熟年離婚を考える専業主婦へ|50代・60代から自由を手にするために今できる準備とは?

長年連れ添ってきた夫との関係に悩み、「このままの生活を続けていて本当にいいのか」と立ち止まる50代・60代の女性は少なくありません。特に、仕事を持たず家事・育児を支えてきた専業主婦の方にとって、「熟年離婚」の決断は人生の転機です。
「離婚して本当に生活できるの?年金やお金は大丈夫?」「住む場所は?病気になったら?孤独にならない?」—— そんな不安でいっぱいの方も多いでしょう。
本記事では、50代・60代の専業主婦が離婚を考える背景と、離婚に向けた準備、注意すべきポイント、離婚後に後悔しないために知っておきたいことまで、わかりやすく丁寧に解説します。
離婚は勢いで決めるものではありません。正しい知識と準備があれば、人生の後半をより自分らしく過ごす道も見えてきます。
目次
なぜ今、熟年離婚?専業主婦が離婚を考える背景とは
熟年離婚とは、概ね50代~60代以降に夫婦が離婚することを指します。特に専業主婦の方が離婚を考え始める主な理由には、次のようなものがあります。
専業主婦の熟年離婚の背景
- 子育てが一段落し「自分の人生を見つめなおしたい」と思うようになった
- 長年の夫婦関係に疲れた、会話もなく、精神的に孤独を感じている
- 定年後、ずっと夫と一緒に過ごす未来を想像して不安に感じる
- モラハラや性格の不一致など、夫との関係に限界を感じている
離婚件数のうち熟年離婚が占める割合は近年高止まりとなっており、50代以降で離婚することも一般的になってきています。
しかし、長年専業主婦として家庭に入っていた女性にとっては「自分は離婚しても経済的・社会的にやっていけるのだろうか」という不安が大きく、決断が難しいケースも多いでしょう。
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専業主婦の熟年離婚|直面する“3つの壁”
離婚は心の問題だけではありません。特に専業主婦が離婚を考える場合、次の3つの現実的な“壁”に向き合う必要があります。
壁の種類 | 内容 |
---|---|
① 経済的な壁 | 就労経験が少ない・年金が少ないなど、収入の不安 |
② 住まいの壁 | 家を出る選択をした場合の住居確保の課題 |
③ 健康の壁 | 加齢による体力の衰え・将来的な医療や介護の不安 |
これらの壁を前もって理解し、具体的な準備をしておくことが、離婚後の安定した生活を築くための第一歩です。
①経済的な壁
長年、収入の主な手段が夫の稼ぎだった場合、離婚後の収入源の確保が最も大きな課題となります。就職活動や再就職の不安に加え、年金や財産で生活できるかも大きな心配事です。
②住まいの壁
これまで夫名義の家に住んでいた場合、離婚後にどこに住むのかも大きな問題です。退去を求められるケースもあり、新たに住まいを確保するには初期費用や保証人も必要になります。
③健康の壁
50代以降は健康面の不安も増してきます。一人暮らしになることで孤独感や将来的な介護リスクも。頼れる人が身近にいるかどうかも再考する必要があります。
熟年離婚の前に確認しておきたい4つの大切なポイント
離婚を決断する前に以下の点をしっかりチェック・準備しておきましょう。
1. 財産分与の対象と内容確認
結婚生活の中で築いた財産(預金・不動産・保険・退職金など)は「共有財産」として約半分ずつ分けるのが財産分与です。
長年にわたって専業主婦であったとしても、財産分与を請求することは可能です。
専業主婦で収入が無かったとしても、家事や育児の貢献は法的にも立派な財産形成への寄与とされます。
チェックすべき財産の例
- 預貯金
- 不動産(自宅の所有名義)
- 退職金(将来受け取る予定でも対象になることも)
- 有価証券・保険などの資産
熟年離婚の場合、婚姻期間が長いことが多く、その分財産分与の金額も大きくなる傾向にあります。夫の退職金の分与が見込める場合もありますし、持ち家の場合はどう分与するかが争点になる可能性があります。
離婚後の経済的不安を解消するため、しっかりと財産分与について話し合いをしてから離婚することを強くおすすめします。
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2. 年金分割の制度を知る
離婚後、生計を立てる大きな助けとなるのが「年金分割制度」です。
離婚時の手続きにより、婚姻中に納めた厚生年金保険料を分け合う制度で、専業主婦であっても将来受け取る年金を増やすことができます。
年金分割のポイント
- 年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類がある
- 時効(原則2年)に注意!離婚後すぐの申請が必要
熟年離婚後、3号分割をした人が受け取る年金の相場
年金分割の3号分割を受けた女性が受け取る平均年金月額は53,199円となっています(令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より)。
2024年の家計調査によれば、60~65歳の女性単身世帯の1か月あたりの支出はおよそ16万円となっており、年金だけでは生活費がおよそ11万円ほど不足することになります。
熟年離婚後の経済的なリスクをふまえ、後悔のないように決断しましょう。
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3. 住まいの確保
「出て行く側」「家を出て行かせる側」どちらになるかによっても状況は変わりますが、特に女性側が新たに賃貸物件などに住む場合、経済的負担や条件面での不安があります。
住まいのチェックポイント
- 離婚後すぐに住む場所があるか?
