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執行猶予の取り消しとは?条件や再度の執行猶予(ダブル執行猶予)がわかる
執行猶予の取り消しとなれば、刑の執行が猶予されていたものが取り消され、すぐさま服役しなければなりません。
執行猶予の取り消しには、必ず執行猶予が取り消される「必要的取り消し(刑法26条)」と執行猶予が取り消されることもある「裁量的取り消し(刑法26条の2)」の2ケースがあります。
執行猶予中に犯罪を犯して有罪判決を受けることになれば、高い確率で執行猶予が取り消されることになるでしょう。もっとも、執行猶予の取り消しを防げることもあるので、できることがないかあきらめずに弁護士に確認してください。
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目次
執行猶予は取り消されることがある?
どうなると執行猶予が取り消されるのか
執行猶予が取り消される可能性があるのは、執行猶予中に別の罪を犯すなどして有罪判決が言い渡される場合になります。
そもそも、執行猶予とは、有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予されるという制度です。執行猶予期間中は刑が執行されません。たとえば、懲役刑なら刑務所に入れられるところ、執行猶予がつけば、すぐさま刑務所に入れられることはなく、家族と暮らしたり、仕事や学校に行ったりと、ある程度これまでと同じような生活を送ることができます。
しかし、執行猶予という制度を正しく理解していなければ、執行猶予が取り消される事態となり、せっかくこれまでと同じように過ごせていた生活を失うことになるのです。
執行猶予中にしてはいけないことは?
執行猶予中にやってはいけないことは、「再び犯罪を犯さない」ことです。当然といえば当然ですが、依存症が疑われる薬物事犯や、万引きを繰り返してしまうクレプトマニア(窃盗症)といったケースでは再犯を繰り返してしまい、執行猶予が取り消されてしまう典型例といえます。
また、執行猶予中の交通違反にも注意が必要です。交通反則金を支払えば済む軽微な交通違反の場合なら執行猶予は取り消されませんが、人身事故・飲酒運転・無免許運転といった極めて悪質な交通違反であった場合は起訴されて懲役刑となる可能性が高いので、執行猶予も取り消されてしまうでしょう。
執行猶予が取り消されたらどうなる?
執行猶予が取り消されると、もともと言い渡されていた懲役刑や禁錮刑の期間と、再び犯した罪での懲役刑や禁錮刑の期間を合算した年数で刑務所に入ることになります。
たとえば、もともと言い渡されていた1つ目の判決が「懲役1年6月、執行猶予3年」だったとしましょう。そこに、執行猶予期間中にも関わらず、別の罪を犯して2つ目の判決「懲役2年」が言い渡された場合、執行猶予は取り消されることになります。また、懲役1年6月と懲役2年が合算されて、刑務所に服役する期間は合計3年6月となるのです。
1つ目の判決 | 懲役1年6月、執行猶予3年 |
2つ目の判決 | 懲役2年 |
取り消しと合算 | 執行猶予の取り消し 懲役3年6月(=懲役1年6月+懲役2年) |
執行猶予の取り消し条件は2ケース
(1)必ず執行猶予が取り消されるケース
必ず執行猶予が取り消される「必要的取り消し(刑法26条)」となるのは、以下の条件のうちいずれかに該当するケースです。
一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
刑法26条
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
このような条件に該当する場合、執行猶予は必ず取り消されます。
(2)執行猶予が取り消されることもあるケース
執行猶予が取り消されることもある「裁量的取り消し(刑法26条の2)」となるのは、以下の条件のうちいずれかに該当するケースです。
一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
刑法26条の2
二 第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。
このような条件に該当する場合、裁判官の裁量によって執行猶予が取り消される可能性があります。もっとも、言い換えると、裁判官の裁量によっては、考慮すべき事情があれば執行猶予が取り消されない可能性もあるということです。
たとえば、被害者がいる事件の場合、被害者との示談が成立していたり、被害者から許し(宥恕)が得られたりしていれば、これらの事情が考慮されることがあります。考慮すべき事情を裁判官に丁寧に説明することで、刑事裁判に発展したとしても執行猶予が取り消されない可能性が残されているのです。
また、近年の傾向としては、執行猶予期間中に同じ罪を繰り返す再犯を行った場合、再犯の引き金が薬物依存やクレプトマニアといった依存症によるものなのであれば、再度の執行猶予が認められるケースも増えてきています。
執行猶予の取り消しを防ぐ方法
不起訴の獲得
執行猶予中に犯罪を犯しても、その犯罪が不起訴となれば、執行猶予が取り消される可能性は低いです。起訴猶予中に事件が発覚して取り調べを受けていたり、逮捕されたりしても、すみやかに弁護士が入って弁護活動を行えば、不起訴を獲得できる可能性が高まります。
不起訴処分を得るには、警察や検察に対して有利な事情を主張する、被害者がいるなら示談を成立させて賠償が完了している状況を伝えるなどが有効です。
もっとも、どのように不起訴を目指していくかは、事件の内容や状況に応じて異なりますので、弁護士に相談してください。
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再度の執行猶予(ダブル執行猶予)の獲得
執行猶予中に犯罪を犯して、起訴されてしまった場合、再度の執行猶予(ダブル執行猶予)を得られれば、もともと言い渡されていた執行猶予が取り消されることはありません。
再度の執行猶予とは、執行猶予中の者でも、再び刑の執行が猶予されることです。
再度の執行猶予がつくには、以下の条件を満たす必要があります。
再度の執行猶予の条件
- 前の刑について執行猶予期間中の者で、保護観察に付せられていない者
- 今回、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」である
- 情状に特に酌量することがある
再度の執行猶予がつく条件は非常に厳しいため、基本的に再度の執行猶予の可能性は低いと考えておきましょう。ただし、可能性はゼロではないので、再度の執行猶予の可能性を含めてほかに道はないか弁護士に相談してみましょう。
執行猶予の取り消しでよくある質問
Q.執行猶予中に逮捕されたらすぐ取り消し?
執行猶予中に逮捕されたからといって、すぐさま執行猶予が取り消されることはありません。執行猶予が取り消されるのは、執行猶予中に起こした今回の事件で禁錮刑以上の判決となる場合か、罰金刑の判決かつ裁判官の裁量による判断がある場合になります。
また、再度の執行猶予がつけば、執行猶予が取り消されないばかりか、今回の事件でも執行猶予がつくケースもあるでしょう。
Q.執行猶予の満了直前に罪を犯したらどうなる?
執行猶予の満了直前に罪を犯した場合、刑事手続きの関係で、再度の判決が確定するタイミングが執行猶予の満了後なら、もともと言い渡されていた刑の執行猶予は取り消されないでしょう。執行猶予の取り消しが決まるのは、有罪判決が確定したタイミングだからです。
執行猶予の満了直前に犯した今回の罪については、執行猶予がつく可能性は低くなるので、刑務所に入ることになるでしょうが、もともと言い渡されていた前回の刑が執行されることはないでしょう。
Q.執行猶予の満了直後に罪を犯したらどうなる?
執行猶予の満了直後であれば、刑の言渡しは効力を失っているので、もともと言い渡されていた前回の刑は執行されません。
執行猶予の取り消しが不安な方は弁護士に相談
執行猶予中に事件を起こしてしまい、執行猶予が取り消されてすぐさま刑務所に入れられてしまうのではないかと不安がある場合は、刑事事件を積極的に取り扱う弁護士に相談してください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了