離婚調停は弁護士なしでもできる?自分でする人の割合や注意点を解説

離婚調停は弁護士に依頼せず、自分ひとりで進めることができます。実際に申立人の約4割、相手方の約6割が弁護士なしで調停に臨んでいます。
ただし、弁護士なしで進める場合、以下のリスクがあることを理解しておく必要があります。
- 不利な条件で合意させられるおそれ
- 調停不成立後の裁判で不利になる可能性
- 相手が弁護士をつけた場合の交渉力の差
本記事では、弁護士なしで離婚調停を進める人の割合、自分で進めるときの費用と流れ、成功のポイント、弁護士に依頼すべきケースを実務的な視点から解説します。
自分で進めるべきか、弁護士に依頼すべきかの判断材料として、ぜひお役立てください。
目次
離婚調停を自分でする人の割合と気になるポイント
離婚調停を自分でする人の割合はどれくらい?
「離婚調停を自分でする人はどれくらいいるのか」と気になる方も多いと思います。
以下は、令和6年の離婚調停などの婚姻関係事件において、弁護士が関与したかどうかの割合をまとめた表です。
| 割合 | |
|---|---|
| お互いに弁護士なし | 34.8% |
| お互いに弁護士あり | 32.9% |
| 申立人のみ弁護士あり | 27.3% |
| 相手方のみ弁護士あり | 5.0% |
出典:最高裁判所事務総局『家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等』
申立人のみが弁護士を付けていない割合は、「お互いに弁護士なし」と「相手方のみ弁護士あり」を合算した39.8%となります。一方、相手方のみが弁護士を付けていない割合は、「お互いに弁護士なし」と「申立人のみ弁護士あり」を合算した62.1%です。
したがって、弁護士なしで離婚調停をおこなう人の割合は以下のようになります。
| 割合 | |
|---|---|
| 申立人のみ弁護士を付けていない場合 | 39.8% |
| 相手方のみ弁護士を付けていない場合 | 62.1% |
離婚調停を自分ですると不利になる?
「弁護士なしで離婚調停に臨むと不利になるのでは?」と考える方も多いと思います。結論から言えば、弁護士がついていないことが、直接不利に結びつくとまではいえません。
調停は裁判所で調停委員が仲介しておこなう手続きですが、あくまで当事者間での話し合いを目的とするものです。そのため、調停がまとまらなかったとしても、調停が不成立となるだけで、不利になるとまではいえないでしょう。
ただし、調停が不成立となって離婚裁判に移行した際は、調停での話し合いのいきさつや、提出された資料が裁判官の心証に影響するかもしれません。
また、相手が弁護士を立ててきたという場合は、今後の離婚協議を進めていくうえで不利になるおそれが大きいという点に留意してください。
関連記事
・離婚相手が弁護士を立てたらどうする?リスクと対処法を弁護士が解説
離婚調停を弁護士なしでするとき
離婚調停を自分で進めるときの費用と期間
離婚調停を弁護士に依頼すると弁護士費用がかかってしまいますが、弁護士なしで進めていくときの費用は約3,000円となっており、申し立てた側が支払うことになっています。約3,000円の内訳は以下の通りです。
離婚調停を自分で進める際にかかる費用
- 収入印紙代 1,200円
- 戸籍謄本の取得費用 450円
- 裁判所が郵送に使用する切手代 1000円前後
また、期間については、調停が1回で終わることもあれば10回以上に渡ることもあり、かかる期間はさまざまです。短ければ1か月ほどで終わりますし、長ければ2年以上かかることもあります。とはいえ、多くの場合は半年から1年程度で終了します。
関連記事
離婚調停を自分でするときの流れ
離婚調停は、以下のような流れで進んでいきます。
離婚調停の流れ
- 家庭裁判所に申立書を提出
- 裁判所から呼出状が届く
- 第1回の調停期日が開かれる
- 調停を何度か繰り返す
- 調停終了
よりくわしく離婚調停の流れについて知りたいという方は、『離婚調停の流れは?有利に進める方法を解説!』をご覧ください。
また、離婚調停を申し立てるための書類や持ち物として、以下のようなものが必要になります。
離婚調停で必要となる基本の書類と持ち物
- 離婚調停申立書……3通
- 連絡先等の届出書……1通
- 進行に関する照会回答書……1通
- 事情説明書……1通
- 夫婦の戸籍謄本……1通
- 子についての事情説明書(未成年の子がいる場合)……1通
- 年金分割のための情報通知書(年金分割調停を申し立てる場合)……原本1通・コピー2通
- 陳述書(弁護士なしで進める場合は重要)
- 証拠・資料(重要)
- 収入印紙(申立書に貼り付ける)
- 郵便切手(裁判所が指定する額)
- 印鑑(書類に誤りがあった時のため)
離婚調停を自分でするときは、必要書類の準備がかなり根気のいる作業になります。よりくわしく必要書類の書き方について知りたいという方は、『【記入例あり】離婚調停の申し立て方法|申立書の書き方・必要書類』をぜひ参考にしてください。
離婚調停を自分でする時のポイント
