X(旧Twitter)の誹謗中傷への対応!弁護士依頼のメリットと名誉毀損の判例

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X(旧Twitter)で誹謗中傷されたら?

X(旧twitter)は多くの人に利用されておりなじみのあるSNSですが、誹謗中傷をはじめとしたトラブルもよく耳にします。

X(旧Twitter)での誹謗中傷は、投稿の削除、投稿者の特定と慰謝料請求、警察への被害届・告訴状提出といった対応が取れる場合があります。

どういった対応方法が最適なのかは、誹謗中傷がどんな権利侵害にあたるのか、被害者の方が何を求めるのかによって様々です。

弁護士が対応方法について解説しますので、X(旧Twitter)における誹謗中傷トラブルの解決を目指していきましょう。

X(旧Twitter)での誹謗中傷への対応方法

X(旧Twitter)で誹謗中傷されたら、投稿の削除、投稿者の特定と慰謝料請求、警察への被害届・告訴状提出といった対応が考えられます。

誹謗中傷への対応方法

  • 投稿の削除
  • 投稿者の特定と慰謝料請求
  • 警察への被害届・告訴状提出

これらの対応方法についてくわしくみていきましょう。

(1)投稿の削除

誹謗中傷がTwitterのルールやポリシーで定められている違反行為や禁止行為に該当していれば、削除される可能性があります。

例えば、無断で顔写真を晒す行為はTwitterのルール違反です。「個人情報を公開する」と脅迫することも禁じられています。

ただし、誰でも閲覧できる状態で自分から電話番号や住所などを公開している場合は、それらが晒されてもペナルティはありません。

客観的にルール違反に見受けられるものでも、テキスト情報に対しての削除審査は厳しく、削除が認められないことも多いというのが現実です。

関連記事ではX(旧Twitter)での誹謗中傷や権利侵害について削除するときの方法を解説しています。あわせてお読みください。

裁判所の手続きも活用できる

X(旧Twitter)に申請しても削除されない場合には、裁判所に仮処分を申し立てる方法も有効です。

仮処分申立ては、仮処分命令が発令されなければ権利侵害が起こることが予想されたり、正式な裁判結果が出るまでに権利侵害が深刻化したりするときに認められます。

裁判所に仮処分申立書や証拠資料をそろえて提出した後、裁判官との面談、相手方を交えた審尋などを経て進行する流れです。

申立てが正当であると判断された場合には、担保金の納付後、裁判所から「投稿を削除せよ」という趣旨の仮処分命令が発令されます。

削除請求の仮処分申立てを検討している方は、くわしく解説した関連記事『削除請求の仮処分申立てとは?ネット上の誹謗中傷や名誉毀損への法的手続き』もあわせてお読みください。

(2)投稿者の特定と慰謝料請求

X(旧Twitter)での投稿によって被害を受けた場合、慰謝料の請求が認められる場合があります。

もっとも慰謝料請求をするためには、その投稿をした人物を特定せねばなりません。特定方法はX(旧Twitter)に情報開示を求める方法と、発信者情報開示請求という法的手続きを取る方法の2つがあります。

もっともX(旧Twitter)に情報開示を求めても、任意での依頼に過ぎず、開示される可能性は高くありません。

また、発信者特定につながる情報の中には一定期間で消えてしまうものもあるため、最初から発信者情報開示請求を着手するケースもあります。

発信者情報開示請求とはどんな手続きか

発信者情報開示請求は、原則として2段階のステップで発信者の住所や氏名を特定する法的手続きです。

2つのステップ

  1. X(旧Twitter)に投稿時のIPアドレスを開示請求する
  2. IPアドレスから割り出したプロバイダ側に発信者情報を開示請求する

X(旧Twitter)にIPアドレスの開示請求をする際は、裁判所に仮処分申立てをおこないます。裁判所の仮処分命令によってIPアドレスの開示を受けることが可能です。

IPアドレスからは投稿時のプロバイダがわかります。そこでプロバイダに対して、IPアドレスを利用していた契約者の情報を求める流れです。

X(旧Twitter)での発信者情報開示請求を検討している方は、弁護士への相談もおこないましょう。ネットトラブルにくわしく、開示請求の実績がある弁護士への相談がおすすめです。

