スピード離婚する理由とは?すぐ離婚する夫婦の特徴やメリット・デメリットを解説
「勢いで結婚したが失敗した。スピード離婚してしまいそう」
「スピード離婚をして恥ずかしいと言われないか気になる」
ニュースなどで「スピード離婚」という言葉を耳にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
「婚姻期間が〇年以下の離婚がスピード離婚である」といったような定義はありません。しかし、一般的には婚姻期間が2、3年以内での離婚をスピード離婚とみなすことが多いです。
今回は、スピード離婚に陥ってしまう理由や、スピード離婚をするときのメリット・デメリット、スピード離婚をするときに考えるべき離婚条件などについて解説します。
なぜスピード離婚してしまう?
結婚したばかりですぐに離婚したいと思う理由
「結婚したばかりですぐに離婚したい」と考える理由として、以下のようなものが挙げられます。
結婚したばかりですぐに離婚したいと思う理由
- 性格が合わない(性格の不一致)
- 精神的に虐待する(モラハラ・精神的DV)
- 生活費を渡さない(経済的DV)
- 暴力を振るう(身体的DV)
- 異性関係(不倫・浮気)
- 浪費する
- 性的不調和(セックスレス・性の不一致)
- 家族親族と折り合いが悪い
- 家庭を捨てて省みない
- 酒を飲み過ぎる
- 同居に応じない
- 病気 など
なかには「経歴や収入などを偽っていた」「将来の見通しがずれていた」といった、結婚してから相手のウソに気づいたり、相手に違和感を覚えたりするケースもあります。
よりくわしく離婚原因について知りたいという方は、『最新の離婚原因ランキングを解説!1位は男女ともに…』をご覧ください。
すぐ離婚してしまう人や夫婦の特徴
すぐ離婚してしまう人や夫婦の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
すぐ離婚してしまう夫婦の特徴
- パートナーや自分が、熱しやすく冷めやすい
- お互いに感謝や思いやりを伝えようとしない
- 仕事などの理由で一緒にいる時間が少ない
- 自分の感情を優先させてしまう
- 見栄や世間体を優先してしまう
- 子どもの教育方針や金銭感覚についてズレがある など
もちろん、特徴に当てはまるからといって必ずスピード離婚してしまうということではありません。しかし、これらの特徴がスピード離婚に踏み切る夫婦に当てはまることが多いのも事実です。
スピード離婚に踏み切るメリット
「スピード離婚をする人がどれくらいいるのか」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
以下は離婚した夫婦の総数と、一般的にスピード離婚といわれる結婚(同居)期間3年以内に離婚した夫婦が何組いるかをまとめた表になります。
離婚した夫婦の総数(179,096) | |
---|---|
同居してから1年未満に離婚した夫婦の数 | 8,971 |
同居してから3年未満に離婚した夫婦の数 | 32,214 |
出典:令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況
離婚した夫婦の総数が179,096組であるなか、同居してから3年未満に離婚した夫婦の数は32,214組となっており、その割合は全体の約18%となっています。
一般的にスピード離婚といわれる同居して3年以内に離婚した夫婦は、離婚した夫婦の5~6組に1組の割合となります。そのため、スピード離婚自体は珍しいことではないといえるでしょう。
ここでは、スピード離婚に踏み切るメリットを解説します。
無駄な時間を過ごさなくて済む
スピード離婚に踏み切ることのメリットとして、無駄な時間を過ごさなくて済むことが挙げられます。
性格の不一致や価値観のずれなどを長年我慢して、結局離婚してしまうよりは、精神的なストレスを軽減できるメリットもありますので、早めに結婚生活に見切りをつけて新しい生活を進めることをおすすめします。
早めに再スタートを切ればその分、自分自身のために長く時間を費やすことができるため、新たなパートナーに出会えたり、再就職できたりする可能性も高くなるかもしれません。
離婚条件で決めることが少ない
スピード離婚に踏み切ることのメリットとして、離婚するときの条件について決めることが少なく済むといったことが挙げられます。
離婚をするときには、財産分与や慰謝料、養育費といった離婚条件について決めていきます。
スピード離婚の場合は、婚姻期間が短いため、「財産分与の対象となる財産が少ない」といった理由で、決めておくべき条件が少なくて済むケースが多いです。
結婚前の生活環境に戻しやすい
スピード離婚に踏み切ることのメリットとして、生活環境を戻しやすいといったことが挙げられます。
結婚生活に早期に見切りをつけて再スタートすることができるため、結婚したときに会社を辞めていたとしても、ブランクが短く次の職を見つけやすい可能性があります。
スピード離婚したときのデメリット
世間体や他人からの目線が気になる場合がある
スピード離婚をしてしまうと、世間や他人からの目線が気になってしまう場合があります。
たとえば、「結婚するとき、親族や友人に大々的に祝福されたのに離婚してしまった」といった場合は、他人からよく思われていないのではないかと感じる方もいるでしょう。
また、親族の価値観や住む地域によっては、「スピード離婚は恥ずかしいものだ」と捉えられるおそれがあります。
将来的に再婚を考えるようなパートナーに出会ったとしても、スピード離婚の事実を伝えたときに「何か問題があるのではないか?」と懸念を抱かれる場合もあるかもしれません。