離婚調停は弁護士なしでも、自分で進めていくことができます。
ここでは、離婚調停を自分で進めて成功させるためのポイントを解説します。
家庭裁判所にアドバイスをもらう
離婚調停を自分で進めるうえで、関門となるのが必要書類への記入です。調停を起こすこと自体が初めての方もいらっしゃるでしょうし、法的知識に自信がない場合は、どのように記入すればよいかわからないということになりかねません。
家庭裁判所は、調停に関する書類の書き方のアドバイスをしてくれますので、積極的に活用することをおすすめします。
申立書のダウンロードページや、記入事項について、そのほかに必要な書類なども案内してくれるはずですので、自分で離婚調停を進めるという場合は、裁判所に連絡してみるとよいでしょう。
関連記事
陳述書を用意する
弁護士なしで自分で離婚調停を進めるという場合は、陳述書を作成しておくことをおすすめします。
陳述書とは、自分の主張をまとめた文書のことです。
陳述書は必須ではなく、任意で作成して提出することができる書類ですが、離婚調停という慣れない場で自分の主張を的確に調停委員に対して話すことは難しい場合があるでしょう。
しっかりと自分の意見を調停委員に伝えるためにも、陳述書を作成しておくことを強くおすすめします。
弁護士なしで陳述書を作成する際、以下のような失敗例がよく見られます。
- 感情的な表現が多く、事実関係が不明瞭
- 時系列が整理されておらず、調停委員が理解しづらい
- 相手への批判ばかりで、自分の希望が明確でない
これらの失敗例は、陳述書の信用性や説得力を損なう要因となります。
陳述書の書き方についてくわしく知りたいという方は、『離婚調停の陳述書の書き方|例文・サンプル付き』をご覧ください。
調停委員とは冷静なやり取りを心掛ける
離婚調停を自分で進めていく時のポイントとして、調停委員とはできるだけ冷静なやり取りを心がけるようにしましょう。
調停委員にこちらの主張をうまくくみ取ってもらうには、自分の思いや訴えを冷静に伝えていくことが重要になります。
話の中で感情的になってしまうこともあるとは思いますが、できるだけ落ち着いて調停に臨むことを心がけましょう。
調停委員に効果的に伝える3つのポイント
弁護士なしで離婚調停を進める場合、調停委員への伝え方が結果を左右します。以下の実務的なコツを押さえましょう。
- 結論を先に伝える
希望する条件を最初に明確に伝え、その理由や根拠を後から説明する - 数字と根拠をセットで提示する
具体的な金額とその根拠(生活費の内訳や収入状況など)を示す - 相手の主張に反論するときは冷静に事実を指摘する
感情的にならず、客観的事実と証拠をもって反論する
調停委員は中立的な立場ですが、論理的で冷静な主張のほうが心証に残りやすい傾向があります。
離婚調停でよく聞かれる質問をおさえておけば、本番もうまく対処できる可能性が高くなります。くわしくは『離婚調停で聞かれる事は?答えを考えておこう!』をご覧ください。
離婚調停を自分でするときのメリット・デメリット
離婚調停を自分でするときのメリットは費用面
離婚調停を自分でするときのメリットは、費用が安く済むということです。
弁護士に依頼することなく自分で離婚調停を進める場合は、金銭面では約3,000円の費用を負担するだけで済みます。
一方、弁護士に離婚調停を任せる場合の弁護士費用の相場は、50万~110万円程度となっており、自分ひとりで進めるときと比べると高額といえます。養育費や慰謝料なども争点になっている場合は、別途料金が発生することもあります。
離婚調停を自分でおこなえば、場合によっては100万円以上のコストカットになるというところがメリットといえるでしょう。
離婚調停を自分でするときのデメリット4つ
離婚調停を自分でするときのデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
離婚調停を自分でするデメリット
- 書類の作成などが負担になる
- 調停委員とのやりとりが難しい
- 不利な条件で離婚させられるおそれがある
- 相手方と直接やりとりをする必要がある
離婚調停を自分でおこなうときは、「自分で手続きを進めていく覚悟を固める」「取り決める離婚条件を十分確認する」といったことに留意してください。
離婚調停を弁護士に依頼するデメリットは費用面
弁護士に依頼するデメリットとしては、費用面が高くついてしまうということが挙げられます。
弁護士に離婚調停を任せる場合の弁護士費用の相場は、50万~110万円程度となっており、自分で離婚調停を進める場合と比べると高額になっています。
費用面で弁護士に依頼することを迷っているという方は、無料の法律相談を利用するか、法テラスに相談してみることをおすすめします。
法テラスとは、国民向けに法的支援をおこなう機関です。
法テラス・サポートダイヤルや全国各地にある法テラスの地方事務所では、お困りごとの内容に応じて、相談窓口や一般的な法制度情報を無料で提供しています。
また、経済的にお困りの方に対し、弁護士や司法書士との無料の法律相談や、弁護士や司法書士に事件の解決を依頼する場合の費用の立替えも行っています。
