離婚後の生活費を元配偶者に請求できる?請求できるものは?
「離婚するとシングルマザーになる。離婚後も生活費はもらえるのか」
「50代、60代を迎えて離婚後の生活が心配。離婚後も生活費を相手に請求したい」
離婚した後、配偶者に対して生活費を請求できるのかどうか知りたいと考えている方はいませんか。
とくに、専業主婦(夫)だった場合や、離婚してシングルマザー(ひとり親家庭)になるという場合は、離婚後の生活費について不安に思うかもしれません。
離婚後の生活費を相手に支払うよう、法的に強制することはできません。ただし、双方の同意があれば、扶養的財産分与といった形で生活費を受け取ることは可能です。
今回は、離婚後の生活費をもらうことができるケースや、離婚後の生活費の相場、離婚後の生活費に関するポイントについて解説します。
目次
離婚後の生活費は相手に請求できる?
離婚後の生活費を支払うよう強制することはできない
原則として、離婚後の生活費を支払うよう、相手に強制することはできません。言い換えれば、夫が離婚後に妻に対して、生活費を支払う義務はないということになります。
なお、別居中の場合は、夫婦であることには変わりありませんので、別居中にも収入の多い方の配偶者に婚姻費用の支払いを請求することができます。
また、相手に支払いを強制することはできませんが、任意で相手が生活費を支払ってくれるという場合は、離婚後も生活費を受け取ることが可能です。法的に強制はできないので、離婚条件を決めるときに話し合っておくことが重要になります。
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双方の同意があれば扶養的財産分与という形で生活費がもらえる
離婚後の生活費を相手に支払うよう強制することはできません。ただし、扶養的財産分与という形で、生活費をもらえるよう取り決めることができる可能性はあります。
扶養的財産分与とは、離婚後に生活が困窮する配偶者を扶養する目的の財産分与です。
たとえば、夫の不貞行為などが原因で専業主婦の妻が離婚せざるを得なくなり、生活が困窮することが予測される場合、慰謝料や養育費とは別に、離婚後の生活費を考慮して財産分与の金額を決める、といった例が該当します。
扶養的財産分与の金額は生活の状況によりますが、生活費(婚姻費用より低額な額)の1年分程度の額を支払うのが一般的です。
扶養的財産分与をおこなうかどうかについては、夫婦がお互いに話し合って決めることになります。「話し合いがまとまらない」「相手が扶養的財産分与の支払いを拒否している」といった場合は、調停を申し立てましょう。調停でも話がまとまらなければ、家事審判に進むことになります。
裁判所に扶養的財産分与が認められるかどうかは、次のような要素が影響します。
扶養的財産分与に影響する要素
- 年齢はどうか(高齢なほど金額も高くなる)
- 持病はあるか
- 子どもの親権をもっているかどうか
- 婚姻期間はどうか(長いほど金額も高くなる)
- 専業主婦かどうか
- 扶養的財産分与をする側の収入はどうか(多いほど金額も高くなる) など
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慰謝料の分割払いという形で生活費とみなすことも
場合によっては、離婚の慰謝料を分割払いにすることで、毎月の生活費とみなして受け取るということもあります。
ただし、慰謝料はすべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不倫などの不法行為がある場合が前提となります。
離婚の慰謝料についてくわしく知りたいという方は、『離婚の慰謝料がもらえるのはどんな時?相場はいくら?』をご覧ください。
離婚後の生活費を請求するときに決めること
生活費をどのように受け取るか
相手が生活費の請求を認めた場合は、生活費をどのように受け取るかについて取り決めておきましょう。
たとえば、「一括で受け取るのか」「一定額を毎月受け取るのか」といったようなことについて考えておく必要があります。
生活費をいつまで受け取るか
生活費をいつまで支払ってもらうかについても取り決めておくべきでしょう。
法律上、いつまで生活費を支払うかについて明確な規定はありません。そのため、病気などで仕事をすることが困難である場合には、元配偶者が亡くなるまで生活費を支払うよう取り決めることも理論上可能です。
離婚後の生活費の相場はいくら?
