マンション購入後に離婚決定…どう財産分与する?ローンはどうなる?

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離婚とマンション
  • 離婚時にマンションをどうすればいいの?
  • 離婚後も夫名義のマンションに住み続けることは可能?
  • ローンが残っているけど離婚できる?

せっかくマンションを購入したのに離婚することになってしまい、こういった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

マンションの財産分与は、どのように分け合うか、誰がローンを返済するかで争いが生じる可能性があり、双方が納得する解決方法を見つけるのは簡単ではありません。

この記事を読めば、マンションの財産分与に関する問題点と、その解決方法が分かります。

離婚後、購入したマンションはどうする?

マンション購入後に離婚する夫婦は多い?

マンション購入後に離婚してしまうという夫婦は意外と多いものです。

マンション購入にあたって、夫婦の価値観の違いがあらわになり、購入後は住宅ローン返済の不安もあいまって、ささいなことで口論になることが増え、お互いの気持ちが離れるケースもあるでしょう。

また、自分の部屋でひとりで過ごす時間が増える等して、コミュニケーション不足におちいり、夫婦仲が冷え切ってしまったなど、マンション購入後に離婚に至る理由は様々です。

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離婚後、マンションは財産分与する!

財産分与とは、離婚時に、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分け合うことをいいます。

財産分与では、預貯金、動産(例:家具)、不動産(例:持ち家・マンション)、有価証券、生命保険などの夫婦の共有財産を、半分ずつ分け合うのが原則です。

夫婦が婚姻中に取得したマンションも財産分与の対象ですが、分け方が複雑です。

現金ならばそれを半分ずつに分ければ済みますが、マンションの場合は部屋そのものを半分ずつにするのは現実的ではありませんので、マンションの価値を金銭に変換して分け合うのが一般的です。

離婚時に考えられる選択肢は、大きく分けて2つです。

マンションの財産分与

  1. マンションを売却する
  2. どちらかがマンションに住み続ける
    (ローン・名義変更などが問題に)

財産分与の前に調べること!

マンションの財産分与をおこなうには、まず、現在のマンションの価値を調べる必要があります。

そのためには、財産分与の話し合いを始める前に、以下の2つを調べておきましょう。

  • マンションの現在の評価額
  • 住宅ローンの残高

この2つの要素は、現在のマンションの価値を知るために必要です。

ローンの残高とマンションの評価額を照らし合わせることで、マンションがアンダーローンかオーバーローンかが分かります。

オーバーローン:住宅ローンの残債が住宅の評価額を上回っている状態

アンダーローン:住宅ローンの残債が住宅の評価額を下回っている状態

①マンションを売却する→現金化

1.住宅ローンがない場合

離婚時にマンションを売却し、売却代金を2人で分け合うのが、最もシンプルな財産分与の方法です。

住宅の売却代金を分け合う

マンションの現在の評価額が1,000万円、住宅ローンの残高が0円の場合、住宅ローンの返済はないので、マンションを売却して手元に残るお金は1,000万円です。

この場合、財産分与としては、夫婦は、各500万円ずつ手にすることになります。

ただし、マンションにローンが残っている場合、財産分与の方法が少し複雑です。

ローンのある家の財産分与の方法は、アンダーローンかオーバーローンかで異なるので、以下で詳しく見ていきましょう。

なお、ローンのある住宅を売却する方法についてより詳しく知りたい方は、『離婚したら住宅ローンはどうなる?折半すべき?財産分与の方法を解説』の中で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

2.アンダーローンの場合

マンションがアンダーローンであれば、売却代金で住宅ローンを完済できるため、大きな問題はありません。

この場合、売却代金から住宅ローンの残債を差し引いた額が、現在のマンションの価値ということになり、これを2人で分け合うことができます。

たとえば、夫名義のマンションの場合、夫がマンションを1500万円で売却できたときは、ローン残債をさしひいて手元に残った500万円の半分(250万円)を、夫から妻へ渡すという流れになるでしょう。