X(旧Twitter)における発信者情報開示請求の流れや注意点については関連記事を参考にしてください。

特定後の慰謝料請求の流れ

慰謝料請求はいきなり訴訟を起こすのではなく、内容証明郵便の送付による請求からスタートすることが多くなっています。

訴訟を起こすことは被害者にとっても負担が大きく、解決までの時間も長くなる恐れがあるからです。

内容証明郵便送付後に相手方から応答があり、話し合い(示談交渉)が進めば慰謝料を受領できます。

しかし、話し合いがうまくいかなかったり、相手方から無視されたりして難航したときには、慰謝料請求の訴訟を起こすことも視野に入れていきましょう。

(3)警察への被害届・告訴状提出

X(旧Twitter)での投稿が犯罪の恐れがあり、投稿者に対して刑罰を負わせたいという場合には、警察への被害届や告訴状を提出しましょう

被害届を出すということは、警察に対して犯罪にあったという事実を申告することです。一方の告訴状提出とは、犯罪の事実申告と共に、犯人の処分を求める意思表示を含みます。

犯罪のなかには被害者からの告訴がなければ裁判を開けない「親告罪」があり、誹謗中傷で問題となる「名誉毀損罪」や「侮辱罪」は親告罪のひとつなので告訴が必要です。

なお、プライバシー侵害や肖像権侵害は直接的な刑罰の規定がないため、残念なことに、それらを根拠に刑罰を負わせることはできません。

しかし、肖像権侵害で問題となった写真が盗撮されたわいせつな写真であったり、物を盗まれたことから個人情報が知られたりと、犯罪行為によるものは刑罰を負わせることができる場合があります。

X(旧Twitter)での誹謗中傷を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリットは多数ありますが、ここでは法的措置の可能性を判断してもらえる削除請求や損害賠償請求の手続きをサポートしてもらえる書面作成・証拠収集のサポートを受けられるの3つのメリットについて説明します。

弁護士依頼のメリット

  • 法的措置の可能性を判断してもらえる
  • 削除請求や損害賠償請求の手続きをサポートしてもらえる
  • 書面作成・証拠収集のサポートを受けられる

法的措置の可能性を判断してもらえる

弁護士は、誹謗中傷の内容が法的に問題となるかどうかを判断することができます。民法上もしくは刑法上の問題に該当するかどうかを、専門的な知識に基づいて分析して助言可能です。

どんな法的根拠に基づいて訴えるのかということは、しっかりと検討が必要な部分になります。なぜならこの法的根拠が妥当でなければ、民事面や刑事面での責任追及は難しくなる恐れがあるからです。

的外れな訴えにならないよう、法律の専門家にアドバイスを受けるようにしましょう。

関連記事『ネットの暴言はどこから誹謗中傷?誹謗中傷になる言葉と表現の自由との線引き』では、誹謗中傷になる言葉を具体例を挙げて説明していますので、参考にしてください。

削除請求や損害賠償請求の代理人となれる

被害者の方の利益を最大限にすることが弁護士の使命です。そのため被害者のニーズを聴き取り、その目的を達成するようなサポートが受けられます。

たとえばX(旧Twitter)での誹謗中傷投稿を一刻も早く削除したいという場合では、弁護士の名前で削除依頼を出したり、仮処分申立ての準備を進めたりと、迅速な対応が可能です。

一方で削除するのではなく、発信者に対して損害賠償請求したいという希望があれば、弁護士は、これらの手続きに必要な書類の作成や、X(旧Twitter)や相手方との交渉の代理人となり、最前線での活動が可能です。

補足

サイト側への削除申請を受け付ける「削除代行業者」には気を付けてください。弁護士でない者が、報酬を得る目的で削除を代行することは非弁行為といい、違法になります。

書面作成・証拠収集のサポートを受けられる

誹謗中傷に対する削除請求・発信者情報開示請求・告訴は異なる手続きなので、各機関への書面作成がそれぞれ必要になります。

インターネットのトラブルにくわしい弁護士であれば書式をよく理解し、どの項目に、どんなことを記載することが効果的かという要点をおさえた書面作成が可能です。

一方で誹謗中傷トラブルにいきなり巻き込まれた被害者の方は、まず適切な書面を探すことにも苦労される可能性が高く、書面作成にも苦心されることでしょう。

早く削除してほしい、開示請求を成功させたいというときにはスピード感が重要になりますので、手続きに慣れた弁護士に任せることをおすすめします。

また、誹謗中傷の証拠となるスクリーンショットやログデータなどの収集も重要です。

ネットトラブルに精通した弁護士であれば、どういった証拠が望ましいのかをよく分かっているので、証拠収集のアドバイスも的確です。

X(旧Twitter)での誹謗中傷に関してよくある質問

X(旧Twitter)での誹謗中傷被害者が疑問に思うポイントについて、質問形式で解説します。

どんな誹謗中傷なら法的対処が取れる?

