X(旧Twitter)での誹謗中傷は開示請求で特定できる?名誉毀損で訴えたい

X(旧Twitter)【開示請求・特定】

X(旧Twitter)は、日本でも多くの人に親しまれているSNSコミュニケーションツールです。しかし、なかにはその匿名性を悪用して、誹謗中傷によって他人をおとしめる人がいます。

インターネットで誹謗中傷を受けることは大きなダメージです。いち早く投稿者を特定して法的措置をとってほしいと考える人もいるでしょう。

X(旧Twitter)上での誹謗中傷は名誉毀損や侮辱罪に問える可能性があり、正当な訴えであれば法的手続きにより投稿者を特定できる可能性があります。

しかしある程度の時間がかかるものなので早めの対応が必要です。

そこで本記事では、Twitterで誹謗中傷を受けた場合に、弁護士が行う開示請求について解説します。開示請求の流れや費用、注意点などをわかりやすく説明します。

リベンジポルノ画像をさらされていたり、身体に危害を加えるなどの脅しを受けている方は、弁護士相談と併せて早急な警察への相談も検討してください。

X(旧Twitter)の開示請求!特定に必要なIPアドレスを知る方法

X(旧Twitter)で誹謗中傷をポストしているアカウントの人物を特定するためにはIPアドレスが必要になります。

IPアドレスとはインターネットに接続する際の、パソコンやスマホなどの機器ごとに割り振られた番号のことです。インターネット上の住所のようなもので、「インターネットアドレス」ともいわれています。

まずはIPアドレス情報を得るための流れをみていきましょう。

X(旧Twitter)にIPアドレスの開示を依頼

X(旧Twitter)は匿名でも利用できるSNSサービスですが、管理側にはそのアカウントのIPアドレス情報などが残っています。

そこでX(旧Twitter)に対して、誹謗中傷をおこなうアカウントのIPアドレスを開示するように依頼したいところです。

しかしX(旧Twitter)はサイト上での「情報開示請求についての質問」において次のように述べています。

情報開示請求についての質問

アカウントの登録に使われたメールアドレスやログイン時のIPアドレスをはじめとした非公開の情報を開示するには、呼出状や裁判所命令など、現地法に応じた有効な法的手続きが必要です。

※Xヘルプセンターより引用

X(旧Twitter)としても、そのサービスが匿名であるという以上、個人の依頼を受けてサービス利用者の情報を開示する可能性は低いといえます。

そこで、法的手続きのひとつである仮処分を活用していきます。

裁判所へ仮処分を申し立てる

仮処分命令が認められれば、裁判所からX(旧Twitter)に対してIPアドレスの開示を命令してもらえます。

仮処分というのは、誹謗中傷を書き込まれた人の権利を守るため、正式な手続きより前に暫定的に認める処分をさします。

担保金の準備も必要

仮処分手続きをおこなうためには、申立書などの書類提出のほか、担保金の準備も必要です。

担保金とは、情報開示によって不利益が生じた場合の補てんに充てられる金銭のことをいい、正当な申立てならば後日返還されます。

後日戻ってくる金銭とはいえ、仮処分申立て時には用意しておくべき金銭です。

X(旧Twitter)の開示請求!プロバイダーに発信者情報を請求

X(旧Twitter)への仮処分命令が下され、IPアドレスの開示を受けたなら、つづいてプロバイダーに対して発信者情報の開示を求める段階です。

プロバイダーに対して契約者情報の開示を要求

IPアドレスはアルファベットや数字の羅列ですが、その情報から誹謗中傷のポスト時に利用されたプロバイダーが特定できます。

そこで、特定できたプロバイダーに対して契約者の情報開示を要求します。もっとも、プロバイダーにとっては契約者の情報は守るべきもののため、そう簡単に開示要求には応じてくれません。この要求は任意のため、プロバイダー側が応じる義務はないのです。

