サイバー警察に相談すべき?犯罪の可能性が高いネット被害の事例と対応

更新日:
サイバー警察に相談するべき?

ネット上のトラブルは一人で悩んで解決を諦めてしまう方が少なくありません。しかし、被害によっては警察に相談すべき「サイバー犯罪」にあたる可能性があります

サイバー犯罪は、個人情報漏洩、金銭被害、名誉毀損など、被害者の人生に深刻な影響を与える可能性がある重大なものです。

警察庁は、サイバー犯罪対策の中核を担う組織である「サイバー警察局」を設置し、サイバー犯罪への対応を強化しています。

サイバー警察局やサイバー犯罪についての理解を深め、ご自身の被害内容について警察や弁護士に相談することも検討してみてください。

サイバー警察局の対応範囲と相談窓口

サイバー犯罪対策の中心にある「サイバー警察局」について、主な対応範囲と相談窓口をみていきましょう。

サイバー警察局の主な対応範囲

サイバー警察局の目的は、サイバーセキュリティが侵害されることや、情報技術による不正行為によって、権利や財産、公共の安全や秩序を害する事案に対応することです。

対応範囲は幅広いですが、その一部を掲載します。

対応範囲の例

  • ランサムウェア被害防止対策
  • フィッシング対策
  • 不正アクセス対策
  • ネット上の誹謗中傷への対応
  • ネット上の犯行予告への対応

サイバー犯罪の相談窓口

警察庁「都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口一覧」のページから、各都道府県のウェブサイトを確認できます。

警察への通報や相談の前には、トラブルの事実を示す証拠を保存しておきましょう。たとえば、不正アクセスの被害にあった場合は、不正アクセスでログインされた履歴や、不正に利用されたアカウント情報などをスクリーンショットでとっておき、持参することをおすすめします。

また、被害者としてはサイバー犯罪にくわしい担当者に相談したいところでしょう。警察への相談は事前に電話連絡を入れておき、予約を入れておくとスムーズです。

重要

身体に危害を加えるなどの犯行予告など、緊急の事案に関しては110番してください。

サイバー警察局への相談を迷ったときは?

サイバー犯罪として警察に相談するかわからない、大ごとになるかもと不安、相談を迷っているといった場合も、まず相談をしてみて対応を検討することをおすすめします。

あるいは次のような相談窓口も利用できますので、お悩み事に応じて利用を検討してみてください。

相談先窓口例えばこんな人向け
警察相談専用ダイヤル#9110犯罪被害にあったかも?と不安
違法・有害情報相談センターhttps://ihaho.jp/ネットトラブルへの助言がほしい
法テラス犯罪被害者支援ダイヤル0120-079714法的対応や受けられる支援を知りたい

このほかにも、インターネット上のトラブルに関する相談窓口は多数あります。関連記事『ネットトラブルや嫌がらせの相談窓口はどこ?無料相談や電話相談先を紹介』もお役立てください。

犯罪被害の可能性が高いネットトラブルとは?

ネットトラブルの中には、警察への相談がより望ましい事案は存在します。そうした犯罪被害にあっている可能性が高いケースの例をみていきましょう。

ランサムウェア被害

ランサムウェア被害とは、ランサムウェアと呼ばれるコンピュータウイルスに感染し、ファイルやシステムが暗号化されて利用できなくなる被害です。

ランサムウェア被害の内容として、以下のようなものが考えられます。

ランサムウェアの被害内容

  • ファイルやシステムが利用できなくなる
  • 金銭を要求される
  • 個人情報や機密情報が流出する
  • 業務停止に追い込まれる
  • 風評被害を受ける

ランサムウェア被害は近年深刻になっており、事業規模を問わず、大企業から中小企業まで被害にあっています。

警察庁の発表資料「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、ランサムウェアの被害件数は103件と高い水準で推移しています。

感染経路としては、テレワーク勤務でも利用されるVPN機器からの侵入、リモートデスクトップからの侵入、不審なメールや添付ファイルが多い結果となっています。

また、データを盗んだうえで「対価を支払わないと、データを公開する」と要求する二重恐喝(ダブルエクストーション)が多いことからも、ランサムウェア被害は犯罪性の高いケースといえるでしょう。

不正アクセス

不正アクセスとは、無断で他人のアカウントにログインしたり、アカウント情報を入手したりする行為をいいます。

不正アクセスされてしまうと、個人情報の漏洩や不正利用といったさらなるトラブルにつながる危険性が高まってしまうでしょう。

たとえば次のような行為は不正アクセス禁止法として処罰対象です。

被害が疑われるケース

  • 勝手にSNSにログインされた
  • 教えていないのにログイン情報が知られている
  • 自分のログイン情報が言いふらされた

こうした被害にあっている方は、不正アクセスの被害者となる可能性が高いです。

不正アクセス被害への対処法や、弁護士に相談すべきケースをもっと知りたい方は、関連記事『不正アクセス被害の対処は初動が肝心!警察への被害届や弁護士相談は必要?』を読むと理解が深まります。

