離婚相手が弁護士を立てたらどうする?リスクと対処法を弁護士が解説
「離婚相手に弁護士を立てられた。不利になるのか」
「離婚相手が弁護士を立てた。どうすればよいのか」
離婚の話がまとまらないとき、相手が弁護士を立てることがあります。
相手が弁護士を立てることで、離婚協議が相手の有利な方向に進んでいくのではないかと、不安に思う方もいるでしょう。
離婚相手が弁護士を立てるということは、「相手が本気で離婚したいと思っている」ということの表れです。「相手が弁護士を立てただけで不利になる」ということはありませんが、自分も弁護士を立てることを強くおすすめします。
今回は、離婚相手に弁護士を立てられたときの注意点やリスク、こちら側も弁護士を立てるメリットについて解説します。
目次
離婚相手が弁護士を立てる理由
有利に離婚したい
離婚相手が弁護士を立てる理由として、できるだけ有利な条件で離婚したいためといったことが挙げられます。
財産分与や慰謝料といった金銭面での条件を良くしたいのはもちろん、子どもがいる場合は親権を獲得したいと考える方は多いと思います。
弁護士に依頼せずに、提示された離婚条件をそのまま飲んでしまうと、不利な条件で離婚をすることになってしまうおそれがあります。
そういったことを防ぐために、相手が「自分に有利な条件で離婚したい」と考え、弁護士を立てるケースがあります。
相手と顔を合わせたくない
離婚相手が弁護士を立てる理由として、直接会って話をしたくないためといったことが挙げられます。
たとえば、相手からDVやモラハラといった行為を受けていると、恐怖心から自分の意見をうまく伝えることができないといったケースがあります。不貞行為が離婚理由の場合は、家庭を裏切った相手の顔を見るのも嫌だということもあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、自分の代わりとして相手と交渉ができます。そのため、相手が弁護士を立てるときは、こちら側と直接話すのを回避することを目的としている場合があります。
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話し合いがもつれている
離婚相手が弁護士を立てる理由として、夫婦間で離婚の話し合いをしても、らちが明かないためといったことが挙げられます。
夫婦間で離婚条件のすり合わせをしてもうまくいかなかったり、場合によっては夫婦の親が介入してきたりして、離婚の話し合いがまとまらないといったことがあります。
弁護士は相手方と冷静に交渉することができるため、スムーズな話し合いができるようになる可能性が高いです。
また、「相手に弁護士がついた」とわかれば、「自分が本気で離婚したいと思っている」と、相手に伝えることが可能です。離婚相手が弁護士を立てるのは、離婚に関する話し合いを進ませて、早期決着を狙っているという意思の表れともいえます。
離婚相手が弁護士を立てたときの注意点
相手が弁護士を立てたとき、相手の弁護士から内容証明郵便や普通郵便の形で、「ご連絡」「協議離婚申入書」「受任通知」というタイトルで書面が送られてきます。
内容はいずれも、「相手に弁護士がついた」ということを知らせるものになっています。「相手に弁護士がついた」ということは、「相手が本気で離婚したいと思っている」ということの表れといえるでしょう。
突然、弁護士から書面が送られてくると驚いてしまう方も多いと思いますが、落ち着いて対応するようにしましょう。
ここでは、離婚相手が弁護士を立てたときの注意点について解説します。
相手弁護士からの連絡は無視せず対応する
相手弁護士からの連絡は、無視せずきちんと対応するようにしましょう。
相手が弁護士を立てると、離婚の交渉は、パートナー本人ではなく相手の弁護士との間で進めていくことになります。
相手の弁護士から届く書面に、通知内容に対する返答期限や連絡方法について記載されていることがありますが、記載されている内容にのっとって、期限内に返答することをおすすめします。
「通知された離婚条件に納得がいかない」「相手と直接話ができていない」などといって、相手弁護士からの通知を無視していると、調停を申し立てられてしまうかもしれません。
なお、原則として離婚裁判をおこなう前に、離婚調停を経なければならないというルールがあるので、弁護士の連絡を無視したからといって、いきなり裁判を起こされてしまうことはありません(調停前置主義)。
ただし、調停の手続きを自分でおこなうとなると、法律の知識がない状態ではかなり難しいです。煩雑な手続きが必要になり、離婚の成立まで時間がかかってしまうことになるため、相手弁護士からの連絡は無視せずきちんと対応することをおすすめします。
対応するときは、感情的にならないことを心がけましょう。また、相手の言い分に納得がいかない場合は、相手の言うことにすぐ同意してしまわないよう気をつけることが重要です。