そのため「発信者情報開示請求訴訟」という裁判をとおして、プロバイダーに対して発信者情報の開示を求めることになります。

プロバイダーへの発信者情報開示請求訴訟

X(旧Twitter)の誹謗中傷のポストがおこなわれたプロバイダーに対して発信者情報開示請求訴訟を起こす場合、その誹謗中傷でどんな権利侵害があったのかを明らかにするためにも、証拠が重要です。

訴訟時の証拠としては、誹謗中傷のポストそのものURL、相手のアカウントID情報(プロフィール画面)などのPDFやスクリーンショットがあげられます。繰り返し誹謗中傷がなされている場合は、一連のポストを続けて記録しておきましょう。リプライの内容ポスト日時も残しておいてください。

誹謗中傷で考えられる権利侵害とは?

誹謗中傷の内容によりますが、侮辱罪名誉毀損プライバシーの侵害などが考えられるでしょう。インターネットのトラブルに詳しい弁護士に相談すれば、誹謗中傷の内容からどういった権利侵害に該当するのかを教えてもらえます。

裁判所は、証拠をもとにして被害者の訴えの合理性を検討して判断します。発信者の個人情報開示を認めるということは、ある意味で発信者の権利を侵害する側面もあるからです。

そのため「誹謗中傷がなされた」ということを証拠にもとづいて主張しなくてはいけません。集めるべき証拠や権利侵害を訴える内容については、X(旧Twitter)での開示請求実績がある弁護士に相談することをおすすめします。

発信者情報開示請求によって特定につながる

発信者情報開示請求訴訟によって、裁判所からプロバイダーに対して発信者情報の開示を命令が出たら、ようやく誹謗中傷アカウントの本人特定に至ります。

なお、X(旧Twitter)へのIPアドレス開示請求からは約10ヶ月ほど、あるいは事案によってはより多くの時間がかかる可能性もあります。

また仮処分申立てから訴訟対応までは法的な手続きを取ることになるので、むずかしい法律やインターネット用語の意味を調べて書類を作成・確認するなど、非常に多くな負担がかかり続けるでしょう。

X(旧Twitter)上での誹謗中傷について相手を特定して訴えたい方にとって、弁護士という法律のプロが味方になることは非常に心強く、様々なメリットを感じられます。そのためにも、どういったサポートを受けられるか弁護士費用の見積もり依頼から始めてみることをおすすめします。

【改正プロバイダ責任制限法】の施行

2022年10月1日、改正プロバイダ責任制限法が施行されました。従来と比べて、匿名で誹謗中傷をしている人を特定する負担が軽減されたと期待されています。

IPアドレスと発信者情報の開示請求をまとめてできる

これまでの方法では、まずX(旧Twitter)に対してIPアドレス開示請求(仮処分申立て)をおこない、また別途、プロバイダーに対して発信者情報の開示を請求する必要がありました。

2回の法的手続きをおこなう必要があり、権利侵害を受けた被害者の負担になっていると問題視されていた部分でもあります。

しかし改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」では、こうした2つの開示請求を一度におこなうことができます。また「非訟手続」といい、通常の裁判手続きよりも簡単な方法になっている点も時間短縮につながると期待されているのです。

発信者情報開示請求の対象が拡大された

これまでの方法は、匿名掲示板での誹謗中傷を想定していました。しかし、発信者情報開示請求の対象が拡大されたことで、SNSサービスの開示請求にも対応しやすくなったのです。

具体的には、アカウントを作成・削除した時の情報、アカウントへのログイン・ログアウトする時の情報、アカウント作成時などのSMS認証時の電話番号などが含まれています。

開示請求の方法はメリット・デメリットでしっかり選ぼう

改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」にも懸念点があります。それはX(旧Twitter)やプロバイダ―側が異議申し立てをすれば、通常の裁判手続きになるという点です。

通常の裁判手続きとなると、かえって時間がかかるというケースも想定されます。

従来の方法をとるのか、改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」をとるのかは、開示請求にくわしい弁護士に見解を聞いてみましょう。

【注意】特定に必要な情報が消える前に対処しよう

プロバイダー側のログ保存期間は、約3ヶ月から6ヶ月ほどとされています。

ポストされた日から日数が経ちすぎていると、特定に必要な情報が消えてしまう可能性が高いので、ログを消去しないことを求める申立ても起こす必要があります。

X(旧Twitter)の開示請求・特定に精通した弁護士であれば、こうした先々の事をみすえた対応が可能です。

誹謗中傷は名誉毀損で訴えることができる?

