岡野武志弁護士

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

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交通事故に執行猶予はつく?死亡事故の判決は?弁護士相談

交通事故 執行猶予はつく?
  • 交通事故で執行猶予はつく?死亡事故だと?
  • 交通事故で執行猶予がついた実例は?
  • 交通事故で執行猶予判決を目指す方法は?

交通事故の加害者になってしまった方へ。

交通事故を反省はしているけれど、家族のためにも「執行猶予つき判決を獲得したい」とお考えの方もいるでしょう。

交通事故を起こしてしまった場合、刑事事件として起訴される可能性があります。起訴された場合、懲役や禁錮などの実刑判決を受ける可能性もありますが、被害者との示談が成立し、反省と更生の意欲が認められれば、執行猶予付きの判決を受ける可能性があります。

この記事では、交通事故・死亡事故をおこした場合の刑罰、解決事例、執行猶予判決を目指す方法などについて解説しています。

交通事故の執行猶予でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

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交通事故で執行猶予はつく?

執行猶予とは?

執行猶予とは、刑事裁判で有罪判決を受けた場合でも、1年から5年の期間を定めて、刑罰の執行が猶予される制度です。執行猶予の期間中に、あらたに犯罪をおこすことがなければ、刑罰を受けることはなくなります。

岡野タケシ弁護士
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たとえば「懲役3年、執行猶予5年」という判決がだされたとします。

この判決の意味は「3年間刑務所に入る必要がある。しかし、5年の猶予期間に罪を犯さなければ、刑務所に入らなくてよい」という意味です。

執行猶予のメリットは?

執行猶予が認められれば、懲役や禁錮などの実刑判決を受けずに済みます。

岡野タケシ弁護士
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執行猶予期間中は、自宅で生活ができます。仕事や学業、家庭生活などに支障をきたすことはありません。

執行猶予つき判決がある意味とは?

執行猶予つき判決になるのは、「すぐに刑罰を受けさせるよりも、社会生活をおくらせたほうが、刑事事件の加害者が更生できる」と、裁判官が判断した場合です。

したがって、交通事故で執行猶予つき判決をうけるには、「執行猶予をつけるべきである」と裁判官が判断してくれるように、説得的な主張をおこなう必要があります。

岡野タケシ弁護士
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裁判官によって、「情状」が考慮され、執行猶予つき判決にすべきかが決定されます。

そのため執行猶予つき判決を獲得するには「よい情状」を主張する必要がありますが、それだけでは不十分です。法律上要求されている「最低条件」を満たさなければ、執行猶予をつけるかどうかを検討してもらえません。

執行猶予の条件は?

執行猶予をつけるために、法律上要求されている条件はいくつかあります。

ひとつには、「3年以下の懲役もしくは禁錮刑または50万円以下の罰金刑」の言渡しの際に、執行猶予つき判決になる可能性があります(刑法25条1項本文)。なお、実務上、罰金刑の場合に執行猶予つき判決になる可能性はあまり多くありません。

執行猶予がつく条件①(刑法25条第1項)

3年以下の懲役・禁錮にならない刑事事件では、執行猶予がつく可能性はゼロです。

交通事故の刑罰では、執行猶予をつけることはできるのでしょうか。たとえば、交通事故をおこして過失運転致死罪に問われた場合はどうなるのでしょう。

岡野タケシ弁護士
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過失運転致死罪の法定刑は、7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金です。

実際に言い渡される刑罰が3年以下の懲役・禁錮になる場合、過失運転致死罪でも執行猶予がつく可能性はあります。

交通事故の刑罰は?(一覧)

ここで交通事故事件の法定刑について確認しておきましょう。

交通事故を起こした場合、過失運転致死罪のほか、以下のような犯罪に問われる可能性があります。

交通事故事件の刑罰(一例) *¹

  • 過失運転致死罪
    1ヶ月以上7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金
    (例)過失で死亡事故をおこした場合
  • 過失運転致傷罪
    1ヶ月以上7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金
    (例)過失で人身事故をおこし怪我を負わせた場合
  • 危険運転致死罪
    1年以上20年以下の懲役
    (例)飲酒や薬物などで正常な運転が困難な状態で死亡事故をおこした場合
  • 危険運転致傷罪*⁴
    1ヶ月以上15年以下の懲役
    (例)ことさら赤信号を無視し、重大な交通の危険を生じさせる自動車を運転して人身事故をおこした場合
  • 道路交通法違反
    違反の態様によって罰則が異なる

*¹ 2023年9月27日時点の情報です。詳細につきましては、弁護士相談の際、相談担当弁護士までおたずねください。
*² 自動車運転処罰法5条
*³ 自動車運転処罰法2条後段
*⁴ 自動車運転処罰法2条前段

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交通事故の判決にみる刑罰は?