離婚に関する話は相手の弁護士を通す
相手の弁護士から、「当事者同士の直接のやり取りは控えて、弁護士に連絡するように」という旨が記載された書面が届くことがあります。
「直接やり取りをしたら罰せられるのか」と考える方もいますが、相手に直接連絡したり、会話したりすることについては、とくに法的なペナルティなどはありません。
ただし、直接のやり取りが禁止されているわけではないものの、離婚に関する話は相手の弁護士を通すようにしましょう。
相手が弁護士を立てるのは、離婚協議がうまくいかなかったり、夫婦間で話し合いができなかったりする状況であるときです。
そういった状態で相手と直接話をしようとしたとしても、「結局話し合いが進まない」「弁護士への連絡を求められる」といった状況に陥ってしまうことが多いです。
直接弁護士に連絡をした方が、スムーズに離婚についての話を進めることができます。
相手の弁護士から連絡がこないときは、こちらも弁護士を立てる
相手弁護士からの連絡は無視せず対応すべきと言いましたが、相手の弁護士から連絡が来なかったり、途絶えてしまったりすることがあります。
連絡がこない理由には、「単純に忙しい」「依頼者本人とあまり連絡が取れていない」「依頼案件について、別に考慮すべき事情がある」「今後の対応を検討している」などさまざまです。
相手からの連絡が来ない場合は、その間にこちらも弁護士を立てることをおすすめします。
弁護士費用はどこから支払われる?
弁護士費用は、夫婦の共有財産(婚姻中に二人で築いた財産)から支払われる場合があります。この場合、離婚することが決まって財産分与をおこなうことになったときに、弁護士費用として支払った金額の相当分が差し引かれることがあります。
もし、弁護士費用が特有財産(結婚前の預貯金や相続で受け継いだ資産など)で支払われる場合は、支払われた金額の相当分が財産分与の対象となることはありません。
離婚相手に弁護士を立てられたときのリスク
相手が弁護士を立てると、今後の離婚協議を進める上で不利になるおそれが大きいです。
相手の代理人である弁護士は法律のプロであるのに対し、こちら側は離婚の手続きや交渉についてどのようにすればいいかわからないというケースが多いでしょう。
ここでは離婚相手に弁護士を立てられたときに発生するおそれのあるリスクについて解説します。
離婚相手と直接やり取りするのが難しくなる
先述の通り、相手が弁護士を立てても直接やり取りをすることについてはペナルティはありません。
しかし、相手と直接話そうとしても、無視されてしまったり、「弁護士に連絡してください」と拒否されたりするおそれが大きいです。
また、相手が子どもを連れて別居している場合、子どもに直接会うことも難しくなってしまうことがあります。
離婚相手が弁護士を立てると、相手と直接やり取りするのが難しくなってしまうということについて注意しておきましょう。
不用意な言動を証拠にされてしまう
相手や相手弁護士についてとった不用意な言動が、こちら側にとって不利な形で利用されてしまうことがあります。
たとえば、相手方に送ったメールやLINE、手紙に加え、SNSでの発言などはすべて証拠として利用されるおそれがあります。
弁護士から連絡や通知が来ると、驚いて不用意な言動をとってしまうかもしれませんが、自分に不利な証拠とされてしまうおそれがあるので注意しましょう。
不利な離婚条件を突きつけられる
相手に弁護士がつくと、自分にとって不利な離婚条件で離婚を求められることになります。
相手の弁護士が提示する条件は、一見すると双方にとって平等のように見えますが、「相手側に有利なように資産を計算している」といったように、相手側が得をするように設定されていることがあります。
相手のペースに乗せられ、不利な条件に気づかないまま話を進めると、そのまま離婚に合意してしまうおそれがあるので気をつけましょう。
交渉時に自分の状況がわかりづらくなる
調停や裁判にまで離婚話がもつれこんだとき、現在の自分がどういった状況なのかわかりにくいというデメリットがあります。
もちろん、弁護士に依頼しなくても、相手弁護士と交渉したり、調停や訴訟をしたりといったことは可能です。
しかし、調停委員や裁判官は、どのように離婚の判断や判決をしようとしているかを明らかにはしません。つまり、当事者本人が「調停委員や裁判官はどう思っているか」を推し量る必要があります。
これに対し、相手側の弁護士は長年の経験から、調停委員や裁判官がどのような判断を下そうと思っているかを見極めることができる可能性が高いです。つまり、調停や裁判を有利に進められてしまうおそれがあります。
精神的に疲れてしまう
相手に弁護士がつくと、「交渉が不利になってしまうのではないか」といったように、精神的にストレスを抱えてしまうおそれがあります。