X(旧Twitter)上での誹謗中傷に対しては、民事責任と刑事責任の両面を問うことができます。誹謗中傷の内容次第では、名誉毀損や侮辱罪などに問える場合があるでしょう。

民事責任とは、誹謗中傷によって権利が侵害されたことを訴え、損害賠償の請求を求めることです。損害賠償の主な内訳としては、慰謝料や弁護士費用があげられます。

刑事責任とは、誹謗中傷を受けて警察に被害届を出したり、告訴をおこなって刑事処罰を受けてほしいと訴えることです。

民事責任と刑事責任について、もう少し掘り下げて説明します。

権利侵害を訴えて慰謝料を請求する(民事責任)

X(旧Twitter)上での誹謗中傷の内容次第では、侮辱罪名誉毀損にあたる可能性があります。誹謗中傷を書かれたことで、民法709条をもとに慰謝料請求が可能です。

もっとも慰謝料額は誹謗中傷の内容により異なることを知っておきましょう。具体的には、名誉毀損にあたる場合の慰謝料相場は10万円程度から50万円程度侮辱罪にあたる場合の慰謝料相場は数万円程度になる見込みです。

個人ではなく企業への名誉毀損であれば、50万円から100万円程度になるでしょう。

このように権利侵害の内容により、誹謗中傷の慰謝料は異なります。慰謝料請求の流れや請求における注意点も解説している関連記事『誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?損害賠償請求の流れと注意点をおさえよう』も参考にしてみてください。

侮辱罪と名誉毀損は何が違う?

名誉毀損は、(1)公然性があること(2)事実を摘示して名誉を毀損したことの両方を満たしているときに成立します。

X(旧Twitter)上での誹謗中傷が不特定多数の人に見られる状況であれば、公然性があるといえるでしょう。

事実の摘示にあたるかどうかは、弁護士に問い合わせて見解を聞いてみることが一番です。考え方の参考として例を示します。

  • 「Aさんは人をだましてお金を儲けている」とポストされた場合、人をだましているという事実が摘示されてること、また内容がAさんの社会的な評価を害するもののため、名誉毀損が成立するといえるでしょう。
  • 「Aさんはブスだ」とポストされた場合は事実の摘示とは言えず、名誉毀損ではなく侮辱罪で訴えることを検討していきます。

誹謗中傷を書かれた側にとっては、名誉毀損か侮辱なのかは判断しづらいものでしょう。

ご自身になされた誹謗中傷について、どんな権利侵害にあたるのか、相手を特定して適切な補償を受けたいという方は弁護士への相談も検討していきましょう。

関連記事

警察に被害を訴えて告訴する(刑事責任)

X(旧Twitter)上での誹謗中傷について、警察に被害を訴えて刑事処罰を求めることも可能です。

侮辱罪や名誉毀損はいわゆる親告罪と言われ、その事実を知ってから半年以内に告訴しなくてはなりません。告訴とは単に被害届を出すことではなく、警察に被害事実を申告して、加害者に刑事処分を求める手続きのことです。

告訴を受けた警察や検察によって加害者の捜査がおこなわれ、刑事処分が決まります。

刑罰の内容

罪名刑罰
名誉毀損3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
侮辱罪拘留(1日以上30日未満の拘置)または科料(1,000円以上1万円未満)

刑事告訴を検討している方は記事『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』もお役立てください。告訴のくわしい手続きや費用について解説しています。

X(旧Twitter)の開示請求に関するよくある質問

X(旧Twitter)で誹謗中傷を受け、開示請求をしたい、アカウントの人物を特定したい人のよくある質問に回答します。

X(旧Twitter)の開示請求が難しいケースは?