実際にどのような交通事故において、どのくらいの刑罰が科されているのかについて、判決を調査してみました。

事案刑罰
飲酒運転による死亡事故*¹
危険運転致死罪(飲酒による酩酊)
道交法違反(救護義務・報告義務違反)
懲役10年
赤信号無視による死亡事故*²
危険運転致死罪(赤信号無視)
懲役6年
飲酒運転による死亡事故*³
道交法違反(酒気帯び/
救護義務・報告義務違反)
懲役1年6月 執行猶予4年
信号無視による死亡事故*⁴
過失運転致死罪(赤信号無視)
禁錮3年 執行猶予5年
1名死亡・1名傷害の交通事故*⁵
過失運転致死罪(車間距離不保持)
禁錮1年4月 執行猶予3年
   

*¹奈良地判R5.7.12 令和3年(わ)第377号・令和3年(わ)第393号
*²金沢地判R5.6.21 令和4年(わ)第156号
*³札幌地判R5.6.1 令和4年(わ)第622号
*⁴大阪高判R2.7.3 令和1年(う)第1265号
*⁵盛岡地判H29.12.7 平成26年(わ)第139号

交通事故をおこした場合、死亡事故でも執行猶予がつくケースは実際にあるようです。

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交通事故の罪名が、危険運転致死罪よりも、過失運転致死罪のほうが執行猶予つき判決になる可能性はあるでしょう。

また、任意保険で賠償ができる、ご遺族・被害者側の処罰感情がそれほど強くない、前科・前歴がない等の事情があれば執行猶予つき判決獲得の可能性が高まるといえます。

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交通事故で執行猶予を目指す方法は?

執行猶予に有利な要素は?

交通事故で執行猶予つき判決を目指す場合、示談、処罰感情、前科前歴の有無をはじめとする、以下のような要素が重要になります。

執行猶予になる要素(一例)

  • 物的損害について示談成立
  • 人身損害について任意保険で賠償できる見込みがある
  • 交通違反歴がない。前科・前歴がない
  • 反省(謝罪文・お見舞いetc.)
  • 交通事故の原因を絶つ
  • 再発防止の協力者(配偶者etc.)
  • 社会的制裁(解雇etc.)
  • 犯行動機が身勝手でないこと
  • 危険な運転方法でないこと
    (例)飲酒運転・無免許運転・ひき逃げ等の場合、刑罰は重くなる

被害者・ご遺族との示談交渉?

示談は、民事上の賠償責任の問題を解決できるだけでなく、刑事事件の不起訴や刑罰の軽減に影響があります。

交通事故事件の場合、任意保険に加入していれば、保険会社が賠償金の示談交渉を代わりにおこなってくれます。

ただし、保険会社は、被害者側への謝罪やあなたの刑事事件への影響について、責任を持ちません。保険会社は賠償金額の交渉に熱心になるあまり、被害者側のお気持ちへの配慮を欠くことが多いです。これは、あなたに対する処罰感情の高まりにも、つながるものでしょう。

あなたの反省の気持ちを被害者・ご遺族に確実に伝えるには、できる限り早く、弁護士を通じて謝罪をおこなう必要はあるといえます。

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交通事故をおこしてしまったら、今後の対応や見通しについて、すぐに弁護士相談をおこなうのがよいでしょう。

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交通事故の再発防止策をたてる?

交通事故の被害者側との示談が成立、あるいは適切な賠償が見込まれるのであれば、執行猶予が認められやすくなります。
交通事故で執行猶予つき判決を目指すためには、示談や賠償が必須といっても過言ではありませんが、それだけでは不十分です。

交通事故について反省と更生の意欲を示すために、事故の原因を分析し、再発防止策を立てて実行することが必要です。

飲酒運転が原因の交通事故なのであれば、禁酒をするという対策をたてることも考えられます。

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自動車を運転しないという対策も考えられます。

ですが、運転をしないわけにはいかない場合は、違法な運転行為をしないように監督できるご家族等の存在が必要になるでしょう。

交通事故で執行猶予がついた実例は?

懲役1年2月執行猶予3年の事例とは?