法律の専門家である弁護士と交渉をすることになり、交渉力や知識に差がある以上、プレッシャーを感じるのも無理はありません。
相手が子どもを連れて別居している場合、離婚相手だけでなく、子どもにも直接会うことができなくなるため、不安を感じてしまうでしょう。
指示の対応や準備に労力がかかる
離婚調停や離婚裁判では、相手方の弁護士が作成した書面・証拠が提出されます。
書面や証拠が提出されると、調停委員や裁判官から「内容に反対する意見があれば、次回期日の一週間前までに書面にまとめて提出してください」などと言われることが一般的です。
ほとんどの場合、一般の方は裁判所に提出する書面の作成に不慣れなため、大変な労力がかかってしまいます。離婚条件に関して、養育費や財産分与、慰謝料など争点が複数ある場合はなおさらです。
また、自分の通帳をコピーしたり、資産についての証拠をすべてそろえたりといった準備も必要となります。
弁護士に依頼せず、自ら準備をおこなうことももちろん可能ですが、相手方からの指示の対応や準備に追われ、肉体的にも精神的にも追い詰められてしまうおそれがあります。
離婚相手に対抗して自分も弁護士を立てるメリット
離婚相手が弁護士を立てたとわかったら、こちら側も弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあります。
対等な立場で交渉できる
こちらも弁護士を立てることで、相手と対等な立場で交渉することができます。
相手が法律のプロである弁護士である以上、一般の方が知識量や交渉力、経験で劣るのは仕方のないことだといえます。
しかし、こちらも弁護士に依頼すれば、対等な話し合いが期待でき、一方的に不利な状況になるといったことはありません。
有利な条件で離婚できる可能性が高まる
こちらも弁護士を立てれば、対等な立場で交渉できるようになるため、相手から不利な条件を提示されるリスクを小さくできます。
たとえば、「もっと請求できたはずの慰謝料や財産分与が少なくなってしまった」「離婚時に取り決めた約束が無視されてしまった」といったトラブルの発生リスクを抑えることができます。
弁護士に依頼することで、逆にこちら側に有利な条件で離婚できる可能性も出てくるでしょう。
交渉や調停、裁判の手続きを任せられる
弁護士に相談すれば、依頼主の代理人として相手方と交渉、調停や裁判を進めることができるというメリットがあります。
自分で調停や裁判をおこなう場合は、不利な状況のなかで、相手方の指示に合わせた対応を自分でおこなわなければなりません。
弁護士に依頼することで、書類作成や意見の主張などを代理でおこなってもらうことができるので、精神的な負担を減らすことができるほか、時間や労力の削減につながります。
離婚相手に対抗して弁護士を立てるタイミング
「離婚相手に弁護士を立てられたけど、自分はいつ弁護士に依頼すればよいのかわからない」と悩む方もいらっしゃると思います。
相手が弁護士を立てた場合、離婚の話し合いが不利に進んでしまうおそれが大きいです。相手が弁護士を立てたとわかれば、こちら側も弁護士に相談することを強くおすすめします。
とくに離婚調停や離婚裁判にまでもつれた場合は、論理的な主張をしなければならなかったり、専門的な書類を作らなければならなかったりと、法律の知識がない人にとっては難しい手続きが必要になります。
弁護士なしで離婚の手続きを進めることももちろん可能ですが、やはり弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士を立てた相手に対抗して、こちらが弁護士を立てるタイミングとしては、「相手が弁護士を立てたとわかったとき」というものが答えになります。もちろん、一般的な離婚問題については、相手が弁護士を立てる前に弁護士への相談を検討しておくことが最善になります。
また、以下のような場合については、すぐに弁護士を立てることをおすすめします。
- 相手が弁護士を立ててきた
- 相手から調停や裁判を申し立てられた
- 相手が話し合いに応じない
- DVやモラハラを受けている など
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相手が弁護士を立てたら自分も弁護士に相談!
相手が弁護士を立てたということは、本気で離婚したいと思っていることの表れです。相手に有利な条件で離婚させられてしまうことを防ぐためにも、相手が弁護士を立てたときには、自分も弁護士を立てることを強くお勧めします。
自分も弁護士を立てることで、対等な立場で交渉できるようになるほか、一方的に不利な条件で離婚させられるといったリスクを小さくすることができます。
弁護士費用が必要になってしまうというデメリットはありますが、無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了