- 賃貸契約が可能か?(収入証明・保証人の確保)
- 実家への一時的な帰省も視野に入れる?
4. 就労・資格取得の準備
パート勤務、再就職を視野に入れるだけでなく、在宅ワークや資格取得など、今後の収入の柱を探ることも選択肢です。また、ハローワークや女性支援の就労支援窓口も積極的に活用を検討しましょう。
専業主婦が熟年離婚した後の生活費は?
熟年離婚後、女性の一人暮らしの生活費の相場
熟年離婚に踏み切る前に、離婚後の生活費を計算しておくことが重要です。熟年離婚後に必要になる生活費として、以下のようなものが挙げられます。
離婚後の生活費
- 家賃
- 食費・日用品費
- 水道光熱費
- インターネット・電話料金
- 医療費 など
以下は女性の一人暮らしにおける、1か月の生活費の平均を示したものになります。
生活費(円) | |
---|---|
35歳〜59歳の一人暮らし女性 | 180,007 |
60歳~65歳の一人暮らし女性 | 161,749 |
出典:2024年度 家計調査(家計収支編)
居住地や労働状況などによって個人差はありますが、熟年離婚後の生活を考えるうえで目安になるので、ぜひ参考にしてみてください。
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熟年離婚後の生活に役立つ支援制度・サポート
熟年離婚後に受けられる支援制度
熟年離婚後の収入や生活に不安がある専業主婦の方は、以下のような支援制度を利用できるかもしれません。
支援制度 | 内容 |
---|---|
児童扶養手当(母子手当) | 未成年の子どもがいるひとり親に支給 |
生活福祉資金貸付 | 一時的な生活資金の貸付制度 |
ひとり親家庭の医療費助成 | 自治体からの医療費の助成 |
その他自治体の支援制度 | 母子家庭への支援など |
他にも国や自治体が様々な支援を用意しているため、離婚前の準備として調べてみることをおすすめします。公的支援は一時的な援助にとどまる場合が多いですが、離婚後に生活を安定させ、経済的に自立するまでの支えとして役立つでしょう。
※制度の内容や対象条件は変更される場合があります。各自治体窓口や弁護士に相談して最新情報を確認しましょう。
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熟年離婚後、生活保護を受け取れる場合も
「年金分割をしていたら生活保護は受給できないのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。熟年離婚をしたあとであっても、収入が最低生活費に達していなければ、生活保護を受給できます。
最低生活費とは、厚生労働省が定める最低限の生活費のことをいいます。
熟年離婚で年金分割をしたとしても、生活保護を受けられなくなるといったことはありません。
熟年離婚後、病気などで介護が必要になったとしても、生活保護を受給していても入所できる介護施設はあります。「熟年離婚後に介護が必要になったらどうしよう」と不安に考えている方は、覚えておきましょう。
熟年離婚後の生活保護についてくわしく知りたいという方は、『離婚後に生活保護は受給できる?申請できる条件や注意点を解説』をご覧ください。
専業主婦が熟年離婚すると後悔する?
熟年離婚で十分に準備をしないまま離婚すると、「離婚しなければよかった」と後悔してしまうおそれはあります。
ただし、熟年離婚で幸せな人生を手に入れる女性も多いということは間違いありません。専業主婦が熟年離婚をすることによるメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
専業主婦が熟年離婚をするメリット
- 夫から解放される
- 新しい恋愛ができる
- 自由な時間が手に入る など
専業主婦が熟年離婚した後の人生を充実させるには、なにか趣味に打ち込んだり、新たな出会いを見つけたりすることが重要になります。
熟年離婚後の生活についてくわしく知りたいという方は、『女性の熟年離婚|その後の生活が悲惨?』をご覧ください。
離婚に向けて動く前に|弁護士に相談するメリットとは?
熟年離婚では、金銭面・法的手続き・住居・年金など、多くの問題が絡むため、早めに法律の専門家に相談することをおすすめします。
弁護士に相談するメリット
- あなたにとって有利な財産分与・年金分割のアドバイス
- 離婚交渉や調停、裁判におけるサポート
- 離婚協議書の作成
- 相手とのトラブルを避ける法的サポート
- 不安に寄り添った現実的な提案
特に「女性の離婚問題を多く扱っている弁護士」に相談することで、専業主婦ならではの悩みにも寄り添ってもらえるでしょう。
まとめ|あなたの人生、これからどうするかはあなた次第
専業主婦の熟年離婚は確かに大きな決断ですが、「しっかり準備すれば、十分に希望はある」ことも事実です。
不安に立ち止まるだけではなく、一歩踏み出すために「情報を集め」「制度を活用し」「信頼できる専門家に相談」することで、自分らしい人生を切り拓く選択が見えてきます。50代からの離婚は、やり直しではなく『これからの人生を自分で選び直せるチャンス』でもあります。
あなたの未来が、安心と希望に満ちたものになりますように。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了