アンダーローンの住宅の財産分与

マンション購入後すぐに離婚することになった場合、売却するのはもったいないと感じる方もいるかもしれません。

ですが、築年数が浅い物件など、資産価値が高いうちに売却することで財産分与を有利にできるケースもあるでしょう。

3.オーバーローンの場合

オーバーローンのマンションは、通常の不動産売却は難しいものですが、金融機関の同意など一定の要件をみたした場合は「任意売却」が可能です。

しかし、たとえ任意売却ができたときでも、残債は残ります。

たとえば、1,000万円でマンションを売却できたとしても、ローン残債が1,500万円あるならば、500万円のローンがまだ残っていることになります。

そのため、住宅ローンの残債は折半するのか、それとも名義人が返済するのかなど、夫婦で決めておく必要があります。

オーバーローンの住宅の財産分与

②どちらかがマンションに住み続ける

1.住宅ローンがない場合

「住み慣れた家を離れたくない」「子どもの学校から近い」こういった理由で、離婚後もマンションに住み続けることを希望する方も少なくありません。

もちろん、夫婦の一方がマンションを受け取って、住み続けることも可能です。

その場合は、双方の受け取る財産が同じくらいになるよう、マンションを受け取らない方に対し、マンションの価値に相当する財産を渡すのが一般的です。

たとえば、マンションの現在の評価額が1,000万円、住宅ローンの残高が0円と仮定します。

この場合、夫から妻へ1,000万円のマンションを渡し、妻から夫へ500万円の現金を渡せば、双方が500万円分の財産を受け取ったことになります。

ちなみに、この500万円のように代償として渡すお金のことを、代償金と呼びます。

ただし、家に住み続ける場合も、ローンが残っていると複雑な問題が生じます。誰がローンを返済し続けるかという問題です。

家に住み続ける方がローンを引き継いでしまえばいいのではないかと思われるかもしれませんが、ローンを支払う人、すなわち名義人を変更するのは非常に困難ですので、対処法を考えなければいけません。

住宅ローンの残っている家の分け方については、『離婚後も住宅ローンのある家に妻が住む5つの方法とは?注意点も解説!』で詳しく解説しています。

2.アンダーローンの場合

アンダーローンの場合、マンションの実質的な価値は、評価額からローン残債を差し引いた額です。これを夫婦で半分ずつ分け合います。

たとえば、住宅の評価額が1,500万円、ローン残債が1,000万円の場合、住宅の実質的な価値は500万円です。

夫名義のマンションに夫が住み続けることになった場合、夫から妻に250万円分の財産を渡せば、2人が250万円ずつ財産を受け取ったということになります。

アンダーローンの住宅の財産分与

3.オーバーローンの場合

住宅ローンの残債がマンションの評価額を上回るオーバーローンの状態だと、このマンションの実質的な価値はマイナスになってしまいます。

マイナスの財産分与は行わないのが原則ですので、負債の部分を2人で分け合うことはしません

そして、どちらが住み続けるかに関わらず、ローンの名義人が離婚後もローンの返済を続けます

もっとも、夫婦の合意によって残債を折半することは可能です。

オーバーローンの住宅の財産分与

支払う義務を負うのはローンの名義人

ローンを完済するケース以外は、どちらかがローンを返済し続けることになります。返済義務を負うのは、ローンの名義人です。

したがって、夫名義でローンを組んでいるのであれば、離婚後にマンションに住むのが妻だったとしても、夫に返済の義務が残ります。

しかし、夫からしてみれば自分が住まない家の代金を払い続けることになり、不公平です。

夫名義のマンションに妻が住み続ける場合、考えうる選択肢は以下の5つです。

  • ①妻に名義変更して、妻が住宅ローンを支払っていく
  • ②妻が住宅ローンの借り換えをして、返済しながら住む
  • ③住宅ローンの債務者は夫のままで、妻が夫に家賃を支払う
  • ④離婚後も夫が住宅ローンを支払っていく
  • ⑤住宅ローンを一括返済する

また、夫が妻子の住むマンションのローンを支払うことで、養育費の代わりにするという方法を取ることもあります。

なお、ローンの名義人を変更するには金融機関の許可が必要ですが、簡単には認められません。

離婚時に住宅ローンの名義人を変更する方法については、『離婚で住宅ローンの名義変更をするには?ローンありの家の名義変更』で詳しく解説しています。

また、ローンの借り換えについては、『離婚したら住宅ローンの借り換えはできる?妻が家に住むための方法』の記事でくわしく解説しています。

購入したマンションの名義人の問題

離婚時には名義を変更する?