経済的に苦しくなるおそれがある
スピード離婚をすると、経済的に苦しくなってしまうおそれがあります。
たとえば、結婚を機に仕事を辞めて専業主婦になった場合、離婚後には生活費のために復職や再就職を考える人が多いと思います。しかし、結婚前の生活環境に戻しやすいとはいえ、場合によってはうまく働き口を見つけるのが難しいこともあるでしょう。
離婚を急いでしまい、経済的に自立していない状態で離婚してしまうと、離婚後の生活が厳しくなってしまうことがあるので注意しましょう。
後悔してしまうおそれがある
スピード離婚のデメリットとして、離婚を急ぎすぎてしまい、後悔してしまうおそれがあるといったことが挙げられます。
時間が解決したかもしれないような問題についても、感情的なまま離婚に踏み切ってしまうケースがあります。そのような場合だと、後から「離婚するほどではなかった」「我慢すればよかった」といったように後悔することもあるでしょう。
勢いで離婚に踏み切るのではなく、今一度冷静に問題を見極めたうえで次の行動に移ることが大切です。
スピード離婚をするときの離婚条件
財産分与や年金分割は少額になる可能性が高い
スピード離婚をするときであっても、財産分与(夫婦が婚姻期間中に築いた財産を離婚時に公平に分配すること)がおこなわれます。
財産分与の割合(寄与割合)は、2分の1、つまり半分ずつ分けるのが原則です(2分の1ルール)。
スピード離婚をするときも財産分与はできる点を覚えておきましょう。
ただし、独身時代の預貯金や、独身時代に購入した不動産や自動車などは財産分与の対象外です。婚姻期間が短いため、財産分与の対象となる資産が少なくなる可能性が高い点に注意が必要です。
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同じく、スピード離婚であっても、夫婦の双方あるいは片方が厚生年金に入っていれば年金分割(夫婦が婚姻している間に納めた年金の保険料を分け合うこと)ができます。
ただし、婚姻期間が短いため、財産分与と同じように対象となる年金が少額になる可能性が高い点に注意しましょう。
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慰謝料が認められるかはケースバイケース
「スピード離婚するとき、夫に慰謝料は請求できるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。場合によっては、慰謝料請求が認められることがあります。
離婚慰謝料とは、離婚の原因を作った方が、もう一方の精神的苦痛を補償するために支払うお金です。
離婚の慰謝料は、すべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不貞行為やDV、モラハラといった不法行為がある場合が前提となります。
スピード離婚の原因が配偶者の不法行為によるものであり、それによって精神的な苦痛を負った場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。
ただし、スピード離婚の場合は婚姻期間が短いことから、精神的苦痛が通常の離婚のものよりも小さいと判断され、慰謝料請求が認められても少額になることがあります。
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子どもの親権や養育費
スピード離婚するとき、子どもが小さいケースがあると思います。裁判所は、子どもが幼いほど、母親と暮らした方が良いと判断することが多いです。そのため、子どもの親権争いは母親が有利といえるでしょう。
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親権を獲得した場合は、配偶者に養育費を請求することができます。
いつ離婚するかに関わらず、養育費を支払う義務は変わらない点を押さえておきましょう。
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・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
解決金があることも
離婚の解決金とは、夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金のことです。
離婚を求める側から「解決金として〇〇万円払うから早く離婚してほしい」と申し入れたり、離婚を求められた側が「解決金として××万円払ってくれるならすぐに離婚してもいい」などと提案したりします。
たとえば、相手に一方的にスピード離婚を切り出され、こちらは離婚したくないという場合、解決金を支払ってもらう代わりに離婚を認める、というケースもあり得るでしょう。
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妊娠中にスピード離婚するときは準備が必要
「妊娠中にスピード離婚したい」という方もいるかもしれません。妊娠中に離婚することは可能です。ただし、離婚する前に準備をしておくことをおすすめします。
離婚後に出産した場合であっても、配偶者に養育費を請求することはできます。しかし、出産前後の期間で働くことは難しいうえに、生活費を請求することはできないため、経済的に困窮してしまうかもしれません。
また、「1人で出産することになる」「出産後の子どもの戸籍はどうなるのか」といった問題が発生するおそれがありますので、スピード離婚に踏み切る前に準備をしておきましょう。