また、「アカウントの乗っ取り」や「フィッシング詐欺」とも関連が高く、深刻な社会問題になっています。これらの被害にあった可能性がある方は、続けてお読みください。

アカウントの乗っ取り

アカウント乗っ取りとは、不正アクセスによる被害のひとつで、第三者により不正にログインされたうえでアカウントを操作されることをいいます。

乗っ取りの目的は、本来のアカウントの持ち主の社会的評価を下げることや、周囲の友人に接触してさらに個人情報を盗むこと、犯罪に巻き込まれることなどが考えられるでしょう。

アカウント乗っ取りの被害例

  • 「私には前科がある」などと投稿して、アカウント主の社会的評価を下げようとする
  • アカウントの持ち主のようにふるまい、他者を攻撃する
  • アカウントから友人をたどり、友人の個人情報を盗もうとする
  • アカウントから友人に接触して、アカウントの持ち主の個人情報を得ようとする

乗っ取り被害への対処法については、関連記事でくわしく解説しています。法的対処が必要になるケースも十分考えられるので、併せてお読みください。

フィッシング詐欺

フィッシング詐欺とは、偽のメールやSMS(携帯電話のショートメッセージ)で、公式サイトのように模倣した偽サイトへ誘導し、銀行口座やクレジットカードなどの個人情報を盗み取る犯罪です。

銀行口座からお金を不正に引き出されたり、クレジットカード情報が盗まれて不正利用される可能性があります。

また口座情報が犯罪行為に使われてしまうなど、犯罪に巻き込まれてしまうケースもあるでしょう。

このようにフィッシング詐欺によって不正に個人情報を奪われ、あたかもあなたのようになりすまして行動されると、様々な犯罪につながる可能性が高まります。

関連記事『SNSでのなりすまし被害!削除・特定・刑事告訴などの法的措置はとれる?』では、なりすましによる犯罪被害への対処法を解説しているので、参考にしてください。

サイバー犯罪にどういった法的措置が取れるのかも知っておくことをおすすめします。

リベンジポルノ

ネット上に裸の写真や動画が晒された場合、リベンジポルノに該当する可能性があります。

リベンジポルノは、警察や検察の捜査によって刑事罰が下される可能性も高い、きわめて深刻な権利侵害です。

かつての交際相手や元配偶者とのトラブルがきっかけになることもあれば、相手の悪意により突然さらされてしまうこともあるでしょう。

警察への相談と並行して加害者を訴えたい、警察以外にも相談窓口を知りたいという方は関連記事『リベンジポルノ被害の相談窓口は?ネットに裸の写真が晒されたときの対策』もお役立てください。

誹謗中傷(名誉毀損・侮辱)

ネット上の誹謗中傷は、民事上の慰謝料請求だけでなく、警察に告訴することで、加害者への刑事処分も問うことも可能です。

もっともネット上の誹謗中傷で難しい点は同定可能性にあります。要は、誰に対する誹謗中傷なのか判断できることが重要なのです。

同定可能性がなければ、誰の権利を侵害しているのかが分からず、犯罪として成立しません。そのほか、名誉毀損や侮辱罪の成立要件について詳しく知りたい方は関連記事をお役立てください。

警察への相談と弁護士への相談のちがい

サイバー犯罪の相談先としては、警察や弁護士があります。それぞれの相談先の違いや相談のメリットをみていきましょう。

刑事事件としての捜査を望むなら警察に相談

サイバー犯罪の加害者に刑事処分を望む場合は、警察への相談が望ましいです。

また、被害者の告訴がないと検察が加害者を起訴できないという「親告罪」であれば、被害者が必ず警察に告訴をおこなう必要があります。具体的にいえば、名誉毀損や侮辱罪は親告罪のひとつです。

もっとも警察が全てのネットワークを監視しているわけではありません。そのため、親告罪かどうかにかかわらず、事実上、被害者が警察に被害を訴えないと捜査が始まりようがないケースも多いです。

警察への相談を検討したいという方は、以下の関連記事でくわしく解説しています。

犯罪行為に法的対処をとりたいなら弁護士に相談

サイバー犯罪の被害にあったことで財産的損害を被ったり、権利侵害を受けたりしたことで、損害賠償請求をしたいなら弁護士に相談してください。

たとえば、誹謗中傷による名誉毀損については刑事事件として警察に告訴するだけでなく、民事事件として相手に賠償請求することも可能です。

もっとも警察は犯罪行為の捜査をおこなう機関であって、加害者との金銭のやり取りを仲介するわけではありません。そのため、ご自身で請求するか、弁護士を代理人に立てて対応を任せることになります。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談するメリットの一例を示します。

  • どんな権利侵害を主張するべきかを聞ける
  • 被害内容に応じて請求すべき慰謝料の相場がわかる
  • さらなるトラブルが起こらないような助言をもらえる

弁護士への相談の最大の強みは、法律の専門家の意見を聞けるということです。

相手方に損害賠償請求をするときには、「いやな気持になった」「売り上げが減った」という表現ではなく、具体的にどんな権利侵害が起こり、いくら損害が発生しているのかを述べることになります。

そのため、毅然とした態度で、法的根拠に基づく請求が必要になるのです。

弁護士を代理人に立てて交渉することで、日常生活を送りながら権利の回復を図ることができます。まずは法律相談をしてみて、弁護士に依頼するかどうかを検討していきましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

現在、相談窓口を鋭意準備中です。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。