有利な離婚条件で離婚する方法|相手が提示した条件への対処法も解説
離婚する場合、財産分与や養育費などの離婚条件の面で少しでも有利な内容で離婚したいですよね。
また、相手から離婚を切り出され離婚条件を提示された場合、「離婚したくない場合はどうすればよいのか」「不合理な離婚条件に納得できない」とお悩みの方も多いと思います。
そのような方に向けて、この記事では、「自分が離婚を希望しており、有利な離婚条件で離婚したい場合の対処法」と「相手が離婚を希望しており、離婚条件を提示してきた場合の対処法」を解説します。
適切な対応を決める前提として、離婚条件を決める際の実務上の考え方についてもご説明します。
目次
離婚条件はどのように決まる?
財産分与
財産分与とは、離婚の際、夫婦が婚姻期間中に築いた夫婦共有財産を原則として2分の1ずつ分配する制度です。
専業主婦の方にも基本的に2分の1ルールが適用されます。
分与の対象となる財産の名義は関係ありません。たとえ夫名義の預貯金等でも、婚姻期間中に貯蓄したものは財産分与の対象となります。
退職金も財産分与の対象となり得るので、相手方に対し退職金の有無や金額について明らかにするよう求めましょう。
特に熟年離婚の場合、退職金は財産分与の大きな割合を占めるケースが多いため、忘れず確認するようにしてください。
慰謝料
離婚する場合、離婚原因をつくった側に慰謝料の支払を請求できます。
慰謝料請求できる典型例は不貞行為(不倫、浮気のこと)やDVです。
一方、離婚理由が性格の不一致の場合や、夫婦双方に離婚の責任がある場合は慰謝料を請求できません。
離婚慰謝料の相場は、100万円〜300万円です。
行為の悪質性や、婚姻関係の破綻に対する影響の大きさなどの要因によって具体的な慰謝料金額は変わってきます。
慰謝料見込み額について気になる方は、無料相談を利用してぜひ一度弁護士に相談してみてください。
年金分割
年金分割とは、離婚した場合、婚姻期間中に納付した厚生年金の保険料の納付記録を分割する制度です。
配偶者が会社員や公務員の方は、年金分割によって老後に取得できる年金額が増える可能性があります。
相手が年金分割を拒否しても、家庭裁判所の手続きを利用して按分割合を決めることができます。
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・離婚時の年金分割の手続きとは?必要書類は?共働き・拒否した場合も解説
親権者
離婚する場合、必ず親権者を決めなければなりません。
親権者を決める際のポイントは、これまで主に監護養育を担ってきたのは誰かという視点です。さらに、子どもの意向も重視されます。
親権者になりたい場合、自分が主に監護養育を担ってきたことを基礎づける証拠として、母子手帳や保育園や幼稚園の連絡帳などを提出します。
子どもの監護に関する陳述書を説得的な内容にまとめることも重要です。
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面会交流
面会交流は、離婚後に子どもと非監護親が面会することです。
面会交流についてお互いの意見が食い違う場合は、家庭裁判所での調停・審判などを通し決めることになります。
調停の中で試行的面会交流を実施するなどして、問題がなければ面会交流の実施に向けて話し合いが進められます。
当事者間で合意できなければ、最終的に裁判官が判断することになります。
実務では、毎月1回程度の面会交流が認められるケースが一般的です。
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養育費・婚姻費用
養育費は、離婚後に子どもを監護する親が監護していない親に請求できるお金です。
婚姻費用は、夫婦と子どもの生活費のことです。
離婚前に妻が子どもを連れて別居し、夫に対し婚姻費用を請求するケースが多いです。
養育費・婚姻費用は、お互いの収入や子どもの数をもとに「改定標準算定表」に従って決められます。
調停では、算定表に従ってお互いが歩み寄るよう説得されるのが一般的です。
▼カンタン操作で目安がわかる
