる可能性がありますが、特に、以下の場合は税務調査の対象になりやすいと考えられます。
- 相続税の申告額が大きい場合
- 相続税の申告内容に不審な点がある場合
- 過去に悪質な申告漏れや申告内容に誤りがある場合
税務調査の対象となった場合、税務署から申告内容について説明を求められることがあります。また、申告内容に不備や誤りがあると、修正申告を促される場合もあります。
税務調査のリスクを避けるためにも、申告書の記載内容や添付書類を誤りなく作成することが重要です。税理士に相談して、申告書の作成や税務調査対策を依頼することも検討しましょう。
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『配偶者と親による金・金地金の相続』に関するよくある質問
金は相続税の対象になる?
金地金などの金資産は、相続税の課税対象です。
金・金地金の相続税評価額はいくら?
金・金地金の相続税評価額は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の買取価格に重量を乗じたものになります。
金や金地金の相続で必要な手続きは?
金・金地金の相続手続きは、以下の流れで進めます。
1.遺言書の有無を確認する
2.相続人を確認する
3.金・金地金の評価額を算定する
4.遺言書がない場合は相続人同士で遺産分割協議を行う
5.必要に応じて相続税の申告・納税を行う
妻と親の相続割合は?
法定相続分による配偶者と親の相続割合は、配偶者が3分の2で親が3分の1です。なお、父母ともに健在の場合は、6分の1ずつで分割します。
相続した金地金を保有し続ける場合の注意点は?
相続した金地金をそのまま保有する場合は、保管場所の安全性や、盗難や紛失のリスクに注意が必要です。また、金・金地金は価格変動リスクがあるため、価格変動に注意して保管しましょう。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士