離婚時には、マンションの名義を住み続ける人の名義に変更しておかないと様々な不都合が生じます。

マンションが夫婦の共同名義である場合、共有名義の不動産を売却するには、名義人全員の同意が必要です。

つまり、共有名義のままにしていると、将来売却したくなった時に元夫・元妻に連絡を取って許可を得る必要があるのです。

さらに、すでに名義人の一方が亡くなっていた場合、その人の持っていた権利が分割されて相続されている可能性があるため、同意を得るのがますます難しくなってしまいます。

また、マンションに住み続けない人の単独名義になっていると、勝手に売却されてしまうおそれがあります。

名義変更の費用はどちらが払う?

不動産の名義変更をする際には、登録免許税がかかります。また、登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士に報酬を払う必要があります。

名義変更にかかる費用をどちらが負担するかについては、夫婦の話し合いで決定します。

ローンのある家の名義人を勝手に変えるのはNG

離婚時にはマンションの名義人を変える必要があるとお話ししましたが、ローンが残っている場合は勝手にマンションの名義人を変えてはいけません

住宅ローンがある場合は、物件の名義人とローンの名義人が同じ人になっているはずです。

離婚して住む人が変わったからといって、ローンの残っている物件の名義人を勝手に変更すると契約違反になってしまいます。

名義変更が必要な場合は、まずローンを借りている金融機関に相談してみましょう。

離婚とマンションの税金との関係

マンションの財産分与に税金はかかる?

通常の譲渡と違い、財産分与は基本的に非課税です。これは、財産分与の性格が、財産を譲るものというより、元々2人の財産であったものを清算する目的のものだからです。

ただし、例外的に財産分与に税金がかかる場合があります。それが以下の2つの場合です。

  • 財産分与で得た財産が常識からして多過ぎる場合
  • 税金逃れのために偽装離婚した場合

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離婚の財産分与に贈与税?不動産の税金特有の注意点や節税も解説

離婚すると住宅ローン控除はどうなる?

離婚後に住宅ローン控除を受けられなくなるケースがあります。

それは、住宅ローンの名義人が家を出る場合です。

住宅ローン控除の条件のひとつとして「本人が住んでいること」が求められます。したがって、マンションに元配偶者を住まわせて自分がローンを返済するといった形をとる場合、住宅ローン控除が適用されなくなってしまいます。

マンションの財産分与の注意点

共有名義のマンションの財産分与はどうなる?

共有名義のマンションとは?

共有名義の不動産は、名義人が何割ずつ持分を持っているかが決まっています。

夫と妻で2分の1ずつ持分があるケースもありますが、夫が3分の2、妻が3分の1の持分というケースもあります。

夫が2,000万円、妻が1,000万円のペアローンを組んでいるケースなどは、後者にあたるでしょう。

共有名義でもマンションの財産分与の割合は、原則2分の1ずつ

では、離婚時にこの持分割合のとおりにマンションの価値を分け合うかというと、そうではありません。

原則として、財産分与は持分割合に関わらず2分の1の割合で行います

マンションの持分が、夫3分の2、妻3分の1という割合でも、財産分与は2分の1ずつです。

※補足

財産分与の割合は夫婦の合意で変えることができます。双方の財産形成への貢献度に大きな差がある場合には、2分の1という割合は修正されることがあります。

共有名義のマンションの場合でも、財産分与としても、売却するか、いずれかが住み続けるかといった方法になります。

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贈与税はかからない

通常、不動産の持分を譲渡する際、贈与税が課されます。

しかし、離婚時の財産分与は夫婦の共有の財産を清算する手続きであり、贈与ではありません。

したがって、財産分与の場合は、基本的には贈与税がかからないことになっています。

自分のお金から出した頭金は返ってくる?

