離婚後の生活費はもらえる?支払い義務の解説と請求のための交渉術

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離婚後の生活費

離婚後の生活費を元配偶者に支払うよう、法的に強制することはできません。原則として、離婚届を出した時点で相手の扶養義務は消滅します。

ただし、諦めるのは早いです。

総務省統計局の家計調査(2025年)によると、シングルマザー世帯の月平均消費支出は約26万円、35歳〜59歳の一人暮らし女性では約18万円が目安です。こうした生活費を確保する手段として、扶養的財産分与や解決金といった法的な方法があります。

この記事では、離婚後の生活費をもらえるケース・相場・請求のための交渉術について解説します。

離婚後の生活費の支払い義務は原則ない

原則として、離婚後の生活費を支払うよう、相手に強制することはできません。

言い換えれば、元配偶者が離婚後に相手へ生活費を支払う義務はないということになります。

離婚成立までは婚姻費用として生活費をもらえる

法律上、別居中の生活費と離婚後の生活費はまったく別物として扱われます。

別居中でも夫婦であることに変わりはないため、収入の多い配偶者に対して婚姻費用として生活費の支払いを請求することができます。

一方、離婚後は法的に他人となるため、相手を養う義務(扶養義務)はなくなります
そのため、各自が自分の収入で生活することになります。

なお、離婚前の別居期間に生活費が支払われていない場合の対処法については、関連記事『離婚で今までの生活費を取り戻す!未払い分を請求し回収する方法』をご覧ください。

法的義務はなくても合意があれば受け取れる

相手に支払いを強制することはできませんが、任意で相手が生活費を支払ってくれるという場合は、離婚後も生活費を受け取ることが可能です。

法的に強制はできないので、離婚条件を決めるときに話し合っておくことが重要になります。

離婚後の生活費は月いくら必要?

「実際に離婚した後の生活費の相場はいくらくらいなのか」という方もいると思います。
離婚後にかかる生活費としては、以下のようなものが挙げられます。

離婚後の生活費

  • 家賃
  • 食費・日用品費
  • 水道光熱費
  • インターネット・電話料金
  • 医療費
  • 子どもの教育費 など

総務省統計局の家計調査(2025年)を参考にすると、女性の一人暮らしやシングルマザーの家庭における、平均的な1か月の生活費は以下が目安となります。

世帯構成生活費
母親と18歳未満の子どもの世帯263,111円
34歳以下の一人暮らし女性188,449円
35歳〜59歳の一人暮らし女性183,805円
60歳以上の一人暮らし女性154,695円
出典:総務省統計局 家計調査報告(2025年)

35歳〜59歳の一人暮らし女性の月平均消費支出は約18万円、未成年の子どもをもつシングルマザー世帯では約26万円が目安です。

この平均は住居費を含んだ目安ですが、家賃は地域によって大きく変動するため、状況に応じて考慮する必要があります。

まずは自身の状況で、月々いくら必要か離婚後の生活をイメージしておくことが大切です。

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離婚後に金銭を請求できる4つの手段

生活費としては請求できなくても、財産分与や慰謝料など、名目を変えることで、元配偶者から金銭を受け取れる場合があります。

財産分与

扶養的財産分与が認められなかったとしても、夫婦が離婚をする時は、婚姻中に二人で築いた財産を公平に分け合うことができます。

財産分与の割合(寄与割合)は、2分の1、つまり半分ずつ分けるのが原則です(2分の1ルール)。

たとえ一方が専業主婦であったとしても、財産を2分の1ずつ分けるというのが調停や裁判での運用です。

財産分与の対象(共有財産)となるのは、以下のような財産です。

  • 不動産
  • 現金・預貯金
  • 自動車
  • 家財道具
  • 退職金
  • 年金
  • 有価証券
  • 保険解約返戻金

婚姻中に夫婦が協力して築いた財産であれば、支払いをどちらがしたか、どちらに名義があるかなどにかかわらず、夫婦の共有財産となります。

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養育費

離婚後の生活費を相手に支払うよう、法的に強制することはできませんが、子どもを引き取る場合は元配偶者に養育費を請求することができます。

養育費を受け取ることになった場合は、「ひと月あたりの金額」「支払い期間」「支払い時期・方法」「特別な出費があったときの負担」についてどうするかを決め、取り決めた内容を公正証書に残しておくようにしましょう。

2026年4月1日施行の民法改正により、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合でも、子どもを監護している親は子ども1人につき月額2万円の暫定的な養育費(法定養育費)を請求できるようになります。この制度は2026年4月1日以降に離婚した場合にのみ適用されます。

あくまで取り決めが完了するまでの暫定的な制度であるため、最終的には双方の収入をもとに適正な額を取り決めることが推奨されています。

さらに、養育費の債権には先取特権が認められ、取り決めを記した書面があれば、公正証書などの債務名義がなくても差押えの手続を進めることが可能になります。

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離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?