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スピード離婚を進める方法
スピード離婚の場合でも、離婚の手続きは通常の離婚と変わらず、協議離婚→調停離婚→裁判離婚の流れで進むのが一般的です。
ここでは、スピード離婚したいと考えている方に向けて、それぞれのステップに要する時間を解説します。
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協議離婚なら最短1日で離婚できる
離婚する方法の中で、最短で離婚できるのは協議離婚です。協議離婚は、夫婦が互いに離婚に合意し、条件を話し合って決める離婚方法です。
夫婦が離婚に同意すれば、最短1日で協議離婚できます。特別な費用もかかりません。
離婚に合意できた後は、離婚届を作成し、役所に提出します。提出した離婚届が受理されれば、離婚成立です。
離婚条件が合意できたら、ぜひ離婚協議書を作成しましょう。離婚協議書があれば、将来相手が離婚条件を守らず裁判になった場合、有力な証拠になります。
協議離婚をする場合、最もおすすめなのは離婚条件をまとめた公正証書を作成することです。
公証役場に相談すれば、公正証書を作成できます。公正証書を作成する場合、強制執行認諾文言を忘れずにつけましょう。
強制執行認諾文言付き公正証書があれば、養育費の不払いなどのトラブルがあった場合、すぐに強制執行できます。具体的には、相手の預金債権や給料債権の差押えが可能です。
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離婚調停の場合は平均3か月~1年かかる
協議離婚の合意ができない場合、離婚調停を申し立てます。離婚調停は、夫婦間の話し合いでは離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会のもとで話し合いを行う離婚の方法です。
令和5年度司法統計年報 家事編によれば、調停が終了するまでの期間は、最短で1か月以内、長いと2年以上かかるものもありますが、約6割が3か月~1年で終了しています。
したがって、離婚調停には3か月~1年かかる場合が多いと想定しておくとよいでしょう。
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裁判離婚の場合は成立まで平均1年以上かかる
離婚調停が不成立になったら、再度夫婦で協議を行うか、離婚裁判を起こします。
離婚裁判は、終結までに平均で1~2年程度、長ければ3年以上かかることもあります。裁判で離婚を成立させるためには、裁判の期間に加えて離婚調停の分の期間もかかる点に注意が必要です。
スピード離婚を考えている方は、離婚裁判までもつれ込んでしまうと、1年以上は離婚について争うかもしれないという点に留意してください。
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スピード離婚を回避したいと思ったら?
夫婦で話し合ったりカウンセリングを受けたりする
スピード離婚を回避するための対処法として、夫婦で話し合ったりカウンセリングを受けたりすることが挙げられます。
コミュニケーション不足であったり、すれ違いがあったりしてお互いの気持ちがこじれてしまい、スピード離婚に発展するケースがあります。夫婦で話し合うことで、スピード離婚を回避できるかもしれません。
また、2人で話し合うことが難しいというときは、夫婦でカウンセリングを受けることをおすすめします。
夫婦そろってカウンセラーに相談することで、心理的なサポートを受けられるというメリットがあります。
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円満調停を申し立てる
スピード離婚を回避するための対処法として、裁判所に円満調停を申し立てることも一つの手です。
円満調停(正式には「夫婦関係調整調停」)とは、離婚を目的とした調停ではなく、夫婦関係の修復に重きを置いた調停です。家庭裁判所で調停委員を介して配偶者と話し合いをすることになります。
円満調停をおこなえば、夫婦関係が悪化した原因を聞いてもらい、その原因に対する解決策やアドバイスなどをもらえるかもしれません。
別居してみる
スピード離婚をしようと考えたときは、勢いで離婚するのではなく、まず別居を検討してみることをおすすめします。
一度配偶者から距離を置いて冷静になることで、自分の考えを整理することができるかもしれません。
ただし、何も言わず家を出てしまうと、夫婦の同居義務(民法752条)に反する「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に当たると主張され、慰謝料を請求されるおそれがあります。
無断で家を出るのではなく、相手に許可を取ったり、置手紙などを活用したりした上で別居するのがおすすめです。
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弁護士に相談する
別居しても考えが変わらず、スピード離婚に踏み切ることを選んだ場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
協議離婚で話がまとまらないときは、離婚調停や離婚裁判を検討することになります。弁護士に依頼すれば、交渉や主張を代理でおこなってもらえるというメリットがあります。
また、慰謝料請求や財産分与、養育費などの離婚条件についても的確に計算・主張してもらえるでしょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了