ツイッターの開示請求が難しいケースとしては、開示請求が認められないケースやアカウント削除から日が経っているケース、個人の特定が難しい状況にあるケースが考えられます。

開示請求が認められないケースとは、IPアドレスの開示や発信者情報開示請求が却下されるケースです。

開示請求は、被害者が何らかの権利侵害を受けていて損害賠償を請求したり、刑事告訴をおこなったりなど、正当な目的・理由がある場合に認められます。そのため、開示請求に合理性や正当性がない場合には、開示請求が難しいでしょう。

また、誹謗中傷をしているアカウントが削除されてから30日以上経過していると、アカウント情報が消えてしまう可能性があります。このように情報が消えてしまっている場合も、開示請求が難しい可能性があるのです。

個人の特定が難しい状況にあるケースとしては、インターネットカフェや集合住宅の回線などがあげられます。IPアドレスを元に契約者をたどっても、実際に誹謗中傷をポストした個人までの特定が難しい可能性があるでしょう。

発信者情報開示請求で特定までかかる時間はどれくらい?

発信者情報開示請求によって相手を特定するまでは約10ヶ月ほどかかる見込みです。

もっとも改正プロバイダ責任制限法による「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」によってスムーズに請求が認められた場合には、時間短縮が期待できます。

捨て垢でも特定できる?

捨て垢であっても特定できる可能性があります。

X(旧Twitter)はアカウントを複数もてるケースがあり、捨て垢や裏垢といって、身バレしにくいアカウントも存在します。

しかし誹謗中傷が権利侵害に該当すると判断された場合には、捨て垢であっても開示請求の対象になるでしょう。

捨て垢での開示請求は特定後の流れについては、関連記事『捨て垢や匿名も特定できる!誹謗中傷や嫌がらせへの開示請求と特定後の対応』でも解説中です。

弁護士費用は相手に請求できる?

特定にかかった弁護士費用は相手に請求できる場合がありますが、全額ではなく一部にとどまる可能性もあります。

そのため、弁護士を依頼する際には「着手金」や「報酬金」などの費用体系をしっかりと確認して、納得のいく説明を受けておいてください。

また、誹謗中傷をおこなった人物を特定できても、相手にお金がない場合、適正な賠償を受けることが難しい恐れもあります。

開示請求・特定によって得られる金銭よりも、特定にかかる費用の方が高くなるリスクについても納得しておくことがポイントです。

X(旧Twitter)の開示請求を弁護士に依頼するメリット

誹謗中傷のポストを見つけてしまい、拡散されたり、おもしろおかしくいじられたりすると、大きなショックを受けてしまいます。

誹謗中傷の内容次第では、その被害を民事責任と刑事責任の両面で訴えることが可能です。

もっとも誹謗中傷をしている人物を特定するためには様々な法的手続きを取らねばならず、ある程度スムーズに進めないと時間切れによって特定が難しくなってしまいます。

弁護士に依頼するメリット

  • ノウハウを生かして開示請求・特定をスムーズに進める
  • 法的な手続きにも万全の体制で取り組める
  • 誹謗中傷による権利侵害を法的問題として訴えることが出来る
  • 開示請求・特定後の対応を任せられる

こうしたメリットがあることを踏まえて、弁護士費用の見積もり、特定出来た場合の賠償金の相場などを知るためにも、まずは弁護士相談を検討していきましょう。

なお誹謗中傷のポストを削除したいという方は『Twitterの誹謗中傷ツイートやアカウントの削除依頼方法を弁護士が解説』の記事も役に立ちます。ただし削除してしまうことで開示請求の証拠が失われるリスクもあるので、弁護士に相談してみてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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