マンションを購入する際に、自分や親のお金から頭金の一部を出した方もいるはずです。頭金は財産分与で返ってくるのでしょうか。

ここで重要になるのが、共有財産特有財産という概念です。

共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産のことをいいます。財産分与の対象となるのは、この共有財産です。

他方、特有財産とは、一方に固有の財産のことをいい、財産分与の対象には含めません。以下のようなものが特有財産です。

  • 独身時代の貯金
  • 婚姻中に相続した財産
  • 婚姻中に一方が贈与された財産

夫婦が住宅を購入する際に、頭金を婚姻前の貯金から出したり、親から援助を受けて支払うことはよくあります。

親からの援助は贈与と捉えることができるため、一方が親から援助を受けて負担した頭金は、特有財産であるといえます。マンションの購入時に頭金の一部を特有財産から負担した場合、マンションの価値のうち一定の割合について、離婚時の財産分与の対象外にできる可能性があります。

離婚時の財産分与

ただし、親からの贈与は、夫婦の一方への贈与か、双方への贈与かがはっきりしないことが多いため、特有財産であると立証するのは簡単ではありません

また、必ずしも頭金の金額がそのまま戻ってくるわけではありません

購入時よりもマンションの価格が下がっていた場合に、一方が出した頭金をそのまま持っていくのは、もう一方に対して不公平だからです。

例として、5,000万円のマンションを購入する際に、1,000万円の頭金をすべて妻の親から贈与されたお金で支払ったというケースについて考えてみましょう。

この夫婦が離婚する時には、マンションの価値が3,000万円に下落していました。

この場合に、妻の「1,000万円分は特有財産だから財産分与しません」という主張が通ってしまうと、夫は1,000万円分の財産しか受け取れません。

この不公平を解消するために、負担した金額ではなく、購入代金全体のうち特有財産が占める割合に基づいて計算するという方法がよく用いられています。

この夫婦の場合、購入代金の5分の1が妻の特有財産から支払われました。

したがって、離婚時には、現在価格3,000万円のうちの5分の1、すなわち600万円が妻の特有財産として扱われ、残りの2,400万円を夫婦で半分ずつに分けることになります。

特有財産から出した頭金
岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

双方が特有財産から頭金を出した場合も同様に、その割合で特有財産の部分を決めることになります。

財産分与の公正証書をつくる

離婚後に、財産分与の内容でもめないようにするには、「財産分与の公正証書」(離婚給付等契約公正証書)を作成しておくとよいでしょう。

公正証書を作成することで、財産分与について合意した内容を証拠化でき、マンションをどうするのか、住宅ローンや養育費の支払い義務はどうなるのかなど、明確にすることができます。

財産分与の公正証書は、公証役場で作成することができます。

離婚協議書などを案文として持参すると、スムーズでしょう。

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まとめ

マンション購入後の離婚について最後に一言

マンションの財産分与で決めなければならないのは、以下のような事項です。

  • どちらがマンションに住み続けるか、あるいは売却するか
  • ローンをどちらがどのように返済するか
  • ローンの名義人や保証人をどうするか
  • マンションの名義人をどうするか
  • マンションの価格をどのような方法で評価するか
  • 売却や名義変更にかかる費用をどちらが負担するか
  • 購入費用の一部を特有財産として認めるか

離婚時にしっかりと取り決めをしておかなければ、後からトラブルになってしまう可能性があります。

離婚の財産分与は弁護士に相談しよう!

マンションの財産分与の後で考えられる最悪のシナリオは、ローン等の対処がうまくできず、競売や強制立ち退きにつながることです。

夫婦の話し合いで解決するのが難しければ、裁判所の離婚調停を利用する方法が考えられます。

また、離婚にくわしい弁護士に依頼すれば、財産分与の分け前の計算や、元配偶者との交渉を任せたりすることも可能です。

マンションなど、離婚の財産分与でお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了