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離婚を希望し有利な離婚条件で離婚したい場合
離婚調停の前にまずは話し合いをする
離婚をしたい場合、「夫婦間の話し合い→離婚調停→離婚裁判」の流れで進むのが一般的です。
自分に有利な離婚条件で離婚したいなら、まずは夫婦間の話し合いによる協議離婚を目指しましょう。
夫婦で合意できれば、算定表や2分の1ルールに縛られずに養育費や財産分与について決めることができます。
例えば、養育費を算定表の基準よりも高くしたり、財産分与を2分の1以上にする合意も可能です。
夫婦の話し合いで離婚と離婚条件について合意できたら、できれば公正証書を作成しましょう。強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておけば、将来お金が支払われなかった場合、強制執行できます。
公正証書の作成が難しい場合は、少なくとも離婚協議書を作成しておきましょう。離婚条件についてきちんと書面化しておけば、将来裁判などのトラブルになった場合、有力な証拠になります。
Point
最初から離婚調停を申し立ててしまうと、夫の態度が硬直化してしまうおそれがあります。
そうなると、離婚条件に関する妻の言い分をまったく聞こうとしなくなる可能性も出てきます。
そのため、離婚を希望する場合、まずは離婚条件についてご自分の考えを整理し、それをもとに夫婦で話し合ってみましょう。
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・離婚の公正証書とは?作成の流れや内容は?メリットは強制執行?
相手が同意しなければ離婚調停へ
夫が離婚に同意しなかったり、離婚に合意しても離婚条件で折り合いがつかない場合は、離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停を有利に進めるポイントは、離婚裁判を意識した主張立証をすることです。
なぜなら、調停委員と裁判官から構成される調停委員会は、離婚裁判を見越して調停を進めているからです。
そのため、離婚調停においても、自分の主張が裁判でも認められるものであることを説得的に示すことがポイントです。
例えば、夫が離婚に応じない場合は、法定離婚事由(民法770条1項)があることを主張し、その事実を裏付ける証拠を提出します。
法定離婚事由とは、「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「回復の見込みのない強度の精神病」「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」の5つです。
この中のいずれか1つに該当すれば、強制的に裁判離婚が認められます。
離婚条件で折り合いがつかない場合、特に養育費や財産分与などお金の問題は、源泉徴収票や預貯金通帳などの客観的な資料と、類似の裁判例・審判例をもとに妻の主張の正当性を基礎づけることがポイントです。
Point
法的な問題で調停委員の納得が得られない場合は、評議を求めて裁判官の意見をきくと調停が進展することがよくあります。
評議とは、調停委員と裁判官の話し合いです。
裁判官は法律のプロなので、法的な問題に対し適切な判断をしてくれるはずです。
もしこちらの主張が100%通らなくても、裁判官の見解を踏まえてお互いに歩み寄る案を検討することで、離婚問題全体の解決に近づきます。
早期の離婚を実現したい場合は譲歩するのも一つ
「有利」と聞くと、どうしても金銭面のメリットに着目しがちです。
しかし、早期解決のメリットを優先させたい方にとっては、相手が応じやすいように譲歩した離婚条件を提示するのも一つの選択肢です。
例えば、実務では、離婚となると慰謝料請求に固執するケースが少なくありません。
もちろん、夫が不貞行為などの不法行為をした場合、妻には慰謝料を請求する法的な権利があります。
しかし、慰謝料の金額にこだわるほど離婚問題の解決は遠のいてしまいます。
慰謝料請求をする場合は、裁判になった場合にどの程度の金額が認められるかあらかじめ知っておくことが大切です。