法テラス(日本司法支援センター)
費用を抑えて弁護士を活用する方法もあります。たとえば、調停申立書の作成や方針決定の段階のみ弁護士に相談するスポット相談であれば、費用を5万円~10万円程度に抑えられます。
費用面で迷っている場合は、まず無料相談を利用し、自分のケースで弁護士が必要かどうか確認することをおすすめします。
ケース別・離婚調停と弁護士の必要性
離婚調停を自分でしてもよいケース
離婚調停を自分でやるときにはさまざまなデメリットがありますが、自分で進めてもよいケースがいくつかあります。たとえば、以下のようなケースが該当します。
離婚調停で弁護士の必要性が低いケース
- 慰謝料や財産分与で争点がない
- 子どもがいない(養育費について争わない)
- 共働きで年金分割をする必要がない など
以上のように、「自分は離婚をしたいが、相手が拒絶している」といったような、自分が離婚できるかどうかが争点になっている場合では、自分で離婚調停を進めてもよいでしょう。
ただし、「相手が離婚をしたいようだが、自分はしたくない」「もしかしたら分割できる財産があるかもしれない」などといった場合は、自分で調停を進めるのはおすすめできません。
離婚調停を弁護士に依頼したほうがよいケース
ここでは、離婚調停を弁護士に依頼したほうがよいケースや、弁護士に依頼するメリットについて解説します。
離婚調停を弁護士に依頼したほうがよいケースについては、以下のようなものがあります。
弁護士に依頼したほうがよいケース
- 条件面など有利に離婚を進めたい場合
- 相手が弁護士を付けた場合
- 相手は離婚を要求しているが、自分はしたくない場合
- 調停成立後のトラブルを避けたい場合
- 仕事などで忙しい場合
- 自分で手続きができるか不安がある場合
このようなケースでは、離婚調停を弁護士に依頼したほうがいいといえます。離婚調停を弁護士に依頼するメリットについては、『離婚調停を弁護士に依頼するメリット5選|弁護士の役割は?』をご覧ください。
弁護士なしでの離婚調停でよくある質問
Q.弁護士なしでの離婚調停を欠席したらどうなる?
弁護士なしでの離婚調停を欠席した場合、それだけで不利になるということはありません。ただし、無断で欠席するのではなく、仕事や子どもの問題でどうしても離婚調停に出席できない場合は、早めに家庭裁判所に連絡しましょう。
離婚調停の期日において無断欠席・遅刻をすると、調停委員や裁判官の心証が悪くなります。そうなると、自分に不利な方向で調停が進行するおそれが大きいです。
また、家庭裁判所からの電話や手紙での呼び出しを無視して、正当な理由なく無断欠席を繰り返すと、5万円以下の過料に処されるおそれもあります(家事事件手続法258条1項、51条3項)。
無断欠席のほかにも、離婚調停では避けるべきポイントがいくつかあります。ほかの注意点を詳しく知りたいという方は、『離婚調停中にやってはいけないこと&不利な発言は?対処法も解説!』をご覧ください。
Q.離婚調停で相手に弁護士がついたら不利?
法的な知識量に差が出るため、交渉において不利になる可能性が高いです。相手方の弁護士は法律と交渉のプロであり、調停委員を説得する術にも長けています。
相手に弁護士がついた時点で、こちらも弁護士への相談を検討することを強く推奨します。
Q.離婚調停で相手が弁護士をつけたかどうか知るタイミングは?
こちらが離婚調停を申し立てられる側のとき、相手が弁護士をつけたかどうかを知りたいと考える方は多いと思います。
相手が離婚調停で弁護士に依頼した場合は、裁判所から送られてくる呼び出し状に相手方の弁護士の名前が記載されていますので、そちらを確認すれば相手が弁護士を立てたかどうかを判断することが可能です。
また、裁判所から代理人がついたという旨の連絡が入ることもあります。ただし、「相手が弁護士を立てたら必ず連絡が来る」ということではないという点に留意してください。
Q.離婚調停の途中から弁護士に依頼できる?
離婚調停の途中からでも、弁護士に依頼することは可能です。ただし、「すでに離婚内容に合意している」「相手の提示した離婚条件にほとんど納得している」といった状態であれば、弁護士を立てても合意した内容を覆すことは難しいといえます。
弁護士を依頼するときは、なるべく早い段階で依頼しておくことをおすすめします。
離婚調停は弁護士に相談!
離婚調停は弁護士に依頼せず、自分ひとりで進めていくことができますが、「自分が離婚できるかどうか」が争点になっている場合を除いて、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、面倒な書類の作成や相手とのやり取りなどを任せることができるほか、不利な条件で離婚させられるリスクを小さくできます。
また、離婚裁判に移行した際も、スムーズに対応することができるでしょう。
費用面が高くついてしまうというデメリットはありますが、無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