過去、アトム法律事務所であつかった事案には、忘年会の帰り道に、ひき逃げをおこない被害者の方に重症を負わせたという交通事故事件があります。

依頼者は飲酒運転をしていませんでしたが、飲酒を疑われていたため、手厚く弁護活動をおこないました。

また、情状証人(刑罰を軽くすべき理由を証明するための証人)としてご母堂様の証人尋問をおこなうなど、弁護を尽くしました。

任意保険による賠償見込みがあることや、前科なしなど、執行猶予になりやすい要素もありましたので、もれなく主張しました。

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こちらの交通事故では、懲役2年執行猶予3年の判決となりました。

死亡事故の初犯で不起訴の事例は?

過去に、アトム法律事務所であつかった事案には、初犯の死亡事故で不起訴になった事案があります。

被害者の方が運転席からは見えない位置におり、あきらかに交通事故を回避できない事案でした。
どんなに注意をしていても、予測不可能かつ回避できない交通事故については、法律上、過失運転致死罪に問うことはできません。

弁護人として、否認の弁護方針をたて、取り調べの出頭同行や、意見書・抗議文の提出など、弁護活動を尽くしました。

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こちらの交通事故事件は、逮捕されずに捜査が進められましたが、起訴・不起訴が判断されるまで長い時間がかかりました。

その間、一貫して弁護活動をおこない、結果として不起訴処分となりました。

起訴・不起訴の割合は?

犯罪白書によれば、令和3年度の危険運転致死傷については、339人が起訴され、97人が不起訴、43人が家庭裁判所に送致されています。

同じく令和3年度の過失運転致死傷等については、3万8494人が起訴され、24万3283人が不起訴、7727人が家庭裁判所に送致されています。

関連項目

令和4年版 犯罪白書 第2編第2章第4節被疑事件の処理

禁錮2年執行猶予4年の事例は?

過去に、アトム法律事務所であつかった事案には、前方不注意で衝突事故をおこし、被害者を死亡させた交通事故事件があります。

弁護士にご依頼後、あらためて弁護士を通して謝罪文を郵送し、反省の気持ちを被害者にお伝えしました。

また、裁判では、保険会社の賠償状況、配偶者の監督を受けること、交通事故による退職(社会的制裁をうけていること)などの事情について、裁判官に訴えるなど、弁護活動を尽くしました。

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こちらの交通事故にも、執行猶予がつきました。判決は、禁錮2年執行猶予3年でした。

交通事故の執行猶予でよくある質問

Q1.執行猶予期間が経過。前科は消える?

前科がついたという事実は、消えることはありません。

というのも、前科とは「刑裁裁判において、有罪の確定判決をうけた履歴」を意味しますが、この事実自体が消えることはないからです。

したがって、執行猶予期間が経過しても、前科は残ります。

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前科そのものは消えませんが、執行猶予期間が満了すれば、刑の言渡しの効力は消えます。刑の言渡しの効力が消えることで、職業の資格制限をうけなくなったり、履歴書の賞罰欄に前科を記載する必要がなくなったりします。

執行猶予期間満了とともに、法律上の不利益は払拭されるものといえるでしょう。

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Q2.執行猶予中に運転できますか?

交通事故をおこして執行猶予付き判決をうけた場合であっても、運転を禁止されることはありません。執行猶予中に運転はできます。

ですが、刑事裁判のなかで「再発防止のために運転をひかえる」等と誓約することもあるでしょう。

この場合、道義的に運転をしてよいかという問題が生じるほか、再び交通事故をおこして刑事裁判になった場合に、きびしい刑罰が科される可能性が高まります。

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執行猶予の期間中に、交通事故に限らず、何らかの刑事事件をおこせば、通常、執行猶予が取り消される可能性が非常に高いものです。

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Q3.死亡事故で執行猶予になる確率は?

死亡事故でも執行猶予判決になる可能性はあるといっても、実際にはどのくらいの確率で執行猶予がつくのでしょうか。

過去に、アトム法律事務所であつかった事案のなかで、死亡事故において執行猶予がついたのは、約85%でした。

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個々の事案については、以下の関連記事をクリックしてご確認ください。

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Q4.執行猶予中に交通違反をしたらどうなるの?

執行猶予中に交通違反をし、罰金以上の刑罰が確定した場合、執行猶予が取り消される可能性があります。

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執行猶予が取り消されたら、判決で言い渡された刑罰が執行されることになります。

執行猶予が取り消されたら、前回の刑罰と、執行猶予の取り消しの原因になった犯罪の刑罰の両方を受けなければなりません。

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交通事故をおこした場合、死亡事故であっても、執行猶予付き判決を獲得できる可能性はありますが、被害者・ご遺族への誠意をもった対応が不可欠といっても過言ではありません。

過失が認められない場合は、交通事故事件で捜査を受けているとしても、不起訴や無罪を目指すことができます。

今後の見通しや対策について、是非一度、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。

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