多くの場合、裁判で認められる慰謝料額は、ご本人が考えているより低額なものにとどまります。
慰謝料見込み額を知った上で、「譲歩できるライン」と「譲歩できないライン」を決めておき、相手の出方を見ながら譲歩した案を提示すると早期解決につながる可能性が高くなります。
相手が有責配偶者なら相場より高額な条件提示を検討
相手が有責配偶者で別居期間も浅く、離婚裁判になったとしてもすぐには離婚が認められない場合は、相場より高額な条件提示もあり得ます。
有責配偶者の典型例は、不貞行為をした場合です。
夫が不貞行為をして、しかも早期の離婚を希望している場合は、相場よりも高めの慰謝料請求に応じる可能性があります。
ただし、相場を大幅に超えた慰謝料請求をすると、相手の態度が硬化して交渉を早々に打ち切られてしまうおそれがあります。
交渉成立のためには、最初の条件提示の内容や条件を調整するタイミングが大切です。
離婚条件の交渉は、交渉事に精通した弁護士に任せるのがおすすめです。
相手から離婚や離婚条件を提示された場合
離婚したくない場合の対処法
相手が離婚を希望する場合も、通常は「夫婦間の話し合い→離婚調停→離婚裁判」の流れで進みます。
夫から離婚を切り出され、妻としては離婚したくないと思っている場合、まずは夫婦の話し合いで離婚を拒否します。
相手が勝手に離婚届を提出しないよう、本籍地の市区町村役場に離婚届の不受理届を提出しておくとよいでしょう。
なお、夫が家を出ていってしまい、生活費の支払がない場合は、婚姻費用分担請求調停を申し立てます。
夫から離婚調停を申し立てられた場合、ここでも一貫して離婚を拒否します。
離婚調停はあくまで夫婦の話し合いなので、妻が離婚を拒否し続ければ、調停離婚が成立することはありません。
夫が最終手段として離婚裁判を提起した場合、夫が有責配偶者に当たる事実がないか検討します。
実務上、有責配偶者からの離婚請求は裁判でそう簡単には認められないからです。
そこで、もし夫が不貞行為やDVをしてきたなら、その事実を主張をするとともに、有責行為を裏付ける証拠を提出します。
条件次第では離婚に応じてもよい場合の対処法
条件次第では離婚に応じてもよいと考えている場合は、離婚に応じられる条件を具体的に整理します。
そして、夫の提示してきた離婚条件と食い違うところを整理し、歩み寄れないか話し合いを試みます。
当事者での話し合いが難しければ、早めに弁護士が関与して、夫との交渉を進めるのがおすすめです。
夫が提示してきた離婚条件に同意できなければ離婚調停→離婚裁判と進むことになります。
離婚調停や離婚裁判を有利に進めるには証拠が大切です。
夫の不貞やDVなどの証拠に加え、財産分与や養育費に関する証拠も別居前から入念に集めておくことがポイントです。
具体的に集めておくべき証拠については、関連記事をご覧ください。
Point
自分の力では夫の財産を見つけられない場合は、弁護士に相談すると解決のきっかけになります。
弁護士は弁護士会照会等の制度を利用できるため、財産分与の対象財産を発見できる可能性が高まります。
ただし、預貯金について照会するには、金融機関と支店名までわかっている必要があります。
その他にも、調査したい事項によって、事前に知っておく必要のある情報が異なります。
そのため、離婚を希望する場合や、相手から離婚を切り出された場合は、別居前に早めに弁護士に相談して、財産分与のため特定すべき情報などについて具体的なアドバイスをもらうのがおすすめです。
自分の力では夫の財産を見つけられない場合は、弁護士に相談すると解決のきっかけになります。
弁護士は弁護士会照会等の制度を利用できるため、財産分与の対象財産を発見できる可能性が高まります。
ただし、預貯金について照会するには、金融機関と支店名までわかっている必要があります。
その他にも、調査したい事項によって、事前に知っておく必要のある情報が異なります。
そのため、離婚を希望する場合や、相手から離婚を切り出された場合は、別居前に早めに弁護士に相談して、財産分与のため特定すべき情報などについて具体的なアドバイスをもらうのがおすすめです。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了