慰謝料

場合によっては、離婚の慰謝料を分割払いにすることで、毎月の生活費とみなして受け取るということもあります。

ただし、慰謝料はすべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不倫などの不法行為がある場合が前提となります。

離婚の慰謝料についてくわしく知りたいという方は、『離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケース・種類・条件を弁護士が解説』をご覧ください。

扶養的財産分与

離婚後は相手に生活費の支払いを強制することはできません。ただし、「扶養的財産分与」という形で、離婚後の生活を支えるための金銭を受け取れる可能性があります。

扶養的財産分与とは、離婚後に生活が困難になる配偶者を扶養する目的で認められる財産分与です。たとえば、専業主婦であった配偶者が離婚により生活基盤を失う場合に、慰謝料や養育費とは別に生活状況を考慮して金額が決められることがあります。

金額は通常、婚姻費用(生活費)より低い水準で、生活保護の最低生活費なども参考にしながら、支払う側に過度な負担が生じない範囲で決められます。支払い期間は、受け取る側が経済的に自立するまでに必要な期間を目安に判断されるのが一般的です。

扶養的財産分与を行うかどうかは、まず夫婦の話し合いで決めます。合意できない場合は家庭裁判所に調停を申し立て、調停でもまとまらなければ家事審判に進みます。

裁判所に扶養的財産分与が認められるかどうかは、次のような要素が影響します。

扶養的財産分与に影響する要素

  • 年齢はどうか(高齢なほど金額も高くなる)
  • 持病はあるか
  • 子どもの親権をもっているかどうか
  • 婚姻期間はどうか(長いほど金額も高くなる)
  • 専業主婦かどうか
  • 扶養的財産分与をする側の収入はどうか(多いほど金額も高くなる) など
岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

実務では扶養的財産分与は例外的な措置とされ、実際に認められるケースは多くありません。

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離婚後の生活費を請求する交渉術

法的な義務がない相手から金銭を受け取るには、単に「生活費がほしい」と伝えるだけでは不十分です。

相手が合意しやすい名目を選び、支払いのルールを明確にする必要があります。ここでは、交渉を成功させるための具体的なポイントを解説します。

生活費ではなく解決金として交渉する

離婚後の生活費を解決金という形で金銭を支払ってもらう方法があります。

離婚の解決金とは、夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金のことです。

離婚を求める側から「解決金として〇〇万円払うから早く離婚してほしい」と申し入れたり、離婚を求められた側が「解決金として××万円払ってくれるならすぐに離婚してもいい」などと提案したりします。

ただし、解決金は法律上の請求権に基づくものではないため、解決金という名目で裁判を起こすことはできません。

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受け取り方法と期間を取り決める

相手が支払いに合意した場合は、「どのように受け取るか」と「いつまで受け取るか」を具体的に決めておくことが重要です。

まず受け取り方法については、一括払いにするのか、分割払いにするのかを選ぶ必要があります。

まとまった金額を一括で求めると、相手が「そんな金額は払えない」と拒否反応を示しがちです。
そのような場合には、分割払いに切り替え、毎月の生活費に近い形で受け取る方法が現実的です。

また、支払い期間についても曖昧にせず、「いつまで支払うのか」を取り決めておきましょう。

法律上、生活費をいつまで支払うかについて明確な期限の定めはありません。そのため、病気などで働くことが難しい事情がある場合には、理論上、終身にわたる支払いを取り決めることも可能です。

生活費の取り決めは公正証書に残しておく

扶養的財産分与が認められたり、相手が離婚後も生活費の支払いに同意した場合は、その取り決めを公正証書に残しておくようにしましょう。

公正証書とは、公証役場にて公証人に依頼して作成してもらう公文書です。
また、金銭の支払いが履行されなかった場合、公正証書に強制執行認諾文言を入れることができれば、裁判所の判決をもらわなくても、強制執行(財産の差押え)ができます。

「いつまで支払うのか」「金額はいくらか」といったことを、きちんと公正証書の形に残しておくことを強くおすすめします。

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離婚後の生活を支える公的支援制度

離婚後の生活を安定させるために、利用できる公的なお金や支援、サービスについて確認しておくことをおすすめします。

元配偶者からの金銭だけに頼らず、以下の公的支援を組み合わせることで、経済的な基盤を固めることができます。

離婚したときにもらえるお金

  • 児童手当
  • 児童扶養手当(母子手当)
  • 児童育成手当
  • 特別児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 就学援助
  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金
  • 生活福祉資金貸付制度
  • 女性福祉資金貸付制度 など

なかには、ひとり親家庭への医療費助成制度を受けられる場合もあります。生活保護についても調べておくと安心です。

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離婚後の生活費に関するよくある質問

Q. 離婚後は生活費を払う義務がある?

離婚すると夫婦の扶養義務はなくなるため、元配偶者に生活費を支払う法的義務は原則としてありません。

離婚後の生活が困難になる場合には、生活の安定を支える目的で「扶養的財産分与」が認められることがあります。これは、離婚後の自立や生活保障を考慮して、金銭などの給付を行う財産分与の一種です。

Q. 扶養的財産分与はいくらもらえる?

扶養的財産分与の内容や金額は、当事者の収入や資産、健康状態、就労の可能性など、さまざまな事情を踏まえて決められます。裁判所は、清算的財産分与や慰謝料だけでは離婚後に自立した生活を維持することが難しいかどうかという観点から、扶養的財産分与の必要性を判断します。

実際の裁判例では、婚姻期間や主婦としての貢献などが考慮され、100万円を超える扶養的財産分与が認められたケースもあります。

Q. 財産分与や解決金に税金はかかる?

離婚に伴って受け取る財産分与や慰謝料、解決金は、原則として贈与税や所得税の課税対象にはなりません。ただし、一般的な範囲を大きく超える高額な金額である場合や、不動産を受け取る場合などには、課税が生じる可能性があります。

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離婚後の生活費を請求できるかどうかは弁護士に相談!

離婚後の生活費を相手に支払うよう、法的に強制することはできません。ただし、実務上は多くありませんが、扶養的財産分与といった形で生活費を受け取ることは可能です。

離婚後の生活費を請求したいとお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、扶養的財産分与が認められそうかどうか、法的な観点からアドバイスしてくれます。

離婚後の生活費が請求できないという結果になったとしても、財産分与や慰謝料、親権・養育費といったほかの離婚条件を交渉するうえで心強い味方になってくれるはずです。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了