他者の権利を侵害するもの、犯罪行為にあたるものについては法的対処も検討すべきです。

SNSでは自由な意見交換ができることが魅力ですが、何でも言っていい、何をしてもいいと「自分の権利」だけを優先する行為は許されません。

下表はネット上のトラブルで問題になりやすい権利侵害・法的根拠・概要をまとめています。

代表的な権利侵害と法的根拠

権利侵害根拠概要
名誉毀損罪刑法230条公然と事実を摘示して社会的評価を下げられる
侮辱罪刑法231条公然と社会的評価を下げられる
名誉感情の侵害民法709条自尊心が傷つけられた
プライバシー侵害※民法710条個人情報や知られたくない事情を晒される
肖像権侵害民法709条顔写真を無断で晒される

※は人格権侵害のひとつとして保障されるもの

こうした権利侵害に当てはまる可能性があるときには、法的対処を視野に弁護士に相談すべきです。関連記事では各権利侵害についてくわしく解説しているので、あわせてお役立てください。

誹謗中傷で慰謝料はいくら請求できる?

誹謗中傷の投稿に対して、名誉毀損が認められるときには個人で10万円から50万円、法人で50万円から100万円程度が相場となります。

もっとも慰謝料の金額は個別に異なるので、一概にこの金額が全てではありません。

たとえば誹謗中傷の内容がひどいとき、繰り返し誹謗中傷するなど悪質なときなどは増額される可能性もあります。

慰謝料の算定は弁護士に任せることをおすすめしますが、その際には慰謝料算定の材料となる資料は多いほうが良いです。

相手方の投稿については全てURLを含む形式でスクリーンショットに保存しておき、弁護士に提出するようにしましょう。

鍵垢や捨て垢相手でも開示請求できる?

鍵垢や捨て垢相手でも開示請求は可能です。

もっとも鍵垢の場合は、投稿内容を閲覧できる範囲が限られています。被害者自身が直接その投稿を見たわけではなく、「悪口を言われている気がする」「なんだか気味が悪い」といった理由では開示請求は通らないでしょう。

鍵垢・捨て垢からの誹謗中傷については以下の関連記事でのくわしい説明をご覧ください。そして開示請求の見通しについては、弁護士に助言をもらうこともおすすめします。

誹謗中傷に「いいね」をする人にも損害賠償請求できる?

自身へ向けられた誹謗中傷の投稿に対して「いいね」をしたことが名誉感情を違法に侵害する行為にあたるとして、損害賠償請求を命じた事案があります。(東京高等裁判所の令和4年10月20日判決)

被告は「いいね」を押す前にも原告アカウントへの批判を繰り返していたこと、被告は国会議員であり11万人のフォロワーがいたこと、原告を中傷する複数の投稿に「いいね」を押したことなどが判決のポイントとなったのです。

すべての事例において「いいね」に対して開示請求できるとは限りませんが、その悪質性やアカウントの持つ影響力(フォロワー数)などで個別に判断されると考えておいてください。

DMでの誹謗中傷は開示請求できる?

DMのように1対1であって、不特定多数の目にさらされない場においては開示請求が難しいと考えられます。開示請求権者は「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者」と規定されているからです。

ここでいう特定電気通信とは、不特定多数に対する通信を媒介するものとされているので、DMについては発信者情報開示請求の手続きを利用できません。

ただし身に危険が迫るような脅迫を受けた場合には、警察に相談することで対応してもらえる可能性はあります。

X(旧Twitter)での名誉毀損・名誉感情の侵害をめぐる判例

X(旧Twitter)での誹謗中傷において、名誉毀損罪や名誉感情の侵害が争点となった判例をそれぞれ紹介します。

元妻への名誉毀損で執行猶予付きの有罪判決の判例

この事案は元プロ棋士である被告Aが、Twitterにて元妻Bやその家族らの写真を掲載し、不特定多数が閲覧できる状態にしました。

被告Aの投稿内容は「息子を誘拐し、法外な金銭を要求」「僕を地獄の底に落とした殺人鬼達」との記載につづき、元妻Bやその家族の氏名・住所が掲載されたのです。

裁判所は、被害者の氏名だけにとどまらず、住所や顔写真をも掲載したうえで「僕の棋士の人生を奪った容疑者達」「まさに誘拐一家」「殺人鬼」などと、まるで犯罪行為に関与したかのような印象を与える悪質性を指摘しました。