「実際に離婚した後の生活費の相場はいくらくらいなのか」という方もいると思います。離婚後にかかる生活費としては、以下のようなものが挙げられます。
離婚後の生活費
- 家賃
- 食費・日用品費
- 水道光熱費
- インターネット・電話料金
- 医療費
- 子どもの教育費 など
以下は女性の一人暮らしとシングルマザーの家庭における、1か月の生活費の平均を示したものになります。
生活費(円) | |
---|---|
子どもが18歳未満の世帯 | 232,079 |
34歳以下の一人暮らし女性 | 172,242 |
35歳〜59歳の一人暮らし女性 | 182,527 |
60歳~の一人暮らし女性 | 151,414 |
一人暮らしの場合はおよそ17万円、小さな子どもをもつシングルマザーの場合はおよそ23万円が生活費の平均となっています。
もちろん、実家暮らしか賃貸かどうか、大きな病気にかからないかどうかといった点で生活費は増減します。
離婚前に相場を確認して、離婚後の生活をイメージしておくことが大切です。
離婚で請求できたり、離婚後にもらえたりするお金
財産分与
扶養的財産分与が認められなかったとしても、夫婦が離婚をする時は、婚姻中に二人で築いた財産を公平に分け合うことができます。
財産分与の割合(寄与割合)は、2分の1、つまり半分ずつ分けるのが原則です(2分の1ルール)。
たとえ一方が専業主婦であったとしても、財産を2分の1ずつ分けるというのが調停や裁判での運用です。
財産分与の対象(共有財産)となるのは、以下のような財産です。
- 不動産
- 現金・預貯金
- 自動車
- 家財道具
- 退職金
- 年金
- 有価証券
- 保険解約返戻金
- 住宅ローン
婚姻中に夫婦が協力して築いた財産であれば、支払いをどちらがしたか、どちらに名義があるかなどにかかわらず、夫婦の共有財産となります。
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・夫婦の共有財産|離婚時に財産分与の対象になるもの・ならないもの
養育費
離婚後の生活費を相手に支払うよう、法的に強制することはできませんが、子どもを引き取る場合は元配偶者に養育費を請求することができます。
養育費を受け取ることになった場合は、「ひと月あたりの金額」「支払い期間」「支払い時期・方法」「特別な出費があったときの負担」についてどうするかを決め、取り決めた内容を公正証書に残しておくようにしましょう。
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・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
慰謝料
場合によっては、離婚の慰謝料を分割払いにすることで、毎月の生活費とみなして受け取るということもあります。
ただし、慰謝料はすべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不倫などの不法行為がある場合が前提となります。
離婚の慰謝料についてくわしく知りたいという方は、『離婚の慰謝料がもらえるのはどんな時?相場はいくら?』をご覧ください。
公的支援
離婚後の生活費を相手に支払うよう、法的に強制することはできません。扶養的財産分与が認められることもレアケースとなっています。
そのため、離婚に踏み切る前に離婚後にもらえる公的なお金や支援、サービスについてある程度調べておくことをおすすめします。
離婚したときにもらえるお金として、以下のようなものがあります。
離婚したときにもらえるお金
- 児童手当
- 児童扶養手当(母子手当)
- 児童育成手当
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- 就学援助
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金
- 生活福祉資金貸付制度
- 女性福祉資金貸付制度 など
なかには、ひとり親家庭への医療費助成制度を受けられる場合もあります。生活保護についても調べておくと安心です。
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・離婚後に生活保護は受給できる?申請できる条件や注意点を解説
解決金
相手に離婚後の生活費を支払うよう強制することはできませんが、解決金という形で金銭を支払ってもらえるケースがあります。
離婚の解決金とは、夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金のことです。
離婚を求める側から「解決金として〇〇万円払うから早く離婚してほしい」と申し入れたり、離婚を求められた側が「解決金として××万円払ってくれるならすぐに離婚してもいい」などと提案したりします。
ただし、解決金には、請求の法的根拠があるわけではないため、裁判で請求することはできないということを覚えておきましょう。
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離婚後の生活費を請求するときのポイント
生活費をもらって離婚するとき税金はかからない
離婚をするときに、慰謝料という形ではなく、まとまった金額を生活費として受け取ることを離婚条件に盛り込む場合があると思います。
その場合、生活費に相当する金額について、贈与税といった税金の対象にはならないということを覚えておきましょう。
原則として、相当額を超えるような高額な場合でなければ、慰謝料についても所得税や贈与税の対象とはならないため、その点はご安心ください。
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生活費の取り決めは公正証書に残しておく
扶養的財産分与が認められたり、相手が離婚後も生活を支払うことに同意したりした場合は、その取り決めを公正証書に残しておくようにしましょう。
公正証書とは、公証役場にて公証人に依頼して作成してもらう公文書です。また、金銭の支払いが履行されなかった場合、公正証書に強制執行認諾文言を入れることができれば、裁判所の判決をもらわなくても、強制執行(財産の差押え)ができます。
「いつまで支払うのか」「金額はいくらか」といったことを、きちんと公正証書の形に残しておくことを強くおすすめします。
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・離婚の公正証書とは?作成の流れや内容は?メリットは強制執行?
離婚前の生活費はさかのぼって請求できない
夫婦が婚姻している間の生活費を「婚姻費用」といいます。
離婚前の別居中は、婚姻費用の支払いを請求することはできますが、離婚した後は生活費を支払ってもらうことはできなくなります。
また、離婚前に生活費をもらっていなかったとしても、後からさかのぼって請求することもできないため注意が必要です。
たとえば、別居開始から1年経ったときに婚姻費用を請求すると、1年分の婚姻費用は調停・審判では認められず、請求したとき以降の婚姻費用しか受け取れません。
別居を始めたらすみやかに婚姻費用の請求をおこなうことをおすすめします。
また、別居中に支払ってもらった生活費について、離婚した後で元配偶者に「生活費を返せ」などといわれても、応じる必要はないということも覚えておきましょう。
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離婚後の生活費を請求できるかどうかは弁護士に相談!
離婚後の生活費を相手に支払うよう、法的に強制することはできません。ただし、レアケースとはなりますが、扶養的財産分与といった形で、双方同意のもと生活費を受け取ることは可能です。
離婚後の生活費を請求したいとお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、扶養的財産分与が認められそうかどうか、法的な観点からアドバイスしてくれます。
離婚後の生活費が請求できないという結果になったとしても、財産分与や慰謝料、親権・養育費といったほかの離婚条件を交渉するうえで心強い味方になってくれるはずです。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
ただし、実務的には、扶養的財産分与あくまで例外的な措置であり、認められるケースは正直に言うと非常に少ないのが現状です。