広範囲に拡散されていることや被告Aに反省の要するがないことから厳重な処罰が必要としつつ、前科前歴がないこと、逮捕からの長期の身柄拘束などを考慮し、懲役1年6月執行猶予4年(未決勾留日数中90日を含む)を言い渡しました。

この判例は大津地方裁判所における名誉毀損被告事件(令和5年6月23日判決)より抜粋して作成しています。

会社への名誉毀損による開示請求が認められた判例

この事案は、複数の女性タレントが所属する芸能プロダクションを経営する株式会社Cが、ツイッター上のユーザー名「D」を被告とし、発信者情報開示請求をおこなったものです。

問題となった投稿を抜粋します。

投稿内容

(株式会社C)ってマジでゴミだな、ほんとにゴミ。死ね。倒産しろ。””アイドル””をなんだと思ってんだよ、金稼ぎの一環としか思ってないんたろうしそれに巻き込まれてるB本当に可哀想、どんだけ良いメンバーだとしてもそんな運営体制のグループ誰も通わないし通いたくないだろ。

被告Dは具体性がなく、投稿者の主観的な意見や感想を抽象的に述べたもので、法人としての原告に対する人身攻撃にまで至らず名誉権の侵害には当たらないと主張しました。

裁判所は、こうした投稿を見た人はCへの応募を躊躇したり、投稿を見たファンも応援するアイドルが金儲けに利用されているという印象を持つことになると指摘し、株式会社Cの社会的評価の低下を認めたのです。

「ゴミ」、「死ね」、「倒産しろ」という投稿についても論評としての域を逸脱した誹謗中傷であると述べました。こうしてIPアドレスの開示を命じたのです。

この判例は東京地方裁判所における発信者情報開示請求事件(令和5年4月17日判決)より抜粋して作成しています。

X(旧Twitter)での誹謗中傷は弁護士に相談

X(旧Twitter)での誹謗中傷には、削除、発信者情報開示請求、警察への被害届・告訴状提出という3つがあることを解説しました。

どの方法を採るにしても、法的根拠の見極めは非常に重要です。

ご自身が受けた誹謗中傷によってどんな権利が侵害されたのか、あるいはどんな犯罪行為の被害にあっているのかを整理して、法的な問題として主張せねばなりません。

また、もしご自身で開示請求がうまくいかなかった場合に弁護士に依頼してやり直してもらおうと思っていても、そのころにはログが消えてしまい、投稿者の特定が技術的にできない可能性もあります。

SNSの誹謗中傷の恐ろしいところはその拡散のスピードともいえるので、誹謗中傷について法的な措置を取りたいなら早めの対処が肝心です。

誹謗中傷にかかる弁護士費用

誹謗中傷の削除請求について、弁護士費用は着手金として約20万円、報酬金として約10万円から20万円ほどが相場とされています。

もし誹謗中傷の投稿者を特定手続きを依頼するなら、数十万円から100万円程度の弁護士費用がかかる場合もあるでしょう。

もっとも、弁護士費用は各法律事務所によって様々なので、まずは弁護士との相談予約をとり、見積もりを取ってもらうことから始めてください。

見積もりを取る際には、相手方から回収できる慰謝料の見積もりも併せて聞いておくと、最終的に手元に残る金額の見通しを立てることもできます。

なお、発信者情報開示請求にあたっては調査費用という名目で一部の費用を相手に請求できる可能性は高いです。そうしたノウハウについても、ネットトラブルに詳しい弁護士から聞くことができますので、まずは相談の時間を設定してもらいましょう。

誹謗中傷にくわしい弁護士に相談しよう

ネット上の誹謗中傷問題にくわしい弁護士を探すなら、弁護士のプロフィールや解決実績に注目してください。

弁護士はみな法律の専門家ですが、各々の主な取り扱い分野は異なるものです。そのためネット上のトラブル解決に注力している弁護士を探すことがポイントになります。

とくに法律事務所には解決実績・取扱実績が掲載されていますので、そこからご自身と似たようなトラブルについて対応したことがあるのかを確かめてみてください。

以下のバナーより、相談する弁護士を探す際のポイントをまとめた解説記事もご覧いただけます。相談先検討の参考にしてください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了